Long COVID中枢神経系から考える

カイロプラクティック心情報

新型コロナウイルス後遺症(長引く不調)中枢神経から考える

新型コロナウイルスの後遺症は、感染後から1年半後の段階でも4人に1人が何らかの症状を訴えているそうです(引用元:NHK新型コロナウイルスサイト

医学的に解明されていないこともあり、確立された治療方法がありません。

研究において認知機能低下、倦怠感など後遺症の症状は、神経学的に影響することが示唆されています。

そのため、カイロプラクテイック心が行う機能神経学的なアプローチが症状の緩和に役立つと考えられます。

ここでは研究論文も含めて新型コロナウイルス後遺症の中枢神経系の影響を書いています。

病院を受診することが大事

「新型コロナウイルスの後遺症かな?」と感じた場合は、まずは病院を受診しましょう。

当然ですが、後遺症ではなく病気を発症している可能性もあり、鑑別診断が重要となります。

なかには、適切な検査をせずに「新型コロナウイルスの後遺症」とするケースもあるため、必要に応じてセカンドピニオンも検討すべきです。

鑑別すべき疾患も多岐に渡るため、検査なしでは新型コロナウイルス後遺症と判断することは不可能と思われます。

鑑別すべき主な疾患は以下のとおりです。

  • 肺炎
  • 心疾患(心不全,心筋炎・心膜炎,不整脈,血栓塞栓症など)
  • 肺血栓塞栓症
  • 皮膚疾患
  • 嗅覚障害

病院で治療可能な疾患が発見されれば、病院治療を優先すべきです。

ただ、新型コロナウイルスの後遺症は、病院で治療が可能な異常が見当たらず症状が現れているため、後遺症で悩まれる方が多いと考えられます。

新型コロナウイルス後遺症でみられる症状

アンケート調査結果は、診断12ヶ月後でも罹患者全体の30%程度に1つ以上の罹患後症状が認められましたが、いずれの症状も時間と共にに有症状者の頻度が低下する傾向は認められています。

12ヶ月後に5%以上残存していた症状は以下の通りです。

  • 疲労感・倦怠感:13%
  • 呼吸困難:9%
  • 筋力低下、集中力低下:8%
  •  睡眠障害、記憶障害:7%
  •  関節痛、筋肉痛6%
  • 咳、痰、脱毛、頭痛、味覚障害、嗅覚障害:5% 

これらの症状のほとんどは(疲労感、倦怠感、集中力低下、睡眠障害、記憶障害、筋肉痛、頭痛、味覚・嗅覚障害)中枢神経系が影響している神経症状です。

他にも中枢神経系が影響していると報告されている症状は、ブレインフォグ、めまい、抑うつ、不安などです。

中枢神経系が影響する原因

新型コロナウイルスに限らず、ウイルスは自己免疫性の症状を引き起こす可能性があります。

自己免疫系の問題で多様な症状が現れる体位性頻脈症候群を引き起こす研究レビューもあります。

体位性頻脈症候群は、立位で急激に心拍が増加し、疲労感、頭痛など多様な症状がみられます。

体位性頻脈症候群についてはこちらの研究レビューもご参考ください。

新型コロナウイルスの後遺症の原因について未解明ではありますが、中枢神経に影響する理由として以下のことが要因としてあげられています。

  • 神経細胞損傷(ミクログリア活性化による炎症)
  • 微小血管血栓症
  • サイトカインや白血球の脳実質への浸潤を可能にする血液脳関門の損傷や調節不全
  • 低酸素
  • 神経伝達の変化
  • 酸化ストレス
  • ミトコンドリアの機能障害
  • 腸内細菌叢の問題(腸脳相関)

これ以外のも心理的、社会的要因が関与している可能性もあると言われています。

脳のPET検査

脳は、栄養(糖)をエネルギーに変換(代謝)していますが、以下の領域に代謝機能低下がみられた研究報告があります。

  • 嗅覚障害⇒海馬傍回および眼窩前頭皮質
  • 疲労感⇒脳幹と視床の中継点となる黒質、右海馬傍回 
  • ブレインフォグを含む認知機能低下⇒前帯状皮質および後帯状皮質、楔前部、および橋

これらの他にも前頭葉、後頭葉、視床、小脳など広範囲に脳の代謝機能低下が観察されているようです。

腸内細菌叢

最近では腸と脳の相互作用(腸脳相関)が、多くの研究で報告されています。

そして、ウイルス感染は腸内細菌叢に影響があると考えられています。

研究では、腸内細菌叢異常がCOVID-19の重症度、便中の SARS-CoV-2 排泄の長期化、および未解決の炎症に寄与する炎症性バイオマーカーの上昇との相関を引き起こす可能性があることが示唆されています。

新型コロナウイルスの後遺症がみられる人において、腸内細菌叢の回復もみられないことから、関連性があると考えられています。

腸脳相関についてはこちらをご参考ください

新型コロナウイルスのリハビリテーション

後遺症には薬に有効な治療効果はなく、現れた症状に対して薬や漢方を処方していく対処療法が一般的のようです。

そのなかでも運動は、これらの症状に対して有効性が示唆されています。

毎日の運動は、COVID-19 および長期 COVID 患者の急性呼吸窮迫症候群の軽減にも寄与する可能性があることを示唆しています。

成人のための身体活動に関する米国のガイドラインでは、中程度の強度の運動を毎週行うことを推奨しています 。(週に150 ~ 300分が最適な運動時間です)

また、慢性的な病状の下では、身体活動が強く推奨されており、 運動以外でも心理および栄養サポートも症状改善につながる可能性が示唆されています。

カイロプラクテイック心の考え

ここは研究ではなく、カイロプラクテイック心の個人的な考えを述べていきます。

新型コロナウイルスに感染すると、隔離期間および心理的苦痛(家族に感染させた、職場を長期間休まなければいけないなど)といった今までにない経験を強いられることになります。

また、未知のウイルスを大切な家族、友人に感染させたり、濃厚接触者にさせたりすれば、不安や心理的な苦痛を受ける人も多いのではないでしょうか。

これだけでも、心理的、社会的要因による後遺症が現れると考えられます。

咳が続くことの胸郭への影響

どのような病態であっても咳が続くことによって、胸郭(肋骨、横隔膜など)に過剰な負担がかかります。

それが結果として、日常の呼吸が浅くなったり、胸部の可動制限になったりするため、日常的に息苦しい、疲れやすい、呼吸に利用する筋肉の過剰負担による頭痛などがみられる可能性があります。

中枢神経系への悪影響

中枢神経を活性化させる条件に「酸素」「栄養(糖)」「刺激」が必要とされています。

感染中は、酸素(低酸素症)や栄養(食欲不振、即席食品中心の食生活など)が不足しやすいです。

立って生活することで関節や筋肉の受容器が刺激されて、それが脳に伝わり適切な運動や姿勢をコントロールされます。

また、考えたり、眼を動かしたり、日常生活はあるゆる刺激が中枢神経系(脳)に伝わります。

寝ているだけでも全く筋肉や関節に刺激を受けていないワケではありませんが、通常の日常生活とは比べものにはならない刺激量です。

宇宙から帰還した宇宙飛行士が立てない映像を見たことある人も多いかと思いますが、その理由の1つとして無重力空間で筋肉や関節に刺激が少ないことがあります。

このように感染中は、中枢神経系に悪影響を与える条件が揃いやすいです。

食習慣の影響

病院で原因が把握できない症状は、食習慣の問題も大きいです。

日常的なミネラル不足(鉄、ビタミンBなど)血糖の乱れなどは、色々な症状が現れます。

食事が影響する症状についてはこちらもご参考ください。

感染前からミネラルが不足しており、感染を機に食欲不振が続けばさらに栄養不良となることが考えられ、結果として後遺症が継続してしまうケースもあるのではないでしょうか。

カイロプラクテイック心の対応

カイロプラクテイック心にとっても、当然ですが新型コロナウイルスの後遺症に対応できるかは未知です。

ただ、数は多くありませんが既存のクライアントに対応はしており、カイロプラクテイック心の知識や技術が役立つのであれば、皆様に利用していただければと思います。

神経可塑性を利用したアプローチ

脳は、神経可塑性と呼ばれる構造的および機能的に変化する性質があります。

4人に1人は後遺症が1年半後まで続くとされていますが、言い換えれば4人に3人は回復しています。

このことから、中枢神経系の症状が現れていても回復している人もおり、神経可塑性を利用したアプローチによって回復を後押しできる可能性があります。

神経可塑性について詳しくはこちら

呼吸機能が低下していると神経可塑性のアプローチも効果がえられにくため、呼吸機能の改善も行います。

段階的な運動サポート

神経可塑性を活性化させるためには、運動も重要となります。

しかし、新型コロナウイルス後遺症の研修会でヒラハタクリニックの平畑光一院長は「軽作業をした後やストレスを受けた後、5~48時間で急激に強い倦怠(けんたい)感などが出た場合は注意が必要」と述べています。

そのため、感染後の「2ヶ月は無理しない」と注意喚起されています。

ただ、「2ヶ月無理をしない=安静」ではありません。

運動は立ってするだけが全てではなく、呼吸であったり、寝ながら行ったりすることも体を回復させるには必要なことです。

HRV(心拍変動)アセスメントの評価装置【NerveExpress】

心拍変動は、自律神経によって動いている心臓を指標とするため、自律神経の機能評価が客観的に行えます。

心拍変動(自律神経評価)

色々な姿勢で自律神経機能を評価できるため、現段階でどのような活動を行っていくことが良いのかがわかります。

例えば、立位で過剰に交感神経が活動してしまう場合は、立って行う作業の負担が大きく倦怠感も現れやすくなるため、寝た状態からの運動を優先します。

また、深呼吸によって本来は副交感神経が有意に働きますが、交感神経が過剰になる場合は、呼吸機能の回復(胸郭の動きの改善、呼吸エクササイズなど)を優先します。

他にも姿勢変化による血圧、脈拍の測定、および運動時の脈拍の変化を評価して、適切な運動を選択していきます。

栄養サポート

カイロプラクテイック心は、栄養コンシェルジュ®2つ星を取得しており、栄養サポートも必要に応じてさせていただきます。

当然ですが、栄養バランスが崩れた食生活は、体の回復を難しくします。

食生活もヒアリングし、必要に応じて食事内容のアドバイスをいたします。

また、血液検査内容でもアドバイスできることもあります(炭水化物、タンパク質不足、嗜好品の摂り過ぎなど)

症状回復するようサポート

後遺症でみられる症状は以下の記事もご参考ください。

カイロプラクテイック心に来られる前は、必ず病院で異常がないかの診断を受けてください。

カイロプラクテイック心では、いくつかの評価を複合的に考え、一人一人に合った施術、運動および栄養サポートをさせていただきます。

体調不良でお悩みの方は、一度ご相談ください。

参考文献

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9616013/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8798975/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9582925/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9947479/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9221935/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9472192/

 

 

投稿者プロフィール

カイロプラクティック心
カイロプラクティック心カイロプラクター
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。

病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。

機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。

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