動かない関節とされていた仙腸関節は、腰痛の原因にされることが少ないです。
そのため、本来は仙腸関節障害が原因の腰痛であっても見逃され、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などと診断されることのほうが多いように思います。
しかし、十数年前に仙腸関節の遊びを改善させるAKA療法が博田節夫医師(大阪大学整形外科)により開発されてからは、腰痛の原因を仙腸関節障害として治療する医師も最近では増えてきました。
ただ、100年以上歴史のあるカイロプラクティックは、AKA療法が開発される前から仙腸関節の可動域の検査法、改善させるテクニックがあり仙腸関節障害は腰痛の原因の1つとして考えられています。
仙腸関節障害と診断されたことのない慢性腰痛、仙腸関節障害と診断されたけどなかなか改善されない腰痛をお持ちの人は、続きをぜひお読みください。
カイロプラクテイック心の腰痛の考え方、他との違いなどはこちらをご参考ください
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仙腸関節障害とは?
僅かに動く仙腸関節の位置感覚の異常、または関節の異常運動によって仙腸関節の機能障害がみられます。
病態は、関節の変性及び軟骨の損傷、仙腸関節を安定させている筋肉、腱、靱帯の炎症などにより痛みが発生することが考えられます。
慢性腰痛患者および手術をしても痛みが改善されなかった腰痛患者には、仙腸関節障害があると報告されています。
慢性腰痛患者213名に仙腸関節炎の調査を行った研究では31.7%の仙腸関節の変性、関節炎を有していたことがわかりました。1)また、腰椎固定術を行い3ヶ月後に再発し6ヶ月以上痛みが続いている患者を対象に仙腸関節腔内ブロックを用いた研究では、35%の除痛が得られたと報告されました2)
仙腸関節の解剖
仙腸関節(〇印)は、仙骨と寛骨で形成される関節です。(寛骨は腸骨、恥骨、坐骨にわけることができます)
そして、関節を安定させるために強固な靱帯が周囲を覆っています。
強固な靭帯によって固定されていることが、不動の関節と呼ばれる所以でもありますが、不動の関節であれば強固な靭帯は不要と考えられます。
そのため、仙腸関節の靭帯は、固定するのではなく過剰な動きをさせないよう動的安定の役割があるのではないでしょうか。
仙腸関節の可動性
仙腸関節の可動性についての文献をご紹介します。
Kisslingらの研究では、前屈時(回転2.1~1.7°と並進0.9~0.7mm)後屈時(回転1.8°と並進0.5~0.9mm)片脚立位(回転1.7~2.2°と並進0.7~1.3mm)と報告されています。また、6°の回転と2mmの並進がみられる場合は、病理的学的仙腸関節運動が推定されると記されています。
最新の3D-MRIを用いた研究では、仙腸関節の接地面と寛骨(仙骨を挟む左右の骨)に優位な非対称性がみられ、健常者と腰痛群と比較した場合、優位な相違はみられませんでした。(可動範囲は1.45°~4.19°内でした)
他の文献をみても仙腸関節の可動性は2㎜前後と報告されています。
このことから、仙腸関節は僅かな可動性をもつ関節と言えます。
科学的根拠を示すには可動域の測定方法に課題が残りますが、可動域の大きい関節とは違い靱帯の伸長によって僅かな動きがみられると考えられます。
仙腸関節障害の症状
仙腸関節周辺の痛み(臀部痛)がみられ、なかには下肢症状(脚の痛みやしびれ)を訴える人もいます。
出典:診断のつかない腰痛仙腸関節の痛み 村上栄一 2012
図は仙腸関節障害にみられた、下肢症状の部位を表しています。
主に膝より上の下肢症状ですが、ひざ下にも症状が現れることもあります。
ぎっくり腰の要因としても仙腸関節障害が考えられ、何らかの原因によって仙腸関節が離開するストレスが加わり、筋緊張(筋スパズム)によって強い臀部周辺の痛みを伴い歩くことも苦痛になることがあります。
ぎっくり腰の対処法、改善方法はこちらもご参考ください。
筋スパズムは強い痛みや関節の不安定性があると、その部分を守る反応として脳(中枢神経)からの指令によって発生します。
スポーツ選手では仙腸関節障害側の荷重位で運動機能が低下したり、鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)を引き起こすことがあります。
仙腸関節の診断方法
日本仙腸関節研究会代表幹事の村上栄一医師は、ワンフィンガーテスト(痛みの部位を指1本で指してもらう)で上後腸骨棘(臀部上部辺り)を指せば仙腸関節障害由来の痛みの可能性が高いとしています。
さらに仙腸関節疼痛テストで痛みが誘発され、仙腸関節の治療を行い70%疼痛が改善されれば仙腸関節障害と診断しています。
また、村上医師らが発表した文献の仙腸関節スコアは以下の通りです。
項目 スコア ワンフィンガーテスト 3 鼠径部痛 2 座位での疼痛誘発 1 Newton テスト変法(仙腸関節を圧迫) 1 PSIS圧痛(上後腸骨棘の圧痛) 1 仙結節靱帯圧痛 1 9点満点中4点以上で仙腸関節障害と診断
仙腸関節障害は画像では診断できないため、触診や痛みを誘発するテストによって診断されます。
現在の医療は、画像診断が主流であり、徒手的な検査はあまり行われていないようです。
そのため、画像では鑑別できない仙腸関節障害が見逃されやすい一因でもあります。
仙腸関節障害の病院(西洋学的)治療
①仙腸関節ブロック注射
仙腸関節に局所麻酔剤を注射して、痛みを軽減させます。
②骨盤ベルト
仙腸関節を締めるように巻き、疼痛が軽減されることがあります。
③AKA療法
博田医師が考案した仙腸関節の適合を正していく徒手療法です。
④手術
保存療法(仙腸関節ブロック注射、AKA、骨盤ベルトなど手術以外の治療)を行っても痛みが強くみられる場合は、仙腸関節固定の手術が行われます。
仙腸関節障害の原因は?
仙腸関節は、日々の生活のなかでみられる反復される負荷、直接的な衝撃(打撲、事故など)によって障害が誘発されると考えられます。
動作
- 仙腸関節の起き上がり運動
- 仙腸関節のうなずき運動
出典:カパンティの関節生理学
仙腸関節の動作は図の動きをすると言われています。【左側(青矢印)は腰を丸める動作、右側(赤矢印)は腰を反らせる動作】
さらには、体を捻る動作や横に倒す動作でも動きがみられます。
とくに腰を丸める動きは仙腸関節が離開する方向に動き、この時に強い負荷が仙腸関節にかかると痛めやすいです。
痛めやすい動作例として「腰を丸めたまま重い荷物を持ち上げる」「腰を丸めてこどもを抱っこ」「筋力トレーニング:デッドリフト」などがあります。
また、ゴルフスイング、サッカーやバスケットボールなどにみられる急激な方向転換など、身体を捩じる反復動作も仙腸関節障害を引き起こすことがあります。
外傷
交通事故、コンタクトスポーツなどによる臀部周辺の打撲、尻餅など、仙腸関節に外力が加わりダメージをうけます。
仙腸関節への外傷が記憶にない場合でも、幼少期に高いところから落下して打撲したというような数十年前の外傷が影響することもあります。
手術
腰椎の固定術の手術後も痛みが継続しているケースで、仙腸関節障害がみられた研究報告があります。
筋肉の問題
仙腸関節に付着する大殿筋、ハムストリング、腹筋群などの機能低下は、正常な関節運動ができない一因となり仙腸関節障害を引き起こすことがあります。
バイオメカニクス(運動連鎖)異常
腰椎ー骨盤ー股関節が連動(腰椎・骨盤リズム)する必要があります。
骨盤を上下に挟む腰椎、股関節の可動制限がみられれば、それらの動きをカバーするために骨盤が代わりに過剰な動作を行うことになり、仙腸関節障害を引き起こします。
このような連動性は、腰椎・骨盤リズムだけではなく全身をみる必要があり、人によっては足関節や頸部の問題がみられることもあります。
体の使い方
仙腸関節に負担をかける身体の使い方で仙腸関節を痛めるケースがあり、股関節を上手く使えていないことが多いです。
また、関節の可動制限、モーターコントロール異常(脳からの運動制御エラー)などの問題も絡んでいることがあります。
出産
出産前後は、ホルモンの影響で靱帯が緩み関節が不安定になることから仙腸関節障害のリスクが高まります。
また、出産後は腹筋の機能が低下(とくに下部腹筋)しやすいため、仙腸関節への負担が大きいです。
デスクワーク、長距離運転など長時間の座位姿勢
座位は立位よりも腰への負担が大きいです。
また、長時間座ることで直接坐骨に負担がかかり、さらに左右の重心位置に偏りがみられれば、負担もさらに大きくなってしまいます。
仙腸関節障害を治すために治療をうけるには?
仙腸関節障害は、画像での診断ができないため、どこの病院でも診てもらえるワケではなく、仙腸関節障害の診断のできる病院でなければ治療が受けられません。
病院での治療を希望される方は日本仙腸関節研究会/病院案内ページをご参考ください。
仙腸関節ブロック注射は、炎症がおきている場合は鎮痛効果はみられます。
しかし、仙腸関節障害の原因は色々あり、その原因も改善さないと再び炎症をおこす可能性があります。
AKA療法は日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会の行う試験に合格した指導医・インストラクターのみが臨床標榜できるだけです。
そのため、AKA療法を受けれる医療施設は限られています。
こちらもAKA医学会のホームページを参考に探すしかありません。
ただ、AKAは基本的には自由診療であるため、1回の治療に1万円程度かかるところもあります。
注意)AKA医学会のホームページにも記載されていますが、偽AKAを扱うところも多いようです。
仙腸関節においては医学的な根拠が貧しい点もあり、病院での治療を希望される人でもしっかりと情報収集された方が良いです。
実際に病院での仙腸関節の治療を受けても改善されなかったという相談も受けたことがあり、カイロプラクティック的な仙腸関節へのアプローチや他の原因を解決したことで症状が改善されています。
仙腸関節障害と骨盤矯正は違う?
一般的にみられる整体、カイロプラクティックの骨盤矯正は、残念ながら悪質なものが多いです。
そのため、医師や理学療法士からみると以下のとおり怪しいと思われています。
【(リ)コンディショニングメモ】
#29 「骨盤矯正って何ですか?」 https://t.co/yJOlVVUmUj
— Nishi,PT,CSCS (@PT_Nishi) 2018年7月6日
モラルなき骨盤歪み治療界隈。
産後の骨盤の歪み問題、ここまで歪んだら普通死んじゃうよ〜!! https://t.co/wqFZMGi2kZ
— 桑満おさむ (@kuwamitsuosamu) 2018年7月3日
「骨盤が○cmズレています」「脚が片方短いから骨盤が歪んでいます」など根本的な知識がないところも多いため、他業種からこのようにみられても仕方がないとも言えます。
また、筋スパズムを無理やり緩めると仙腸関節が余計に不安定となり痛みが強まる可能性もありますが、それを知らずに揉んでしまい悪化させるケースもあります。
さらに骨盤矯正と称して動き過ぎている仙腸関節を調整してしまっても悪化させてしまいます。
※適度な圧で筋肉を押すと副交感神経が働きリラックスするため、こわばった筋肉でも一時的に緩みます。
「仙腸関節障害かも?」と思い込んで、安易に近所の骨盤矯正をうけることはおすすめできません。
しっかりと情報収集して確かな技術と知識のある整体、カイロプラクティックのお店であれば、病院治療にも見劣りしない効果があります。
カイロプラクティックの仙腸関節評価
カイロプラクティックにはモーションパルペーション(動的な関節評価)スタティックパルペーション(静的な関節評価)というカイロプラクティック独特の検査法があります。
そして、その検査に基づいて仙腸関節(寛骨、仙骨の変位)を3次元方向に記号化したリスティングで表します。
カイロプラクティック心では、ワンフィンガーテスト、仙腸関節疼痛誘発テスト、圧痛の確認以外にもカイロプラクティック検査で仙腸関節の可動性を評価していきます。
〇寛骨リスティング
- PI
- AS
- EX
- IN
- PI-EX
- PI―IN
- AS―EX
- AS―IN
〇仙骨リスティング
- P‐R
- P‐L
- PI‐R
- PI‐L
- 仙骨は厳密にいえば上下(仙椎)も確認していきます。
これらに加え、寛骨のダウンスリップ、アップスリップ、腸骨、坐骨のインフレア、アウトフレアなどの確認もします。
仙腸関節のズレは、仙骨、寛骨(厳密には腸骨、坐骨)の捩じれパターンが組み合わさるため、数百種類のパターンがあります。
AKA療法、理学療法士のリハビリに比べ、細かく仙腸関節の異常パターンを評価するため、病院の治療や理学療法士のリハビリで改善されなかった仙腸関節障害がカイロプラクティック施術で回復することも少なくありません。
仙腸関節障害でも全身の評価が大切です
仙腸関節障害が起きている現状を確かめるだけであれば、先に書いた仙腸関節スコアで判断できます。
しかし、仙腸関節障害に至る原因を突き止めるためには全身の評価が大切であり、少なくとも股関節、骨盤部、胸郭は1つのユニットと考えて評価する必要があります。
その理由として骨盤に付着する筋肉は股関節、胸郭にも付着し強く影響し合うからです。
また、胸郭、股関節の可動制限がみられれば、代わりに骨盤部が過剰に動こうとするためです。
他にも筋スパズム、大殿筋の機能低下は神経機能も関わるため、モーターコントロール異常、機能神経学などの神経評価も行う必要があります。
このように仙腸関節障害であっても全身を評価し、仙腸関節に負担をかけている原因を追究することで現状の症状が改善させるだけでなく再発予防になります。
カイロプラクティック心の仙腸関節障害の施術
「神経系」「関節」「筋肉」「循環系」「栄養」など施術ごとにいくつかある原因を考えアプローチしていきます。このように多角的な視点から評価、アプローチしていくことで思わぬ原因がみつかります。
仙腸関節障害であればカイロプラクティックアジャストメント、関節運動学アプローチなどが有効となります。
また、仙腸関節障害を、招いた原因さらにその原因を探っていくと、バイオメカニクス(関節の運動連鎖)、内臓起因性、筋筋膜性などがみられることがあります。
施術
- 機能神経検査
- 足関節調整
- 背骨のモーションパルペーション
- ホームケア指導
先にあげた原因にもカイロプラクティック心は対応して施術していきます。
関節障害⇒関節運動学的テクニック、カイロプラクティックアジャストメント
バイオメカニクス異常⇒NKT、
筋筋膜性⇒筋伸張テクニック、ストレイン・カウンターテクニック
内臓起因性⇒内臓マニュピレーション、栄養指導
原始反射⇒機能神経学、神経統合エクササイズ
カイロプラクティック心は、検査を重要視して身体を多角的に評価します。
また、それらの原因に対応できるアプローチ法も習得しておりますのでご安心ください。
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仙腸関節アプローチ
ソフトな施術であり、身体評価に基づき関節を圧迫するようなアプローチとなります。
関節の位置感覚が脳にフィードバックされることで、筋緊張も適切な状態となり、結果として筋肉の張り感も改善されていきます。
また、ケースによってはアクティベーターと呼ばれる器具を利用して仙腸関節を調整し、高齢者からこどもまでソフトで安全な施術を提供しております。
当然ですが、評価によっては仙腸関節以外の関節へのアプローチも行い、症状が改善するようサポートします。
筋肉へのアプローチ
腰痛が慢性化してると、骨盤周辺の筋肉の機能も異常がみられることが多いです。
また、筋肉の機能異常によって仙腸関節の門外が生じているケースもあります。
そのため、仙腸関節に付着する筋肉の触診および筋力テストによって、問題となる筋肉を評価しアプローチしていきます。
筋肉の伸長性に問題がみられれば、ストレッチ、ARTなど筋肉の伸長性を取り戻していきます。
また、筋力の弱化がみられれば、筋力が回復するよう他の筋肉との協調運動、筋紡錘や腱紡錘などの固有受容器などへのアプローチを行います。
内臓マニュピレーション
カイロプラクティックの考えの1つとして、内臓と筋肉は相互作用しています。
そのため、筋肉の機能低下が内臓に起因するケースにおいては、内臓マニュピレーションが有効です。
また、腰痛がみられるケースにおいて便秘や下痢などの消化器症状がみられる方も多く、そのような場合でも内臓マニュピレーションによって症状が軽減されることがあります。
内臓マニュピレーションはソフトなテクニックです。
仙腸関節を安定させる運動
仙腸関節を安定させるために運動も有効となります。
また、下肢および胸郭と連動して動かせるようになることで、再発リスクを減らすことができます。
まずは筋機能の低下および過活動のバランスを改善するためにストレッチおよびエクササイズで正常な筋機能を保てるようにすることが重要です。
その後、胸郭と仙腸関節の連動性を高める呼吸エクササイズ、下部腹筋エクササイズ、歩行エクササイズなど一人ひとりの症状や生活背景にあわせたオリジナルのエクササイズを組合せていきます。
仙腸関節障害はカイロプラクティック心にお任せ
仙腸関節障害は、カイロプラクティック心にお任せください。
カイロプラクティック心は、安全なカイロプラクティック教育を受けた証として第一種認定カイロプラクターの資格を保持しています。
また、施術歴15年以上の経験を活かして、その人に合わせた施術方法でサポートいたします。
仙腸関節障害、なかなか改善されない腰痛でお悩みの方は、カイロプラクティックにご相談ください。
投稿者プロフィール

- カイロプラクター
-
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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