ブレインフォグは、新型コロナウイルスの後遺症の1つとして一般的に広まりました。
ただ、生活スタイルや他の疾患が起因してブレインフォグはみられる症状であり、新型コロナウイルスの後遺症として現れるだけではありません。
ブレインフォグにみられる症状は多様であり、カイロプラクテイック心にもブレインフォグでみられる症状を訴える人も相談にこられます。
ここでは、ブレインフォグの原因と対処法について書いていきます。
ブレインフォグ【brain fog】とは
ブレインフォグは、医学的に定義されたものではなく病名でもありません。
また、不明確なことも多く、「脳に霧がかかった」と表現されるように、認知機能の影響を及ぼす症状がみられます。
一般的に馴染みのある表現を用いるとすれば、お酒に酔って「思考がまとまらない」「発言を覚えていない」寝不足による「集中力の低下」「ボーとしている」という状態です。
ただ、二日酔いや一時的な寝不足は、一過性の症状であるために問題はありませんが、ほぼ毎日のように脳に霧がかかった状態になると生活に支障をきたすブレインフォグと言えます。
ブレインフォグがみられる疾患
日本では新型コロナウイルスの後遺症として知られていますが、以下のような疾患でもみられます。
- 慢性疲労症候群
- 筋痛性脳脊髄炎
- 線維筋痛症
- 頻脈姿勢症候群(起立性調節障害の1つ)
- セリアック病
- 過敏症(グルテン過敏症)
- アルツハイマー病の初期症状
- ASD(自閉症スペクトラム障害)
- 全身性肥満細胞症
参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4490655/
ブレインフォグの症状
ブレインフォグの症状は、一言でいうなら認知機能障害です。
認知機能は知能機能を指し、学問の分野によって少し違いがあります。
認知とは理解・判断・論理などの知的機能を指し、精神医学的には知能に類似した意味であり、心理学では知覚を中心とした概念です。心理学的には知覚・判断・想像・推論・決定・記憶・言語理解といったさまざまな要素が含まれますが、これらを包括して認知と呼ばれるようになりました。
引用元:e-ヘルスネット【厚生労働省】
このように認知機能は幅広い機能があります。
そのため、ブレインフォグの症状は多様であり、主に以下のような症状がみられます。
- 物忘れ
- 思考の困難
- 集中力の低下
- 憂うつ
- 言葉がでてこない(コミュニケーションの困難)
- 精神的な疲労感
- 作業に時間がかかる
- 頭が真っ白な状態
- ぼーっとする
- 他人の言っていることを理解することが難しい
- 疲労感
- 注意散漫
- 文章を読んでも理解が困難
- 混乱する
- イライラする
- 眠気がひどい
参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3896080/
ブレインフォグという独立した病気ではないため、訴える症状の中には孤独感、喪失感など一般的なうつや不安症にみられる症状もあるようです。
ブレインフォグの原因
ブレインフォグは、ここまで挙げてきた疾患にみられる症状ではありますが、二日酔いや寝不足などでもみられる症状であるように生活習慣が原因と考えられるケースもあります。
また、疾患を発症しないまでもブレインフォグを発症させる原因もあると考えられます。
睡眠不足
睡眠不足が脳に与える影響は大きく、アルツハイマー病のような神経疾患と睡眠不足は相関関係があるという複数の研究で示唆されています。
このようなことから、睡眠不足によってブレインフォグのような認知機能障害が現れても不思議ではありません。
スマホの見過ぎ
スマホの見過ぎは、前頭葉(認知、判断などに重要な領域)の低下が研究で示唆されています。
最近では「スマホ脳過労」と称して、スマホの見過ぎは記憶力や意欲の低下につながると警鐘をならす専門家もいらっしゃいます。
肥満
肥満は神経精神障害(うつ、統合失調症など)に関連すると研究で示唆されています。
また、慢性的な炎症を引き起こす誘因とされ、それが結果として脳の炎症にも関与していると考えられています。
生活習慣でいえば、運動不足および食事の栄養バランスなどの問題です。
炎症
脳にみられる炎症性分子は、ブレインフォグを含む神経精神障害の原因の1つとして考えられています。
脳に炎症性分子がみられる原因はハッキリわかっていませんが、腸脳相関で説明されることもあります。
また、他の原因としてストレス、カビなどが示唆されています。
ストレス
過剰なストレスは、前頭葉の前頭前野の機能を低下させます。(引用元:ストレスと脳(東邦大学)
前頭前野は集中して作業したり、精神的な制御に関わったり、ワーキングメモリーとしても働きます。
また、自律神経機能の中枢となる視床下部や感情に関わる偏桃体、ホルモンバランスに関わる下垂体などの制御も失われ様々な症状が現れます。
「ストレスのせい??」と感じる人も多いかもしれませんが、過剰なストレスは脳機能のネットワークに悪影響を及ぼすことが科学的にも証明されています。
過敏症
グルテン過敏症の症状の1つにブレインフォグが、調査によって報告されています。
グルテン過敏症は、グルテン(小麦)を食べることによって胃腸障害を含め、様々な症状が現れます。
過敏症においては、グルテンだけではなく他の食材(牛乳、卵、コーンなど)でもみられるケースもあり、過敏症のみられる食材を食べないことで体調が回復します。
ブレインフォグの治療法はある?
ブレインフォグの研究は進んでおらず、明確な治療方法は確立されていないそうです(動画をご参考ください)
ブレインフォグだけが発症することは少ないと考えられるため、疾患であればそれらの治療を進めていくことになります。
ただ、ここで挙げさせていただいた疾患は、確立された治療方法はなく病院では改善されないケースも少なくありません。
そのため、生活習慣や食生活の見直しも大事になってきます。
ブレインフォグの対処法
先に解説したとおり、ブレインフォグに有効な治療法はなく効果的な薬もありません。
そのため、ブレインフォグの原因と考えられるライフスタイル、脳機能の問題に対処していくことが大切になります。
生活習慣の見直し
睡眠時間を確保することは、脳機能を改善するうえでとても重要です。
不規則な生活を送っているようであれば、起床時間を同じにして8~9時間の睡眠時間を確保することから始めます。
ただ、昼間もダラダラと寝るのではなく、規則正しく生活することによる体内時計の正常化も脳にとって大切です。
また、睡眠の質を上げるためにも運動が重要です。(運動は認知機能や不安、うつなどの症状改善にも効果的)
もちろん、色々な症状が現れているなか運動が難しいケースもあるため、ストレッチや立つ、座るといった簡単な運動から始めていくことも良いです。
デジタルデトックス
現代は体調不良であれば、さらにスマホやテレビ、ゲームなどの時間が増えてしまう可能性があります。
しかし、スマホ、ゲーム、テレビなどの見過ぎはネガティブな研究報告が複数あり、脳機能にも悪影響を与えることも示唆されています。
仕事でパソコンを使用することは仕方ありませんが、他の時間は極力スマホ、ゲームなどは避けましょう。
動くのが辛ければ読書、動けそうであれば散歩、簡単な体操などの時間にしたほうが有効です。
※読書は認知機能低下リスクを防ぐ効果が報告されています。(1)
参考文献1
Chang、Y.、Wu、I。、およびHsiung、C。(2021)読書活動は、高齢者の認知機能の長期的な低下を防ぎます:14年間の縦断研究からの証拠。International Psychogeriatrics、 33(1)、63-74。doi:10.1017 / S1041610220000812
ストレスコントロール
ストレスを無くすことは不可能です。
ストレスを感じつつも上手く付き合い、脳機能を正常に保っていくよう行動するかが重要です。
本来ならストレスに左右されない考え方、ストレスを感じない時間の確保(趣味、楽しい時間など)を身に着けていけると良いです。
しかし、それが難しい人も少なくはないため、ストレスをコントロールする手法をご紹介します。
瞑想(マインドフルネス)
瞑想(マインドフルネス)は、前頭前野を活性化させ、脳に好影響を与えることが複数の研究で報告されています。
まずは1分からでもよいので、毎日継続して行うと良いでしょう。
ヨガ(呼吸)
呼吸は神経機能を向上させていくうえで、とても大事です。
息を吸って呼吸を止めることを40秒できない方は、呼吸の機能が低下していると考えられます。
ヨガは呼吸の機能を取り戻すうえでは、とても有効です。
また、片側の鼻から息を吸う呼吸法もありますが、鼻から呼吸することは大脳機能(前頭前野が含まれる領域)を健全に保つために有効となります。
栄養の見直し
必要な栄養素が不足している、過敏症のある食材を摂取していることのよって、結果としてブレインフォグの症状が現れる可能性もあります。
栄養検査は、専門の医療機関で行うことをお勧めします。
栄養に関しては、こちらの記事もご参考ください。
ブレインフォグにおいては、ルテオリンの有効性が研究で示唆されています(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4490655/
カイロプラクテイック心のブレインフォグ対処法
カイロプラクテイック心は、脳の機能面に注目してアプローチします。
ブレインフォグがみられる疾患に関してはこちらもご参考ください。
脳(中枢神経系)は、神経可塑性と呼ばれる構造的および機能的に変化する性質があります。
神経可塑性を利用したリハビリは、脳卒中や脳震盪などを対象に行われており、それをブレインフォグに応用していく形となります。
神経可塑性について詳しくはこちらをご参考ください
前頭前野の機能向上
そもそも、呼吸の機能が落ちている人も少なくありません。
当然、呼吸のトレーニングも必要ですが、肋骨を含めた胸郭の構造的な問題で呼吸機能が低下していることもあり、カイロプラクティック施術によって胸郭の機能を改善させます。
また、頸椎の関節運動の異常により、脳に向かう血管を圧迫することによって脳の血流循環が低下していることも考えられる場合は、頸椎の施術を行います。
それらに加え、前頭前野に刺激を与えるエクササイズ(眼球運動、言語エクササイズなど)を指導します。
小脳の機能向上
ブレインフォグの脳の状態をMRIで撮影した研究では、小脳虫部に異常がみられたと報告されています。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7454984/
小脳は運動機能に関わるだけと考えられていましたが、最近の研究によって認知機能にも関わることが解ってきました。
小脳虫部は、主に体幹の平衡感覚をコントロールしています。
リハビリとしては、バランスボードでの姿勢制御の学習や眼球運動などがあります。
小脳中部はとくに学習能力がある領域と考えられており、損傷さえしていなければリハビリを行えば行うほど効果は見えやすいです。
ブレインフォグをまず理解しよう
現代の医学では、すぐに治る症状とは言えませんが、他の症状が併発していないかを判断するうえでも病院を必ず受診しましょう。
そして、できる範囲から生活習慣を見直していくことも大事です。
なかには後遺症で悩まれている方もいるかと思いますが、個人的に病気はキッカケであり、今までの悪習慣が症状という形で表現されたと考えています。
もちろん、生活習慣に問題がない人もいるかと思いますが、真面目がゆえにストレスがコントロールできなくなった人もいるのではないでしょうか。
病院でもなかなか改善されないケースでも、違う視点から見ることで解決の糸口が見つかることもあるため、カイロプラクテイック心は神経機能面からサポートいたします。
投稿者プロフィール

- カイロプラクター
-
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
最新の投稿
変形性股関節症2023年10月31日股関節が痛い【股関節インピージメント】
栄養2023年10月28日花粉症対策 予防から考えよう
ジストニア2023年10月21日イップス、ぬけぬけ病、もたれなどスポーツ関連ジストニア
発達障害2023年10月11日自閉症スペクトラム障害のこだわり強いのはなぜ?
この記事へのコメントはありません。