血液検査では貧血と判定されないケースでも、体に鉄が不足している鉄欠乏がみられることがあります。
鉄欠乏は、病院では貧血と診断されていないため、原因のわからない体調不良(慢性的な疲労、頭痛、月経の経血量が多いなど)に悩まされている人も少なくありません。
なかには、鉄のサプリメントや鉄剤を補給しても体調が悪化してしまうこともあります。
その理由としては、他の栄養素の不足、腸内環境の問題などがみられるからです。
このようなことから、鉄欠乏であっても鉄だけ補給することで体調が回復しないケースが多く見られます。
ここでは、鉄欠乏でみられる体の問題、その対処法を栄養面を中心に解説しています。
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貧血とは?
貧血は、血液検査の結果でみられるヘモグロビン値(血色色素)の基準値を下回った状態を指します。
WHOの貧血基準は、以下のとおりです。
- 成人男性は13.0g/dl未満
- 成人女性と小児(男女)は12.0g/dl未満
- 高齢者(男女)は11.0g/dl未満
貧血の症状
一般的に基準値より1~2g/dl低いくらいでは、自覚症状が出ることはないと言われています。
男女とも10g/dl以下になると「めまい」「息切れ」などの症状が現れ、貧血と診断されるようです。
他の症状としては以下のとおりです。
- 頭痛
- 疲労感
- 動悸
- 倦怠感
貧血の治療
貧血の原因は、「腫瘍」「白血病」などの疾患が起因していることもありますが、それ以外は食生活の指導や鉄剤(3~4ヶ月)の服用が行われます。
鉄剤では改善されないケースもある
鉄剤の副作用として、吐き気、胃痛、下痢などの胃腸障害、まれに発疹がみられることがあります。
このようなことがあると注射や鉄剤の種類を変更して治療が続行されることもありますが、隠れ貧血と同様の問題を解決したほうが良いケースもあります。
血液検査の問題点
血液検査の基準値は、健常者の95%が含まれる範囲です。
また、20〜60歳くらいの健康な人の検査成績をもとに上限と下限の2.5%ずつを除外したものです。
このようなことから、ほとんどの人が入る設定であるため、基準値の範囲内でも症状が現れるケースも少なくありません。
血液検査の基準値を超えてくる場合は、すでの病気を発症していることも多く、予防の観点からみても基準値に近づく前に対策を立てていくことが望ましいです。
隠れ貧血
隠れ貧血は、血液検査で貧血の基準を満たしていませんが、身体の中の鉄が不足している状態を指します。
鉄が不足していることが予測されるのはヘモグロビン値以外にもあり、一般的にフェリチン(体内の貯蔵鉄の量)が15mg/ml以下は「隠れ貧血」「潜在性鉄欠乏」と判断されます。
フェリチンは、鉄結合性たんぱく質であり、全身に分布して鉄を保存しています。
そして、血中の鉄が不足するとフェリチンに蓄えてある鉄が放出されフェリチン値が減少するため、貧血の予備軍であることが予測できます。
隠れ貧血の症状
隠れ貧血では、頭痛、めまい、耳鳴り、慢性的な疲労、不眠、息切れなど貧血でもみられる症状が現れます。
また、以下のような身体所見もみられることがあります。
- 体力の低下
- 皮膚や爪が弱くなる
- 舌や口の中が荒れる
- 食欲低下や氷を好んで食べるようになる
- イライラしやすくなる
- 足がムズムズする
- 顔色が悪い
- 目の下にくま つめが割れやすい
- 手足が冷たい
- 月経時の経血量が多い
- 階段を上り下りすると息切れする
- 足がむくんでパンパン
- 知らないうちにあざができている
鉄欠乏に多様な症状がみられる理由
鉄は、酸素を全身に運搬するヘモグロビンに必要な材料です。
そのため、鉄が不足すれば全身に酸素が供給されず、酸欠状態で生活することになります。
酸素はエネルギーを生み出すためにも必要であり、脳を含めた神経ネットワーク正常に保つためにも重要です。
このようなことから、鉄不足は「酸素不足」「血流量の不足」「神経ネットワークの異常」などがみられるため、多様な症状がみられることが考えられます。
例えば、血流量が低下し頭部への血流も十分でなくなれば、めまい感が現れます。
また、酸欠になると酸素をより取り込もうと口呼吸(努力呼吸)となり、頸部付近は過緊張となり頭痛も併発しやすくなります。
さらに交感神経を優位に働かせ血流量や酸素を確保しようとするため、筋肉も過剰に働きやすく結果として疲労感、倦怠感の症状も引き起こしやすくなります。
鉄を補給するだけでは鉄欠乏が解決しない理由
鉄は、そもそも吸収率が10%しかないため、効率よく吸収する必要があります。
そのため、消化吸収が十分に機能していることが大切であり、胃の消化機能の低下(胃酸分泌の低下や)腸内環境の悪化があれば、吸収率は低下し、結果として鉄を補給しても効果がみられません。
思春期では部活動などで激しい運動をするわりに、食生活の乱れによって低血糖(糖質不足)がみられることもあります。
そうなるとエネルギー摂取量が少ない状態で激しい運動をすると、筋肉からIL-6というホルモンの分泌が高くなり、鉄の吸収を妨げるホルモンであるヘプシジンが増え、鉄の吸収を悪くします。
また、糖質はヘモグロビンのエネルギーともなるため、十分な糖質を摂取していないとヘモグロビンが上手く働きません。
ヘモグロビンの生成には鉄以外の栄養素も必要
ヘモグロビンは鉄だけではなく、タンパク質が材料となります。
そのため、タンパク質が不足していればヘモグロビンは十分に生成されません。
また、ヘモグロビンは赤血球に含まれ、赤血球を生成するために必要な亜鉛、ビタミンB12、葉酸が不足することによって酸素の運搬能力が低下するため、隠れ貧血の症状がみられます。
炎症の問題
腸内環境が悪化していると炎症を誘発する物質も発生しているため、それが結果として鉄やタンパク質の吸収を妨げていることがあります。
また、炎症の問題としては口腔環境の悪化による歯性病巣感染、甲状腺の機能低下を起因とする腸内環境の悪化などもあります。
鉄欠乏を改善するには?
ここまで解説してきたように、鉄欠乏は単純な鉄不足だけではなく、他の栄養不良や胃腸の機能低下も関わっていることが多いです。
そのため、併発している所見や他の血液検査のデーターも読み取ることが重要です。
他の栄養不良の所見
他の栄養不良や胃腸の問題がみられる所見としては以下のことがあります。
- 一日に1~2食
- 朝が苦手(なかなか起きられない)
- 胃が痛くなりやすい
- 便秘や下痢が日常的
- 食後の眠気
- 睡眠の質の低下(何度も目が覚める)
- 血圧が低い
- 夕方に眠気がくる
- 偏食(揚げ物が多い、極端な糖質制限、肉を食べないなど)
- 肥満
- 痩せ型
これらの所見がみられると胃の消化機能の低下、腸内環境の悪化、血糖の乱高下(低血糖)、低栄養がみられる可能性があり、鉄だけを積極的に摂取しても改善がみられず、体調が悪化する可能性もあります。
血液検査のデータ
血液検査の結果も基準値ではなく、より範囲を狭くした状態で食事の見直しを考えたほうが良いです。
実際に管理栄養士でも血液検査を読み取り、食事の献立に役立てています。
隠れ貧血で問題がみられる主なデータは以下のとおりです。
- フェリチン⇒低値は隠れ貧血
- MCV(平均赤血球容積)⇒高値は葉酸、ビタミンB12不足による貧血、低値は鉄欠乏性貧血
- 中性脂肪⇒低値はエネルギー不足による脂質を使っている可能性がある(女性は体脂肪15%以下から月経不順のリスクが高くなる)
- 空腹時血糖⇒基準値内でも低すぎると血糖の乱高下がみられる可能性がある
- HbA1C⇒貧血では低値、低血糖
- アルブミン⇒低たんぱく、むくみも多くなる
- 血清亜鉛⇒低値は亜鉛不足
なかには食べている割に数値に問題がみられるケースもありますが、その場合は消化吸収が上手くできていない可能性が疑われます。
食事記録
日常的な食事も参考にします。
現在現れている症状や所見、血液データで考えられる問題、日常的な食事の問題点が一致すれば、それが改善ポイントとなります。
例)痩せ型で中性脂肪の値、空腹時血糖の値が低く、便秘気味、日常的では朝食を食べず、ファーストフードが好きで野菜が少ないケースで朝も起きづらく、倦怠感も強く生理不順もみられる場合
これらを整理すると以下のとおりです。
- 朝食を食べない/空腹時血糖値が低い/朝起きれない⇒血糖の乱効下の可能性
- 痩せ型/中性脂肪の値が低い/生理不順⇒エネルギー不足
- 便秘/野菜、穀物が少ない⇒腸内環境の悪化により鉄の吸収率も低下
このように食生活と栄養記録が一致するポイントがあれば、改善していく必要があります。
また、順序も重要であり、鉄を吸収するために必要な腸内環境を初期に改善していくことが大事です。
鉄欠乏の症状改善は、食習慣、所見、血液検査の内容などを含めて考察することが大切になります。
カイロプラクテイック心の鉄欠乏改善の栄養サポート
基本的には、病院の治療が上手くいかず、原因不明とされた鉄欠乏症状の方の栄養サポートを行います。
体調不良は疾患性のケースもあるため、まずは病院の診断を受けてください。
カイロプラクテイック心では、ここまで解説してきたとおり、カウンセリング(症状の所見、体の状態の把握など)食事記録、可能であれば血液検査の記録をもとの栄養サポートをいたします。
カウンセリング&食事記録
1週間分の食事記録を写真撮影していただき、カウンセリングの2日前までにメールもしくはLINEにて写真を送ってください。
すでに血液検査の記録がある場合も可能であれば、事前に送っていただくようお願いいたします。
これらのデータをもとにカウンセリングを実施し、食事内容の改善ポイントをお伝えします。
食事の見直しは可能な範囲からスタート
急激に食生活を変えることは、余程のモチベーションがなければ難しく、挫折してしまいます。
食生活の変更は継続できることが重要であり、コツコツと積み重ねた先に理想的な食事を無理なく継続できるようになります。
そのため、クライアントとコミュニケーションをとりながら、出来る範囲から改善していきます。
LINE&メールサポート
カウンセリングから1週間は、食事内容についてLINEもしくはメールを利用してサポートいたします。
当初の改善内容も実際に行ってみないと「思ったより簡単」「思ったより出来ない」といったことがわかりません。
実践しながら、改善ポイントを修正していきます。
カイロプラクティック
ストレスで体の緊張が強い、交感神経が過剰に働いているなどがみられるケースは、内臓機能が働きにくい状態です。
そのため、カイロプラクティックのテクニックである内臓マニュピレーション、迷走神経テクニックなどで内臓機能を働きやすくし、ストレス緩和を目指します。
基本的には栄養サポートのみですが、症状が慢性化(6ヶ月以上)しているケースは、身体のストレスも大きいことが多く、カイロプラクティックケアも有効となります。
必要に応じて自律神経の機能を評価し交感神経が過剰に優位な場合は、とくにお勧めです。
感覚エクササイズ
腸内環境の悪化を改善させるためには運動が有効であることは、研究でも報告されています。
有効な運動として中程度(軽く息が切れる程度)の運動を週3回(20~30分)とされていますが、鉄欠乏症状があった場合はこれらの運動は難しいです。
そのため、体を動かしやすくするために姿勢制御や運動制御の向上を目指したエクササイズを提供します。
感覚エクササイズについて詳しくはこちら
隠れ貧血(鉄欠乏)改善させるために食生活を変えていこう
習慣化された食生活を急激に変えることは難しいです。
しかし、栄養バランスのとれた食生活を習慣化できれば、体調不良に悩まされることが確実に減ることは間違いありません。
これから趣味やスポーツを楽しみたい、プライベートを充実させた方は、カイロプラクテイック心で食生活を見直していきましょう。
栄養サポートを中心に行いますが、現れている症状、所見なども踏まえて、エクササイズ、カイロプラクティックでの対応もさせていただきます。
隠れ貧血、鉄欠乏でお悩みの方は、一度ご相談ください。
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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