「肩甲骨はがし」という言葉をよく聞くようになりました。
メディアでは様々な効果があるとしていますが、本当でしょうか?
ここでは、筋骨格系のスペシャリストであるカイロプラクターが、肩甲骨はがしについて詳しく解説していきます。
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肩甲骨はがしとは
「肩甲骨はがし」は医学用語ではなく、定義はありません。
一般的に肩甲骨はがしは、肩甲骨周りのコリ固まった筋肉やファシア(筋膜)を剥がすイメージでその周辺を緩めることをさします。
実際の動画はこちら
肩甲骨はがしの効果
肩甲骨まわりの筋肉やファシアが緩むことで様々な効果が得られるとされています。
- 肩こり・首こりの解消
- 姿勢改善
- ダイエット効果
肩甲骨が固くなっているチェック方法は?
一般的なチェック方法は、以下のようなことができなければ肩甲骨周りが固いと考えられています。
- 背中に手をまわして両手が届く
- 背中に手をまわして合掌ができる
- 腕を外側から上げて肩の水平ラインより60°程度あがる
- 体の前で手と肘をくっつけた状態で肘が顎の高さまで上がる
参考サイト
肩こりを楽にする簡単メソッド!今話題の“肩甲骨はがし”って?
肩甲骨の基礎知識
肩甲骨は、鎖骨とのみ骨同士の関節をつくり(肩鎖関節)、筋肉(ファシア)と結合(胸郭肩甲関節)して動きます。
そのため、他の関節にはない特殊な動きもみられます。
- 挙上
- 下制
- 内転
- 外転
- 上方回旋
- 下方回旋
肩甲骨につく複数の筋肉が協調して動くことによって、これらの動きが可能になります。
肩甲上腕リズム
肩の外転は(体の外側から腕を上げる)肩甲上腕リズムと呼ばれ、肩甲骨と上腕骨(腕の骨)が連動しています。
詳しくは動画をごらんください。
また、肩甲上腕リズムだけではなく、腕を後ろに引いたり、前にだしたりするなど腕の運動と肩甲骨は連動しています。
そのため、先に紹介したチェック方法は、腕の動きをみて肩甲骨の固さを評価しています。
肩甲骨はがしを検証
ここまでの解説では、筋肉をほぐせば肩甲骨が動きそうと感じる人が多いのではないでしょうか。
しかし、「肩甲骨はがし」だけで肩こりや姿勢は改善することがほとんどないと考えて良いです。
肩甲骨の位置は背骨も重要
実際に行うとわかりますが、背骨を丸めたり、伸ばしたりすることによって、肩甲骨の位置が変わります。
肩甲骨の位置を変えずに背中を丸めたり、伸ばしたりすることのほうが困難です。
そのため、少なからず背骨の動きもチェックし、エクササイズも行う必要があります。
背骨のエクササイズは、キャット&ドッグがお勧めです。
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肩甲骨は胸郭とも連動
引用元:ネッター解剖学アトラス
「背骨と関節をつくる肋骨」「肩甲骨と関節をつくる鎖骨」を含む胸郭の動きは、肩甲骨に影響を与えます。
また、肩甲骨の最深部は肋骨を動かす肋間筋となります。
胸郭をつくる関節の動きは小さく見落とされがちですが、これらの関節の機能を改善することで肩の動きが改善することもあります。
言い換えれば、先に解説した肩甲骨の固さチェックで行う動きが、胸郭の動きを見直すと改善がみられることも少なくありません。
姿勢は肩甲骨はがしで変えられない
姿勢は、中枢神経系(脳)がコントロールしています。
そのため、肩甲骨周りの筋肉がほぐれても一時的には姿勢が変わったように見えるかもしれませんが、長期的にみると変わりません。
猫背の基準が曖昧であり、実際は平背で頭部が前方に突き出した姿勢(フラットバック姿勢)を猫背と表現されることが多く、肩甲骨同士を近づける姿勢は逆効果です。
そもそも、医療従事者も含めて姿勢の知識が浅く、肩甲骨はがしをして姿勢が変わることは疑問でしかありません。
姿勢について詳しくはこちら
肩甲骨が柔らかければ良いワケでもない
柔らかいからといって、肩こりを感じないこともありません。
アスリートではとくに適切に筋肉が働くことが大事であり、適度な筋肉の緊張度も必要です。
そのため、肩甲骨と肋骨の間に指が入ったからと言って何かが解決するとは言えません。
そして、肩甲骨裏につく筋肉だけではなく、色々な筋肉が付着し様々な方向に力が加わるため、どの筋肉が問題かを評価する必要があります。
評価によっては、映像でみられるような肩甲骨裏に手を入れなくとも違う筋肉へのアプローチにより、背中の後ろで手を組めることもあります。
肩甲骨はがしは不必要?
体の解剖学、生理学を考えると肩甲骨はがしによって、肩こりや姿勢の改善に効果があるとは言えません。
ただ、紹介されている肩甲骨のストレッチ、エクササイズは1つの運動としては良いです。
実際、デスクワークをしている人は体を動かす機会が少なく、手軽な運動として始めていくことはお勧めします。
もちろん、ステップアップとして下肢を使った運動(散歩、ジョギングなど)も行っていくことは言うまでもありません。
肩甲骨はがしのデメリット
流行、話題になると知識と技術の浅いセラピストも「肩甲骨はがし」を行うようになります。
そのため、無理やり肩甲骨と肋骨の間に指を入れようとし、かえって症状を悪化させることもあります。
「筋膜リリース」も剥がすと表現されることもあり、強い力でゴリゴリするイメージですが、筋肉は強い力で行えば緩むということはありません。
筋膜リリースについて詳しくはこちら
臨床的に「○○して良くなる」ということは一切なく、個人差もありアプローチする方法は十人十色です。
そのため、「肩甲骨はがし」で肩こりが楽になる、姿勢が改善するといった宣伝は疑ったほうがよいでしょう。
肩甲骨付近にコリや痛みを感じる理由
生理学的に頸部の問題(とくに中部頸椎)が、肩甲骨付近のコリ感や痛みを生じさせます。
そのため、カイロプラクティック的なアプローチとして、肩甲骨はがしをしなくても肩甲骨付近のコリや痛み改善させることが可能です。
カイロプラクティック的なアプローチとしては、頸椎を含め背骨全体のアライメントを修正することが第一選択となります。
そして、肩甲骨の可動域の低下、筋機能の低下が認められる場合、それらが改善されるよう筋肉の伸長性の回復およびエクササイズを指導します。
筋肉の伸長性が低下しているのは、肩甲骨はがしでもられるような背部ではなく小胸筋(肩甲骨を前方に引く)が多くみられ、筋機能の低下は前鋸筋、肩甲下筋へのエクササイズを指導する傾向があります。
なぜ肩甲骨付近の筋肉が固くなる?
肩甲骨付近を固くさせる生活背景は人それぞれですが、背部を過緊張させている(日常的に姿勢を気にしている、力を抜く感覚がないなど)呼吸が肩を上下させて行う傾向があります。
そのため、肩甲骨はがしを受けて楽になったとしても日常的に肩甲骨付近を固くする習慣が身についていることによって再発しやすくなります。
姿勢の認識の間違いにより、常に背筋を伸ばそうとするあまりに本来ある胸部の後弯が消失するほど背部を緊張させている人は多いです。
さらにそれらの姿勢により呼吸が浅くなり、頸部付近の筋肉を使用して努力呼吸(肩を上下させた呼吸)をすることになります。
このようなことから、肩甲骨が固いと感じる人は、生活習慣の見直しおよび、呼吸や姿勢を見直すエクササイズが重要です。
呼吸エクササイズについて詳しくはこちら
肩甲骨はがしの前に生活習慣を見直すべし
肩甲骨はがしは、1つのリラクゼーションと考えましょう。
肩こりや姿勢改善など、何かしらの悩みがあって肩甲骨はがしだけをすれば何とかなるというのは幻想です。
その前に生活習慣を見直したほうが現実的です。
例えば、「運動不足であれば、運動習慣を身に着ける」「スマホを長時間見るなら時間を制限する」「夜中までダラダラ起きずに睡眠時間を確保する」など悪習慣を変えるだけでも体調は良くなります。
肩甲骨はがしに限ったことではありませんが、方法論よりも身近なことから変えていくのほうが経済的かつ健康を手に入れる近道です。
カイロプラクテイック心は、「肩甲骨はがし」といったメニューは存在しませんが、肩こりや首こりを解消させることは可能です。
人によっては、栄養や視覚の問題あったり、呼吸が上手く機能していないことがあることも多く、多角的な視点でみることがクライアントのためにもなると考えています。
肩甲骨はがしにこだわらず、症状を改善させたい人は、一度カイロプラクテイック心にご相談ください。
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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