腰痛のなかには重大な疾患が隠れていることもあり、専門医の治療を1秒でも早く開始しなければいけないことがあります。
また、命に関わらない疾患であってもカイロプラクティックでは改善されることのない腰痛もあります。
ここでは専門医の治療が最優先となるカイロプラクティック不適応な腰痛を解説しています。
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腫瘍(ガン)
腫瘍の発生した場所によって現れる症状に違いはみられますが、腰痛や下肢痛(坐骨神経痛のような症状)がみられることがあります。
また、腫瘍がみられると一般的には「急激な体重減少」「夜間痛」「どのような体位でも痛みに変化がみられない」などがみられます。(あくまで所見であり、腫瘍が決定されません)
臓器によっては食欲減少、血便などの特徴的な所見がみられます。
ここでは、下肢症状がみられる脊髄腫瘍について解説していきます。
脊髄腫瘍
脊髄腫瘍は、場所によって「硬膜外腫瘍」「硬膜内髄外腫瘍」「髄内腫瘍」の3つに分類されます。
硬膜外腫瘍は、早い段階で痛みと知覚脱失(触られて何も感じない状態)が特徴的で、脊髄腫瘍の30%の発生率です。
硬膜内髄外腫瘍は、ブラウン・セカール症候群がみられることが多く、脊髄腫瘍の50%を占めます。
髄内腫瘍は、早い段階に膀胱直腸障害(排尿、排便がコントロールできないため、漏らしたり排泄できなかったりする)がみられ、脊髄腫瘍の20%を占めます。
脊髄腫瘍は腰部だけではなく70%程度は頸髄、胸髄でみられます。
好発年齢は40歳が最も多く、次いで30代、50代と言われています。
症状
初期症状として痛みが現れ、腫瘍がみられる神経支配領域に放散痛がみられます。
そのため、腰髄に腫瘍がみられる場合は、下肢にも痛みを伴います。
進行経過は早く、数週間から数か月目に運動麻痺症状および膀胱直腸障害がみられるようになります。
脊髄が圧迫されるため、以下のような神経学的所見がみられます。
- 脊髄圧迫されているレベルでの四肢の感覚鈍麻、筋委縮、腱反射の低下など
- 精髄圧迫されているレベル以下では痙性麻痺(筋肉が異常に緊張した状態)腱反射の亢進、病的反射の出現、温痛覚障害、膀胱直腸障害など
- ブラウン・セカール症候群(脊髄半側性障害)
脊髄の半分が損傷した状態となるブラウン・セカール症候群は、中枢神経レベルの障害(腱反射の亢進、運動麻痺、温痛覚鈍麻など)の症状が現れます。
また、脊髄を部分的に圧迫している腫瘍であっても圧迫場所によっては運動麻痺、腱反射の亢進などみられます。
脊髄の腫瘍は手術が原則であり、専門医の治療が必要です。
安静時痛(寝ていても痛い)、運動麻痺、知覚麻痺、排尿排便障害がみられる場合は、必ず病院へ行きましょう。
感染症
感染症は、微生物(原虫、細菌、リケッチア、クラミジア、ウイルス)の感染によっておこる病気です。
そして、感染は、 細菌などの微生物が口や皮膚などから体内に入って増殖し、病的変化を起こすことです。
感染症の特徴としては、発熱を伴います。
化膿性脊髄炎
ブドウ球菌などの身の回りにありふれた細菌が脊椎を化膿させます。
40~50代の中年に多いとされ、通常では感染しない細菌のため、免疫抵抗力の低下した人にみられる病気です。
まれに重症な感染症によって、原因菌が背骨に運ばれ化膿性脊髄炎を発症することがあります。
化膿性脊髄炎を発症しやすい人は、以下のとおりです。
- 糖尿病
- 重度の肝障害
- 癌
- 高齢者
- 長期の血液透析を受けている人
- ステロイド薬を長期にわたって服用している人
- 肺炎、胆嚢炎、扁桃炎など感染症の病気にかかったことのある人
症状
腰椎、胸椎に感染することが多く、急性期は激烈な腰背部痛がみられ38°以上の高熱を伴います。
慢性期では、比較的痛みは軽く、微熱となります。
感染した脊椎を叩いたり、押したりすると痛みが生じます。
なかには脊髄周囲に膿がたまることで脊髄が圧迫され下肢のしびれ、運動麻痺の症状が現れることがあります。
骨の破壊がみられるため、画像検査(CT、MRIなど)で確認できます。
また、最近を検出することで確定診断が下されます。
結核性脊髄炎(脊髄カリエス)
一般的には、肺に感染した結核菌が血流によって脊椎に運ばれ発症する病気ですが、まれに泌尿器から感染することがあります。
初期は椎体が破壊され、次いで椎間板、隣接する椎体というように破壊が進行します。
そして、椎体内に乾酪壊死といわれるチーズの腐ったような壊死巣が形成され、椎体周囲に腫瘍が形成されます。
腰椎周辺では腸腰筋の筋肉内に膿瘍が形成され、椎体や腸腰筋の膿瘍は臀部や鼠径部に下降して流注膿瘍となります。
さらに進行が進むと椎体が潰れることで脊柱後弯変形が生じ、脊髄性の麻痺、心肺機能障害の原因となります。
症状
微熱、食欲不振、全身倦怠感 腰背部の痛み、脊柱の硬直がみられます。
ただ、腰背部の痛みは、化膿性脊髄炎に比べると軽度で穏やかに経過します。
また、進行すると脊柱後弯による変形が生じます。
膿瘍の症状としては、腹部、臀部、鼠径部のつっぱり感、重苦しさがみられます。
腸腰筋膿瘍では、痛みのため股関節屈曲位となります(腰が曲がった状態、腰がのびていたとしても膝を曲げてたっているケースもあります)
脊椎の変形や膿が溜まることで下肢のしびれや麻痺、歩行障害を起こすこともあります。
発熱を伴う腰痛は、専門医を受診しましょう
骨折(圧迫骨折)
骨折は、事故や転倒によって身体に過剰な外力(衝撃)加わることが多いため、一般的には自覚できる病態です。
しかし、脊椎圧迫骨折は、普段の何気ない動作でも起こることもあり、自覚できないことがあります。
脊柱の圧迫骨折は胸腰移行部(胸椎11~12番、腰椎1番)に多発し、高齢者、女性に多くみられます。
受傷機転は尻もちや高所からの転落(背中を丸めるような姿勢で着地)で発症しやすく、骨粗鬆症ではくしゃみや中腰からの起き上がりなど何気ない動作で発症することもあります。
また、骨粗鬆症だけではなく代謝性の骨疾患(くる病、腎性骨異常、骨軟化症など)によって骨の強度が低下している場合でも発症しやすくなります。
症状
一般的には骨折部分の痛みが続き、なかには寝返りや歩行が困難になることもあります。
ただ、痛みを感じない人も稀に存在します。
椎体の前方が潰れることが多いですが、後方も潰れた場合は脊髄神経を圧迫することもあり、しばらく時間が経過してから下肢の筋力低下、下肢のしびれ、排尿障害などの症状がみられることがあります。(遅発性脊髄神経麻痺)
初期では、レントゲンでも見逃されやすいため、通常の腰痛治療が行われますが、痛みが続く場合は再度診断が必要となります。
その他(内臓疾患、血管性疾患、婦人科系疾患)
〇腹部大動脈瘤
腹部大動脈瘤は、自覚できないことが多く他の検査で偶然見つかることが多いとされています。
しかし、なかには持続的に腰痛、腹痛を感じる症状を訴えることがあります。
このような症状がみられる場合は、動脈瘤が大きくなっている可能性があり、破裂する前に専門医の治療を受けることが重要です。
血管の動脈硬化のため、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙などの病歴、生活習慣が危険因子とされています。
また、年齢が上がるとともに発症リスクがあがり、70歳以上で手術を受ける人が多いとされています。
〇婦人科系疾患(子宮、卵巣、卵管などの疾患)
子宮、卵巣は骨盤に収まるため、これらの疾患によって腰痛を感じることがあります。
子宮炎、卵管炎など炎症を伴う疾患は、発熱もみられることが多いです。
また、子宮内膜症、卵巣嚢腫など下腹部の痛み、ハリ感などを伴う疾患も多くみられます。
腰痛だけではなく、下腹部痛、残尿感、便秘、不正出血など他の症状が併発している場合は婦人科系の専門医に診てもらうことも大切です。
〇内臓疾患
腎臓疾患は、腰痛を伴うことがあります。
簡単な鑑別として腎臓付近を背部から叩く(パンチテスト)と重い痛みを感じます。
虫垂炎(盲腸)でも腰痛を感じることがあります。
一般的には腹痛を伴うことが多いです。
病院で必ず診断を
カイロプラクティック心も皆様に安心して施術を受けていただくために、医学的な知識をアップデートし専門医の治療が優先と考えられるケースは提案させていただきます。
しかし、緊急性の高い疾患もあり1分1秒も無駄にできないこともあるため、まずは病院を受診することをお勧めしております。
とくにここで解説したような症状(発熱、運動麻痺、排尿障害など)が腰痛と一緒に現れている場合は、専門医の治療が優先されるケースがほとんどです。
手遅れになる前に病院での診断を受けましょう。
ただ、腰痛の85%は画像では解らないとされているため、病院で診てもらったけどなかなか良くならないケースは、カイロプラクティック心にもご相談ください。
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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