小学生の低学年から、将来を期待したくなるようなセンスをみせることもありますが、成長期になり突然伸び悩んだり、思うようなプレーが出来なくなることがあります。
しかも、自分で感じるだけではなく周りから見ても明らかにプレーの質に変化がみられます。
このようにある日突然、成長期のこどもが思うようなプレーができなくなる現象は、クラムジーの可能性が高いです。
クラムジーは、学術的な研究もほとんどなく、効果的な対処方法はありません。
また、2年程度続くこともあると言われており、周囲の理解がないとスポーツ自体を辞めてしまうケースがあります。
ここでは、クラムジーによって大好きなスポーツを1人でも辞めさせない願いをこめて、クラムジーについて詳しく解説していきます。
そのため、スポーツチームの指導者、成長期のお子さんをお持ちの親御さんにはぜひ読んでもらいたいです。
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クラムジーとは
クラムジー(Clumsy)は英語で「ぎこちない・不器用な」といった意味があります。
そして、スポーツ現場においては成長期にみられる一時的な運動能力および身体能力の低下を指します。
ちなみに運動能力はスポーツの技術的な能力であり、身体能力は筋力、持久力、バランス能力、柔軟性など身体に備わっている能力です。
このような特徴から、サッカーや野球、テニスなど競技特有のプレーが思うように出来なくなるわけではなく、走ったり、跳んだりする能力まで低下します。
欧米と日本での違い
欧米ではクラムジー(Clumsy)のことを「clumsy child syndrome:不器用なこども症候群」と呼び、現在ではDevelopmental coordination disorder【DCD】を示しています。
DCDについて詳しくはこちらをご参考ください。
そして、日本で呼ばれているクラムジーについて欧米では、adolescent awkwardness【思春期不器用】よ呼ばれています。
このようなことから、クラムジーの研究は現在DCDとして継続されています。
日本で呼ばれるクラムジーは、「adolescent awkwardness」と認識され、基本的なメカニズムは不明とされています。
ここからは、「adolescent awkwardness」で示唆されていることについて解説していきます。
なぜ成長期にクラムジーがみられるの?
成長期になると1年間に身長が、10~15cm伸びても不思議なことではありません。
身長は身体部位によって成長量に違いがみられ、出生後から成人にかけて頭部が2倍、体幹部が3倍、上肢が4 倍、下肢で5倍程度大きくなるそうです。そして、成長と共に四肢が顕著に長くなります。(参考文献:身体の発育と発達)
四肢が長くなることで、バイオメカニクス(慣性モーメント)の変化が生じます。
成長期におけるバイオメカニクス変化を例えると、長さの違うバット、ゴルフクラブなどを振ると長い方が重さを感じると思いますが、それと同じようなことが成長期にみられることが予想されます。
また、バイオメカニクス的変化だけではなく筋肉の柔軟性の低下も顕著にみられることが特徴です。
スポーツのスランプは成長期に関わらず起こり得ますが、クラムジーは急激な身体形態の変化が影響していることが考えられます。
そのため、急激な身長の伸びがみられる時期においては、一時的に走力やジャンプ力が落ちることは統計的にもみられます。
脳の影響【感覚運動機能の影響】
脳は筋肉に指令を送り体を動かしているだけではありません。
各関節、筋肉などの固有受容器(センサーの役割)、視覚、バランス感覚などあらゆる感覚から情報を収集し、瞬時に処理して、適切な運動ができるようにコントロールしています。
例えば、サッカーでボールを蹴るときに足はこの角度で、ボールはこの位置にきたら蹴るなど一つ一つ意識していてはプレースピードについていけません。
そのため、過去の運動経験や練習によって、瞬時に関節の位置、相手の位置、自分の体勢などをあらゆる感覚を使って情報を収集し、瞬時に運動につなげることが重要です。
個人的な見解ではありますが、急激な成長に伴い筋肉や関節の固有受容器にエラーが生じてしまっている可能性があります。
脳の成熟は部位によっては青年期まで続くため、脳と末端の相互作用にも影響がみられると考えられます。
そのため、急な成長に脳および固有受容器(感覚器)がついてけていない状態とクラムジーが説明されるのではないでしょうか。
このようなことから、神経系の評価もおこなうことが、クラムジー対策には必要と推測されます。
すでにクラムジーの徴候がみられる場合の対策
プレーの質が落ちたとしてもクラムジーであれば、決して手を抜いているワケではありません。
そのため、チーム全体(指導者、選手、親御さん)でクラムジーと呼ばれる一時的に運動能力および身体能力が落ちる現象があることを理解しておきましょう。
クラムジーの子供に対して「練習不足」「手を抜いている」などはとても酷な言葉となります。
長い目で見守る
クラムジーは、最長で2年ほど続くケースがあると言われています。
そのため、その期間にやる気をなくしてしまうことも少なくありません。
しかし、プロサッカー選手の本田選手、清武選手もクラムジーによって悩まされたそうですが、現在では一流アスリートとして活躍されています。
このように、クラムジーが過ぎれば、さらなる上を目指すことができます。
本人がまだやる気があるにも関わらず、周りがいち早く諦めることは止めましょう。
クラムジーの時期にできることもあるため、長い目で復活の日を目指して見守ってあげてください。
シンプルな動きを繰り返す
スポーツ競技の動きは基本的な動き(シンプルな動き)を組み合わせたものです。
しかし、最近ではスポーツ競技開始年齢が早くなったことで、スポーツ競技に特化した動き以外の動作が未熟であり、シンプルな動きできないことも多いです。
例えば、スクワット1つとっても股関節を曲げる動きを見ただけではできず、反復させてやっとできることも少なくありません。
「シンプルな動きができないのにスポーツ競技の動きができるの?」と疑問に思う人は多いですが、反復的に手取り足取り指導してあげれば、ある程度できるようになってしまいます。
そして、指導されることの少ない「走る」「飛ぶ」「這う動作」が上手くできないこどもは多いです。
実際、スポーツ少年団にシンプルな動き(ハイハイ、立ち幅跳びを連続で行うなど)を指導したとき、県でもトップクラスのレベルであっても出来ていませんでした。
クラムジーがみられる場合は、運動の基本に立ち返り、走る、跳ぶなどシンプルな動きで構成されたトレーニング、および基礎的な技術練習を行うことが大切です。
成長期前のクラムジー対策
クラムジーに限ったことではありませんが、スランプに陥ったとき過去の体験(スポーツでは運動体験)をヒントに自分に合った身体の使い方を思い出すそうです。
しかし、スポーツを開始する年齢が早くなったり、幼少期の身体を使った遊びが少なかったりすることで運動体験が少ないこどもが増えています。
そのため、幼児期は身体を使った遊びを取り入れ、スポーツを始めるにしても色々なスポーツを体験(チームに入れなくてもご家族で楽しめば良いです)させておくことが大切です。
自分が行っていた競技であると手取り足取り指導してしまいがちですが、身体の大きさや技術を習得するまでの感覚は個人差があり、残念ながら参考になっていないことが多いです。
教えることは最小限にし、こども自身にどうすれば上手くなるかを考えさせた方が、運動体験が増えると共に「こうすれば出来た」という成功体験によって、コツを身につけ技術が定着しやすくなります。
カイロプラクティック心のクラムジー対策
カイロプラクティック心は、機能神経学をベースに中枢神経を含めた神経系の評価およびアプローチを行います。
感覚エクササイズ
運動の出来る、出来ないは、先天的な部分もありますが、多くは後天的な学習が重要と考えています。
そのため、成長期によって異常が生じた感覚も学習によって再度獲得できます。
このようなことから、競技を続けていくことでクラムジーを克服できるケースがあるのではないでしょうか。
運動を脳のメカニズムから説明すると、感覚(視覚、バランス感覚、固有受容器など)を受け取った脳が処理し、適切な運動を筋骨格に伝えます。
ケガ後(捻挫、靱帯断裂、手術など)に競技復帰しても以前のパフォーマンスを発揮できない要因の1つに脳が処理するまでの過程に問題が生じていることがあります。
カイロプラクテイック心では感覚を脳が処理するまでの過程を一人ひとりにあったプログラムで再学習することを行います。
感覚エクササイズについて
呼吸および迷走神経アプローチ
呼吸機能に問題があれば、当然ですが持久的な運動に影響がみられます。
持久系のスポーツ(サッカー、陸上の長距離など)でも呼吸機能の低下によって、息を短時間しか止めれないケースもみられます。
呼吸機能は骨格(とくに胸部)であったり、口呼吸などの問題があります。
なかには呼吸の自律機能の悪影響を受けていることもあり、迷走神経(副交感神経に影響する)にアプローチすることもあります。
交感神経が過剰すぎると筋肉の緊張状態が常にあり、心拍や呼吸数も多くなりやすいです。
また、ストレスへの耐性も弱く、とくに親御さんや指導者からのプレッシャーから思うようなプレーもできなくなります。
ストレスは、運動調整を行う大脳基底核に悪影響を及ぼすため、運動障害の原因となります。
そのため、迷走神経アプローチおよび迷走神経を活性化させる生活習慣のアドバイスをさせていただきます。
大脳基底核
大脳基底核は、運動調整に重要な領域です。
また、今までの運動体験をストックしておく場所でもあり、ここの引き出しの多さがスポーツのあらゆる場面に柔軟な対応できるようになります。
クラムジーとは違いますが、幼少期から同じスポーツしかしていない場合、運動体験の乏しさから新たな技術の習得、スランプからの脱却が難しいケースも少なくありません。
クラムジーと考えられるケースにおいて、「走る」といった単純な動きのなかにも「裸足で走る」「相手の動きをみながら走る」など少しずつ違う条件設定し、運動体験を増やしていくことも重要と考えられます。
また、大脳基底核の役割が大きい運動(衝動抑制、手動金と拮抗筋とのバランスなど)を交えながら、本人が楽しいと思えるエクササイズを行っていくことも大切です。
大脳基底核の運動役割についてはこちらもご参考ください
クラムジーから立ち直ろう
急激に身長が伸びている時期は先にも解説したとおり、パフォーマンスが落ちやすいです。
これは指導者や親御さんが理解する必要があり、成長期に合わせた指導やフォローを心がけて接する必要があります。
なかには身長が急激に伸びておらず、神経ネットワークが未熟であることが結果としてパフォーマンスを落としてしまうケースもあるかもしれません。
また、本来右利きであってもスポーツの有利性を考えて左に変えることもありますが、かえって脳が混乱してしまい左右のアンバランスが生じてしまうことがあります。
このような神経系のエラーを修正していくことで、クラムジーの状態を1日でも早く脱却できるようにお手伝いさせていただきます。
この記事について質問などがありましたらオンライン相談をご利用ください。
お越しいただけるのであれば、パフォーマンスが上げられるようサポートいたします。
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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