ジストニアは、中枢神経系(脳)の異常によって、突然手や脚、体などが自分の意思とは関係なく動いてしまう運動障害です。
日本では、局所性ジストニア(痙性斜頸、眼瞼痙攣など)が人口10万人あたり6.1~13.7人みられるという報告があります。
しかし、同地域で10年後に2倍増がみられたため、過小評価されていることが示唆されています。
また、日本では専門医が少なく心因性とされることもあり、数字以上の人がジストニアに悩んでいる可能性があると言えます。
このようなことから、受診した病院によってはジストニアと判断されずに悩まれている人もみられるため、ここではジストニアについて詳しく解説していきます。
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ジストニアの基礎知識
ジストニアは、脳(中枢神経系)の異常によって、自分の意思とは関係なく筋肉が収縮(不随意運動)してしまう運動障害です。
不随意運動による異常姿勢や異常運動パターンは、常に同じで捻じれ運動や振戦(震える状態)がみられます。
また、特定の動作(ピアノを弾く、歌う、字を書くなど)を行おうとすると不随意運動が生じることがあります。
他の特徴として以下のようなことがみられます。
- オーバーフロー現象(ある動作に必要としない筋肉が不随に収縮する)
- 起床時に症状が軽くなる
- 感覚トリック(どこかの部位を触ることでジストニアがおさまる)
- 生死には関わらない
- 知能低下することはない
ジストニアの分類
ジストニアは、発症年齢、発症部位、経過、随伴症状、神経病理、原因によってそれぞれ分類されます。
ここでは発症部位による分類を書いていきます。
局所性ジストニア
一部位のジストニアであり、成人発症の大部分が局所性ジストニアとされています。
主な局所性ジストニアは以下のとおりです。
- 眼瞼痙攣(まぶたがけいれんする)
- 痙性斜頸(頸部の筋収縮により、頭部が意思とは関係なく傾く)
- 痙攣性発声障害(声を出そうとすると発声に必要な筋肉の異常運動により声がでない)
- 書痙(字を書こうとすると手の震えがみられる)
職業やスポーツが要因となってジストニアを発症することもあり、職業性ジストニアと呼ばれることがあります。
ジストニアを発症することが多い職業は、音楽家、スポーツ選手、専門職の職人のように細やかな運動コントロールが必要な職業とされています。(特定の動作によるジストニアがみられるため、動作特異性ジストニアと表現されることもあります。
※基本的には局所性ジストニアがみられますが、分節性ジストニアに分類される症例もみられます。
局所性ジストニアについてはこちらもご参考ください。
分節性ジストニア
隣接する2つ以上の部位がジストニアを発症している。
例えば、頭部と頸部の2ヶ所以上、体幹部と上肢など2ヶ所同時に異常運動がみられます。
全身性ジストニア
体幹+その他の2部位以上のジストニアがみられることが定義されています。
以前は、下肢のジストニアが必須とされていましたが、新しい分類では下肢のジストニアがみられないケースでも全身性ジストニアに分類されます。
多巣性ジストニア
隣接しない部位が2つ以上ジストニアの症状がみられることが定義されています。
頭部と体幹でジストニアがみられる場合は、頸部が間にあるため、多巣性ジストニアとなります。
片側性ジストニア
身体の一側のみジストニアがみられる状態を指します。
原因
現在、ジストニアの明確な原因は不明です。
しかし、病因遺伝子が発見されており、遺伝性ジストニアと呼ばれることがあります。
ただ、病因遺伝子が確認された場合でも発症しないケースがあります。
また、反対に家族内にジストニア発症者がいない場合でも、遺伝子変異によってジストニアを発症するケースがあります。
中枢神経異常
仮説ではありますが、現在は大脳基底核を中心とする運動ループの機能異常が有力な仮説とされています。
この運動ループは様々な脳部位を経由(小脳、脳幹、視床など)しているため、色々な異常が想定され以下が仮説です。
- 直接路の活動亢進および間接路の活動低下
- 周辺抑制の障害
- 感覚運動関連の異常
- 神経可塑性の異常
- ドパミン系、アセチルコリン系の異常
最近では、小脳の問題も仮説に挙げられています。
小脳においては運動の微調整を行うため、小脳の機能低下は微細な運動が難しくなります。
診断方法
中枢神経系(脳)の異常とは言われていますが、MRI、レントゲンなどの画像診断では異常部位が発見できないため、症状の現れ方や家族歴などの問診が中心となります。
また、遺伝性が疑われる場合は、遺伝子検査も行われます。
※画像で判別できるジストニア(主に他の疾患が原因となる2次性ジストニアと言われるケース)もあります。
これらの他には、神経学検査(腱反射の亢進、小脳症状の有無など)他疾患が伴うジストニアではないかを鑑別する臓器障害の検査、血液検査なども行われることがあります。
ジストニアと類似した以下のような疾患もあるため、鑑別診断も重要です。
- チック
- 代償性頭位異常(滑車神経麻痺、前庭神経異常)
- 骨関節・軟部組織の異常(ばね指、軸関節異常、リウマチなど)
- 先天性筋性斜頸
- 脱感覚神経
病院治療
神経外科、神経内科などを受診することになります。
病型やジストニアがみられる範囲によって、治療方法は異なります。
一般的に多くみられるのは、内服治療の処方ですが、治療効果が確立した薬はありません。
ボツリヌス毒素注射
眼瞼痙攣、痙性斜頸において、保険が適用される治療方法です。
ジストニアの原因となる筋肉を突き止め、適切な量を適切な間隔で治療を進めていくことが重要とされています。
※筋電図や超音波検査を用いることが推奨されています。(過度に打ちすぎると抗体が生産され治療ができなくなります)
他の注射の療法には、MAB(muscle afferent block)療法があり、筋肉内に純エタノールと局所麻酔薬を注射します。
筋紡錘の多い口を開ける筋肉には、効果が高いとされています。
手術
病型によって有効な手術方法があります。
〇深部脳刺激療法(Deep Brain Stimulation:DBS)
全身性ジストニア(一次性、二次性、遅発性)に有効とされています。
薬剤性のケースでは、除外項目がなければ推奨されています。
〇視床の凝固術
一側の局所性ジストニアで動作特異性(職業性)のジストニアがみられる場合は、有効とされる報告があります。
〇選択的末梢神経遮断術
頸部のジストニアにおいて、ボツリヌス注射の効果がみられないケース(手術後も含む)に限り行われることがあります。
ジストニアかなと疑ったら
ジストニアを疑ったら、自己判断はせずに病院へ行ってしっかりと診断してもらいましょう。
ただ、専門医が多いとは言えないため、なるべく大きな病院を調べて行ったほう良いかもしれません。
カイロプラクティック心にこられたジストニアと診断されたクライアントの話では、色々な病院を行ったにも関わらずジストニアと診断されるだけではなく、「クセ」とされることも少なくありせん。
そして、最終的に遠方の総合病院でやっとジストニアと診断されます。
「遠くまではちょっと・・・・」という人でも、かかりつけ医の内科や整形外科ではなく、神経外科、神経内科は受診してください。
ただ、ジストニアと診断されても治療効果がみられないこともあります。
そのようなケースは、機能神経学的に評価しアプローチすることでジストニア症状が軽減する可能性もあるため、カイロプラクティック心に一度ご相談ください。
カイロプラクティック心は神経機能を評価してアプローチしています。
参考文献:ジストニア診療ガイドライン
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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