猫背矯正をする前に姿勢について理解しよう
1~3の中でどれが、構造的にみて正しい姿勢かわかりますか?
3と答える人が圧倒的に多く、なぜか日本人は「背筋を伸ばした姿勢=良い姿勢」と勘違いしています。
また、姿勢について何も知らずに、こどもだけに「背筋を伸ばしなさい」と無責任な発言をしてしまいがちです。
そのような発言をされる人は、背筋を伸ばした姿勢を1日維持できますか?
仮にできたとしても「ただの自己満足でしかありません」
この写真では1が最も良い姿勢です。
姿勢は大切ですが、背筋を伸ばせば良いということは一切ありません。
そして、高齢者以外で真正の猫背という人はほとんどみることはなく、平背のほうが圧倒的に多いです。
また、姿勢は背骨や筋肉など筋骨格系の問題を解消すれば良いワケでもなく、脳からのコントロールが関わります。
姿勢について知りたい人は、続きをお読みください。
この記事は4DS姿勢分析士であり、中枢神経系の姿勢制御システムを学んだカイロプラクティック心の岡が書いています。
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猫背の誤解
出典:月刊スポーツメディスン「呼吸・重心・姿勢とスポーツ障害」
この写真をみると良い姿勢は、左端もしくは右端と答える人が多いですが(赤丸で囲われている姿勢)これも間違いです。
月刊スポーツメディスンの「呼吸・重心・姿勢とスポーツ障害」の特集記事で医師・理学療法士・スポーツトレーナーが座談会を開き、姿勢の誤解についても話が挙がっていました。
姿勢についての誤解
- 胸を張った姿勢が良い姿勢
- 背筋を伸ばす
- 膝を伸ばす
- アゴを引く
- 体幹に力を入れる
- 母指荷重、足指で踏ん張る
- 「猫背が悪い」と感じている
これらは一般的な人が「よい姿勢」と感じていますが、全て誤解です。
まず、このような姿勢では、身体中に力が入り過ぎて長い時間は維持できません。
長時間できず、疲れてしまう姿勢を良い姿勢と言ってよいでしょうか。
また、それをこどもに押し付ける姿勢教育が正しいとは思えません。
スポーツでも「リラックスしろ」と言いながら、「胸を張れ」「背筋を伸ばせ」という姿勢をとらせれば、リラックスはできないです。
身体が緊張してしまえば、身体の動きはぎこちなく、呼吸も浅くなり身体は疲れやすくなります。
これでも、あなたは緊張した姿勢をとりますか。
良い姿勢という定義はありません
体格や身体の状態などによって姿勢は微妙に違って当然です。
それを肩こりや腰痛などを「姿勢のが悪いから」「猫背を治しましょう」など言う整体、カイロプラクティックが多いです。
しかし、身体の反応としては肩こり、腰痛があるからこそ「脳から痛やコリの少ない姿勢をとりなさい」という指示により、背中を丸くします。
カイロプラクティック心が考える良い姿勢は、自然体で機能的な姿勢です。
機能的な姿勢とは、動きを邪魔することなく手足を動かしやすくしたり、呼吸をしやすくしたりする姿勢と考えています。
姿勢は意識するものではない
赤ちゃんは、成長と共に誰に教えられたワケでもなく立った姿勢を維持し歩くようになります。
このように姿勢や歩行などは、無意識の状態で自然に行えることが普通のことです。
そのため、良い姿勢を意識することに価値はありません。
無意識でも不必要な筋緊張をさせている人は、慢性的な痛みを抱えていることが多く、スポーツでは次の動作が遅れたり、ぎこちない動作になります。
体が持っている機能を損なうと体の痛みにつながったり、動きのパフォーマンスを落としてしまいます。
そのため、機能を損なわない姿勢(どのような状況、環境でも適切な姿勢に切り替えられる)が重要です。
構造的にみる良い姿勢は?
人の背骨は、生理的湾曲があるということはどこの解剖学書、生理学書を含めた医学書には必ず書いてあります。
そして、猫背は「胸椎1番(T1)の底辺に沿った直線と、胸椎12番(T12)の上辺に沿った直線の交わる角度」によって定義され、この角度が56度〜69度(理想は63度)が正常値となり、70度以上とされています。
出典:基礎運動学第6版
肩甲骨と鎖骨は関節をつくり、図のように60度が正常とされています。
肩が前に出過ぎていると「巻き肩」と言われますが、解剖学的にみればある程度、肩は前方に位置するのが正常です。
猫背解消の体操として、ストレットポールや肩甲骨同士をくっつける体操を指導されることもありますが、この正常な構造を損なう可能性が高いです。
構造的(解剖学的)に正常な姿勢は、背中の丸みがあり、肩も少し前方に位置しています。
全体的には、耳、肩峰(肩中央)、大転子、膝蓋骨後面、外果(くるぶし)前部を一直線上(重心線)で結べると最小限の力で立つことができます。
重心線から外れると重力が身体の関節にトルク(回転させる力)が発生するため、それに対抗する筋肉や関節包、靭帯に負担がかかります。
背筋を伸ばすだけでは重心線から外れていることが多く(とくに前のめりになりやすいです)各関節への負担が大きく疲れやすくなります。
平背(背中が平ら)でも猫背に見える?
猫背や姿勢を気にされる人のほとんどが、下の図のような頭部の前方移動であり、定義上の猫背ではなく平背です。
- 頭部前方移動
- 頭部前方移動は下部頸椎過屈曲上部頸椎過伸展
- 上部交差症候群
出典:図解姿勢検査学
猫背を気にして背筋を伸ばした姿勢は、息を吸いきった骨格の状態になります。
そのため、本来は呼吸をするときに補助として働く筋肉(胸鎖乳突筋、斜角筋群など)を過剰に働かせて息を吸うようになると共に、息を吸いやすい頭部の前方移動の姿勢をとるようになります。
また、息を吐ききれなくなるため、呼吸が浅くなり吐くときに使う腹筋群も弱まり、全体的な姿勢も崩れてしまいます。
頭部が前方に移動していることを猫背と考え、背筋を伸ばしても逆効果です。
この構造的なことを理解すれば、一番初めに挙げた写真も上体が反って頭部が前方に移動(肩の中心よりも頭部が前方移動)していることがわかります。
口呼吸の影響
口呼吸をしている身体特徴の1つとして、頭部が前方へ移動している姿勢があります。
最近では、花粉症をはじめとした鼻炎によって、鼻呼吸ができない人も少なくありません。
そのため、口呼吸の人は鼻呼吸に切り替えることが姿勢改善の近道となります。
鼻炎であれば、耳鼻科を受診することが最優先です。
そして、鼻呼吸をはじめとした呼吸エクササイズを行うことが重要となります。
呼吸についてはこちら
進化の過程から考える姿勢
4つ足歩行から2足歩行に進化する過程では、背中を反らした猿と背中を丸めた猿の2種類の部族があったそうです。
そして、生き残ったのは背中を丸めた猿だそうです。背中を反ると交感神経が優位になるため、背中を反らした猿は好戦的であったとされています。
反対に背中を丸めた猿は副交感神経が優位となり、助け合ってい生き残ったと言われています。
交感神経、副交感神経は自律神経であり、副交感神経が少し優位なくらいがバランスが良いとされています。
猫背を直そうと背筋を伸ばして胸を張っても、身体の構造上とても負担が大きいです。また、交感神経が優位になりすぎ、疲れやすいため、不必要に背筋を伸ばす必要はありません。
猫背の原因は脳?
ここまで解説してきたとおり構造上の猫背は、ほとんどいません。
そして、姿勢は人の骨格を構成する筋肉や骨格の状態ではなく、脳によってコントロールされています。
そのため、猫背矯正で良く紹介されている筋トレ、ストレッチ、姿勢矯正ベルトは役に立つことが少ないです。
姿勢にかかわる脳(中枢神経)の場所は?
姿勢は、脊髄、脳幹、小脳、基底核、大脳皮質を含む脳(中枢神経)の神経システムによって制御されています。
脊髄や脳幹は先に書いた反射が関わる部分です。
それを統合する小脳は大脳皮質や基底核とも連携して姿勢を制御すると共に四肢の細やかな運動に関与します。
心理面が姿勢に影響する理由は脳にある
心理面と姿勢が影響する話を聞いたことある人もいるのではないでしょうか。
大脳基底核は色々な脳の領域(感情、意思のある運動、眼球運動、意思決定など)と関わるため、ストレス、感情面の波(落ち込み、嬉しいなど)によって姿勢が変化するのは大脳基底核の影響があると考えられます。
また、脳にも屈筋(体前面)に作用する領域、伸筋(体後面)に作用する領域があり、脳のアンバランスによって屈筋が過剰に働くと猫背のように見えます。
生活習慣と脳の関係
姿勢の悪さは、生活習慣とも関わりがあります。
これを脳の影響から考えると仕事などでよく行う動作や姿勢があれば、脳がそれに適した筋緊張、反復する運動の神経システム活性化などによって身体が修正されます。
それが結果として、無意識でその動作が行えたり、習慣的に行う動作がスムーズになります。
以下のような研究報告もあります。
普段からハイヒールを履いて生活していると、歩行メカニクスそのものが変化する。ハイヒールを履かない人に比べて裸足歩行時の踵や中足部の接地時間が短く、母指球からつま先体重で過ごす時間が長くなるとのこと。生活習慣は運動習慣を作るという典型のような報告。https://t.co/U2Ko7ZmIlV
— PRI Japan (@postrestinstJP) June 18, 2019
運動の始まりは静止した姿勢です。
そのため、生活習慣が姿勢を作るとも言えます。
仮に姿勢を意識しても生活習慣に問題があれば、身体に無理な負担をかけることになるため、良いとされる姿勢を維持していくことは不可能です。
姿勢反射
無意識でも立てるのは、姿勢反射があるからです。
お酒を飲んで酩酊状態(ひどく酒に酔った状態)になると真直ぐ歩けなかったり、人に抱えられないと立てなかったりするのは、姿勢反射を統合する小脳の機能が低下するためです。
とくに猫背に見えてしまう姿勢反射は、緊張性迷路反射です。
緊張性迷路反射は、頭部の位置に関与し頭部が前方にあると脳が認識すれば、背中の緊張を緩め手足を曲げる反射です。
そのため、前方緊張性迷路反射が強く現れていると姿勢は猫背となります。(他には高所恐怖症、身体のバランスが悪いなども特徴として現れます)
この反射の影響をとくに受けるのは、成長段階の子供です。
緊張性迷路反射が強く現れているにも関わらず「背筋を伸ばしなさい」と言われても苦痛でしかありません。
成長して脳が成熟していくことで変化はみられるかもしれませんが、根本的な解決は前方緊張性迷路反射をコントロールできるようになることです。
こどもの姿勢が気になるからと言って、安易に猫背矯正、姿勢矯正などで筋トレ、ストレッチ、背骨の調整をしても変化がないか、一時的に変わるだけで子供にとっては不快でしかありません。
猫背改善のセルフケアのヒント
ここまで解説してきたとおり、姿勢は脳を含めた神経系がコントロールしています。そのため、神経系への刺激が姿勢への変化につながります。
ここでは神経系を活性化させる方法について解説していきます。
呼吸と姿勢の関係性
背筋を伸ばし過ぎた姿勢は、身体に過度な緊張状態をつくります。
そうなると交感神経が優位となり、息を吸うことに偏重してしまいます。
息を吸うと酸素が供給されているイメージもあるかと思いますが、実際は体内の二酸化炭素不足すると、細胞まで効率よく酸素を運ぶことができません。
脳は酸素の供給が不可欠でさらに交感神経を優位にさせて、呼吸を多くして酸素を取り込もうとする悪循環に陥ります。
身体にとって良い姿勢に改善するために必要なのは、猫背矯正や姿勢矯正、筋トレ、ストレッチではなく身体の緊張状態を緩め、身体に酸素供給が十分にできる呼吸を身につけることも大切です。
そのため、呼吸法の指導や「楽に呼吸をしてください」と指導するだけでも姿勢の傾きが改善することも少なくありません。
ただ、長期的な姿勢の問題がある場合は、身体の構造も息を吸うことに偏重した状態になっていることが多いです。
頭部が前方へ移動することによる舌骨筋、呼吸を吸い過ぎて拡張し過ぎた胸郭(横隔膜)身体の土台となる足底アーチの機能低下などの問題を解消したほうが呼吸しやすくなります。
固有受容器の活性化で姿勢改善
体中には、センサーの役割を果たす固有受容器がたくさんあり、感知した身体の情報を脳に送り姿勢をコントロールする機能があります。
この機能があるおかげで凸凹の道や坂道、転倒しそうなときでも立つことができます。
もう少し具体的に説明すると身体が前に傾いた場合、フクラハギが伸ばされたとします。
そのとき、フクラハギの筋肉の伸び縮みを感知する筋紡錘(固有受容器)が働き、脳にその情報を伝えフクラハギの筋肉を収縮させ脳が筋バランスを適切にコントロールしてバランスを保ちます。
固有受容器は、適切なエクササイズ、ストレッチ、施術による刺激などにより活性化させることができます。
また、振動マシーンに乗ると不安定な場所でバランスをとれるよう固有受容器が働くため、バランス機能改善に伴う姿勢改善が期待できるという研究報告があります。
猫背(姿勢)改善は、呼吸やバランスエクササイズ、振動マシーンでも十分に期待できます。
猫背矯正/姿勢矯正は不要
猫背や姿勢の悪さは「骨盤の歪み」「背骨の歪み」とし、整体やカイロプラクティックで猫背矯正、姿勢矯正などのコースを受ける人も多いです。
何度も書きますが、姿勢は神経系によってコントロールされているため、「姿勢が悪い=骨格の歪み」ではありません。
また、姿勢に関しては「胸を張れば良い」と考える医療従事者が多いです。
そして、巷の整体、整骨院の姿勢矯正、骨盤矯正も背筋を伸ばしやすくする目的で短期的にはスッキリするかもしれませんが、長期的にみると腰痛、肩こりの原因になってしまいます。
神経系への刺激をするために背骨や筋肉へのアプローチは必要ですが、本来の姿勢の理解もなくただ歪んでみえるというだけで「姿勢矯正/猫背矯正」をしてもあまり意味はありません。
カイロプラクティック心の姿勢改善(猫背改善)
カイロプラクティック心は、ただ背骨を調整したり、筋肉のバランスを調整することは致しません。
姿勢分析をはじめ、機能神経学、原始反射、NKTなど神経系の評価を行い、姿勢の悪さ、猫背がどのような影響をうけているかをしっかりと把握していきます。
そして、先に書いてきたように緊張性迷路反射、中枢神経系のエラー、筋紡錘の問題などを考えて施術を行います。
- 姿勢評価
- 機能神経検査
- 足関節調整
- 頭蓋骨の調整
- ホームケア指導
身体の構造的に問題があれば、足底、横隔膜、舌骨筋など含めアプローチしていきます。
反射や中枢神経系のエラーがみつかれば、施術だけではなく神経系が活性化するホームケアを指導させていただきます。
姿勢反射
姿勢反射を評価します。
姿勢反射の問題に対して、エクササイズと施術を組み合わせていきます。
- ガラント反射⇒スノーエンジェルエクササイズ+背骨へのアプローチ
- 前庭迷路反射⇒ミートボール、スーパンマンエクササイズ+頸椎へのアプローチ
筋肉のアンバランス/関節の可動制限
長期的に体の使い方が偏る、過去のケガなどによって筋肉のアンバランスおよび関節の可動制限がみられます。
カイロプラクティックアジャストメント、筋伸長テクニックなど筋骨格系へのアプローチも行います。
呼吸エクササイズ
日常的に口呼吸、胸郭が拡張状態で固定されている(背中を丸めることが苦手)など呼吸機能から見直した方が良い人がいます。
呼吸機能は胸郭(肋骨、鎖骨、背骨で構成されるユニット)の施術を行います。
また、必要に応じて顎関節や足底などにもアプローチします。
呼吸エクササイズも行っていくことで、効果的な改善が見込めます。
猫背が気になる人へ
ここまで書いてきた記事の内容は、医学書、研究論文を探せば全て記載されている事実です。
決して、カイロプラクティック心が独自に考え出した理論を述べているワケではありません。
一般的に言われている良い姿勢を長時間できますか?
辛い姿勢を続けたところで疲れやすく、集中力も続きません。
スポーツでも身体をガチガチに緊張させた姿勢は身体を壊し、パフォーマンスが低下します。
姿勢は大切ですが、今までの常識は身体にって良い姿勢とは言えません。
未だに信じられないと感じる人もいるかもしれませんが、少なくともこどもに自分の常識を押し付けるのはやめてください。
医学は常に進化し、今日の常識が明日には非常識になることがあります。
しかし、現時点での姿勢に関する常識は、今まで書いたものが正しいと自信をもって言わさせていただきます。
「姿勢改善してもらったけど身体が辛い」「なかなか姿勢が良くならない」「姿勢を意識しているけど姿勢が変わらない」などのお悩みがある人は、今までの常識に囚われているだけかもしれません。
諦めずに姿勢を改善したい人は、ぜひカイロプラクティック心にご相談ください。
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