捻挫

足首(足関節)捻挫の完治とは?

足首の捻挫は痛みがとれたら完治ではありません

足関節の捻挫は、スポーツ選手に多くみられる外傷であり、多くの研究で再発率が70%以上(1,2,3)と報告されています。これは選手および指導者が捻挫を甘くみて適切な処置を行っていないことが一因ではないでしょうか。

足関節の捻挫は、痛みを取り除くだけではなく適切な処置(可動域の回復、筋力低下の回復、固有受容器の回復など)を行いスポーツ競技に復帰する必要があります。これらの処置が行われないことで捻挫癖(再発)はもちろんのこと他のスポーツ障害の原因にもなります。

足関節の捻挫に限ったことではありませんが、外傷は組織が損傷するだけではなく、それに伴い筋肉や神経、関節などの機能低下を招いています。そのため、組織が修復して痛みが取れて治療が終わりではなく、身体の機能回復を行うことが適切な処置であり、再発予防やパフォーマンスの低下を防ぎます。

ここでは、足関節の捻挫について詳しく解説していきます。「たかが捻挫」という認識をもたないためにも指導者、選手はとくに続きをお読みください。

参考文献

  1. https://bjsm.bmj.com/content/35/2/103
  2. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3099587
  3. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1332043/

足関節捻挫とは?

日本整形外科学会では、捻挫について以下のように書かれています。

捻挫とは、関節にかかる外力により非生理的運動が生じ関節を支持している靭帯や関節包が損傷することです。

引用元:日本整形外科学会

このように足関節捻挫は、靭帯や関節包を損傷した病態です。 そのため、足関節を捻挫して病院を受診した場合、○○靭帯の損傷および損傷度合い(グレードⅠ~Ⅲ)まで診断してもらうことが望ましいです。

足関節捻挫は、内反捻挫と外反捻挫に大きく分類され、ほとんどが内反捻挫です。

内反捻挫は図のように足首が内反(小指側の足首が伸ばされる状態)した状態での捻挫を指し、外反捻挫は、足首が外反(親指側の足首が伸ばされた状態)した状態の捻挫を指します。

内反捻挫

関節の解剖学、運動学的に足関節は内反、底屈(つま先立ちをする動き)の可動域が大きく内反しやすいことこから、捻挫の大部分は内反捻挫となります。

とくに方向転換、着地時はつま先を支点に次の動作に移行することが多く受傷機序のほとんどを占めます。また、人の足を踏む、内側からのコンタクト、不整地(凹凸が大きい)などの問題でも受傷しやすいです。

損傷部位は、外側の靭帯組織(とくに前距腓靭帯、踵腓靭帯)に多くみられます。また、程度によってはその周辺の筋肉、腱などの軟部組織、内側の関節や腱、脛腓間靭帯にも損傷がみられることもあります。 ※下図をご参照ください。


引用元:ネッター解剖学アトラス     

※クリックすると拡大されます。

外反捻挫

関節の解剖学、運動学的に足関節の外反の運動はほとんどなく、足関節の外旋(つま先が開く方向)へのストレスによって、足関節内側の靭帯組織(三角靭帯、前脛腓靭帯)の損傷がみられます。

三角靭帯は強靭で強い力が加わらないと損傷しませんが、足関節の底屈、外反に伴い外旋ストレスが加わると外反捻挫をおこしやすいです。

引用元:ネッター解剖学アトラス

※クリックすると拡大されます

捻挫の症状

腫れ、皮下出血(皮膚が青黒くなる)がみられ、軟骨損傷を伴うこともありますが、回復においてあまり影響することはありません。

痛み

捻挫後は組織損傷(機械的な刺激)炎症による損傷部位の周辺に強い痛みが発生する。急性期が過ぎると痛みは関節の異常運動による関節インピージメント(関節同士の衝突)腱や筋肉の滑走性の低下などにより、2次的な要因による痛みを訴えることもあります。

可動制限

捻挫後は、痛みや腫れによって関節の可動制限がみられます。急性期を過ぎると捻挫による関節のアライメント不良、周辺の筋組織の拘縮などが可動制限の原因となります。

神経および筋機能の低下

関節の位置感覚(目を閉じていても関節がどの程度曲がっているかがわかる感覚:例として目を閉じていても肘を90曲げた位置で止められる)の障害が起きやすく、筋肉の反応速度の低下もみられます。多方面(足関節の底屈、外反、背屈など)での筋力低下もみられ、底屈の筋力低下が残りやすいです。

全身の姿勢制御(中枢神経を介して姿勢をコントロールするシステム)機能の低下が生じます。

参考文献

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9474405

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC155430/

診断(検査)

足関節の捻挫と自己判断せず、病院で骨折、腱損傷などの鑑別診断および重症度を診断してもらうことが大切です。

鑑別すべき疾患は以下のとおりです。

  • 骨折
  • 脱臼
  • 腱の損傷および断裂
  • 距骨の骨軟骨損傷
検査方法

レントゲン(X線)で内がえし(足関節の内反)のストレスを加えて撮影し、脛骨の関節面に対して距骨の傾斜角度を測定します。5度以上の傾斜が損傷のグレードⅡの目安とされますが、個人差もあるため左右差を比較することも大切です。また、10度以上みられるケースやグレードⅢは固定が有効となります。

ほかにも徒手的な方法で圧痛部位の確認、靭帯弛緩性などを確認します。ただ、受傷後は痛みや腫れにより正しく確認できないこともあり、後日再確認することも必要です。

筋肉や腱などの損傷疑いがある場合は、MRIで確認します。

このように検査することで、その後の治療方法や追加検査なども変わってきます。そのため、自己判断では適切な処置が行えないため、足関節捻挫はしっかりと診断してもらいましょう。

靭帯損傷の分類

〇グレードⅠ

靭帯の異常な弛緩はみられず(損傷がない状態)わずかな腫れ、圧痛はみられますが、構造的な関節不安定性はみられません。

〇グレードⅡ

靭帯の部分損傷がみられ、中程度の弛緩性を示すがエンドポイント(関節の制限がみられるポイント)は確認できます。明らかな圧痛と腫れがあり、関節の不安定性がみられます。

〇グレードⅢ

靭帯の完全損傷がみられ、エンドポイントが確認できない弛緩性を示します。強い腫れ、内出血、圧痛がみられ、関節の不安定性がみられます。

一般的にはグレードⅠ、Ⅱは急性外傷の治療、グレードⅢは急性外傷の治療に加え2~3週間の固定、ケースによっては手術が行われます。

足関節捻挫は選手生命を奪う

足関節捻挫は再発率が高く、後遺症に悩まされることも少なくありません。このような背景には、捻挫を甘くみて適切な処置を行わない選手も多く、医療側も適切な治療方法や予防方法を提供できていないことが考えられます。

足関節内反捻挫の患者の長期的にフォローアップした研究では以下の結果がみられました。

足関節内反捻挫を受傷した者に対して、受傷後6年半経過時点で、何らかの後遺症(疼痛や不安定感、腫張などを有しているかアンケー トで調査しました。

その結果、スポーツ選手の4%が捻挫後の後遺症が原因で元の競技を継続することが不可能となっており、 5%は競技を変更していました。また、スポーツ選手以外でも6%が仕事の継続が不可能となっており、15%がブレースやテーピングなどを使用しながら仕事を続けていました。

引用元:月間スポーツメディスン

足関節の捻挫によって、競技が継続できなかったり、以前のパフォーマンスを取り戻せなくなっているスポーツ選手が存在します。学生スポーツにおいては、メディカルの知識のない指導者によって適切な治療もなく練習を継続させてしまうケースも少なくはなく、結果として競技力の低下を招いていることもあります。

足関節捻挫は機能面を回復させることが大切

足関節捻挫の症状は、先に書いたとおり痛みだけではなく神経や筋機能の低下、および関節可動域制限がみられます。そのため、痛みが消失したとしてもこれらの症状がみられれば、回復させる処置を行う必要があります。

このことから足関節捻挫は痛みが解消すれば完治とは言えません。

関節の可動域、筋機能評価(筋力テスト)神経機能評価(姿勢、固有受容器などの評価)も行いリハビリを行う必要があります。

また、固有受容器および姿勢制御に対する処置(リハビリ)は有効とされる研究報告はいくつかあります。

参考文献

固有受容器は関節に位置や筋肉の長さ、張力などを脳(中枢神経)に伝えて、そのときの環境(傾斜のある場所、不整地、コンタクトプレーなど)に合わせて適切な姿勢を保つことができます。この機能があることで転倒しそうになっても倒れなかったり、目で見なくても身体がどのような状況か(手を挙げている、寝ているなど)を把握できたりします。

捻挫によって固有受容器の機能が低下していると関節の位置や姿勢の感覚が狂うため、しっかり着地したつもりでも捻挫しやすい足関節の角度で着地していたり、転倒しやすくなったりして捻挫を再発しやすくなります。また、足を着いたときのバランスが悪くなれば、上半身のコントロールも不十分となり上半身のケガ(肩痛、腰痛など)にもつながります。

捻挫によるアライメント不良

捻挫によって足関節のアライメント不良が発生することも多いです。

足関節は身体の土台となるため、関節の運動連鎖により下の図のように頭部まで影響します。

引用元:図解姿勢検査法

この運動連鎖の影響もスポーツ障害の原因になってしまいます。

このようなことから、アライメント不良により関節可動域が低下してしまうと運動連鎖の影響から他の関節への負担が大きくなります。そのため、関節の可動域回復およびアライメント不良の修正も足関節捻挫では行う必要があります。

足関節捻挫の基本的な回復までの流れ

靭帯の損傷程度(グレードⅠ~Ⅲ)や他の組織の状態によって回復期間は異なりますが、基本的には急性期の治療(痛みの抑制および炎症のコントロール)を行ってから痛みの程度に合わせて運動療法、競技特有の動作トレーニングなどを段階的に進めていきます。

最も重症であるグレードⅢは6ヶ月程度の期間をかけて治療を行っていきます。グレードⅠ、Ⅱは急性期治療時からリハビリプログラムが開始できれば、早期の競技復帰も可能です。

急性期治療(受傷後から24~72時間)

一般的にRICE処置(安静、アイシング、圧迫、挙上)により、炎症を抑える治療が行われます。靭帯損傷グレードⅢにおいては固定(2~3週間)も行ったほうが治癒が早いと言われています。

しかし、グレードⅠ~Ⅱの場合は痛みがなければ、安静ではなく運動(非荷重から始めますが、荷重をかけて問題がなけらば荷重し歩行も始めます)させます。また、アイシングも最近では有効性を疑問視する論文も多数あり、RICE治療を提唱したドクターも「治癒を遅らせるかもしれない」と発言しています。

アイシングの有効性についてここでは割愛させていただきますが、必ずしもアイシングを行う必要はありません。ただ、アイシングには鎮痛効果がるため、急性期は痛みを抑えることが大切であり、痛みが和らぐのであればアイシングも行っていきます。

痛みのコントロールはとても重要で痛みが継続してしまうとCRPS(複合性局所疼痛症候群)に移行してしまい、痛覚過敏、関節可動域の低下、筋力低下など様々な症状が慢性化してしまいます。

急性期以降の治療

腫れの対策として非荷重での運動、マッサージ、水中ウォークなど受傷部位の循環を改善していきます。また、非荷重でのストレッチによる可動域回復、徒手療法による関節アライメントの修正も行っていきます。これらのことは「痛みがない」ことを前提として進めていきます。

荷重ができるようになったら固有受容器トレーニング、動的安定性を回復させるトレーニング、筋力強化トレーニングを開始していきます。

ジョギング、簡単なステップ動作(サイドステップ、スキップ、カリオカなど)で痛みが無くなったら、徐々に競技特有の動作を含めたトレーニングを行いながら競技復帰を目指します。

痛みが無くなれば、早期の競技復帰も可能です。ただ、先に解説したように固有受容器や姿勢制御の回復も必要なため、早期に復帰する場合はリハビリも継続して練習を再開します。

足関節捻挫を甘くみるのはやめましょう

足関節捻挫は、一般の人が考えている以上に身体へのダメージが大きく、適切な処置が行われていないと再発および他の障害(腰痛、肩痛、膝痛など)の原因になります。

カイロプラクティック心では、色々な症状をみさせていただきますが、過去の捻挫の処置(足関節のアライメント調整、固有受容器トレーニング、神経系の再教育エクササイズなど)を行うことで回復する症例も少なくありません。このような経験と研究論文から考えても足関節の捻挫は適切な処置を行うべきです。

「たかが捻挫で練習を休むの?」と考える指導者、選手も多いようですがパフォーマンスを落とした状態で練習を続けるほうが無駄な時間を過ごすことになるのではないでしょうか。また、数日練習を休んだとしても適切な急性期治療が行えれば、痛みなく早期の競技復帰も可能です。

たかが捻挫と思わずに専門機関に相談し、再発予防も含めた処置で完治を目指しましょう。

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