自閉症スペクトラム障害(ASD)は、男女の比率が4:1と男性が多くみられることが研究でも報告されています。
しかし、女性のなかでも症状がマイルドに現れており、認知や言語スキルが高い人ほど、成人期まで未診断とされる確率が高くなると考えられています。
よく言えば社会に適合しながら学生生活を送れているということですが、ASDの特徴とされるコミュニケーションの困が思春期以降の2次障害(うつ、パニック障害、引きこもりなど)につながることが示唆されています。
カイロプラクテイック心では、発達障害に有効なBBIT認定士が大人のASDにも対応し、生活の困難を少しでも減らせるようにサポートさせていただきます。
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ASD(自閉症スペクトラム障害)とは?
ASDは、「社会的コミュニケーションの障害」「限定的な行動・興味・活動」の中核症状からなる神経発達症(発達障害)です。
幼少期(3歳ころ)までには、これらの特徴がみられるとされていますが、ほとんどの場合がその年齢以降に診断されることが多いです。
また、認知や言語レベルが高く、「少し変わったこども」にみられることでASDと気づかれず学生生活を過ごせることも少なくありません。
しかし、ASDの特徴により社会に出てから周りの理解が乏しく、生活の困難に直面することで2次障害(うつ、パニック障害、不安障害、統合失調症など)を引き起こすこともあります。
そのため、早期の対策が有効と考えられています。
ASDについて詳しくはこちらをご参考ください。
現在はASDに統合されましたが、認知や言語レベルが高い発達障害はアスペルガー症候群とも呼ばれており、こちらの記事もご参考ください。
ASD 大人の女性の特徴
ASDにみられる特徴は以下のことがあると言われています。
- 対人関係は受け身であり、恥ずかしがり屋と周囲から認識される
- 想像力が豊かな場合では空想上の友人imaginary friends(イマジナリフレンド)が存在
- 他人の模倣や観察は男性ASDよりも得意
- 男性ASDよりも常同行動、反復行動は少なく、物への執着もみられにくい
- 女性のASDは人、動物へのこだわりのほうが強い(得意を活かした仕事に就く可能性もある)
- 完全主義
- 物事の2極化思考
ASDにみられるコミュニケーションの苦手から友人も少なく、さらには女性グループの行動、女子トークの苦手と感じることが多いようです。
その影響を受けるためかはわかりませんが、就学後にいじめの対象となるケースも多いようです。
また、周囲に助けを求める方法がわからず、不登校や引きこもりになるケースもあります。
もちろん、ASDの多様な症状は他にも多くの困りごとに悩まされていることも少なくありません。
併存症状
ASDの特徴が原因で2次障害を併存することも問題となります。
情緒に問題がある場合は、気分障害および不安障害が併発する可能性があり、ASDの女児において不安障害の割合は50%と高い割合を示す報告もあります。
また、女性のASDの自殺念慮の割合は11~66%とされています。
他には摂食障害との関連性も報告されています。
参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21515028/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29268154/
大人までASDと気づかれない要因
女性のASDは、模倣や観察が上手い特徴があり、同じ女性の規範的な行動を模倣し、メディアを介して女性らしさを身にまとうと考えられています。
また、脳機能をMRIで計測した研究では、同じASDでも女性と男性では脳の活動領域に違いがみられたそうです。
これらの要因に加え、認知スキルが高いため、ASDの特徴を意識的に隠しながら言語以外のスキルで(身振り、作り笑顔など)他人と接することができていることが示唆されています。
しかし、女性の場合は男性に比べ言葉でのコミュニケーションが重要視される傾向があります。
そのため、ASDの女性のほうが社会性・友人関係・言語的コミュニケーションの領域において、問題を抱えやすいことが考えられています。(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25039696/)
これらの要因と女性のコミュニケーションにみられる特徴により、女性のASDは社会に適応しているようにみえても、困難を抱えてストレスを溜め込んでしまう可能性があります。
ASDの特性を脳機能から紐解く
脳研究が進歩しASDでは、「大脳皮質」「偏桃体」「脳梁」「小脳」に異常が観察されています。
ASDの脳機能異常はこちらの記事もご参考ください。
ただ、脳は複数の脳領域が相互作用しているため、単純に1つに脳領域が問題となるワケではありません。
また、大脳皮質は左右でも少し役割も異なります。
大脳皮質の左右差
こどもでは大脳皮質の左右のアンバランス(右側の大脳皮質の機能低下)ASDの特徴がみられやすいです。
右側の大脳皮質機能低下の特徴は以下のとおりです。
- 人の気持ちが読み取れない
- 抑揚がない
- 運動の苦手
- 不安感が強い
- 友達に変わっていると思われている
- 不適切な発言が解らず、衝動的に発言してしまう
右側の大脳皮質は、自己の身体感覚の把握、人の表情や感情を読む、社交性などの役割を担うため、機能低下はコミュニケーションや社会性の問題が生じやすいです。
ASDの研究では、大脳皮質のなかでもどの領域が機能的な異常がみられるかを観察されています。
大脳皮質ももう少し分類すると後頭葉、頭頂葉、側頭葉、前頭葉(前頭前野)があり、ASDでは側頭葉の機能低下がコミュニケーションの困難に繋がっていると考えられています。
脳機能から見るASDの性差
確立された脳機能パターンの性差は不明ですが、女性のASDは社会的な情報処理に関与する脳領域(上側頭溝、後部帯状回、前頭前野)が男性よりも活動が高いことが報告されています。
- 上側頭溝⇒顔や目の表情などの情報処理
- 後部帯状回⇒感情の理解
- 前頭前野⇒計画や判断
ASDは柔軟性のなさから強いこだわりや常同行動がみられますが、女性では柔軟性に関わる前頭前野の活動がみられます。
また、感情や顔の表情など情報処理能力もあり、男性に比べ社会生活に柔軟に適応しやすい側面があると考えられます。
活動が低い脳領域は、「偏桃体」「前部帯状回」「視床」が研究で報告されています。
- 偏桃体の活動低下⇒自閉症スペクトラム障害にみられる対人のコミュニケーションに問題が現れやすいです。
- 前部帯状回⇒の役割は多いですが、自己制御や情動反応に関わり、この領域の低下はその場にふさわしくない振る舞いを抑えられないと考えられています。
- 視床は感覚の中継点となるため、機能が上手く働かないと感覚の過敏もしくは鈍麻が考えられます。
参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35633791/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34509922/
感情のコントロールが苦手
研究からは、自分の感情コントロールが難しいことが考えられます。
また、どのように振舞えば周りから良く見られる傾向は把握できても、一人ひとりの個性がみられる対人スキルという面では乏しいと言えます。
例えば、同じ「おはよう」でも挨拶をする場所、相手の気分などでトーンや抑揚などが変わりますが、模倣ができるASDの女性でも理解が困難となり、環境によってはストレスを多く感じることになります。
それが、結果として社会のルールや対人関係で息詰まると自己コントロールも上手くできなくなり、結果として2次障害がみられやすくなるのかもしれません。
感覚過敏
発達障害の特徴に1つに感覚過敏(光がまぶしい、特定の音が苦手、匂いに敏感など)がみられます。
周りに理解がないと環境を調整して、苦手な感覚を遠ざけることができません。
ケースによっては、常にストレスに晒される環境下で仕事や学業を行わなければいけなこともあり、結果として過度なストレスで体調不良を引き起こすことが考えられます。
適切なサポートを受けるためには?
ASDと気づかれず大人となり、「ASDかも??」と思った場合は、まず病院の診断を受けることが重要です。
仮に2次障害を併発した場合、それらの治療に効果がみられないケースもあります。
ただ、ASDと診断されても確立された治療方法もありませんが、生活支援や就労支援などASDの特性を理解してもらえる生活環境や就職先がみつかる可能性があります。
また、ケースによっては心理療法(認知行動療法)によって、心身のストレスが軽減することもあります。
脳機能は変わることができる
脳は神経可塑性と呼ばれる構造的および機能的変化がみられます。
ASDの神経可塑性の研究は以下のとおりです。
ASDを持つ32人の青年および成人【平均年齢は19.3歳(範囲は14~33歳)】に対して顔に表現された基本的な感情の明確な認識を教えるコンピューターベースの認知介入を行った。
右扁桃体、 左紡錘状回 、および内側前頭前皮質 の反応に改善がみられ、社会的認知活動(表情で感情を読み取る)に効果的であることが示唆された。
参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25792694/
ASDと診断された22名と定型的な発達を示す24名の青年期から成人期を対象にコンピューターを使った聴覚に基づく認知訓練プログラムを受けた後、PETとMRIで脳内のドーパミンD2/3受容体の分布や脳部位間の機能的な結びつきを測定
ASDの参加者では、ドーパミンD2/3受容体が減少し、社会的コミュニケーションの困難さや社会脳ネットワークの変化に関連していた。
限られた方法ではありますが、神経可塑性を利用したアプローチに効果を示す研究もあります。
カイロプラクテイック心でも神経可塑性を考慮してたアプローチをBBIT認定療法士が行っています。
カイロプラクテイック心の大人【女性】ASDサポート
カイロプラクテイック心は、発達障害に有効なBBIT認定療法士です。
そのため、ASDの特徴を理解し、サポートさせていただきます。
例えば、ASDであると消化器症状、身体症状(頭痛、複数個所が痛いなど)などがみられることも多く、一般的な施術では筋骨格系へのアプローチがほとんどになります。
しかし、ASDの特徴を理解していると視覚機能や脳機能も含めたアプローチが可能となります。
身体症状へのアプローチは、ASDの根本的な問題解決にはなりませんが、まず1つでもストレスに感じることを軽減させる目的でもご利用ください。
大人のASDとこどものASDのアプローチの違い
大人とこどものASDへのアプローチの大きな違いは、「限定的な神経ネットワークへのアプローチの必要性」「長期的な計画」の2点が挙げられます。
こどもは脳の発育段階でもあるため、早期の介入によってASDの診断が無くなるこどもがいることも研究で報告されています。
そのため、大脳皮質の左右のバランスを評価し、機能低下してると考えられる側を活性化させるアプローチによって変化がみられることが多いです。
しかし、脳の発育段階ではなく大人の場合は、複雑な神経ネットワークを形成している脳に対して左右にこだわらず限定的な神経ネットワークへのアプローチが必要と考えられます。
研究でも聴覚や視覚を利用して認知を形成する神経ネットワークにアプローチしています。
限定的な神経ネットワークへのアプローチ
女性のASDで機能低下がみられる後帯状回は、ストループテストで活性化することが報告されており、ストループテストに近い認知トレーニングが有効となる可能性があります。
また、その人の悩みの背景や機能的に向上させた方が良い神経ネットワークがあれば、ストループテストに似た手法でカスタマイズしたアプローチも行います。
例えば、ASDでは小脳の機能的な問題も示唆されており、小脳の機能(より正確な動き)を使いながら、ストループテストでみられる認知トレーニングを組み合わせます。
エクササイズとしては、小さい折り紙を上からヒラヒラと落ちるように作り、赤色は右手、黄色は左手、青は両手、緑は手を叩くなどを行います。
長期的な計画
研究のほとんどが8~12週/週3~5日の日数をかけて、プログラムされたリハビリを実施し、効果の判定を行います。
そのため、少なからず12週(約3ヶ月)の計画で対応していくことが重要となります。
ただ、12週間全く変わらないワケではなく、日常生活に大きな変化はみられなくとも身体評価でみられる小さな変化がみられます。
神経可塑性は、頻度が重要にもなるため、ご自宅でもケアを継続していくことで、より変化がみられます。
アプローチ方法
脳の可塑性を利用したアプローチとなります。
カイロプラクティック
関節や筋肉へのアプローチは、体性感覚への刺激となり、それが大脳皮質への刺激となります。
また、呼吸機能を回復させ神経系にも十分な酸素を供給するためにも筋骨格系へのアプローチも有効です。
頭蓋骨療法を含めた迷走神経アプローチは、副交感神経を優位に活動させやすく呼吸と合わせて行うとストレス軽減につながります。
感覚エクササイズ
脳機能への刺激は、運動、ビジョントレーニングなどが有効であり、神経可塑性を促すために重要です。
さらに認知トレーニングを加えてダブルタスク、トリプルタスクなどを行っていくことで、日常的な困りごとを解消する土台を築ける可能性があります。
カイロプラクテイック心では評価に基づき、活性化させた脳領域の機能に合わせてエクササイズをプログラムいたします。
感覚エクササイズについてはこちら
感覚を受取る視床も含めて脳は振動しており、神経ネットワークに重要と考えられています。
その振動を正常とするために、体幹部の安定は重要である可能性があます。
この理由として個人的な見解ではありますが、体幹のコントロールは脳機能を介しているため、脳機能を健全に保つめやすとして体幹の安定は必要と思われます。
実際ASDの感覚過敏は、サポート期間(3~6ヶ月)で軽減することも少なくありません。
食事サポート
ASDでは、とくに胃腸障害を併発していることもあります。
また、腸は脳と相互作用があるため、脳機能を向上させるためにも腸内環境を改善させていくことは有効です。
そのため、ASDでは腸内環境を改善させていく研究報告も複数あります。
そのため、カイロプラクテイック心では食事サポートも行っています。
ASDのサポートについて詳しく知りたい方は、オンラインでのご相談も可能なため、ご利用ください。
よくある質問
おとなのASDについてよくある質問をまとめました。
大人でもコミュニケーションの悩みが解決できますか?
A.本人の努力も必要です
カイロプラクティック心では、脳機能の問題を解決することが目的となります。
それが結果としてコミュニケーションで感じていたストレスの軽減、相手との共感性が上がる可能性はあります。
しかし、コミュニケーションの書籍が多くあるようにコミュニケーションスキルと考えた場合、努力は必要となります。
病院での治療に効果を感じられませんが良くなりますか?
A.効果を感じてもらえる可能性はあります
病院でのASDに対する確立された治療方法はなく、心理療法にも効果を感じられないことも多いようです。
カイロプラクティック心で評価する前庭系は不安障害と関連する研究報告もあり、前庭系が正常に機能するようにアプローチしていくことで不安感が減ることがあります。
このように機能が低下している脳領域を活性化させていくことで効果を感じてもらえることがあります。
ただ、カイロプラクティック心のアプローチで全てが解決するとは考えておりません。
脳機能が活動的になることで、今まで効果を感じることのなかった心理療法が有効に働くケースもあります。
また、家族や友人と関わっていくことでコミュニケーションに感じるストレスが徐々に薄れていくケースもあるかと思います。
カイロプラクティック心は、精神や認知など土台となる脳機能をより良い状態にすることで困りごとが解決していくこともありますが、他の療法も踏まえて効果を感じていただけるようサポートしていくスタンスです。
体調の不調も合わせてみてもらえますか?
A.ぜひご相談ください
慢性的な症状は、脳機能の影響も受けていることが多く、脳機能にアプローチしていくことで改善していくこともあります。
まずは体調を良くしていくことも大切と考えておりますので、ご相談ください。
気づかれにくい女性の大人のASDをサポート
ASDの大人の女性は2次障害も併発しやすい傾向もあり、適切なサポートが必要と考えられています。
心理療法は重要な役割を果たしていますが、脳機能の向上も合わせていくことで効果が得られやすいと考えられます。
また、ストレス過多で体調を崩す前に身体症状を少しでも減らし、体調を維持していくことも重要ではないでしょうか。
カイロプラクテイック心では、消化器症状、頭痛、身体の痛みなども対応しておりますので、よろしければご相談ください。
グレーゾーンであっても診断はできませんが、お悩みに合わせた脳機能からみたアプローチ、施術はいたします。
日常のストレスや困りごとを少しでも解消して、快適な生活を手に入れましょう。
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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