ストレートネック

首こり・肩こりはストレートネックが原因?【カイロプラクターが解説】

肩こりや首の痛みで病院へ行くと「ストレートネック」と告げられる人が多いです。

また、「長時間のパソコン作業、スマホ、ゲームで姿勢が悪くなるからストレートネックになって、色々な症状が現れる」と雑誌やインターネットをみてもよく書いてあります。

しかし、本当にストレートネックが肩こりや痛みの原因になるでしょうか?

カイロプラクターとしてストレートネックと診断された人を診ることは多いですが、触診や可動域検査でストレートネックと考えられるケースはとても少ないです。

これはレントゲンの撮影の仕方や姿勢に対する考え方が、根本的に間違っていることが起因しています。

ここでは、ストレートネックについての解剖やレントゲンの問題点など詳しく解説していきます。

ストレートネックについて

ストレートネックは、病名ではなくレントゲン撮影での所見(見た結果)です。

そのため、頸椎の前弯が減少しているように見えるとストレートネックと診断されます。

下の図では向かって左側が正常な頸椎前弯、右側がストレートネックと診断される状態です。

出典:骨・関節X線像の読み方

病院は、病気がないかを診断するところです。

そこで、レントゲンを使用して、骨折、腫瘍、変形(変形性関節症、頚椎症など)、椎間板の極小化(椎間板ヘルニアの疑い)など重大な病気がないかを確認します。

そして、病気の疑いがあればさらに詳しい検査が行われ、病気がみつかれば治療を行います。

ストレートネックは、骨の変形につながるリスクはあるかもしれませんが病気ではありません。

厳密にいえば、ストレートネックはレントゲンで見たままを伝えてるだけのため、「特別な異常は見当たらない」と言っていることと同じです。

その理由を解剖学、運動生理学的に解説していきます。

ストレートネックの解剖学、運動生理学

頸椎の骨は、図のように7つあります。

そして、解剖学的には(最下部は胸椎)頸椎4番(突起を上から数えて4番目)を頂点にして、頸椎の前弯(反っている状態)がみられます。

このようなことから、真っすぐにみえる頸椎はストレートネックと言われ、異常とみなされます。

ただ、前弯があればよいというワケではなく、前弯が強すぎる場合は血管(図の赤い部分)を頸椎の骨で絞めつけてしまい、めまいや頭痛の原因になります。

そのため、ストレートネックよりも過前弯のほうが、色々な症状を引き起こす可能性があります。

頸椎解剖図

頸椎解剖図


出典:ネッター解剖学アトラス

背骨は、頸椎だけが前弯しているだけではなく、背骨全体をみると図のように頸椎前弯、胸椎後湾、腰椎前弯となる生理的彎曲(S字彎曲)がみられます。

背骨のS字弯曲

背骨のS字弯曲

背骨はS字に弯曲することで、真っすぐの状態に比べ椎間板への負荷が構造力学的には1/10に減ります。

そのため、背骨の生理的弯曲は重要とされるため、頸椎の弯曲が減少していると肩こり、首の痛み、しびれなどの症状を引き起こす原因になるのではないかと考えられています。

ただ、背骨は連動しているため、立っているとき、座っているとき、寝ているときでは弯曲の程度も変わり、腰を丸めて座れば(腰椎の後弯)頸椎も後弯しやすくなります。

この背骨の連動性は、実際に行うとわかりやすく、腰を丸めた状態では顔は下を向きやすく(頸椎後弯)腰を反らせると顔は上を向きやすい(頸椎前弯)ことが体感できます。

このように背骨は固定されているわけではなく、可動性があり状況によって前弯、後弯の変動がみられます。

そのため、座った姿勢ではストレートネックに見えたとしても立ったときや寝たときはストレートネックではない可能性もあります。

座った姿勢、もしくは立った姿勢など同じ姿勢でレントゲンをとっただけでは、ストレートネック(構造的問題)とは言えないのではないでしょうか。

ストレートネックはレントゲンの撮影方法に問題あり?

先に説明した通り、背骨の配列は姿勢によって変わります。

そのため、背中を丸めた姿勢やアゴを引かせた姿勢でレントゲン撮影をすると、本来ストレートネックではなくてもストレートネックに見えてしまいます。

そもそも、レントゲン診断の目的は、重大な病気がないかをみつけることであり、ストレートネックであるかどうかを確認するためではありません。

そのため、背骨の変形や椎間板の状態などがみやすい姿勢でとることが重要となります。

本当にストレートネックかどうかを判断するのであれば、少なくとも立位、座位など姿勢を変えると共に首の動きも最大屈曲(下を向いた状態)最大伸展(上を向いた状態)で撮影しないと難しいと考えられます。

ストレートネックは病気ではありません。もちろん、正常な骨格構造ではありませんが、背骨は動くため静止した画像だけで判断し、それを症状の原因にするには安易すぎます。

ストレートネックは本当に悪いのか?

「ストレートネックは身体に悪いから寝てるときも枕を使って生理的弯曲(頸椎前弯)を保ちましょう」

このようにストレートネックの対処法を検索する枕を使ったケア方法が多く書かれています。

しかし、先に話したように頸椎の前弯が強すぎても身体には悪影響であり、姿勢によってはストレートネックではない可能性もあります。

数か月待ちになっている整形外科の医師が作成しているオーダーメイド枕は、少し頸椎前弯を減少させるように作られ、身体に現れる症状の軽減にもつながっているという研究報告もあります。

枕はストレートネックになるように作成

枕はストレートネックになるように作成


正しい枕の使用により、肩こり、頸部痛、肩上肢痛、不眠など7割以上の患者様が改善し、手のシビレ、頭痛、めまいなども5割~6割が改善していました。

出典:山田朱織枕研究所

このようにストレートネックであることは、一概に悪いとは言えません。

ストレートネックになる生活習慣を見直そう

レントゲンでストレートネックに見えること自体は、肩こりや首痛、しびれなどの原因になるとは言えません。

ただ、ストレートネックの原因とされるパソコン作業、スマホを見続けるなどの生活習慣は改善が必要です。

「ストレートネックが問題なければ、良いのでは?」と考える人もいるかもしれません。

しかし、いくら良い姿勢であっても同じ姿勢を続けることは絶えず同じ筋肉を使い続け、結果として肩回りの筋肉が緊張し肩こりや首の痛み、しびれを感じることになります。

ほかにも眼球運動の問題や脳からの姿勢制御の問題などが生じることで色々な症状が現れることがあります。

また、寝る前のスマホやパソコン作業はブルーライトは睡眠の質の低下を招き、結果として体調を崩します。

詳しくはこちらのサイトをご参考ください⇒ブルーライト研究会

〇主な生活習慣の見直し

  • デスクワークが忙しくても30分に1回は立つだけでもいいため姿勢を変える
  • 寝る前のスマホ、パソコン作業を避ける
  • 首周りのストレッチ、エクササイズを取り入れる
  • 運動習慣を取り入れる

ストレートネックを気にするより、原因とされる生活習慣に心当たりがあれば、それらを見直すことのほうが大切です。

カイロプラクターからみたストレートネック

ストレートネックと診断されると骨の歪みと考え、ご相談いただくことが多いです。

ただ、触診や関節の可動域検査などをみると本当のストレートネックであることは少なく、首の可動域が狭いと感じている人でも頸部以外の問題を修正するだけで可動域が回復することが多いです。

このようにカイロプラクターの立場からみるとストレートネックで症状が現れていることのほうが少ないです。

もちろん、頸椎性の問題で様々な症状を引き起こしますが、過剰な頸椎の前弯がみられたり、首周辺の筋緊張が起因していることのほうが圧倒的に多いです。

「ストレートネック=首の問題」と世間的にわかりやすく伝えたいだけかもしれませんが、ストレートネックが原因で色々な症状が現れると宣伝するクリニック、整体、カイロプラクティック、その他の療法を受ける場合は注意しましょう。

ストレートネックが肩こり、首痛、しびれの原因とは限りません

ここまで述べてきたとおり、レントゲン診断によるストレートネックという所見は、肩こり、首痛、しびれなどの原因になるとは言い難いです。

骨格の問題は身体の土台となる下肢を含めて評価する必要があり、首以外の問題でストレートネックと言われる姿勢となっているケースも少なくありません。

また、頸部周辺の問題であったとしても、顎関節、眼球運動、頸椎の過前弯などストレートネック以外の問題も絡んできます。

このようなことから、ストレートネックだけを改善させようと頸椎の前弯を作る枕を使用したり、セルフケアをしても効果がみられず、悪化させてしまう可能性もあります。

ストレートネックという言葉に惑わされず、まずは生活習慣の見直しから始めてみましょう(とくに運動が良いです)

また、病院以外の療法(整体、カイロプラクティック、マッサージなど)を利用する場合は、ストレートネック以外の問題も考慮して、症状改善に取り組んでもらえるところに相談してください。

ストレートネックと言われた方の症状改善方法はこちらをご参考ください

投稿者プロフィール

カイロプラクティック心
カイロプラクティック心カイロプラクター
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。

病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。

機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。

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