チックは、こどもにみられる運動障害です。
また、運動チックと音声チックが1年以上継続するものをトゥレット障害と呼びます。
チック(トゥレット障害を含む)は自然と寛解するケース多いですが、発達障害を含む併発疾患のほうが悩みが大きいと言われています。
ここでは、こどもの発達障害に有効なBBIT認定療法であるカイロプラクティック心が、チック症状について詳しく解説しています。
発達障害およびチック症状でお悩みの方は、よろしければ続きをお読みください。
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チックとは?
チックは以下のように定義されています。
突然の、急速な、再発性の、非リズミカルな運動(運動チック)または発声(発声または音声チック)
引用元:アメリカ精神医学会。精神障害の診断および統計マニュアル(DSM-5)
チックを大きく分けると運動チック、発声チックに分類されます。
また、DSM‐5では以下のとおりに分類されています。
- 暫定チック障害
- 持続性(慢性)運動または声性チック障害
- トゥレット障害
- その他の特定のチック障害
- 不特定のチック症
運動チック
運動チックは「クローヌス性」「ジストニア性」「アンクロシス性」の3つに細分化されます。
クローヌス性は、突発的に急激な筋収縮が反復される運動です。(例:まばたき、肩を上げる、首を傾けるなど)
ジストニア性は、持続的に異常な姿勢がみられます。(例:斜頸、眼を閉じる、歯ぎしりなど)
アンクロシス性は、等尺性収縮(筋肉の長さが変わらず収縮する状態)がみられます。(例:腹筋や手足が固まってみえる)
運動チックの動きは多様であり、一つの筋群もしくは体の部分(手、足、肩など)が動く単純なものから、複数の筋群が協調的に動く複雑なものがあります。
例えば、ジャンプ、他人の動作を真似する、手を振る、不適切なジェスチャーをするなどがみられます。
発声チック
単純な音声チックは、鼻、口、または喉を使って無意味な音が発せられ、声帯以外の鼻や呼吸筋、口から音が発生するため、音声チックと呼ばれることもあります。
例えば、唸り声、セキ、動物の鳴き声の真似などがみられます。
複雑な発声チックは、フレーズ、単語、文章を発生します。
例えば、叫び声、他人の言葉を繰り返す、汚言症(不適切な言葉)などでになります。
汚言症は、トゥレット障害の8~17%にみられ、発症は15歳前後とされています。
病院での診断
特別な検査はなく、症状や継続期間などの病歴で判断されます。
ただ、病院では症状が現れないこともあり、症状が現れている状態を録画して医師にみせることが必要なケースも多いようです。
チックのような運動障害は、ジストニア、舞踏病などもありますが、チックは通常3~8歳の間に発症します。
また、1年以上続くチックの重症度は、8~12歳でピークに達すると考えられています。
症状は一般的に単純な運動チックから始まり、発声チックを発症する場合は運動チックから数年後に単純な発声がみられることが多いです。
このような臨床的な経過が、診断に重要な判断材料になります。
チックと類似する症状の現れる疾患との鑑別(常同行動、強迫行為、オミクローシス、ジストニアなど)も重要であることから、チック症状がみられる場合は、病院での診断が大切です。
病院での治療
一般的にチックは成人期に、ほとんど改善されるとされています。
そのため、専門的な治療は行われず、チックの病態を患者および家族、学校などに理解してもらえる教育が中心です。
ただ、重症度やこの後にも解説する併存疾患によっては、専門家の治療が必要となります。
重症度の目安として、チックが身体的および感情的、社会的障害(チックによる筋損傷、いじめなどの社会的困難、自尊心の低下など)を引き起こす場合は、症状の軽減や生活の質を向上させる治療が検討されます。
行動療法
習慣逆転療法、心理教育、機能的介入、およびリラクゼーショントレーニングで構成されている行動療法があります。
効果は見込まれますが、専門知識をもったセラピストを探すことが困難です。
非薬学的療法
色々な療法(栄養療法、カイロプラクティック、鍼、ヨガ、バイオフィードバックなど)が研究されており、効果が確認されていますが、信頼できる成果がみられる研究結果には至っていません。
薬学的療法
軽度のチック症状には、ADHDでも服用されるインニチューブ、抗てんかん薬(トピラマート、レベチラセタム)などが使用されることがあります。
重度のチックに使用されるD2受容体遮断薬は、約70%軽減させる研究報告もありますが、副作用による身体への悪影響を引き起こすことが懸念されています。
他にも重度のチックには、抗精神薬が使用されることもありますが、重度のチックには副作用のリスクも高いことから、治療目標を明確にすることが重要とされています。
チックの原因
チックは、中枢神経系の運動障害と考えられていますが、原因は環境や免疫系など色々な要素があるとされています。
中枢神経系の原因は、大脳基底核を介した運動ループ経路のドーパミン作動性伝達の機能不全が考えられ、線条体(大脳基底核)を過剰なドーパミンが刺激し、チックを引き起こすと考えられています。
また、外部環境のストレス(不快なこと、肉体的な疲労など)により、視床下部-下垂体-副腎(HPA)の回路を活性化すると、より多くのドーパミンが生成され、チック生成経路の興奮が促進されます。
不安や緊張、ストレス、欲求不満などは、チックの悪化と関連していると考えられています。
環境因子
系統レビューでは、母親の喫煙および、低体重出産が関連していると報告されています。(引用元:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24479407/)
しかし、コホート研究では、低体重出産と母親の喫煙は関連せず、大麻および妊娠中のアルコールが出生前の危険因子と報告されています。(引用元:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24262815/)
ケースコントロール研究では、両親(とくに母親)の精神障害が、慢性的なチックおよびトゥレット症候群の関連性が示唆されています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28335873/)
これらの環境因子は、チック以外にもみられる原因でもあります。
遺伝子因子
チックを発症した兄弟がいる場合は、発症するリスクが高いという研究報告があり、環境よりも遺伝的要因のほうが発症リスクが高いと示唆されています。
免疫系(PANDAS、PANS)
PANDSは連鎖球菌後自己免疫性神経精神障害と日本語に訳され、連鎖球菌に感染後に発症する自己免疫疾患です。
PANDASの特徴は、大脳基底核内の障害がみられます。
症状は、チックだけではなく多動性、尿意切迫感、衝動性、不安、衝動性、摂食障害、手書きの悪化に伴う学校の成績の大幅な低下などです。
連鎖球菌以外の感染症(マイコプラズマ肺炎によって引き起こされる非定型肺炎、インフルエンザ、上気道の炎症、または副鼻腔炎が含まれる)でも同様な症状が現れるケースがあります。
それらを小児急性発症神経精神症候群(PANS)と呼びます。
このように感染症後にチックを含めた急激な症状がみられる場合は、自己免疫疾患の可能性が考えられます。
参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7073132/
チックと発達障害との関係性
チックは先にも書きましたが、時間の経過とともに解決するケースも多く、こども自身も気にしていないことがあります。
しかし、チックは併存疾患がみられると生活の質に悪影響をおよぼす可能性があるとされ、チック症をもつ親も併存疾患の方が問題があると報告されています。
チック症の併存疾患は主に以下の通りです。
- ADHD
- 自閉症スペクトラム障害
- 学習障害
- 強迫性障害
- うつ
- 不安障害
- 睡眠障害
- 片頭痛
- 上記以外の精神疾患(不安症、気分障害など)
発達障害とチックの共通点としては、大脳基底核に何らかの問題がみられることです。
そのため、チックの併存疾患として発達障害(とくにADHD)がみられると考えられます。
大脳基底核と発達障害
大脳基底核は、色々な脳の領域と神経ネットワークを構築し4つのループに分類(運動、眼球、前頭前野、辺縁系)されます。
辺縁系や前頭前野は認知や感情(衝動抑制、モチベーション、不安感など)に関わる経路です。
ADHDおよびASDは、いくつかの研究報告で大脳基底核に異常がみられることが報告されています。
ADHDの男児は、尾状核の頭と体と前部被殻、ならびに左前淡蒼球と右腹側被殻で両側に体積圧迫が見られた。体積の拡大は、後部被殻でみられた。しかし、女児では大きな違いはみられなかった。
参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19015232/
ADHDは衝動抑制ができない特徴がみられ、大脳基底核が関わるサッケードに問題が生じていることが多いです。
ASDの男児は、右大脳基底核の形状に変化を示しました
このような研究報告から、チックの併存疾患が発達障害であっても不思議ではありません。
また、チックはドーパミンが過剰に分泌されることが原因と考えられ、ストレスで活性化する視床下部-下垂体-副腎(HPA回路)がドーパミンをさらに過剰に分泌させます。
苦手なことが多い発達障害ではストレスを感じる環境や出来事も多く、結果としてチックが現れやすのではないでしょうか。
チックになったら?
チック症状だけがみられる場合は、他の疾患(オミクローシス、ジストニアなど)との鑑別も重要かと思いますので、病院を受診することをお勧めします。
チック症状自体は自然と治まることも多いため、お子さんが生活に不自由をしていないのであれば、特別な治療をせずに経過を観察していくことも選択肢の1つになります。
発達障害を含めた他の症状がみられる場合は、併存疾患が生活の質に悪影響を及ぼす可能性もあるため、必要に応じた治療を受けることも大切ではないでしょうか。
また、何らかの感染症後にチックを含めた複数の症状が現れた場合は、小児急性発症神経症候群と呼ばれる自己免疫系の問題が考えられるため、専門医に診てもらうことが大切です。
カイロプラクティック心がチックのこどもにできること
カイロプラクティック心は、こどもの発達障害に有効なBBIT認定療法士です。
チックと発達障害や精神障害を併存している場合、BBITが有効となるケースもあります。
BBITについて詳しくはこちら
原始反射
原始反射が残存(とくにモロー反射)しているとストレスの耐性が低いと考えられています。
また、原始反射の残存は本来大脳皮質がコントロールしている神経ネットワークが上手く機能していないとも言えます。
そのため、動きや発声などをコントロールできずに結果として、運動障害であるチックがみられる可能性があり、原始反射を統合するアプローチが必要になるかもしれません。
原始反射について詳しくはこちら
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ストレス
過剰なストレスにより、ドーパミンも過剰に分泌されます。
当然、ストレスと感じることを極力さける環境づくりも大切ですが、体の問題でストレスに対して過剰に反応してしまうケースもあります。
その場合は、副腎へのアプローチ、仙骨頭蓋療法が有効となる可能性があります。
頭蓋骨へのアプローチについて詳しくはこちら
大脳基底核ループ
チックは大脳基底核の異常であるため、大脳基底核ループの評価が重要です。
チックは病的な神経系の評価は異常を示さないとされていますが、機能的な問題(例えば、病院の検査で異常がなくとも左右で比較すると右側が上手くできない)はみられます。
大脳基底核ループの1つに眼球運動があります。
それを一つの例にすると上手く眼球運動を止められないケースは、小脳からの信号が上手く受け取れずに結果として過剰な運動をおこなっている可能性があります。
それであれば、上手く小脳が活動しやすいようにアプローチする必要があるかもしれません。
このように神経機能を紐解きながら原因を考えることで、チック症状を緩和させていくことを目標にアプローチできます。
アプローチ方法となる神経可塑性の理論について詳しくはこちら
常同運動
チックと間違えられやすい運動として、ASDの特徴とされる常同運動があります。
常同運動は、常にクルクル回ったり、ジャンプしたりするなど同じ行動を繰り返し、不随意運動ではなく意識的に行っています。
常同運動について詳しくはこちら
チックだからといって発達障害ではありません
チックの併存障害とせて、発達障害はみられます。
しかし、チック症状が現れたからといって発達障害ではありません。
発達障害が疑われる場合は、自己判断せず必ず医師に診断してもらってください。
反対に発達障害と診断されたこどもが、チック症状が現れる可能性はあります。
チックおよび発達障害は、カイロプラクティック心がお役に立てることもあるかと思いますので、お困りのようでしたら一度ご相談ください。
参考文献
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8199885/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35204005/
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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