持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)は、2017年に正式な診断名とされた新しい概念のめまいです。
また、診断を確定できる検査がなく、問診によって診断され、治療方法も確立されていません。
このようなことから、現在でも不定愁訴(病院では原因の解らない症状)でみられるめまいと判断されることもあり、悩まれている人も少なくありません。
PPPDは視覚や頭位、姿勢の影響によってめまいが増悪するとされるため、脳の機能に注目した研究が複数あります。
カイロプラクテイック心は、脳機能の評価および神経可塑性を利用した脳機能向上を目的としたアプローチを行い、不定愁訴でみられるめまいも対応しています。
そのため、持続性知覚性姿勢誘発めまいでお悩みの方でも、お役に立てる可能性があります。
ここでは、持続性知覚性姿勢誘発めまいについて詳しく解説しています。
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持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)について
持続性知覚性姿勢誘発性めまい(Persistent Postural-Perceptual Dizziness:PPPD)は、2017年にBarany学会(めまいの国際学会)で慢性めまいの原因として定義された新しいめまいの概念です。
器質的な問題がないため(病院での検査で異常がみられない)機能性疾患の概念が取り入れられています。
異常が見当たらない体の不調であるため、原因不明とされることも多く、なかには自律神経失調症、精神的な問題などと判断されているケースもあるかと思います。
そのため、「過去に原因不明のめまい」と診断されていた人は、PPPDであった可能性があると言われています。
また、めまいを訴える人のなかでPPPDは2番目に多い診断(1番目は良性発作性めまい)という研究報告もあります(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32300888/)
このようなことから、めまいを感じている人にとってはPPPDは、珍しい疾患ではありません。
症状
PPPDは、以下の症状がみられます。
- 浮遊感(フワフワした感じ、雲の上を歩く感じと表現されることが多い)
- 不安定感
- 非回転性のめまい
不安定感、非回転性のめまいは、自分自身が揺れている(上下もしくは揺れ動く感覚)外の景色が揺れている感覚などがみられます。
これらの症状が3ヶ月以上、毎日存在します。
また、以下の行動によってめまいが悪化しやすくなります。
- 立位姿勢(立ったり、歩いたりしたとき)
- 自分から動いたり、乗り物が動いたりしたとき(エレベーター、エスカレーター、バス、電車、人混みで押されるなど)
- 動いているもの、複雑な視覚パターンをみたとき(人混みで動いてい人をみる、陳列棚の間を歩く、スクロール画面を見るなど)
原因
PPPDの明確な原因は特定されていませんが、いくつかの問題が考えられています。
約70%は前庭系の病状(前庭神経炎、BPPV、他の前庭系の問題)が引き金となり、さらに不安を感じやすい人が進行しやすいとされています。
神経症
ストレスを起因とした心因性の機能障害は、神経症と呼ばれます。
そのため、ストレス(心因的)によって、体の不調をきたす傾向のある人のPPPDは多いという研究報告があります。
また、神経症にもいくつか種類があり、とくに不安を感じやすい人にPPPDは多くみられやすいです。
過去のめまい疾患
急性前庭神経炎、良性発作性頭位めまい(BPPV)などのめまいに対して強い不安を感じた人は、PPPDのような慢性的なめまいを誘発されやすいことが研究で示唆されています。
また、過去のめまいによって、中枢神経系のネットワークで構成される平衡感覚の異常が起因となっている可能性もあります。
姿勢制御
PPPDの人は、姿勢制御障害がみられる研究報告があります。
姿勢は中枢神経系(主に視覚、体性感覚、前庭などの感覚を大脳皮質で処理し、小脳によって微調整される)によって、適切にコントロール(姿勢制御)されています。
また、姿勢制御に重要な前庭系を起因とした頭痛(前庭性頭痛)を発症していることも多いPPPDでは、姿勢制御の問題がみられることは不思議ではありません。
視覚依存
PPPDの人は、視覚依存であることが研究で示唆されています。
姿勢制御も含め、人はバランスをとるために視覚、前庭系、固有受容器などの感覚をインプットし、大脳皮質が処理し、適切な姿勢や運動をアウトプットしています。
視覚だけに依存しているということは、極端に言えば視覚を遮られた状態では姿勢を保つことや運動を行うことが不可能となります。
解りやすい具体例としては、眼を開けて片足立ちが可能でも目を閉じると全くできない(数秒程度)ケースは、視覚に依存している可能性があります。
視覚に日常的に依存することにより、眼に入るものを中心にバランスをとろうとするため、物が動いたり、自分が動く(バスや電車で周りの景色が動く)ことで、自身の姿勢制御や運動制御に問題が生じます。
それが、結果としてめまい症状を引き起こすことが考えられます。
また、視覚の情報が追いつかない(早いスクロール、不意の動作:誰かに押される、車の急発進など)ケースでも同様です。
診断基準
PPPDは慢性めまいの1つであるため、先述した症状が3ヶ月以上継続していることが診断基準の1つとなります。
また、顕著な苦痛、機能障害を引き起こし、他の疾患や障害ではうまく説明できないことも診断基準に記載されています。
治療方針を決定するためには、以下の疾患との鑑別も重要です。(なかには併存するケースもあります)
- 急性のめまい(3ヶ月未満の持続)
- 慢性的な不安症(広場恐怖症、社交恐怖症、強迫性障害、PTSDなど)
- うつ
- 脳震盪後症候群
- 自律神経障害
- 前庭障害
- 慢性的な神経障害(長期的なパーキンソン病、小脳変性など)
- 両側性末梢神経障害および起立性振戦
- マルデデバークメント症候群
- 薬の副作用
- 歩行障害
病院での一般的な治療
先述しましたが、確立された治療方法はありません。
急性のめまいで処方される抗めまい薬、ビタミン剤、血流改善剤はあまり効果がみられないそうです。
不安が強い人に症状があらわれやすいため、抗不安薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:SSRI)処方されます。
専門的なリハビリ施設がある場合は、前庭系リハビリステーション、認知行動療法なども行われます。
カイロプラクテイック心のPPPDへのアプローチ
カイロプラクテイック心は、以前から不定愁訴のめまいをみることが多いです。
その理由として、機能神経学的な(脳機能を評価し、神経可塑性を利用した神経系の活性化)アプローチを不定愁訴のめまいでは効果がみられることがあるからです。
神経可塑性についてはこちらをご参考ください。
もちろん、PPPDは心理的な問題(不安を感じやすい人)もあるため、心理的なアプローチが有効なケースもあるかと思います。
ただ、心理面のサポートが必要な人でも、視覚依存や姿勢制御の問題などがみられれば、カイロプラクテイック心のサポートは役立つと考えています。
めまいのアプローチ方法はこちらもご参考ください
姿勢制御、視覚依存の対応
人は2本足で立つため、常にバランスを正常に保つ必要があります。
そのためには視覚、体性感覚、前庭系の感覚情報を脳が適切に処理し、筋肉や関節に指令を伝えることで環境に適応した姿勢や動きが実現可能となります。
PPPDの原因と考えられる前庭障害、視覚依存は、大きく分ければ情報源の問題(眼球運動、耳石や三半規管など)、脳の処理の問題が考えられます。
また、視覚依存であっても視覚機能(眼球運動、周辺視野など)も十分ではないことがほとんどです。
このようなことから、視覚機能も含めた感覚器からの情報インプット、それらを適切に脳が処理してアプトプットできるようにしていきことが必要となります。
これらの神経機能を向上させるためには、カイロプラクティックの施術だけでは不十分です。
そのため、その人の状態に合わせた、感覚エクササイズを提供しています。
PPPDでは、立位のエクササイズが難しいこともあり、寝た状態でもできる眼球運動、簡単なエクササイズなど個人に合わせて行います。
詳しくは感覚エクササイズをご参考ください。
栄養サポート
神経機能を回復させるためにも、神経の材料となる栄養素が足りていないと神経ネットワークも活動的にはなりにくいです。
また、最近では腸内環境の悪化が脳に悪影響を与える研究報告が多くあり、人によっては腸内環境を改善させるための栄養サポートが必要となります。
とくにPPPDのような病院では原因のわからない症状は、栄養サポートが重要となるケースは少なくありません。
カイロプラクティック施術の重要性
PPPDの人は、前庭系の機能低下やめまいの主訴によって頭部を動かさない生活を継続しています。
そのため、頸部の可動域が低下していることが多いです。
頸部の可動域低下は、頸部の体性感覚(とくに固有受容器)前庭系の活性化が難しくなります。
このようなことから、カイロプラクティックのアプローチにより頸部の可動域を改善させることは有効です。
また、カイロプラクティックアプローチは、能動的に固有受容器への刺激となり、さらには固有受容器の情報を調整する役割のある小脳への刺激となるため、脳機能改善という面でも有効と考えられます。
なかには、頸椎性の影響を受けている可能性もあり、その場合はカイロプラクティックの施術がとても有効です。
ストレスを起因とする身体症状は、交感神経が過剰に興奮しているため、迷走神経アプローチ、筋緊張の緩和によるリラックスなども効果があります。
回復までの期間は?
結論から言えば、個人差もあり人それぞれです。
年齢、栄養状況、生活習慣などによって、神経機能が回復する期間に違いがあると考えられます。
例えば、遊園地のコーヒーカップに乗り、早く回転しても平気な人と気分を悪くする人がいるかと思います。
神経機能低下でめまいを起こしている人は後者であり、健康な人では平気な運動でも、めまいを起こしている人にとっては症状が悪化したり、気分が悪くなることがあります。
そのため、身体評価でめまいが強まる感覚があったり、気分が悪い感覚があったりする動きは避けて、違う神経機能をまず高め、栄養状況が悪ければ食生活の見直しを優先します。
年齢も若く食事も十分に摂れている場合は、6週程度(セルフケア、施術、エクササイズなど)で何らかの効果が現れる可能性が高いです。
日常的に食生活が悪く、めまいの期間も長期化していると食生活および生活習慣の改善も含まれてくるため、3ヶ月を1クールと考えて、コツコツと出来ることを増やしていくことが大事になります。
PPPDでお悩みの方へ
PPPDは、精神的な問題にされやすい傾向もあります。
もちろん、精神的な影響があることは研究で報告されていますが、全てを精神的な問題にしてしまうと姿勢制御や視覚依存の問題を見逃してしまう可能性もあります。
カイロプラクテイック心は、精神的な問題以外に原因がないか多角的な視点で体を評価し、対応させていただきます。
PPPDから解放されて、仕事や趣味を楽しみたい方は、一度ご相談ください。
参考文献
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9249299/
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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