腰椎分離症は、10代(小学生・中学生・高校生)で多くみられる腰痛です。
病院では「部活をやめなさい」「スポーツの中止」を宣告されることもありますが、一流アスリートの中にも腰椎分離症はいるため、スポーツを辞める必要は一切ありません。
カイロプラクティック心代表である私も中学生のときに腰椎分離症(腰椎5番の両側)を発症し、部活を辞めることを宣告されました。
しかし、県内の強豪校で中学、高校とバドミントンを続け、中学、社会人では全国大会も経験しています。
また、社会人でもフルマラソン完走、各種スポーツを楽しみ、ウエイトトレーニングも40代手前で130㎏でベルト無しのフルスクワットも可能なほど腰に問題はありません。
このような経験から、腰痛分離症でスポーツを辞めることはあり得ないと考えています。
ここでは、腰椎分離症について詳しく書いていきますので、競技復帰を考えている人はぜひ続きをお読みください。
カイロプラクテイック心のスポーツ障害についての考え方、アプローチ方法はこちらもご参考ください。
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腰椎分離症について
腰椎分離症の原因
以前は先天的と考えられていた腰椎分離症は、ほとんどがオーバーユース(使いすぎ:反復した同じ動きを繰り返す)が原因とされています。
腰椎分離症の発生要因としては、過剰な腰部の伸展動作(腰を反らせる)に回旋が加わる動きを繰り返すことで腰椎の椎間関節が何度も衝突することです。
このような発生原因から、腰部の伸展動作の多い競技(体操、新体操など)、投球動作や回旋動作の多い競技(野球、テニス、円盤投げやハンマー投げなどの投てき競技など)のスポーツ選手に腰椎分離症は多くみられます。
腰椎分離症は無症状で成人を迎えることもあり、腰椎の分離が痛みの原因とは言い切れません。
痛みの原因としては、関節の運動障害による関節包への刺激、筋肉のアンバランスによる循環不良が考えられます。
腰椎分離症の症状
- 片側の腰背部、臀部の痛み
- 腰を反らす動作で痛みが悪化
- 回旋と伸展を組み合わせた動きで局所(ピンポイント)の痛みがみられる
- 腰椎分離症の患部に圧痛が認められる
- 下肢の痛みやしびれ感を伴うこともあるが10代では腰痛が主訴となり下肢痛は少ない
腰椎分離症の診断方法
レントゲン撮影(斜位45度)で腰椎の分離が確認でき、スコッチテリアサイン(犬の首輪)と呼ばれることがあります。
ただ、初期の段階ではレントゲン診断で鑑別できないこともあり、CT・MRIなどの画像診断で鑑別できます。
また、CTやMRIでは腰椎分離症の進行程度(初期、進行期、終末期)がわかります。
腰椎分離症の小学生 高校生の違い
腰椎分離症の進行程度によって、治療方針が異なります。
初期段階で発見されることの多い小学生は、分離した骨の癒合を目指した治療方針がとられることが多いです。
終末期で発見されることの多い高校生は、癒合自体が難しいということもあり、リハビリ(運動療法)を主としていくことが多いです。
腰椎分離症の病院(西洋学的)治療
進行程度によって治療方針が変わり、基本的には手術以外の保存療法が選択されます。
6~12歳でみられる腰椎分離症は進行するとすべり症になるとも言われているため、骨の癒合を目指す治療を選択するケースが多いです。
コルセット(保護装具)
初期、進行期であれば、骨癒合が期待できるため、コルセットで固定(2~3ヶ月)して動きを制限させます。
レントゲンで腰椎分離症が確認できる場合は、終末期であることが多く骨の癒合は期待できません。
服薬
痛みが強い場合は、鎮痛剤が処方されます。
運動療法
一般的にはハムストリング(太もも裏)大腿四頭筋(太もも前)大殿筋のストレッチ、腹筋群の筋力トレーニングを行います。
手術
保存療法で効果がみられない場合は「分離部修復術」「分離部除圧術」「脊椎椎間固定術」などの手術を行います。
ただ、手術を行うことは稀です。
手術を行うことは少ないと思いますが、手術によって回復が期待できるかは以下の文献から考えると疑問です。
■18~50歳までの腰痛患者807名と健常者936名を対象に、腰部X線撮影で脊椎分離症の検出率を比較した結果、腰痛患者群は9.2%、健常者群は9.7%だった。脊椎分離症が腰下肢痛の原因と考えるのは非論理的。
成人の脊椎(腰椎)分離症は、腰下肢痛の原因ではないという世界的コンセンサスがあります。
成人は分離に問題がなく、少年期だけ分離による症状が起こりえるというのはとても不自然です。
少年期の初期段階では、骨の癒合も可能ですがこの論文をみる限りでは骨の癒合=痛みの消失とは考え難いです。
腰椎分離症の手術を提案された場合は、少なくともセカンドピニオンを利用して複数の医師の診断をうけたほうがよいでしょう。
腰椎分離症は治らない?
分離した骨が癒合するかどうかで治ったかを評価するのであれば、終末期は癒合の期待が少なく治らないと言えます。
ただ、先の文献でも書いてあるように腰椎分離症が腰下肢痛の原因にならないとされています。
痛みで評価するのであれば、腰椎分離症と診断された腰下肢痛であっても他の原因で痛みが発生している可能性もあるため、治る可能性はあると言えるのではないでしょうか?
では、腰椎分離症と診断された腰下肢痛の原因について書いていきます。
関節運動の異常
全身の関節がバランスよく動くことが理想です。
しかし、腰部の骨が代償的に過剰に動き、関節同士が衝突する異常な運動により、その周辺の関節包も刺激され痛みが発生します。
腰椎分離症で多くみられるのは「股関節が固い」「股関節がうまく使えない」「胸郭(肋骨付近」が固い」など腰椎周辺の関節に可動域制限がみられることが多いです。
仮に骨を癒合する治療を選択したとしてもこれらの問題が解消されていなければ、腰椎の分離がみられないとしても腰の痛みは再発しやすいと考えられます。
筋肉のアンバランス
出典:プロメテウス解剖学アトラス
大腰筋は、腰椎に付着するため過剰な筋収縮は腰椎の前弯を強めます(腰を反らした状態になる)結果として腰部に伸展位を作ってしまい腰痛になります。
また、片側の大腰筋の緊張は、腰椎の回旋も加わるため、より痛めやすくなります。
大腰筋が過剰に緊張する原因としては、大殿筋、腹筋群の機能低下、間違った体幹トレーニング、競技特性の問題などが考えられます。
日本のスポーツ現場では、メディカル知識、トレーニング知識の不足により、間違ったトレーニング方法、過剰な練習量など指導の問題も大きいと考えられます。
原始反射(対称性緊張性頸反射:STNR)
対称性緊張性頸反射(STNR)は原始反射の1つであり、姿勢反射にも分類されます。
STNRは、頭部を伸展 (上を向く方向 )すると両上肢は伸展し下肢は屈曲、反対に屈曲 (下を向く方向)すると両上肢は屈曲し両下肢は伸展する反射です。
大人になると原始反射は大脳皮質でコントロールされていますが、成長過程で何らかの原因で原始反射が強く現れる状態が保持されていたり、ストレス、疲労、大脳の機能低下がみられたりするとSTNRが現れたとき反射的に腰部を反らす動きが強まります。
これが繰り返されると腰椎分離症のような腰を反らした痛みが誘発されやすいです。
この状態で筋肉の緊張を和らげたり、薬で痛みを抑えても反射が根本原因のため、過剰な腰椎伸展による痛みは再発しやすいです。
腰椎分離症は運動療法が有効
基本的には安静よりも、運動療法を早期に取り入れたほうが良いです。
ただ、少し動くだけでも強い痛みがある場合は運動を休止して身体の状態をみながら徐々に運動を開始していくことが望ましいです。
また、運動は競技スポーツではなく腰椎の伸展、回旋を行わないリハビリプログラムを実施し、日常でも動作痛や圧痛などを指標に数週間かけて競技にスポーツに復帰させていきます。
腰椎分離症とすべり症を対象に腹横筋、多裂筋、体幹屈曲エクササイズなどを行った以下の研究があります。
治療のみを行ったケースと運動プログラムを実施したケースを比較すると痛みや機能の改善に差がみられ30ヶ月も持続した。
このような研究からリハビリ的な運動療法は取り入れたほうが、再発予防にもなります。
どのような運動が良いかは、一人ひとり腰椎分離症になった原因が違うため、それに合わせたプログラムを組むことが大切です。
そのため、自己流では行わず、専門家の指導してもらうことが望ましいです。
腰椎分離症でやってはいけないこと
腰椎分離症の改善には運動療法が有効です。
しかし、痛みが強く現れているときは痛みのある動作は避けましょう。
また、伸展(腰を反らせる)回旋(腰を捻じる)の動作は、リハビリの最終段階で行うため、初期の段階では辞めておくことが無難です。
腰椎分離症の再発予防も含めた治療が大切
痛みを取り除くだけであれば、痛み止め薬の服用、痛みが治まるまでの安静でも良いですが、「なぜ腰椎分離症になったのか?」という大事な部分を解決しておかないと腰痛が再発します。
また、年代や症状の進行程度によって、治療の選択肢が変わってきます。
6~12歳の腰椎分離症は、すべり症に進行するとも言われているため、日常生活で痛みが気にならなくなっても、コルセット固定による骨癒合を優先的にするのも1つの選択肢です。
ただ、すべり症自体がどこまで腰痛や下肢症状に関わるかは不明な点も多いです。
また、低年齢ほど原始反射の問題も大きいため、コルセット固定だけではなく原始反射の問題やスポーツを始めているのであれば、練習量、フォームの習得などの見直しが再発予防につながります。
中学生も分離した腰椎の癒合が可能な年代でもあり、早期に発見できれば痛みが治まっていてもコルセット固定が治療の選択肢の1つになります。
ただ、成長が早く終末期の状態であれば、速やかに運動療法を行ったほうが良いです。
高校生以上になると中学生以下に比べれば、骨癒合の可能性は低くなります。
そのため、速やかに運動療法に移行していくことも治療の1つになります。
成人になれば、腰椎分離症と痛みの関係性は低く、先にあげた腰椎分離症の原因の解消および、他の痛みの問題がないかを調べ、解消したほうが良いです。
成人になれば骨の分離が痛みの原因とは言えないことを考えれば、早期にスポーツ競技復帰するのであれば、痛みのコントロール及び運動プログラムを取り入れていくべきと考えます。そして、オーバーユースの原因(練習量、練習の質など外的な要因、筋機能の低下、原始反射の問題など内的な要因)を改善していくことが再発予防にもなります。
カイロプラクティック心の腰椎分離症のアプローチ
腰椎分離症は運動療法を行うにしても、筋肉の機能が低下した状態では効果があまり得られません。
また、関節障害がある状態では回復にも時間がかかります。
カイロプラクティック心はこのような問題に対して、原始反射、機能神経学、NKTなど神経機能の評価を含め検査を重視し、原因に対してアプローチしていきます。
カイロプラクティック心では、色々な視点から身体をチェックするため、今まで改善されなかった症状も改善することも少なくありません。
施術
施術では関節可動域の低下、筋緊張による筋肉のアンバランスの改善など筋骨格系の原因を改善させ、動いたときの痛みを緩和させていきます。
また、腰部を含む脊柱はカップリングモーションと呼ばれる複合的な運動(例:体を捻じるときは伸展、側屈、回旋の複合運動)に原因があるケースはとくにカイロプラクティックが有効です。
身体のチェックから突き止めた原因は、主に以下のアプローチを行います。
関節障害、筋骨格系の問題⇒関節運動学的テクニック、カイロプラクティックアジャストメント
バイオメカニクス異常、モータコントロール異常⇒NKT、
筋筋膜性⇒筋伸張テクニック、ストレイン・カウンターテクニック
内臓起因性⇒内臓マニュピレーション、栄養指導
カイロプラクティック心は施術歴15年の施術者が責任をもって一人で担当させていただきます。
また、安心して施術を受けていただけるよう現在も文献を読んだり、セミナー、勉強会にも出向いて知識と技術向上に努めております。
腰痛関連はこちらもご参考ください。
エクササイズ
腰椎分離症は、腰椎が過剰な伸展および股関節の可動域制限が起因していることが考えられ、施術によって解決されることもあります。
しかし、体の使い方のクセとして腰部を過剰に緊張させる、股関節の使い方が上手くできないなどがあると再発リスクは高いままです。
例えば、レッグレイズ(下肢を挙げるトレーニング)では腰を反らないことが重要ですが、ほとんどのケースで意識させても腰部を反らせてしまいます。
このことから、本来は腰部に力を入れる必要のない動作でもスポーツ競技中に腰を反らすため、結果として再発しやすくなります。
感覚エクササイズ
腰部が過剰に反ってしまう原因の1つに反射によって、腰椎を反ってしまうことです。
他には中枢神経系を介した姿勢や運動コントロールができず、常に腰部を反らした状態となっています。
そのため、反射をコントロールするエクササイズ、姿勢や運動をコントロールするエクササイズなどを行います。
- 背骨の分節運動
- リラクゼーションエクササイズ
- 姿勢制御エクササイズ
- 認知を加えたダブルタスクトレーニング
体の状態に合わせたトレーニングを行っていきます。
腰椎分離症でも早くスポーツ競技に復帰できる
腰の骨が疲労骨折をしている病態のため、スポーツを続けられるか心配される人は多いです。
しかし、最初にも書きましたがカイロプラクティック心代表の私は、スポーツを続けてこられました。
また、現状の腰をCTで撮影すれば、おそらく腰椎分離症はみられます。
このような経験から、腰椎分離症は必ずスポーツ競技に復帰できます。
腰椎の分離を癒合させてから競技復帰するか、それとも分離したまま早期競技復帰するべきかは賛否両論あるかと思いますが、競技復帰を目指しているのであれば、全力でサポートさせていただきます。
1日でも早く全力でスポーツをしたい、再発予防も含めて身体を良くしたい人は、ぜひカイロプラクティック心にご相談ください。
施術だけでなく、動作のアドバイス、エクササイズ指導なども併せて全力でサポートさせていただきます。
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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