股関節の痛みを訴えるケースでは、股関節インピージメント【大腿骨寛骨臼インピージメント:FAI】がみられることがあります。
FAIは、若い人に多く、スポーツしている人、デスクワーカーで発症しやすく、変形性関節症の原因の1つということが明らかになりました。
そのため、若い人の股関節の痛みは、FAIの可能性があり、変形性股関節症に移行しないよう適切な対応が必要と考えられます。
一般的には手術ではなく保存療法が選択されるため、カイロプラクティックによる筋骨格系へのアプローチも有効です。
病院の治療で股関節の痛みに改善が見られない場合は、股関節の異常関節運動の問題や筋肉の協調運動などが解決されていない可能性があります。
これらの問題は、カイロプラクテイック心の施術で解消可能であるため、股関節の痛みでお悩みの方は一度ご相談ください。
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大腿骨寛骨臼インピージメント【FAI】
大腿骨寛骨臼インピージメント【femoroacetabular impingement:FAI】は、股関節インピージメント症候群とも呼ばれることもありますが、ここではFAIとして解説していきます。
FAIは、2003年から提唱された比較的新しい概念です。
また、単純なレントゲン検査では見逃しやく、股関節の機能的障害(画像や血液検査など客観的な診断で判別できな障害)の可能性もあり、病院では異常なしと診断されることがあります。
FAIの特徴は、股関節を動かしたときに股関節を形成する大腿骨頭と寛骨臼の衝突が繰り返されることです。
そして、軟骨および関節唇が繰り返しダメージを受け続けると軟骨は摩耗し、関節唇の損傷にいたる可能性があります。
さらに時間が経過すると、変形性股関節症を引き起こすとされています。
股関節の痛みは初期に対応することが早期改善の近道と考えられます。
病態
FAIは、図のようなカム型、ピンサー型および混合型あると言われています。
カム型は大腿骨頭の構造異常がみられ、楕円形となった骨頭が寛骨臼の端に当たることで摩擦が生じます。
ピンサー型は、寛骨臼の構造異常がみられ、大腿骨頭を大きく覆った形となり、大腿骨頭および頸部に当たることで摩擦が生じます。
カム型とピンサー型の両方の構造異常がみられる混合型が、一般的に症状が現れやすいです。
しかし、これらの構造異常がみられても、症状が現れるとは限りません。
股関節痛のある人におけるカム変形の有病率が37%、ペンサー変形の有病率が67%であると報告しています。
また、カム変形の有病率はアスリートでは 54.8%、非アスリートでは 23.1% でした。
インピージメントによって挟み込まれた関節唇や軟骨などの傷はスポーツ人口の49.5%に存在しました。
症状
FAIでは、股関節の痛みが徐々に始まり、股関節屈曲(膝をお腹につける動き)と内旋(内また方向の動き)の複合的な運動によって悪化する特徴があります。
また、股関節の痛みを感じる部分は、鼠径部および太ももの付け根あたりです。
激しいスポーツ(サッカー、バスケットボール、ランニングやジャンプを多くする競技など)経験者にFAIは、多いとされています。
研究では、高強度のスポーツに参加していない同年齢に比べて、カム変形およびインピンジメントを発症する可能性が10倍高いことが報告されています。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3183218/)
これらの特徴から、強度の高いスポーツ、しゃがむ、車の運転、さらには長時間座るなどの活動で股関節の痛みを惹き起きしやすいと考えられます。
診断
股関節の痛みでFAIが疑われる場合は、レントゲン診断が行われます。
そして、レントゲン画像から詳細な計測(CE角:大腿骨頭の中心を通る垂線と、臼蓋の外縁を結ぶ線がつくる角度、α角:骨頭中心・前方の骨頭頚部移行部を結ぶ線と頚部軸との角度など)が必要です。
また、関節唇を含めた軟部組織の損傷程度を正確に判断するために、MRIが有用となります。
身体所見
身体所見では、前方インピンジメントテスト(股関節屈曲・内旋で痛みが誘発)で痛みがみられると共に、股関節屈曲内旋可動域の低下がみられます。
※この徴候はFAIがみられる88%にみられるとされています。
関節唇の評価には、 FABERテスト (股関節屈曲、外転、外旋) が用いられ、関節唇の損傷では痛みや可動域制限がみられます。
他の所見としては、股関節の屈曲および、内旋の可動域制限、トレンデレンブルグ徴候、股関節外転筋の機能低下がみられます。
また、特定の筋肉への過負荷が生じていることもあり、腸腰筋腱、腸脛靭帯(いずれも股関節付近)のスナップ(可動途中で音が鳴る)がみられることもあります。
FAIと診断されていない場合、これらのスナップの問題を解消することで股関節の痛みが改善するケースもあります。(スナッピングとFAIの併発ケースもあります)
レントゲン診断ができない、カイロプラクティックではこれらの身体評価が重要です。
鑑別診断
FAIと鑑別すべき主な疾患は、以下のとおりです。
- 疲労骨折
- スナップ股関節症候群
- 腸腰筋腱炎
- グロインペイン症候群
- 大腿骨頭壊死
- 股関節形成不全
- 腰部神経根障害
- 外傷
- 感染
他の疾患では、FAIと治療方針が異なるため、自己判断せずに病院を受診することが大事です。
病院での一般的な治療
FAIの治療には、手術と保存療法(手術以外)があり、ほとんどの場合で保存療法が選択されます。
保存療法は、非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニン、ボルダレンなど)の処方、局所麻酔薬とステロイドを組み合わせた関節内注射などがあります。
また、痛みが誘発される活動の中止、リハビリ施設のある病院ではストレッチやエクササイズ、徒手療法などが行われます。
これらの保存療法で効果がみられないケースにおいて手術が検討され、股関節鏡手術が一般的に行われているようです。
股関節の痛み【FAI】原因
FAIの明確な原因は、不明です。
現在では、遺伝的要因があると研究で示唆されています。
また、スポーツ競技者に多く見られることから、骨格の未熟な時期から高強度のスポーツを行うことによって、大腿骨頸部の変形を引き起こし、結果としてFAIを発症するとも言われています。
スポーツ以外には、長時間の歩行や座位姿勢も危険因子とされています。
関節の異常運動
股関節だけではありませんが、関節は複合的な関節運動が行われています。
スクワットのように股関節を曲げる動作では、股関節の屈曲と内旋が同時に行われています。
FAIでは、股関節の屈曲と内旋の可動域制限もみられることから、関節運動学的に股関節を曲げる動作で異常がみらっると言えます。
そのため、日常的にしゃがむ動作、スプリント、ジャンプ動作などで股関節を曲げる度に異常な関節運動が行われ、インピージメントが生じていることが考えられます。
筋収縮の問題
大腿四頭筋、腸腰筋など股関節を屈曲させる筋肉に過剰な負荷がかかり続けることで、本来の筋肉の性質であるゴムのような伸長、収縮がみられなくなります。
また、これらの筋肉が短縮した状態であると、大腿骨頭をより前方へ移動させる力が働き、屈曲方向への動きが強調され過ぎてインピージメントを引き起こしやすいです。
※とくに腸腰筋は股関節を外旋させるため、股関節の内旋の可動域を制限します。
体の使い方
股関節の屈曲と内旋を運動のなかで重要ですが、歩き方やジャンプ動作など動き方に問題があると、股関節の屈曲および内旋動作が少なくなります。
そして、日常的に行わない関節運動は、柔軟性の低下も招きやすく結果として股関節の屈曲、内旋制限のみられるようになります。
ただ、日常的には現状の体の使い方でコントロールしているため、初期の段階では痛みとして現れません。
しかし、スポーツや日常では深くしゃがんだり、捻る動作など突発的な動きも生じ、それがインピージメントを強めることになります。
このようなことから、痛みの軽減と共に体の使い方を適切にコントロールできるようにすることも股関節の痛みの改善には重要です。
モーターコントロール異常(運動制御異常)
股関節を曲げる動作は、股関節屈筋群が主導ではありますが、屈曲のスピードをコントロールするため、股関節伸筋群も働き適切な股関節位置を保持します。
極端な例ですが、少し腰を落として身構えるくらいでも股関節伸筋群の働きがなければ、しゃがんだ姿勢となります。
また、内旋、外旋をコントロールする筋群も適切に働くことで、膝をつま先方向に曲げて効率的に真っすぐ走ることができます。
これらのコントロールに異常がみられると、筋肉に過剰な負荷がかかったり、異常な関節運動を引き起こしたりします。
長時間の座位姿勢
長時間の座位姿勢が続く場合、股関節の屈筋群および股関節前方の靱帯が縮んだ状態となります。
その縮んだ状態が動きの中でも維持されるため、関節の異常運動につながります。
臨床的にスポーツをしていない人でも、FAIの徴候がみられるケースもあり、そのほとんどが座り仕事(デスクワーク、車の運転手など)です。
股関節の痛み【FAI】股関節の正常運動を取り戻そう
FAIでみられる股関節の痛みは、変形が大きな要因ではありません。
そのため、病院で処方してもらえる抗炎症薬で一時的に痛みを抑えても症状が改善します。
しかし、一定数は股関節のインピージメントが解決されていないため、痛みが継続ししたり、何度も痛みを繰り返したりします。
このようなことから、ストレッチやエクササイズで、股関節のインピージメントを引き起こさないようにすることが大切です。
ただ、重点的に行うべきストレッチやエクササイズは、スポーツ競技や生活背景などによって異なります。
そして、徒手的に関節運動や過緊張した筋肉へのアプローチが必要なケースもあり、中枢神経系を介した体の使い方やモーターコントロール異常の改善を行ったほうが良いこともあります。
カイロプラクテイック心では、詳細な身体評価で、その人に合った徒手療法、ストレッチ、エクササイズを組み合わせ、股関節の痛み【FAI】の改善を目指しています。
また、中枢神経系を介したアプローチにより、モーターコントロール異常や慢性的な痛みにも対応しています。
カイロプラクテイック心の股関節の痛み【FAI】アプローチ
カイロプラクテイック心は、正常な股関節の関節運動を取り戻すために関節運動学アプローチを行います。
また、モーターコントロール異常により、股関節外転筋の機能低下、股関節屈筋群の過負荷などが考えられ、それらの問題にもアプローチしていきます。
また、人によっては日常的な体の使い方より、一部分の筋肉に過剰な負荷をかけてしまうため、施術後は楽になっても日常生活で負荷をかけ続けることで再発リスクが高いままです。
カイロプラクテイック心では、感覚エクササイズにより、中枢神経系を介して体の負担を減らした体の使い方ができるようにしていきます。
関節運動学アプローチ

膝、股関節の可動域検査
徒手的に、正常な関節運動を取り戻します。
例としては、FAIでは股関節屈曲、内旋に動きにより痛みが顕著に現れますが、インピージメントがみられない方向に誘導した関節運動を徒手的に行います。
また、正常な関節運動を邪魔している筋緊張なども緩和させることで、痛みの軽減が期待できます。
モーターコントロール異常
モーターコントロール異常により、股関節外転筋の機能低下や過剰な筋緊張がみられることが多いです。
機能低下は、筋力トレーニングをすれば良いだけではありません。
機能低下がみられる原因は多岐に渡るため、(他の筋肉の問題、循環系、内臓起因性、関節、中枢神経系など)原因を解決したうえで、筋力トレーニングやストレッチで機能を回復させます。
カイロプラクテイック心は、AK、NKTなど筋機能低下を改善させる知識、技術を習得しています。
股関節の原因にアプローチ
股関節の痛みに関係する腸腰筋は、内臓(腸や腎臓)の近くを通るため、内臓の影響も受けてしまいます。
そのため、便秘や下痢が日常的、水分補給が不十分など内臓に起因する原因を解決する必要もあります。
また、横隔膜とも隣接するため、呼吸が浅かったり、胸郭が十分に可動していないケースで腸腰筋に悪影響を及ぼしていることもあります。
筋肉骨格系の問題でも運動連鎖(バイオメカニクス)の影響で、足関節の問題が股関節の痛みにつながるケースも多いです。
このようにカイロプラクテイック心では、多角的な視点から股関節の痛みの原因を考え、FAIの改善を目指します。
慢性的な股関節の痛みのアプローチ
股関節を痛みを繰り返している、3ヶ月以上継続しているなど慢性的な股関節の痛みは、日常的に過剰な負荷をかけていることが考えられます。
そのため、関節運動学アプローチやAKなどの徒手的なアプローチだけでは、痛みをぶり返すこともあります。
慢性的な股関節の痛みを解決するためには、中枢神経系を介した姿勢制御、バランス機を改善していくことも大切です。
例えば、バランスをとるとき足関節と股関節が重要となりますが、足関節の問題(過去の捻挫、足指の機能低下など)により、股関節に頼った場合は過剰な負担がかかりやすいです。
また、レッグプレス(寝た状態で脚を挙げる)で腰が反ってしまう場合は、腸腰筋を過剰に使った活動をしている可能性があります。
このような無意識化で体をコントロールする能力が低下していると、痛めたところを過剰に使ってしまう結果、慢性的な痛みとなっていることがあります。
カイロプラクテイック心では、中枢神経系を評価して中枢神経系の機能向上し、無意識化でも体をコントロールできるようになることを目的に感覚エクササイズを行います。
股関節の痛み【FAI】を改善してスポーツ、仕事を快適に
FAIによる股関節の痛みは、若い人の多いです。
放置しておくと、中高年以上となって変形性膝関節症のリスクが高まります。
また、股関節が痛いままでは、スポーツのパフォーマンスも向上せず、仕事にも集中できません。
FAIによる股関節の痛みは、適切なアプローチによって痛みが改善されやすいです。
また、薬や注射で効果が見られなかった人でも、徒手的なアプローチや感覚エクササイズで回復する可能性は十分にあります。
股関節の痛みでお悩みの方は、一度ご相談ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36034731/
投稿者プロフィール

- カイロプラクター
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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