腰椎椎間板ヘルニアの研究は進み、最近ではヘルニア自体が腰痛や下肢のしびれ、痛みの原因ではないことがわかってきました。
日本腰痛学会の菊池臣一氏は、以下の通り述べています。
腰痛を診る場合には、脳を含めて身体全体、神経全体として腰痛をとらえる必要がある
腰椎椎間板ヘルニアがレントゲン、MRIで見つかったとしても腰痛や下肢のしびれの原因とは言い切れないため、脳を含め全身をみて評価して何が原因かを考える必要があります。
また、研究論文でも腰に痛みを感じていない人に腰椎椎間板ヘルニアがみつかったという報告があります。
このようなことから、腰椎椎間板ヘルニアがあったとしても、それが腰痛や坐骨神経痛の原因とは限らないことが、現代の医学的な常識です。
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腰椎椎間板ヘルニアが腰痛の原因ではない根拠
20~80歳までの腰痛未経験者67名を対象にMRIで腰部椎間板を分析した結果、21~36%に椎間板ヘルニア、50~79%に椎間板膨隆、34~93%に椎間板変性が確認されたことから、手術の選択は慎重にすべきと結論づけられています。
5つの異なる職種の男性149名を対象に1年間にわたってMRIで腰部を観察した結果、椎間板変性と腰痛との関連はなく、職種による異常検出率にも差はなかったそうです。
また、調査期間中に13名が腰痛を発症しましたが、MRI所見に変化はないことも判明いています。
MRIを使用した腰椎椎間板ヘルニアの研究論文では、腰痛のない人にもヘルニアが確認されており、さらには腰痛を発症したとしても椎間板の変化がみられなかったことが証明されています。
椎間板ヘルニア=腰痛、脚のしびれ、痛みではありません
画像診断は、骨折、腫瘍などを発見するために大切な診断です。
しかし、このような研究からわかる通り画像診断だけで痛みの原因を突き止めることは困難です。
このようなことからも画像で腰椎椎間板ヘルニアが見つかったとしても実際の痛みやしびれとはあまり関係性がないケースも多いと考えられます。
腰椎椎間板ヘルニアの手術をしたい人へ
最近の研究成果から、腰椎椎間板ヘルニアで手術をされることは減ったようです。
カイロプラクティック心にも手術を受けた人、相談した人もおられますが、強く手術を勧める医師は聞かなくなりました。
しかし、手術で楽になるケースもあり、「すぐにでも何とかしたい」という人には手術も1つの選択肢になります。
現在、保険が適用される主な椎間板ヘルニア手術は以下のとおりです。
- 椎弓切除術
- 固定術
- 「直下視」「顕微鏡下」と言われるLOVE法(顕微鏡視下椎間板ヘルニア切除術)
- MED法(内視鏡下腰椎椎間板摘出術)
- PED法(経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術)
- PN法(経皮的髄核摘出術)
これらは保険が適用され、術式や入院日数などによって費用は異なりますが10~40万円くらいです。
保険が適用されない主な手術は、以下のとおりです。
- enSpire(経皮的椎間板粉砕・切除術)
- PLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)
- PELD(経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術)
- SELD(仙骨内鏡視下腰椎ヘルニア摘出術)
保険が適用されないため40~130万円と費用が高くなりますが、その代わりに入院日数が少なく、傷口が目立ちません。
参考サイト⇒あいちせぼね病院/手術費用 岩井整形外科内科病院/椎間板ヘルニアの手術について
保険が適用される場合は、高額医療費請求制度があるため、どの手術でも同じような費用になります。
保険が適用されない手術は、短期の入院、身体への負担が少ないなどのメリットもありますが、どこの病院でも受けられる手術ではありません。
手術は効果的?
先にお話ししたとおり、椎間板ヘルニアが痛みやしびれの原因ではないことが多いです。
しかし、手術で回復した事実もあります。
「仕事が忙しくてすぐにでも何とかしたい」「数年先よりも今が楽になればよい」というようなお考えの人は、手術も1つの選択肢です。
手術に関する研究論文は以下のとおりです。
椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を厳密に検討した結果、椎間板ヘルニアの手術成績は短期的に見れば良好だが長期的に見れば保存療法とほとんど変わりがなく、心理社会的因子の影響を強く受けていることが確認されました。
この研究論文のとおり、短期的(術後)には痛みやしびれが改善しますが、長期的〈数年先)にみれば手術をしていなくても症状に変わりなく症状は心理面の影響が大きいことがわかっています。
ただ、保険が適用されていない手術は、最新の治療であり今後の研究により術後の経過が変わる可能性はあります。
長期的にみるとヘルニアの再発率も多数報告されており、腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドラインには以下のように書かれています。
ヘルニア摘出術後の再手術率は5年後で4〜15%である.
同一椎間での再手術例を再発ヘルニアとすると,再発率は術後1年で約1%5年で約5%である.
どうしても手術で痛みを改善させたい方は、長期的にみたリスクも知っておいたほうが良いのではないでしょうか。
ただし、排泄障害、運動麻痺がみられる場合は、手術も含め専門医に診てもらう必要があるため、おしっこがでない、便をもらす、足の感覚が全くないない(痛みはないが動かない)などは至急、病院を受診してください。
腰椎椎間板ヘルニアはリハビリ、セルフケアが有効
手術後に痛みが楽になっても、再発予防のリハビリ、セルフケアは必要です。
そもそも、腰に痛みが発生したということは日常的に腰への負担が大きくなっているからです。
負担のない生活で突然、腰が痛くはなりません。
自覚がなかったとしても何らかの形で腰への負担が大きいため、腰椎椎間板ヘルニアと診断されるような腰痛になってしまいます。
腰への負担を大きくする原因
とくに思い当たる原因がなく腰が痛くなるケースは、生活習慣の中に腰痛の原因が隠されていることが多いです。
姿勢
背骨の生理的湾曲(S字状に湾曲)は椎間板や関節への負担を分散させる役割があります。
そのため、腰への負担が大きくなる姿勢が続くと痛めやすいです。
身体の使い方
重い荷物を持つ、こどもを抱っこする、仕事や趣味で捻る動作が多いなど日常で何気なく行っている動きが腰に負担をかけていることが多いです。
また、身体の使い方が悪いため、さらに腰への負担が大きくなっています。
食生活
水分不足は血液循環不良もおこしやすいく、筋肉や神経などに十分な栄養がいきわたりません。
また、椎間板のほとんどが水分であることから、水分不足は椎間板へダメージを大きくします。
暴飲暴食などで内臓に負担をかけることも筋肉の活動に影響を与えます(一流アスリートが食事管理を徹底していることを考えてもらえば理解できるかと思います)
便秘、下痢、肥満、甘いものや辛いもの食べ過ぎなど腸内環境を悪化させると炎症も現れるため、結果として腰痛にキッカケになることも少なくありません。
デスクワーク(長時間座っている)/運動不足
立っているよりも座っているほうが腰への負担が大きいです。
また、運動不足は筋力低下、循環不良などにもなるため、結果として腰を痛めやすくなります。
リハビリで日常生活に支障がでない身体を作り、痛みが治まってもセルフケアで身体を労わることが腰痛の改善と再発予防につながります。
主なリハビリ・セルフケア(ストレッチ&エクササイズ)
- ウィリアムズ体操(背中を丸める運動)
- マッケンジー体操(背中を反る運動)
- ハムストリングのストレッチ
- 腸腰筋のストレッチ
- 腹筋群のエクササイズ
一般の方が自己流で行うと方法が間違っていたり、腰の状態に合っていなかったりすることで余計に悪化させることがあるため、専門家に指導してもらうことをお勧めします。
そのため、ここではリハビリ、セルフケア方法の解説は致しません。
ただ、調べればすぐにわかる内容のため、一人で行う場合は、「痛みがない」動きを心掛けることが大切です。
腰椎椎間板ヘルニアと間違えられるやすい腰痛の原因
腰痛や下肢のしびれ、痛みは腰椎椎間板ヘルニア以外の原因でも発生します。
筋筋膜性
筋肉の問題(スパズム、微小損傷など)により、腰痛や関連痛として下肢に痛みやしびれを誘発します。
問題のある筋肉には、硬結(硬いしこりのようなもの)がみられ、その部分を押すと症状が誘発されます。
病院ではトリガーポイントブロック注射、筋膜リリース注射などが行われます。
※これらの注射は月1回1部位まで保険適用、2部位以上および月2回目以上から自費となるそうです。
詳しくはこちら⇒筋膜性疼痛症候群(MPS)研究会
トリガーポイントについては、カイロプラクティック心のブログにも書いてありますので、ご興味のある方はご参考ください。
筋筋膜性疼痛疼痛症候群(MSP)の原因とされるトリガーポイントとは?/伊勢市カイロプラクティック心
脳(心理的要因)の問題
慢性的な痛み(3ヵ月以上続く痛み)は、脳の影響も大きいことが研究でわかってきました。
腰痛に限らず痛みを認識するシステムは複雑で、組織に問題がなくても痛みを感じてしまう侵害可塑性(脳を含む中枢神経の変化)があります。
病院では認知行動療法(心理療法の1つ)を慢性腰痛患者に治療として取り入れているところもあり、結局「ストレス?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、現時点では最も科学的根拠の示されている療法です。
分かりやすく書籍にもまとめられておりますのでよろしければご参考ください。
侵害可塑性(脳を含む中枢神経の変化)については、以下の動画でわかりやすく解説してあります。
関節障害
多くの研究報告があるのは、仙腸関節障害です。
腰痛、下肢痛においては以下のことが言われています。
仙腸関節障害は腰臀部痛・下肢痛症状を有し、腰痛者の約 10 ~ 30%程度が罹患
慢性腰痛患者213名に仙腸関節炎の調査を行った研究では31.7%の仙腸関節の変性、関節炎を有していたことがわかりました。1)
また、腰椎固定術を行い3ヶ月後に再発し6ヶ月以上痛みが続いている患者を対象に仙腸関節腔内ブロックを用いた研究では、35%の除痛が得られたと報告されました2)
参考文献1)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20391497
参考文献2)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3489225/
これらの研究からわかるように仙腸関節が原因で腰痛や下肢痛、しびれの症状が現れることがあります。
また、腰椎椎間板ヘルニアと診断された方を施術させていただく機会も多くありますが、仙腸関節に限らず腰椎、下肢の関節(膝、足関節など)の関節障害により腰痛、下肢痛、しびれを誘発されているケースも多くみられます。
椎間孔障害
手術をしても治らない腰痛で一番多い原因は、「腰椎椎間孔内病変の見落とし」とする医師もいます。
また、研究報告では、重篤な神経障害をおこしていたのは椎間孔静脈の拡張とされています。
椎間孔は、背骨が作る関節(椎間関節)にできる神経がとおるスペースです。
この椎間孔に障害(何らかの原因による椎間孔の面積の減少)がみられると椎間孔内の組織(静脈血管、神経など)がダメージをうけて下肢の痛みやしびれが生じることがあります。
椎間孔障害がおこる原因として、椎間関節の運動障害(カップリングモーションの逸脱)、交感神経の過剰興奮などが考えられます。
静脈の拡張は、血管の収縮、弛緩をコントロールする自律神経の影響です。
このことからも心理面が腰痛や下肢の痛み、しびれに関連することが理解できます。
手術や痛め止め薬で治らなくても諦めないで
手術は症状の改善も見込まれますが、他の原因であれば症状の改善は見込まれず、生活変容ができなければ再発リスクは高いままです。
痛め止め薬は、急性期(症状発症から3日程度)の痛や炎症を抑える効果があります。
そのため、痛みを慢性化させないためにも痛み止め薬は服用したほうが良いです。
ただ、痛み止め薬は炎症を抑えるものがほとんどで炎症作用が治まっている慢性期には有効とは言えず、副作用もあるため長期間の服用はおすすめできません。
このような治療方法が病院では主流です。
また、牽引療法や物理療法(電気、温熱など)も行われますが、慢性的な症状には効果がみられないことがほとんどです。
どうすればいいの?一生このまま?
このような治療方法を試して良くならなかったといっても、諦める必要はありません。
痛みの原因は、先に話したとおり筋筋膜性、関節障害(仙腸関節、椎間孔)であることも多いです。
また、腰痛といっても全身をみて原因を探る必要があり、人によっては足関節であったり、頸部であったり、それらが複合的に絡み合います。
カイロプラクティック心では、機能神経学(中枢神経系の評価)NKT(運動制御の神経系の評価)など神経系の評価も含め関節、筋肉など全身をみて痛みの原因を考えます。
そして、それらの原因に合わせてアプローチしていくことで、腰椎椎間板ヘルニアと診断された腰痛でも違う視点から原因を考え、症状を回復させていきます。
カイロプラクティック心の腰椎椎間板ヘルニアアプローチ
腰痛だからと言って腰だけを揉んだり、腰の背骨だけ調整したりすることはありません。
基本的には足元をしっかり調整し、身体の土台から身体を安定させます。
そこから「神経系」「関節」「筋肉」「循環系」「栄養」など施術ごとにいくつかある原因を考えアプローチしていきます。
このように多角的な視点から評価、アプローチしていくことで思わぬ原因がみつかります。
椎間孔障害を一例に挙げると、関節障害であればカイロプラクティックアジャストメント、関節運動学アプローチなどが有効となります。
静脈の拡張は、交感神経の過剰興奮であり、脳のアンバランスが関係していることがあります。
その場合は、機能神経学を用いた評価、アプローチで解消可能です。
椎間板へのアプローチ
椎間板は骨と骨の間にあり、その周辺の筋緊張、関節運動障害などによって、椎間板へのストレスが大きくなっていることがあります。
そのため、椎間板へのストレスが起因している場合は、椎間板周辺のアプローチは有効です。
カイロプラクティックは背骨の動きをみる専門家であり、1つ1つの背骨の動きを把握し、問題個所をピンポイントでアプローチすることも可能です。
これらのアプローチにより、痛みの軽減、消失は期待できます。
ただ、椎間板へのストレスがかかる原因は人それぞれであり、バイオメカニクス的、日々の体の使い方などを解消していくことが一時的な痛みの改善とならないようにするためには重要です。
施術
カイロプラクティック心では、以下のように原因に合わせたアプローチ法で対応しています。
関節障害、筋骨格系の問題⇒関節運動学的テクニック、カイロプラクティックアジャストメント
バイオメカニクス異常、モータコントロール異常⇒NKT
椎間孔障害⇒IVFテクニック
筋筋膜性⇒筋伸張テクニック、ストレイン・カウンターテクニック
内臓起因性⇒内臓マニュピレーション、栄養指導
カイロプラクティック心は、検査を重要視して身体を多角的に評価します。また、それらの原因に対応できるアプローチ法も習得しておりますのでご安心ください。
施術歴15年のセラピストが1人で担当します。
また、研究論文、セミナーや勉強会に参加するなど知識の向上にも努めております。
腰痛関連はこちらもご参考ください
このように原因がわかれば、それを解消するための施術やホームケアをアドバイスさせていただきます。
出し惜しみせず一日も早く改善するようお手伝いさせていただきますので、諦めずにご相談ください。
腰の痛みや脚の痛み、しびれはきっと良くなります
今まで書いてきたとおり、椎間板ヘルニアが痛みやしびれの原因ではないことも少なくありません。
そのため、少しでも諦めない気持ちがあるようでしたら、カイロプラクティック心にあなたの時間をください。早く体調が回復するよう全力でサポートさせていただきます。
体調が回復したら「趣味を楽しみたい」「仕事に集中したい」「家族との時間を有意義に過ごしたい」などあなたの想いを叶えてくださいね。
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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