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スマホ首は頭痛、肩こり、首痛の原因だから○○をやりましょうは間違い
スマホの普及に伴い、ストレートネックのことをスマホ首と表現することが増えてきました。
実際、下を向いた姿勢でスマホを見続けることはよくありませんが、スマホ首が原因で肩こりや頭痛、首痛を発症することが本当にあるのでしょうか。
肩こり、首痛の症状で病院を受診し、ストレートネックと診断された人をカイロプラクターとしてみる機会はありますが、触診や可動域検査などでストレートネックと考えられるケースは稀です。
これは、レントゲンをとる姿勢に問題があります。
このようなことから、ネットや雑誌紹介されているスマホ首と称されるストレートネックの解消法は、効果を感じられないと聞くことも多いです。
ここでは、スマホ首と称されるストレートネックはどのような問題があり、どう解消していくかを書いていきます。
カイロプラクテイック心のストレートネック改善方法はこちらをご参考ください
スマホ首とは?
スマホ首は、本来ある頸椎の前弯がなくなり、首が真っすぐになった状態(ストレートネック)を指すようです。
図は左側がスマホ首(ストレートネック)右側が正常
ストレートネックになると神経が圧迫されることで頭痛や肩こり、しびれの原因になると言われていますが実際はどうでしょうか。
スマホ首で神経を圧迫する?
ストレートネックは、病名ではなくレントゲン撮影でみられる所見(見た結果です)
ストレートネックとは反対に頸椎の前弯が強まるほうが「椎骨動脈の狭窄」「神経の通り道となる椎間孔が狭くなり神経を圧迫」などみられ結果として頭痛や肩こり、首痛などの症状を引き起こしやすいです。
ストレートネックを構造力学的にみると適切な頸椎前弯に比べると椎間板へのストレスは増えるため、頸椎椎間板ヘルニアのリスクは高まるともいえますが、頸椎はリュシュカ関節といって腰椎にはない構造があり、腰椎に比べヘルニア突出することは少ないです。
このようにストレートネックがすぐに何かしらの症状を引き起こすことは少ないです。
しかし、構造的には正常とは言えないため、長期的にストレートネックの状態が続くと関節の変形、関節症(関節の問題)を起こすリスクはあります。
ただ、スマホ首は若年層に多いと考えられる問題であり、変形や関節症によって首周辺に症状が現れることのほうが少ないです。(交通事故、スポーツでの外傷で首へのダメージが大きいことはあります)
ストレートネックの問題点について詳しくはこちら
スマホ首は姿勢が悪いからなる?
「姿勢が悪いとスマホ首になる」とよく言われます。
しかし、一般的に言われている良い姿勢には誤解も多く、一時的な効果を感じる人はいても長期的にみると何も変わらないことも少なくありません。
図のように頭部が前方に移動している状態だけをみてストレートネックと表現し、猫背と勘違いしている人が多いです。
そのため、姿勢全体でどのような問題があるかを考えず、ただ顎を引かせたり、姿勢が悪いと胸を張らせても何の解決にもなりません。
また、姿勢は脳が色々な情報(視覚、固有受容器、前庭神経など)を収集して、そのうえで適切な姿勢をコントロールしている側面もあります。
姿勢は、骨格だけではなく中枢神経系も関わり、さらには重心位置、呼吸などの評価も必要になることもあり、スマホ首だけを改善させようとしても身体に無理が生じます。
姿勢が悪いからスマホ首になるのではなく、もう少し踏み込んで何が原因でそのような姿勢になったかを解決する必要があります。
下を向く姿勢は悪くない?
ここまでの解説では、「下を向くことが悪くない」と感じる人も多いかもしれませんが、そのようなことはありません。
アメリカのニュ-ヨ-ク市にある脊椎専門クリニック外科医長を務めるケネス ハンスラージ氏の発表によると下を向いた姿勢は想像以上に負担がかかっていることが解明されました。
ハンスラージ氏が一般的な体格の人をモデルに解析したところ首の曲がる角度に比例して、頚椎にかかる負荷は増え、首の曲がる角度が15度になると12kg、30度で18kg、45度で22kg、60度では27kgの負荷がかかっていることがわかりました。
参考文献
Assessment of Stresses in the Cervical Spine Caused by Posture and Position of the Head
この研究報告のとおり、下を向いた姿勢は首への負担が大きくなります。
そのため、長時間このような姿勢を続ければ、筋肉の緊張状態が継続するため、肩こりや首の痛みを感じやすくなります。
ただ、下を向いた姿勢に限らず、どのような姿勢であっても同じ姿勢を続けることがよくありません。
そのため、今までと同じように長時間同じ姿勢を続ければ、何かしらの問題が生じやすいです。
また、正面でみれるようにしたとしても顔が前方に移動する姿勢が変わるとも言えません。
実はストレートネックではなく頸椎の過剰前弯だった?
先にストレートネックと診断されても実際に触診や可動域検査を行うとストレートネックではないということを書きましたが、肩こりや頭痛などの症状で多いのは下の図のようなケースです。
出典:図解姿勢検査法
スマホ首でも予防のために「顔を上げてみれる位置にする」と指導されることもありますが、気をつけないと図のような顔の位置となりストレートネックではありませんが、上部の頸椎が過前弯してしまいます。
上部の頸椎が過前弯してしまう姿勢は意外に多いです。
頭部が前方へ移動している状態を猫背と勘違いして胸だけを張ってしまう(スゥエーバック姿勢)と胸部が息を吸い切った状態で固定されるため、そこからさらに息を吸おうと口呼吸になりやすいです。
結果として図のような姿勢が呼吸しやすくなるため、姿勢に改善はみられません。
このような姿勢では斜角筋(左の図)胸鎖乳突筋(右の図)が過剰に緊張した状態を継続するため、全てではありませんが関連痛(図の赤い部分)に痛みやしびれ感が生じるケースもあります。
赤い部分の症状は、頭痛、肩こり、手の痺れ、首の痛みなどと表現されます。
スマホ首が神経圧迫で肩こりやしびれ、頭痛、首痛を引き起こすとされていますが、実際このような筋肉の問題で症状を引き起こしていることのほうが多いのではないでしょうか。
よくあるスマホ首の解消法を検証
〇顎を引くエクササイズ
出典:Viking
顎を引くエクササイズは、先に紹介した上部頸椎が過前弯したケースに有効です。
そのため、厳密にいえば本当のストレートネックには効果がありません。
この番組でも「首の後ろが伸びる感じ」と紹介していますが、本当のストレートネックは後ろの筋肉が伸びている状態であり、スマホ首でも下を向いているので、首の後ろは伸び切った状態です。
このように伸びているところをさらに伸ばしても症状が改善されることはないです。。
ただ、ほとんどのケースで上部頸椎の過前弯がみられるため、ストレートネックと診断された人は効果を感じる可能性が高いです。
〇テニスボールストレッチ
頸椎の前弯を作るために首の後ろにテニスボールを置くストレッチですが、上部頸椎が過前弯しているタイプの人はさらに前彎を強めるため注意して行う必要があります。
過前弯でも効果がみられることはありますが、その場合は上部頸椎に付着する後頭下筋群の過緊張が解消されたときです。
もし、どうしても試したい場合は、骨を動かすために強めにやろうと考えずに、心地よい程度で行うようにしましょう。また、気分が悪くなったらすぐにやめてください。
〇スマホをみる姿勢
先にも書きましたが、姿勢は脳が色々な情報(視覚、固有受容器、前庭神経など)を収集して、そのうえで適切な姿勢をコントロールしている側面もあります。
そのため、顔を上げてスマホを見るようにしたとしても首の負担は減りますが、姿勢との関係性がない可能性も大いにあり、改善されるかは何とも言えません。
また、姿勢を意識しすぎて背筋を伸ばしても、かえって身体を緊張させてしまうケースも多いです。
身体の構造的には背中が丸いことが自然であり、無理に背筋だけを伸ばす必要はありません。
また、同じ姿勢を続けてパソコン作業やスマホをみることはどんなに良い姿勢でも良いとは言ず、姿勢を意識するくらいならまめに姿勢を変える(30分に1度程度)ストレッチや簡単な運動をまめに行うことのほうが大切です。
姿勢について詳しくはこちら
〇まくら
頚椎の前弯を作ると称して、ハーフポールのような形の枕が整体院、カイロプラクティック、各メーカーなどで販売されています。
テニスボールストレッチでも説明したように、ストレートネックではないケースが多く頸椎の過前弯がみられるケースでは症状を悪化させる可能性があります。
また、この枕で寝てしまうと人によっては気道まで狭くなるため、いびきの原因になる可能性もあります。
そのため、テニスボールと同様に寝るための枕に使うのではなく、ストレッチ感覚(20秒程度)で使用するのであれば、スマホ首のように下を向いた状態と反対方向の動作になり、頸部周辺の状態をリセットするには良いです。
シンプルなスマホ首解消法
スマホ首に本当のストレートネックの解消法を当てはめてしまうと、人によっては症状を悪化させる可能性があります。
また、病院のレントゲンだけでは本当のストレートネックであるかも確定できないことが現状です。
そのため、どうしても自分の首の状態が気になる場合は、病院の診断をうけたうえで姿勢評価および、関節の可動域評価をしっかり行える専門家に相談しましょう。
専門的な知識がなければ、首の状態に合わせた解消法を選択することは難しいです。
そのため、専門家に指示を仰がずにセルフケアで何とかしたい場合は、難しいことを考えずシンプルに動かしていくことが大切です。
ストレッチ
下を向いた姿勢を続けることで、その周辺の筋肉の状態が脳にインプットされます。
このようなシステムがあることで、スポーツ競技や仕事を長く続けることで無意識でもその動作に適した身体の使い方ができるようになります。(ただ、これが長期化するとケガの原因にもなります)
このようなことから、ある程度の状態で筋肉をリセットする必要があります。
そのため、長くスマホを見続ける習慣があるのであれば、こまめに頭を上に向けるストレッチをしましょう。
運動習慣
あとは、単純に運動習慣を身につけることが大切です。
筋肉も使われることで代謝が活発化し、細胞が入れ替わります。
もちろん、下を向いているだけでも首の筋肉は使われていますが、筋肉は収縮させることが重要です。
そのためには、全身を使った運動(ウォーキングで十分です)習慣を取り入れるようにしましょう。
鼻呼吸
口呼吸を日常的に行う人の特徴は、スマホ首と言われる頭部が前方に移動した姿勢です。
呼吸について詳しくはこちらをご参考ください
口呼吸が日常化している人は、鼻炎であることも多く、その場合は耳鼻科に相談しましょう。
鼻呼吸を始めると初めは息苦しく感じるかもしれませんが、続けていくことで鼻呼吸が習慣化されると姿勢にも
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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