発達障害の心の問題も運動が良い理由

脳機能

精神障害(発達障害・うつ・統合失調症など)と小脳

カイロプラクティック心では、発達障害のホームワークとして運動プログラムを指導しています。

情緒不安定、落ち着きの無さ、学習面の遅れ(読み書き、言葉の遅れなど)など身体面の悩み以外に対して運動に効果あるの?と考える人もいるかと思います。

最新の研究では、精神障害のアプローチの1つとして、運動は推奨されるようになりました。

また、運動の協調性、バランス感覚など運動に関与すると考えられてきた小脳が、認知や感情にも重要な役割を果たしている可能性が示唆されています。

これを言い換えれば運動が精神面にも好影響を及ぼすということが理解しやすいのではないでしょうか。

ここでは小脳の機能と精神面について解説しております。

発達障害、精神障害でお悩みの人は、ぜひお読みいただき運動療法を取り入れるキッカケとなれば幸いです。

この記事を書いているのは発達障害に有効なBBIT認定療法士の岡が書いています。

小脳の機能とは

小脳は脳全体に10%程度の体積しかありませんが、脳のニューロン(神経細胞)の半数が存在し、神経経路が小脳を経由することで運動がスムーズに行えます。

そのため、小脳障害では「筋肉の低緊張」「姿勢が維持できない」「協調運動ができない」「動作時の震え」など運動障害が現れます。

小脳の機能は「大脳小脳」「脊髄小脳」「前庭小脳」に分類されます。

大脳小脳

人の大脳小脳は、サルやネコに比べ大きく発達し、発生学的に最も新しいです。

情報をもらう(入力)情報を伝える(出力)先のほとんどが大脳皮質であるため、多くの機能に関わっていますが、主に運動の計画と実行に関与しています。

また、認知機能にも関与している可能性も示唆されてる部分です。

脊髄小脳

小脳の中間部と虫部という部分に、脊髄から体性感覚(触覚、痛覚など)や固有受容器(関節の位置覚、筋紡錘【筋肉】など)の情報が送られています。

また、虫部の部分は視覚、聴覚、前庭覚(平衡感覚や重力など)の情報も受け取っています。

脳幹や大脳皮質を経由して以下のことに関与しています。

  • 体幹や手足の近位筋(肩や股関節周辺の筋肉)のコントロール
  • 膝下、手指のコントロール
  • 眼球運動
  • 姿勢の調整
  • 歩行の調整

前庭小脳

片葉小節葉という部分からなり、魚類にもみられる原始的な部位です。

前庭と視覚から情報を受け取り、脳幹(前庭神経核)に情報を送り、以下のことに関与しています。

  • 平衡感覚
  • 前庭反射
  • 眼球運動

前庭小脳によって頸部の筋肉をコントロールし、頭部と眼球運動の協調運動を行っています。

小脳と大脳辺縁系

大脳辺縁系は大脳皮質の一部です。

そして、感情に関与する領域であり、人の感覚の情報を受け取る視床、および小脳、大脳皮質と関りのある神経経路になります。

小脳虫部は、恐怖学習および記憶メカニズムと関連付けられています。(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25626523/

このように小脳は、感情を司る脳領域とつながりがあることが脳科学で解明されています。

精神障害と小脳の関係性

小脳と感情との関りが示唆されるようになり、それぞれの精神障害と小脳の関係性も研究されるようになりました。

発達障害

小脳は、運動制御と社会的認知に関与する領域である運動皮質と前頭前野に影響を与えます。

前頭前野は、行動の制御、感情の移入、社会的に適切な行動などに影響する部分です。

発達障害はコミュニケーションや社会性における不適切な行動がみられるだけではなく、運動の苦手や姿勢の悪さも見られることが多いのは、このような脳領域の関与があるためと考えられます。

自閉症スペクトラム障害の小脳を観察する研究では、小脳を構成するニューロン層の1つであるプルキンエ細胞の減少がみられたという報告があります。

また、ADHDの小脳を観察する研究では、小脳全体の体積減少、虫部のサイズが小さいことが報告されています。

プルキンエ細胞は入力された情報を抑制する働きがあり、過敏症(触覚、音、光、匂いなど)や運動の苦手につながります。

小脳の虫部は、聴覚、視覚、前庭覚からの情報を受け取るため、上手く情報を処理できないと人の話を聞けない、注意散漫になるなど注意欠陥の特徴がみられることが考えられます。

過敏症がゆえに日常生活でも過剰なストレス(大音量の生活、眩しい光を見続ける生活、不快な匂いの中の生活を想像すれば理解できるかと思います)により、感情が爆発することもあります。

精神疾患

大うつ病の研究では、ADHDと同様に小脳全体の体積減少がみられました。

また、注意力の欠如を示す双極性障害、うつ病にも虫部のサイズが小さいという研究報告があります。

不安障害(パニック障害、社交不安障害など)では、小脳の活動亢進がみられ血圧と心拍の増加と正の関係(心拍、血圧が増えれば小脳の活動も亢進)がみられたそうです。

小脳病変

小脳病変をもつ患者は、気分障害を示すとされています。

また、小脳サイズが小さい、もしくは小脳を損傷した患者は、うつ病、不安障害などの精神病および自閉症スペクトラム障害に関連しています。

さらには感情鈍麻、制御不能な笑い、泣き声、または攻撃性の増加を経験する可能性があると複数の研究で報告されています。

以前は小脳障害は運動の問題だけ現れると考えられてきましたが、臨床的な患者観察によって、感情面にも何らかの症状が現れることが解ってきました。

小脳の可塑性

ここまで解説してきたように心の問題と考えられるような状態(うつ、不安障害、攻撃性の増加、感情の鈍麻など)は、小脳の機能異常も含まれている可能性があります。

では、小脳に異常がみられると回復が不可能なのでしょうか?

結論から言えば、回復可能です。

小脳を含めた脳は、神経可塑性(神経系の変化)が成人を過ぎた段階でも行われることが解っています。

そのため、神経系のリハビリを行うことで脳領域の機能や神経回路を変化させ、医学的にも失われた機能をある程度取り戻すことが可能です。

神経可塑性の観察した以下のような研究もあります。

軽度認知症患者に歩行トレーニングを実施した結果、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、島葉、および小脳にまたがる10のシナプスの増強を示した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28304298/

発達障害の療育、各療法(ブレインジム・リズミックムーブメントなど)をみても運動が主であるため、運動が脳に好影響を与えると考えても不思議ではありません。

精神障害に運動は効果的

イギリスは、精神疾患についての診療ガイドラインが複数発表されており、運動の有効性が示されています。

うつ病、認知症、不安障害・パニック障害等では、運動に、薬物療法と並ぶか、または先立つ初期の治療としての役割が与えられています。また、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、双極性障害、統合失調症では、療養の補助として運動が位置づけられています。

引用元:地域精神保健福祉機構

精神障害と運動の有効性は複数の研究で報告されています。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3567313/)

運動は小脳への影響に限ったことではありませんが、精神障害にみられる認知機能の低下、不安な気持ち、情緒不安定などに効果がみられると言えます。

小脳へのアプローチ法は?

小脳は運動により活性化するため、どのような動きでもある程度の効果はあります。

ただ、先にも解説したとおり小脳には多様な機能があり、とくに弱い機能に対してアプローチすることで神経の可塑性が促されて効果的です。

主な小脳へのアプローチは以下のとおりです。

  • 耳を温める
  • 回転する
  • 眼球運動
  • バランスエクササイズ
  • 頭を回転しながら目標物を見る
  • 関節を動かす
  • 目標物に対して正確な運動を行う

etc

骨格のアライメント修正、視覚の修正も重要

小脳は固有受容器(関節の位置や筋肉の長さなどの情報を送る)、視覚などから情報をもらい、それを基に体の動きを微調整します。

そのため、固有受容器や視覚からの情報にエラーが生じると、小脳から送る情報にもエラーが生じやすいです。

関節の可動域、関節運動を調整し、固有受容器を介して正しい情報が伝わるように骨格を修正することも重要となります。

また、最近ではスマホやデスクワークにより画面を見続ける習慣が増え、視覚の機能も低下しているケースも多いです。

そのため、周辺視、輻輳などビジョントレーニングが有効となり、視力に合わせた眼鏡を活用することも大切です。

療育や各療法では、ここまで小脳に絞ったアプローチはされませんが、カイロプラクティック心が行うBBITは脳を評価し小脳の機能低下がみられる場合は、小脳への刺激として行います。

運動が得意にみえても評価すると小脳が上手く機能していないケースもあり、プロのアスリートでも小脳へのアプローチがケガからの回復やパフォーマンスアップにつながることもあります。

精神面の問題でも運動アプローチは有効となり得る

落ち着きがない、情緒不安定、やる気がでないなど心の問題と思える症状は、心理的なアプローチが必要な人もいるでしょう。

しかし、運動によって心の問題と考えられるような症状が軽減される研究は複数あります。

また、感情と運動に重要な小脳が脳の神経回路をみて深くつながりがあることを考えれば、運動が感情面にも効果的であることが理解しやすいのではないでしょうか。

精神科での服薬、メンタル的なアプローチで効果がみられない人は、運動療法も試してください。

カイロプラクティック心では、脳を評価して機能が低下している領域に絞って、施術、運動指導を行っています。

発達障害についてはこちらもご参考ください。

どのような運動が良いか解らない人は、ご相談ください。

参考文献

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4419550/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7328022/

投稿者プロフィール

カイロプラクティック心
カイロプラクティック心カイロプラクター
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。

病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。

機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。

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