体位性頻脈

起立性調節障害

体位性頻脈症候群

体位性頻脈症候群は、寝た状態から立位に体位を変換したときに心拍が急上昇し色々な症状が現れます。

症状は個人差も大きく、それぞれの人に合った支援、改善に向けたアプローチなどが必要ですが、経過観察で終わってしまうことが現状ではないでしょうか。

カイロプラクティック心は、自律神経の機能評価、栄養状態、生活習慣など多角的な視点でその人に合った改善方法を提案させていただきます。

ここでは、体位性頻脈症候群の原因や改善方法などを解説していきます。

体位性頻脈症候群

体位性頻脈症候群は、起立不耐症および起立性調整障害といった寝た状態から立ったときに異常を示す病態の一つです。

立った時に異常を示すのは「血圧」「心拍」「血管迷走神経性」であり、心拍が増大(頻脈)する病態を体位性頻脈症候群と呼びます。

広義の意味合では起立不耐症と診断されることもあるようです。

起立不耐症の定義は以下のとおりです。

起立時に交感神経亢進による症状、過剰な心拍増加、脳循環低下による症状が出現するもの

引用元:ロバートソンの自律神経学

また、起立不耐性と同様の病態ではありますが、小児(10代のこども)では起立性調整障害と診断されることがあります。

体位性頻脈症候群の主な特徴

体位性頻脈症候群は、13~50歳で発症し、女性に多く見られます。(とくに出産可能年齢)

また、家族歴が13~25%みられます。

慢性疲労症候群、自己免疫疾患、線維筋痛症など併存する疾患もみられることもあります。

症状

立っているとき、主に以下の症状がみられます。

  • 頭部のフラフラ感
  • 浮動性めまい
  • 前失神状態
  • 動悸
  • 胸痛または不快感
  • 脱力感
  • 立ちくらみ
  • 息切れ

立っていないときでも以下のような症状が現れることもあります。

  • 悪心
  • 下痢
  • 便秘
  • 腹痛
  • 吐き気(嘔吐)

これらの症状に加えて、以下のような関連症状を併発するケースがあります。

  • 倦怠感
  • 頭痛
  • 睡眠障害
  • 体の痛み

これらの症状は、「生理」「食事」「アルコール」「暑さ」「急激な運動」で悪化することが多いです。

体位性頻脈症候群はの症状は、自律神経および脳循環が起因していると考えられます。

診断

体位性頻脈症候群は、自己判断せずに病院を受診する必要があります。

なかにはすべき検査を行はずに精神的な問題とされることもあるため、セカンドピニオンも含めて適切な診断を受けることが大切です。

また、他の疾患との鑑別も必要であり、不整脈学会は以下の検査を推奨しています。

  • 問診(病歴、生活習慣、食事と運動の履歴など)
  • 身体検査(起立性バイタルサインと症状の取得、および心血管系、神経系、自律神経系、およびその他のシステムの包括的な評価を含める)
  • 心電図(心疾患との鑑別)
  • 起立性バイタル

この他にも甲状腺機能疾患、自律神経機能異常、貧血などと鑑別するため、必要に応じて血液検査、自律神経機能検査なども行われることもあります。

診断基準
  • 成人の直立姿勢から10分以内に心拍数が30bpm以上増加します。12〜19歳の青年では、10分以内に40bpm以上の心拍数を上げる必要があります。
  • 起立性低血圧の欠如は、直立姿勢から3分以内に20/10mmHg以上の血圧が持続的に低下することとして定義されます。
  • 6か月以上の起立性不耐性の症状。
  • 急性の生理学的刺激、食事の影響、その他の病状や投薬など、洞性頻脈の明白な原因がないこと。

引用元:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6113123/

体位性頻脈症候群は、持続的な心拍の増加(立位になって45秒以上の心拍増加)がみられます。

また、慢性的疾患であるため、半年以上は症状が継続しいます。

そして、寝た状態で症状が回復し、立位で悪化する典型的な症状がない限り、体位性頻脈症候群と診断されることはありません。

体位性頻脈症候群の機能的な問題

体位性頻脈症候群は一つの特定された問題だけではなく、いくつかの病態が結果として立った時に頻脈が引き起こされると考えられています。

ただ、病態を考慮しても原因を特定していくことが難しいとされています。

体位性頻脈症候群の人を観察すると「神経障害」「高アドレナリン」などがみられています。

神経障害性

下肢に分布する交感神経の活動が低下している結果、循環機能に悪影響を及ぼしていることが研究で示唆されています。

本来なら立ち上がった時に下肢から血液は、心臓に還流されますが、下肢の交感神経が低下することで下肢に血液が溜まった状態となります。

そうなると脳に血流量が足らないことが伝わり、心臓の交感神経を優位にして血液を体に排出しようとする働きにより、結果として交感神経過活動の頻脈を引き起こします。

高アドレナリン性

過剰な交感神経亢進が、頻脈の原因と考えられる体位性頻脈の病態です。

高アドレナリン性は、600 pg / mL以上の立位血漿ノルアドレナリン、10 mm Hg以上の収縮期血圧の上昇、または交感神経活性化の症状(動悸、震えなど)を特徴と報告されています。

ノルアドレナリンは、交感神経を活動させる神経伝達物質です。

ノルアドレナリントランスポーター欠乏

ノルアドレナリンを受け取るトランスポーター(神経伝達物質を再取り込みその神経伝達を終結させる役割)の機能低下によって、血中にノルアドレナリンが過剰になります。

体位性頻脈症候群の家系では、この遺伝子異常が確認されています(ただし、このような機能変異はまれ)

注意したいのはこのトランスポーターを阻害する薬剤は、精神疾患の治療に使われることが多く、服薬による体位性頻脈症候群もみられることです。

肥満細胞活性化障害

一過性に顔面紅潮がみられることが多いです。

関連症状としては、「呼吸困難感」「頭痛」「多尿」「下痢」「悪心嘔吐」などの胃腸障害もみられます。

また、顔面紅潮は長時間の立位および運動、月経前、食事によって誘発されることが多いです。

この障害がみられると、体位変換時に高血圧および高アドレナリン反応が起きやすいとされています。

この機能的な問題が、肥満細胞の活性化なのか交感神経の活性化なのかは不明です。

血液量の減少

体位性頻脈症候群の人には、赤血球および血漿量が少ないことが観察されています。

血症量の減少は、腎臓を介した血圧を上昇させるメカニズムに影響を与えていると考えられ、それが結果として体位性頻脈症候群の症状を呈します。

血漿量の減少は、腎臓の関与する末梢神経および交感神経が起因している可能性があります。

免疫性の炎症

ウイルス感染後に発症することも多いため、自己免疫の問題が考えられています。

体位性頻脈症候群の人は、2~6ヶ月前にインフルエンザ、エプスタイン-バーウイルスなどのウイルスや細菌に感染していることが多かったという報告があります。

最近では新型コロナウイルス後にも体位性頻脈症候群がみられたという症例も報告されました。

脳循環自動調整機能の低下

脳は血圧が変動したとしても、脳循環自動調整機能によって脳の血流は一定を保つことができます。

しかし、体位性頻脈症候群の人は起立性の低血圧がみられない状態でも起立が困難になることから、脳循環自動調整機能の低下がみられるのではないかと考えられています。

体調不良

体位性頻脈症候群の症状は、長時間の安静または宇宙飛行にみられる体調偏移(頻脈、運動不耐性、左心室質量、一回拍出量、血液量の減少など)を伴う人の臨床的な徴候に似ています。

宇宙飛行士について詳細な説明は割愛させていただきますが、無重力空間である宇宙から帰還した宇宙飛行士は、重力下で生活するための機能が低下しており、様々な不調がみられます。

※宇宙飛行士は数ヶ月のリハビリを行い、日常生活に戻ります。

長期間の安静(ベッドに寝続ける)も身体的な機能低下を引き起こします。

体位性頻脈症候群に関わらず、長期間の安静は体調に悪影響を及ぼすことは解ってきたため、最近では手術後も限りなく早い段階でリハビリを開始することが有効とされているのは身体的な機能低下を防ぐためでもあります。

体位性頻脈症候群と自律神経との関係性

体位性頻脈症候群は、過剰な洞性頻脈を伴う起立不耐性です。

心臓を動かす刺激伝導系は洞結節から始まり、そこからのリズム心臓が動きます。

このリズムは、自律神経である交感神経と副交感神経の2つで調整されており、リズムが早くなった状態を動性頻脈と呼びます。

このようなことから、体位性頻脈症候群は色々な体の機能的な問題はみられますが、自律神経が根本的に関与しているといえます。

自律神経は脳を含めた神経系ネットワークでコントロールされていることから、体位性頻脈症候群は中枢神経系(脳)障害である可能性も示唆されています。

中枢神経系と自律神経

自律神経は、脳にある視床下部という領域から始まり、それぞれの組織(血管、内臓、皮膚など)に分布されます。

また、色々な領域から刺激(内臓、感情、感覚器など)が脳に伝わり、そのときの環境に適した身体活動ができるよう交感神経や副交感神経のどちらかが優位に働きます。

脳領域と自律神経は相互作用しており、脳科学が進歩した現代では体位性頻脈症候群の脳の状態を観察した研究も複数あり、「右側の視床と偏桃体」「左側島皮質」などの異常が示唆されています。

中枢神経系のアプローチへの有効性

体位性頻脈症候群の治療方法は確立されていませんが、中枢神経系のアプローチの有効性は報告されています。

アプローチとしては、ヨガ、瞑想、運動療法などが行われており、脳の神経可塑性が、島、大脳辺縁系、および他の皮質自律神経中枢の特定のネットワークの再編成につながり、それによって交感神経過活動が抑えられたと考えられます。

ヨガや瞑想は、大脳皮質(とくに前頭前野)の機能向上、運動療法は内容によりますがプログラム次第では、脳のあらゆる領域に機能を高めることができます。

神経可塑性について詳しくはこちらの記事もご参考ください。

体位性頻脈症候群には運動が有効

体位性頻脈症候群は、確立された薬物療法はありません。

運動によって悪化する可能性はありますが、段階を踏んだ運動療法は体位性頻脈症候群には有効であることが研究で報告されています。

体位性頻脈症候群は、立位で症状が悪化するため、初期の段階は座位もしくは寝た状態から少し状態を起こした姿勢で行える運動を行います。

研究では、水泳、バイク(背もたれ付き)、ボートなどを最大心拍数の75~85%の強度までに抑え、週2~4回(30~45分)を初期段階で行っています。

そして、立位の耐性が保てる段階で、背もたれのないバイク、ランニングなど持久トレーニングを週1回取り入れ、段階的にウエイトトレーニングも行っています。

運動療法を取り入れた体位性頻脈症候群の人は、3か月後には生活の質が大幅に改善されています。

また、左心室の質量の増加、腎臓を介した血液量を維持する指標の改善などもみられています。

カイロプラクティック心での体位性頻脈症候群の対応

カイロプラクティック心は、中枢神経系も含めた神経機能を評価し、神経可塑性を利用してアプローチしていきます。

例えば、立位になるときの姿勢変化時には、前庭ー交感神経反射により下肢に血液が溜まらず心臓に還元される働きがあり、これらの機能に問題が認められれば、前庭系のエクササイズを行っていくことになります。

交感神経の過活動である場合、副交感神経の機能が低下しているとも考えられます。

そのようなケースでは、副交感神経との関りの強い迷走神経へのアプローチおよび迷走神経を活性化させる生活習慣のアドバイスを行います。

運動指導

体位性頻脈症候群は、運動が有効であることから、家庭でもできる運動指導もさせていただきます。

出来る範囲の運動をパルスオキシメーターを利用して脈拍を測定しながら、適切な運動強度を提案いたします。

栄養療法

運動を行うにして適切な栄養がなければ、運動にも無理が生じます。

神経可塑性も栄養不足は、効果的ではありません。

体位性頻脈症候群でみられる症状は、不定愁訴とも類似している部分もあり、栄養療法が効果的である可能性もあります。

栄養療法についてはこちらもご参考ください。

アプローチ方法は起立性調整障害のページもご参考ください

参考文献

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6113123/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7936931/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2914315/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3142863/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3547265/

ロバートソンの自律神経学

 

投稿者プロフィール

カイロプラクティック心
カイロプラクティック心カイロプラクター
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。

病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。

機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。

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