自閉症スペクトラム障害

自閉症スペクトラム障害の原因とリスク

自閉症スペクトラム障害は、発達障害の一つです。

Centers for Disease Control and Prevention(CDC:米国疾病予防管理センター)の統計では、女性に比べ男性のほうが自閉症スペクトラム障害の発症率が5倍と言われています。

これもアメリカのデーターですが、40年前に比べると30倍以上の人が自閉症スペクトラム障害と診断されています。この数の増加は、認知度や診断技術の向上、環境因子などが考えられていますが、はっきりとした理由はわかっていません。

このように増加傾向のある自閉症スペクトラム障害の原因は何でしょうか。

脳研究の分野が急速に成長し脳の異常も解ってきましたが、環境、両親の影響、生活様式など色々な要素が複雑に絡んいでいると考えられます。

ここでは、自閉症スペクトラム障害の原因やリスクファクターなどについて書いていきます。

遺伝子および遺伝的な原因

遺伝子研究の進歩により、自閉症に関与する遺伝子が複数みつかっています。

また、ダウン症、脆弱性X症候群、結節硬化症などの遺伝子異常の疾患により、自閉症を併発することもあります。

遺伝性を確認するため、自閉症スペクトラム障害の大規模な家族調査した研究の1つが以下のとおりです。

スウェーデンの大規模な調査研究では、1982年から2006年までに生まれた約350万人の子供について、2009年時点で自閉症スペクトラム障害及び自閉症と診断が確定している約32,000人の患者さんの家族についての調査を行った。

調査では一卵性双生児、二卵性双生児、両親が同じ兄弟、母親が同じ兄弟、父親が同じ兄弟、従兄弟の中に自閉症児がいる場合、自閉症が発症する頻度を調べ、10万人が一年間に発症する率に換算すると、それぞれ153.0, 8.2, 10.3, 3.3, 2.9, 2.0になっている。

遺伝子の共有率の高い一卵性双生児の発症率が最も高いことが解り、これらの結果をもとに遺伝率を計算すると約50%の確率で遺伝することが推定された。

参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24794370

研究でみられるとおり、遺伝によって自閉症スペクトラム障害を発症することがあります。

そのため、両親が自閉症スペクトラム障害の特徴をもっている、精神疾患の病歴(とくに父親)を持っているとこどもも自閉症スペクトラム障害を発症しやすいとされています。

しかし、双子のリサーチでは、遺伝要素の強い一卵性双生児であっても片方だけが自閉症スペクトラム障害がみられ、2011年のスタンフォード大学のリサーチでは一卵性双生児よりも二卵性双生児のほうが両方とも自閉症スペクトラム障害になる確率が高いと報告されています(引用元:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4440679/

遺伝性であれば、一卵性双生児は「ほぼ100%の確率で両方とも自閉症スペクトラム障害を発症するのではないか?」「人付き合いの苦手な自閉症スペクトラム障害は結婚しないケースも多いと言われ、それでも増加傾向にあるのはなぜか?」というような遺伝だけでは説明しきれない疑問もあり、遺伝以外の原因もいくつか挙げられています。

環境の原因

自閉症スペクトラム障害の環境因子は以下のことが考えられています。

  • 妊娠初期の喫煙
  • 水銀
  • 有機リン酸系農薬
  • ビタミン等の栄養素不足
  • 親の高齢
  • 妊娠週数
  • 出産時の状況(帝王切開等)
  • 夏の妊娠
  • 生殖補助医療による妊娠

関連がないと考えられる環境要因は以下のとおりです。

  • PCB(ポリ塩化ビフェニル:現在は製造、輸入が禁止されています)
  • 妊娠中のアルコール
  • 多環芳香族
  • 社会経済的地位
  • ワクチン
  • 低出生体重

引用元:https://www.niph.go.jp/journal/data/59-4/201059040004.pdf

この他にも妊娠中、妊娠前のリスクファクターがあります。

  • ウイルス感染(風疹、はしか、インフルエンザ、ヘルペス、サイトメガロウイルス)
  • 母親のストレスが強い(男性ホルモンの過剰分泌)
  • 出産時のストレス(海外での出産、はじめての出産など)
  • 出産時のトラブル(逆子、へその緒の異常、未熟児など)
  • 葉酸の欠乏、もしくは吸収不全
  • 母親や家族の自己免疫疾患(アレルギー、膠原病、ぜんそくなど)
  • 肥満
  • Ⅰ型糖尿病
  • 妊娠前、妊娠中に睡眠薬(サリドマインド)胃潰瘍の治療薬(ミソプロストール)抗うつ剤などを服薬
  • 妊娠中の出血

参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5377970/

ただし、特定の環境要因がはっきりとわかっているワケではなく、これらの環境要因があったとしても自閉症を発症するとは限りません。

脳の異常

脳研究が進歩し自閉症スペクトラム障害では、「大脳皮質」「偏桃体」「脳梁」「小脳」に異常が観察されています。

自閉症スペクトラム障害は、頭囲が大きい特徴が多くみられます。これは脳の大きさが早期に異常発達し、本来の形から逸脱した成長によって脳内接続(シナプス接続)および脳機能に障害を与える可能性があると考えられています。(ミクログリア仮説とも言われています)

マインド・ブラインドネス仮説

マインドブラインドネス(Mindblindness)は、心が読めないという意味で使用されています。

マインド・ブラインドネス仮説は、対人コミュニケーションの全ての障害は、他人の心の状態を想像する能力がないことに起因するという考えです。

対人コミュニケーション理論の1つに「心の理論」と言われるものがあり、人は直感的に他人の心を推測する能力を自然に身につけるという仮説があります。この他人の心を推測し行動を予測する能力(心理化)は、生後7ヶ月で身につき始め、2歳台で心理化が確立されます。

心理化の課題の1つ「サリー・アン課題」があり、部屋にいない間に今まで使っていた人形を別の場所に移し、最初にどこを探すかという問いに自閉症児は正しく答えられません。

1980年代ころに心理化の課題を自閉症(知能障害もみられる)アスペルガー症候群(知能障害はみられない)のこどもと成人に行ったところ、アスペルガー症候群のほうが成績は良かったそうですが、多少の困難を伴ないました。

このように自閉症スペクトラム障害は知能障害がみられなくても、心を読む能力に問題がみられます。

この心の状態について考えさせる課題中に脳機能画像を用いて脳を調べた以下の研究があります。

正常群は、以前に同定された精神的ネットワーク(内側前頭前野、側頭頭頂部の上側頭溝、側頭底部)において活性化の増加を示した。自閉症群は、これらすべての領域で正常群より活性化が少なかった。しかし、精神化を誘発したアニメーションを見たときに非常に活発だった1つの追加領域、線条体外皮質は、両方のグループで同量の活性化の増加を示した。自閉症群では、この線条外領域は、頭頂頭頂接合部での上側頭溝との機能的結合性の低下を示し、これは生物学的運動の処理および精神化に関連する領域である。この所見は、自閉症における精神障害の生理的原因を示唆しています。

参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12135974

言い換えれば、研究で示された脳領域の問題でコミュニケーション障害がみられるとも言えます。

他の対人コミュニケーションメカニズムの問題

自閉症は、定型発達時でも心理化がまだみられない1歳の終わり頃から対人コミュニケーションの問題が現れることから、心理化でみられる脳機能異常以外の問題もあることが考えられています。

ある研究で、自閉症は目ではなく口を凝視する傾向がみられることがわかりました。また、脳画像研究では、顔の表情や行動、ジェスチャーを見ているときにも異常がみられました。

これらのことから、行動をみて認識する脳内システム(上側頭溝野、前頭葉、頭頂葉)の制御に問題がみられると考えられています。

大脳機能の左右のアンバランス

右脳の主な機能は、感性・感覚を司る機能で集中力、記憶力、決断力、空間認知(音楽、絵、想像力)などに影響します。右脳の機能低下によって、相手の立場を理解することが難しくなり、衝動的な発言、突発的な乱暴などコミュニケーションの問題がおきやすいです。

また、空間認知能力も低下しているため、工作や音楽、絵などが苦手であることも特徴的です。

左脳の主な機能は、言語能力、論理的思考です。左脳の機能低下は、言語の発達が遅れがみられ、結果としてコミュニケーションが難しくなります。

脳は、絶え間なく左右脳がコミュニケーションを取り合っています。しかし、何らかの原因でどちらかが活動しすぎ、もしくは活動しなさすぎることで左右のバランスを崩すことがあります。

Dixconnected Kidsには脳バランスを崩す3つの徴候が以下のように書かれています。

  • 左右半球どちらかの領域の活動が減少(低下)している
  • 機能が高い側の半球領域の活動レベルが正常の活動レベルに比べて高い
  • 機能が弱い半球の活動減少と、機能が高い側の活動増加の組み合わせ

引用元:Disconnected Kids

Disconnected Kidsの日本語訳はこちらになります

左右の脳の不均衡がみられることで過敏性(音やにおい)免疫や消化器の弱さ(病気になりやすい)偏食、不器用さ、触られることの苦手などもみられるようになります。

リスクファクターに両親の脳機能のアンバランス

アメリカのシリコンバレーには大手IT企業が集まり、優秀なプログラマーが多く在住しています。そのため、優秀な人同士が結婚することも少なくないそうです。

それが結果として、シリコンバレーには自閉症スペクトラム障害に分類されたアスペルガー症候群がとても多いと言われています。(シリコンバレー症候群)

遺伝的な要因とも言えますが、左脳が極端に優位になりやすいプログラマー(知識レベル高く論理的な思考)の子育ては、右脳の発育を促すことが難しいと考えられます。

それが結果として、左右の脳バランスが偏ったこどもに成長してしまう可能性があります。

原始反射の残存

発達支援コーチ、リズミックムーブメントなど発達障害を支援する団体は、原始反射の残存に注目してアプローチを行い、効果を上げているケースがあります。

原始反射は、生まれつき備わった反射であり、その働きを大きく分けると「生き残るため」「将来の学習や生活の土台をつくるため」の2つがあります。

本来なら脳の成長と共に原始反射を脳(大脳)がコントロールできるようになりますが、何らかの原因で原始反射をコントロールできないまま成長し、原始反射が残存してしまいます。

こうなると原始反射は意思とは関係なく起こるため、場にそぐわない行動や振る舞いとして現れてしまいます。

その他のリスクファクター

1)ビタミンD欠乏症

以前からビタミンDの欠乏により、自閉症の発症率が高くなるという報告があります。そして、ビタミンDの補給により症状の改善がみられた研究報告があります(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26783092)

2)リッキーガード症候群を含む消化機能異常

自閉症スペクトラム障害では、胃腸障害を併存することが多いです。また、消化器官症状と重症度が関連しているという報告があります。

複数の研究では、異常な腸内細菌叢が関連していることが示唆されており、腸内細菌叢の調整により症状の改善がみられたことが報告されています。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5408485/)

3)両親のうち一人、もしくは2人の免疫系の問題(リウマチなどの自己免疫疾患、アレルギーにみられる過敏性)

自閉症スペクトラム障害には、自己抗体の存在が確認されており、両親の自己免疫疾患が遺伝している可能性があります。とくに母親の自己免疫疾患は、自閉症スペクトラム障害のリスクファクターとしてあげられています。

参考文献

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6242891/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6467644/

自閉症スペクトラム障害は予防できる?

自閉症スペクトラム障害は先天的な原因もありますが、環境要因も多くるため、リスクファクターを減らす努力はできるのではないでしょうか。

また、こどもの発育を遅らせるリスクも避けていくことで予防になると考えられます。

生活スタイルの見直し

環境要因では両親の健康状態やライフスタイルが影響します。

出産に向けて飲酒、喫煙を控えることはもちろんですが、栄養のバランス、十分な睡眠、適度な運動を心掛けて自分の身体を良い状態を保つことが大切です。

もちろん、母親だけではなく父親の生活スタイルも見直すことが大切です。

また、ストレスは身体の色々な部分に悪影響(ホルモンのアンバランス、副腎への過剰な負荷など)を及ぼすため、ストレスをコントロールする能力を身につけることも大切です。

ストレス自体は、無くなることはありません。

そのため、ストレスとどう向き合いどのように対処していくかを身につけていくことが望ましいです。

脳の発育を遅らせない

こどもの脳は未成熟で年齢と共に成長していきます。そのため、脳の健康的な発育を妨げないことが大切です。

テレビ、スマホの視聴を避ける

生後12ヶ月前にテレビを見始め、1日2時間以上視聴しているこどもは、言語が遅れる可能性が6倍近いという研究報告があります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5849631/

この研究以外にもテレビ、スマホなどの視聴による発達の遅れを指摘した調査は複数あります。

このような研究から、6歳くらいまではテレビ、スマホなどの視聴は控えた方が良いでしょう。

遊ぶ

遊びは神経系を刺激するためにとても重要であり、運動は脳に良い変化を与えます。

脳神経学者は、運動によって前頭前皮質、海馬の機能向上が認められると発言しています(動画をご参考ください)

前頭前皮質、海馬などは記憶や言語などにも関わる重要な部分でもあり、こどもも運動(遊び)によって脳の成長が促されます。

また、自閉症スペクトラム障害で小脳の問題もみられるとされています。小脳は運動の微調整、バランス感覚に重要な役割を示すため、運動によって発育が促されます。

視覚、聴覚、触覚、平衡感覚などの感覚神経も遊びによって効果的に刺激されます。

語りかける

身体には無数の神経ネットワークがあり、相互作用しています。

この神経ネットワークを繋ぐ役割が、シナプスという神経同士を繋ぐ接合部分になります。そして、神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、アドレナリンなど)によって神経同士の情報交換が完了することをシナプス結合といいます。

このシナプス結合は刺激が繰り返されるほど強化されます。

例えば、ピアノを弾き始めたときはぎこちない指の運びだったとしても、繰り返し練習することでスムーズに指が動くようになり、難しい指運び、速弾きなどにも対応できるようになります。

このように先に解説した運動は、シナプス結合を強化するために有効です。また、言葉を語り掛け、こどもがしゃべり始めたら応答してあげることでもシナプスが強化されます。

そして、ハーバード大学児童発達研究所・所長ジャック・ションコフ氏は、シナプス結合がもっとも活性化されるのは、愛情を注ぐことだと公表しています。

最近は便利な育児グッズやスマホなどで一人遊びをさせていることも多くなっているようですが、親が愛情をこめて言葉を語り掛け、コミュニケーションをとることが大切です。

栄養のバランス

乳幼児の食事については、食が細い、同じものしか食べない、工夫しても食べてもらえないなど悩まれることも多いです。

しかし、自閉症スペクトラム障害のリスクファクターには栄養の問題もあるため、乳幼児からの食事は大切です。

脳に必要な栄養素は、糖(炭水化物)だけではなくミネラル(とくに鉄)、ビタミン(とくにB・D・E)、脂肪酸(Ω3脂肪酸)も重要とされています。

引用元:NUTRI-FACTS

カイロプラクティック心でも自閉症スペクトラム障害は対応可能です

自閉症スペクトラム障害のほとんどが、複数の原因が複雑に絡み合って多様な症状がみられます。また、困っていること苦手なこと(過敏性、運動が苦手、人混みが苦手、初めての場所が苦手など)も人それぞれです。

そのため、カイロプラクティック心では、原始反射の残存、カイロプラクティック機能神経学による脳機能の偏りなども評価し、その人が現状抱えている悩みとリンクする原因を考えてアプローチします。

「薬では改善がみられない」「薬以外でも良くなる方法があるなら試したい」「今受けている治療でも満足しているけど、今より良くなるなら試したい」などの想いのある人は一度、ご相談ください。

 

 

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