ボキボキと鳴らす整体、カイロプラクティックは効果があるのでしょうか?
結論から言えば、ボキボキと鳴らすことに意味はありません。
首は極端に捻じれば「ボキボキ」と音は鳴りやすく、セラピストが無知で技術が未熟な場合はケガのリスクも高いです。
まず、どうしてもボキボキと鳴らしてほしい人は、優秀なセラピストを探す必要がありますが、優秀な人ほどボキボキと鳴らすことに執着することはありません。
また、日常的に「ボキボキ」と鳴らしている人は、すでに固有受容器と呼ばれる関節や筋肉の状態を脳に伝える感覚器が正常ではない可能性が高く、ボキボキと鳴らすほど体に悪影響を与えます。
技術があっても知識のないセラピストは、体への悪影響を考慮することがないため、その場の気持ち良さだけで悪循環に陥る可能性が高いです。
この記事を書いているカイロプラクティック心は、適正教育を受けた安全性の高いカイロプラクターと認められた資格(国内で600人程度)を保持しています。
バキバキとした整体に興味がある人は自分の身を守る意味でもぜひ、続きをお読みください。
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首をボキボキ鳴らす手技は危険
首をボキボキ鳴らす手技は医学的に危険と考えられており、各医学会や厚生労働省から危険性が指摘されています。
インスタやYouTubeでよく見る「首ポキ」は危険
整形外科的にお勧めできないスラスト法と呼ばれる手技ですが、米国心臓協会や脳卒中学会などが過去に声明を発表し、厚生労働省も危険性を指摘していることはマジで知られて欲しい
脳卒中や動脈の解離を引き起こす可能性があること論文的にも報告がある
— おると🔨🐦整形外科医 (@Ortho_FL) November 22, 2022
なぜ首をボキボキする手技は、危険性があるのでしょうか。
その理由としては、頸椎(首の骨)を通る血管があり、首をボキボキする手技によって椎骨動脈にダメージを与える可能性があるからです。
引用元:ネッター解剖学アトラス
図のように椎骨動脈は、頸椎の横突孔と呼ばれる穴の中を通り、脳に血液を供給しています。
構造上の問題で、頸椎を回旋させると椎骨動脈が引っ張られ狭窄した状態となります。
引用元:図解整形外科学検査法
頸椎の構造上、回旋(横を向く動き)は伸展(上を向く動き)側屈(首を横に倒す動き)を伴うことで、最も回旋可動域が広がります。
そのため、急激にこの動きを操作すれば、初心者でも首をバキバキ鳴らすことが可能です。
しかし、椎骨動脈の狭窄も伴うため、血管障害のリスクが高くなります。
実際、極端な頸椎回旋の操作によって、椎骨動脈解離を引き起こした事故もあり、それが各学会や厚生労働省が危険性を示すことにも繋がっていると思われます。
危険なスラスト法に注意
危険なスラスト法ほど首をボキボキ鳴らすことは簡単です。
危ない方法もいくつかありますが、InstagramやYouTubeで多く見られるのは首をクルッと回すような操作です。
また、さらに危ないのはその操作に顎が上を向く(頸椎の伸展)ことが加わると過剰な頸部の回旋となるリスクが高く、血管を傷つけてしまう可能性があります。
なかにはスラスト前になぜか首を一度緩めてから首をクルッと回すような操作をすることもありますが、無駄な加速が加えられるため組織を傷つけやすいです。
一般の人では解りずらいですが、かなり危険な方法でバキバキと音を鳴らすことをパフォーマンスとして行うセラピストもいることは注意が必要です。
身体評価は必須
カイロプラクティックは「検査に始まり検査に終わる」という言葉がるように、身体評価を必ずします。
そのため、整体やカイロプラクティック受ける際、身体評価をしないお店はケガのリスクを考えていないと言えます。
とくに頸椎の身体評価は必須であり、身体評価なしに頸椎をボキボキならすような手技を行うと、先に解説した危険性を顧みず行っています。
個人的にはそのようなセラピストの施術は、絶対に受けません。
首バキバキを絶対にしてはいけない人
カイロプラクティックを学ぶ上で、頸椎のスラスト法のリスクを知ることは必須であり、以下のような疾患の人は首をバキバキされてはいけません。
- リウマチ
- 脳疾患
- 脳底動脈不全
これらの疾患がなかったとしても、頸椎を伸展、回旋、側屈した状態から正面に向いたときに「眼振」「フワフワした感じ」がみられるケースも首をバキバキするような手技を行うことは禁止です。
首以外はバキバキならしたほうが良い?
首以外の部位は、血管へのダメージはなくリスクは低いです。
ただ、力任せに行った場合は靱帯を痛めたり、骨折させたりするリスクは伴うと考えられます。
このような事故は、毎年のように報告されています。
しかし、この事故は手技が悪いのではなく、教育を受けていないセラピスト(国家資格である柔道整復師なども含む)が引き起こしていることが多いです。
バキバキ整体のメリットは?
SNSでみるとバキバキとされることで、メリットがあるように感じるかもしれません。
しかし、残念ながらバキバキと鳴らすことを目的とした場合、メリットはないと考えて良いでしょう。
ここまで解説してきたように、骨格の構造的にも大きなストレスを加えている可能性があります。
また、日本の法整備、教育の観点から、正しい知識と技術を持ち合わせたセラピストの数が圧倒的に少ないため、まず真っ当なセラピストに出会うほうが困難です。
仮に「神の手」「芸能人やスポーツ選手が通う」といった宣伝していたとしても、コミュニケーションが上手いだけで知識や技術に乏しいことも少なくありません。
クチコミサイトも当てにならないケースもあります
個人的には、バキバキ鳴らしてほしいだけでお金を使うことに無駄としか感じません。
教育に問題がある
カイロプラクティックは世界で法制化されていますが、日本では民間療法であり知識に乏しく技術が未熟であるセラピストが多いです。
教育を受けていない日本のセラピストが、ここまで解説した頸椎の構造やリスクを知らず、首をバキバキ鳴らすことを目的とした手技を提供すれば、事故が起こるのは当然であると考えられます。
InstagramやYouTubeでも「バキバキ整体」「首ポキ」でタグ付けされているものが多く見られますが、危険なやり方が多いです(フォロワーや登録者数が多い人でも例外ではありません)
また、柔道整復師、理学療法士、鍼灸師などの国家資格を取得していたとしてもこのような手技は学ばないため、危険な手技を提供しているケースも多く国家資格を取得しているから安心というワケではありません。
安全な首のスラスト法はある?
頸椎のスラスト方法は、屈曲方向にも操作し過剰に回旋および側屈しないようする必要があります。
危ない頸椎のスラスト方法は頭を回旋させながら行っていますが、本来は屈曲方向をいれた回旋および側屈で動かない位置にセットすればそれ以上の回旋させる必要がありません。
また、関節面を意識して力を瞬間的に加えることで安全なスラストが可能です。
このように頸椎の構造を理解し、より安全なスラスト方法はありカイロプラクティックアジャストメントの有効性を示唆した論文は複数あります。
そもそもバキバキと音を鳴らす必要性はなく、頸椎スラストの目的を達成することは可能です。
バキバキと鳴るのはなぜ?
自分での首をひねったり、背中を捻じったりすることで「バキバキ」と音を鳴らす経験がある人も多いのではないでしょうか。
このようなことから、専門性がなくともバキバキと音を鳴らすことができます。
では、どのようにして音が鳴るのでしょうか?
骨と骨をつなぐ関節部分は、膜に覆われてその中は滑液と呼ばれる液体で満たされています。
そして、その中の気泡がはじけたときに音が鳴るとされています。
このようなことから、関節の音が鳴ったからと言って構造的に何かが変わったわけではないため、バキバキと音がなる必要性はないのです。
カイロプラクティックは骨の歪みを直しているの?
カイロプラクティックは、骨の歪みを直しているワケではありません。
そのため、ズレた骨を戻して音を鳴らすことが目的になっているセラピストは3流以下でもなく素人です。
バキバキと鳴らすようなテクニックの本質は、高速で関節に伸長を加えて固有受容器(腱紡錘)の生理学的反応により、筋肉を弛緩させます。
また、振動刺激を脳に伝える固有受容器(パチニ小体)にも刺激が加わるため、姿勢や筋肉の緊張度などの変化がみられます。
カイロプラクティックを科学的に説明するのであれば、中枢神経系への徒手的なアプローチです。
神経機能への影響
「骨の歪みを直して神経圧迫を改善させる」というカイロプラクティックのコンセプトはありますが、この考えは古典的です。
科学の進歩により骨の歪みが直接的に神経を圧迫されることはないと言われています。
個人的な解釈として以下のことが考えられます。
各関節、および筋肉には多くの固有受容器(体の位置を脳に伝えるセンサーの役割)があります。
カイロプラクティックの施術によって、関節の可動性が向上し過剰な筋収縮が解消されることで、脳へのインプットも変わり、中枢神経系からのアウトプットにも変化がみられます。
それが、結果として姿勢が変わったり、痛みが軽減します。
バキバキと鳴る効果は全くない?
基本的には、バキバキと音が鳴らなくとも施術効果は変わりません。
バキバキとされたら「気持ちが良い」「痛みが軽減した経験がある」などがあると、心理的には好影響を与え結果として痛みが軽減されたり、姿勢が変わったりする可能性があります。
日常からバキバキ音を鳴らしている人は要注意
日常からクセのように体をバキバキ鳴らす、もしくはバキバキ鳴らさないとスッキリしないという人は、体の感覚に狂いが生じている徴候と考えられます。
本来、バキバキと関節を鳴らす行為は、日常生活に必要性はありません。
どちらかと言えば、体にダメージを与える行為です。
しかし、それでも体をバキバキとしたくなるのは、関節の位置覚、筋紡錘を含めた固有受容器に異常がみられるからです。
固有受容器に異常がみられるということは、無駄な力を必要とするため、コリや筋肉の固さ、必要な筋緊張を保てないといった問題が生じやすくなります。
その結果、コリや筋肉をほぐしたい感覚となるため、バキバキと関節を鳴らして固有受容器に刺激を入れたくなります。
日常的にバキバキと関節の音を鳴らしてしまう人が、さらにバキバキ整体に行けばスッキリはするかもしれません。
しかし、固有受容器は悪化することになり、何の解決にもならないです。
症状が現れやすくなる
臨床的に、症状が現れやすくなります。
筋肉自体に張り感がなくとも、日常的に筋肉のコリを感じていることがあります。
むち打ちによる慢性症状がみられる方は、固有受容器(とくに関節位置感覚)に異常がみられることがあり、首をバキバキ鳴らす人は同じような状況に陥りやすいです。
固有受容器の異常はめまいの一因となりますが、臨床的にめまいを発症前は首をよく鳴らしていたという方もいました。(めまいが治まるにつれて首を鳴らす癖が消失したそうです)
一般的な整体やカイロプラクティックは、固有受容器に注目して施術を行わないため、さらに筋肉をゴリゴリしたり関節をバキバキ鳴らし固有受容器を乱す可能性があり注意が必要でしょう。
固有受容器を回復させるためには
固有受容器を回復させるためには、運動(エクササイズ)が必須です。
とくに深部筋群(多裂筋、頚長筋など関節を安定させる小さい筋肉)を刺激するエクササイズが有効です。
ウエイトトレーニングでもこれらの筋群は刺激可能ですが、固有受容器に異常がみられる場合においては深部筋をターゲットにしたエクササイズを行うことがケガ予防にもつながります。
人によっては、筋肉の伸長および収縮感、皮膚の識別感覚など固有受容器を含む体性感覚を再学習させる必要もあります。
目的が大事
バキバキと音が鳴る整体やカイロプラクティックが全て悪いとも言えませんが、知識や技術が未熟である可能性もあり、ケガをするリスクはあります。
とりあえず鳴らしてほしい人は、ケガのリスクがあることを承知の上で「バキバキとしてもらえるか?」を聞いてみると良いのではないでしょうか。
症状が悪化しても自己責任にはなりますが。
カイロプラクテイック心は、基本的に「バキバキ」として欲しいというご要望にはお応えできません。
基本的にはという言い回しは、施術によっては鳴ってしまうこともありますがバキバキすることを目的としていないということです。
先に解説したようにバキバキと音が鳴らないこともありますが、カイロプラクティックアジャストメントは行っています。
症状を改善させたい人で、身体評価を行ったうえでカイロプラクティックアジャストメントが必要と考えられるケースにおいてはいわゆる「バキバキ整体:音が鳴るかは不明)をすることもありますので、一度ご相談ください。
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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