ゴールデンエイジ理論では、子供の運動神経が著しく発達する期間(12歳くらいまで)の過ごし方が、子供の運動神経、成人の運動能力に大きな影響を与えるとされています。
そして、この時期を過ぎると思うように発達せず、スポーツスキルを身につけることが難しくなると言う指導者も少なくありません。
では、この時期により多くの技術を詰め込んだほうが良いのでしょうか?
そして、この時期の運動学習が一生を左右するほど重要なのでしょうか?
結論から言えば、ゴールデンエイジ理論を重視する必要はありません。
「なぜ?と思った」「自分のこどもが他のこどもより劣って見える」「こどもが頑張っているスポーツを応援したい」などこどものスポーツ教育に興味のある人はぜひ続きをお読みください。
この記事は機能神経学(脳科学の分野)を学び、発達障害のこどもの苦手をサポートしているBBITの認定療法士です。
スポーツチームの体の使い方の指導経験もあり、臨床現場でも10代のこどもから「サッカーが上手くなって楽しい」「バレーボールのスパイクが上手くなった」など脳機能を向上させるアプローチでスポーツの上達をサポートしています。
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スキャモンの成長曲線の問題
ゴールデンエイジ理論やこどもの成長によく持ち出されるのが、スキャモンの成長曲線です。
このグラフをみると子どもの神経は5、6歳まで急激に上昇し、12歳では神経系の発達はほぼ100%で大人と同じになります。
そのため、このグラフを引用し神経系が急激に発達する12歳までの間は、色々なことを身につける最適な期間と説明されることが多いです。
しかし、このスキャモンの成長曲線には色々な疑問点があります。
スキャモンは人類学者(解剖学教授)

スポーツ医学の専門家ではない解剖学者によって発表されたスキャモンの成長曲線は、運動神経が著しく発達するという説に言及していません。(スポーツが盛んなヨーロッパではスキャモンの成長曲線は知られていないそうです)
そのため、ゴールデンエイジ理論で解説されるような12歳までの過ごし方が運動神経に大きな影響を及ぼし、それ以降はスポーツスキルを身につけることが難しいという根拠に乏しいです。
また、スポーツ科学が発展している現代で1928年に発表されたスキャモンの成長曲線を重視すること自体に疑問も感じます。
質ではなく量
スキャモンの成長曲線は、量についてグラフ化されたものです。
量については、筋肉や骨格が身長が大きくなると共に量が増えていく一般型が理解しやすいと思います。
そして、ゴールデンエイジ理論で解説されている神経は脳に例えると解りやすく、12歳前後で脳の大きさはピークを迎えそれ以上は大きくならないということです。
仮にこれ以上は大きくならないと神経発達が止まるのであれば、学習面でも習得が難しいと考えるのが自然ではないでしょうか。
また、脳の大きさと神経発達が相関するのであれば、大きな生物(ゾウ、クジラなど)の知能や運動能力は人よりも高くなるはずです。
しかし、12歳を超えても学習面ではさらに難しい数学、物理などを学び習得していくことが通常であり、スポーツスキルを身につけることが難しいという説明には無理が生じます。
ここからは脳科学と発達の視点からゴールデンエイジ理論の問題点およびこどもにとって必要なことを解説しています。
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