腰痛を予防、改善していくには、筋力トレーニング、ストレッチなどでケアしていく意識が大切です。
とくに筋力トレーニングには腰痛改善に限らず、「死亡率の軽減」「不安の解消」「睡眠の質の向上」など健康を維持向上させるポジティブな研究報告が多数あります。
筋トレに関する科学的な知見はこちらのブログをご参考ください。
しかし、筋トレの方法はネットで多数検索できるうえ、何が正しい情報かわからない人が多いです。
また、自己流で筋力トレーニングを始めた結果、腰を痛めたという人も少なくありません。
ここでは、筋トレを始めるにあたって基礎的な考えを解説していきます。
そのうえで筋トレを開始いただくことでケガ予防、症状の改善、スポーツのパフォーマンスアップの役立てていただければ幸いです。
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腰痛、ケガ予防には体幹トレーニング??
サッカー日本代表の長友選手が本を出版され体幹トレーニングがさらに広まりましたが、誤解されているところもあります。
そもそも、体幹とはどこを指すのでしょうか?
体幹の定義においては研究者によって「上半身だけ」「腰の部分まで含める」など違いがあります。
そのため、体幹トレーニングでネット検索しても腹筋を中心に紹介をしていたり、お尻の部分(大殿筋、中殿筋)などのトレーニングも紹介されていることがあります。
体幹深部にある筋に対するトレーニングが腰痛緩和に有効という研究報告があります(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4395677/)
このような研究報告もあることから、インナーマッスルの体幹トレーニングが紹介されていますが、研究では4種類(バランス、安定化、分節の安定化、運動制御)の方法が実施されています。
しかし、一般的な体幹トレーニングでは全ての方法を紹介しているものはありません。
インナーマッスル=体幹ではない
いつも思うのだけど「インナーマッスルを鍛えましょう」だの「インナーマッスルを鍛えておけば怪我は予防できる」とか言っている人はどこの筋肉をインナーマッスルだと言っているんですかね?
— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) October 17, 2016
ダルビッシュ有投手がTwitterで発言しているようにインナーマッスルを鍛えれば良いというのは都市伝説に近いです。
過去には一部のスポーツトレーナーが「筋肉隆々のアウターマッスル(表層筋)ではなく、しなやかなインナーマッスル(深層筋)を鍛えましょう」と言うようになりました。
また、アスリートもインナーマッスルトレーニングが効果があると言うようになりました。
スポーツ選手だけでなく、一般のダイエットにおいても体幹トレーニングが推奨されるようになりました。
しかし、ウェイトトレーニングを積極的に導入したラグビー日本代表、サッカーのいわきFC(社会人リーグのいわきFCがJ1のチームを延長戦で走り勝って勝利した)などが結果を残しはじめました。
ただ、インナーマッスルが不要というワケではなく、ウエイトトレーニングによってインナーマッスルも活動して体幹を安定させながら四肢の筋力も向上させることができます。
そのため、ウエイトトレーニングだけで十分インナーマッスルも鍛えられています。
インナーマッスルトレーニングのデメリット
体幹のインナーマッスルと呼ばれる主な筋肉は多裂筋(背骨同士をつなぐようにつく)横隔膜(呼吸時に働く)腹横筋(腹筋群の深部)骨盤底筋群(肛門、尿道に関与する)腸腰筋(腰部、骨盤部から股関節につく)があります。
腸腰筋以外はとても小さな筋肉であるため、それぞれ単体でトレーニングすることは難しいです。
また、それらに効果的とされるトレーニング方法はありますが、トレーニング時の姿勢がとても重要になるため、自己流で行っても効果を感じられないことが多いです。
知識がない人ほどウエイトトレーニングを無理のない範囲で行ったほうが自然とインナーマッスルもトレーニングできる可能性が高いです。
ドローイン
ドローインは、お腹を凹ませて腹横筋を活動させる目的にトレーニングであり、腰痛予防・スポーツのパフォーマンスアップなどの目的として提唱されています。
腹横筋が腰痛予防になるとして注目されたのは、腰痛歴のある人はない人に比べて腹横筋の収縮タイミングが遅いという研究報告があったからです。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8961451)
しかし、トレーニング指導の専門職であるS&Cコーチの河森氏は以下のように述べています。
腹横筋をアイソレートして鍛える必要性がわからないし、アイソレートできるのかどうかも怪しい所です。
もし、ドローインエクササイズを実施する事によって、四肢を動かす動作中の腹横筋発火のタイミングを早める事ができて、その結果体幹の安定と腰痛予防につながるという研究結果があれば、腰痛予防エクササイズとしてドローインを実施する意味はあると思いますが、今のところそのような研究を私は知らないので、私自身はドローインエクササイズを指導したことは一度もありません。
引用元:S&Cつれづれ
河森氏はトレーニングコーチとして体幹強化やパフォーマンス向上を目的としては取り入れないということです。
個人的にもドローインは指導しません。
理由としては、腹を凹ますことで体幹の安定性が弱まる研究報告もあるからです。
ただ、腹圧が過剰に高まっているケース(咳で腰が痛い、腹筋に力を入れると腰が痛いなど)では、ドローインにより痛みが緩和されるため、指導することがあります。
どのトレーニングも同じですが、「目的を明確にする」ことが重要です。
腸腰筋トレーニング(大腰筋トレーニング)
海外の陸上選手、よく転倒する高齢者などと比較した研究で腸腰筋の太さが違うという報告があったことから、腸腰筋がより注目されるようになりました。
そのため、腸腰筋のトレーニングがスポーツ選手だけではなく、スタイルアップ、姿勢維持なども含めて腸腰筋トレーニングが行われるようになりました。
しかし、臨床的に腸腰筋が過緊張している人も多く、大殿筋とのアンバランスが生じて腰痛を引き起こしているケースも多いです。
また、腸腰筋トレーニングを実施しているスポーツチームの選手が腰痛を訴えるケースも少なくありません。
一般的なネットやテレビの情報だけでは、間違った知識やトレーニング方法を実施してしまう可能性があります。
楽してトレーニングができる?
最近では電気治療器(EMS)を利用して、筋肉を発達させる商品が販売されています。
実際、お腹が凹んだ、筋肉がついたという声も聞かれます。
しかし、見た目だけではなく筋肉の役割を果たせているとは言えません。
筋肉が動くメカニズムを簡単に説明すると脳⇒筋肉と指令が伝わり、さらに筋肉⇒脳のどのように活動しているかがフィードバックされ、脳が微調整して再度筋肉に指令を伝えています。
それが、結果として緻密な動きを可能にしています。
脳と筋肉の相互作用が機能することで、身体は正常に動きます。
そのため、脳との相互作用を用いない方法では、腰痛予防にはなり得ません。
楽トレ
EMSを使ったトレーニングは、整骨院でも「楽トレ」として取り入れられてることがあります。
実際に楽トレを受けた人の感想はこちら
インナーマッスルが鍛えられれば、正しい姿勢で立つことができて、猫背が治り、肩こりが楽になるのではと期待しました。 しかし、自分の中で何かが変わり始めている、といった感触は全く得られませんでした。
ぽっこりお腹も変化したように思えず、ダイエット効果も実感できません。
ミトコンドリア活性化により体力が向上した感覚もない。
私の5万円、返してほしい。。。
「まだ回数が少ないのかもしれません。10回で効果が出る人もいますが、30〜45回やれば効果が出るかもしれません」
やばい、「楽トレ」をやっていると金がどんどんなくなっていく!
私は危険を感じ、撤退を決めました。
身体の動かない高齢者やケガで動けない人であれば、このようなEMSを利用して筋肉量を維持していく必要はありますが、活動できる人はしっかりと自分で動いてトレーニングしていくことが大切です。
体幹トレーニングの真の目的は腰痛予防になるのか
S&Cコーチの河森氏は体幹トレーニングの目標は腰椎のスタビリティーの向上としています。
コルセットを巻いたかのように腰椎をガッチリ固めてまったく動かさないのではなく、外的な力による(過剰な可動域への)意図しない腰椎の動きを防いだりコントロールしたりする能力を指します。
この能力を鍛えることで、腰椎の傷害リスクを低減させたり、隣接する胸椎や股関節のモビリティを向上させたり、下半身と上半身の間で力やパワーの伝達を効率よくしたり、等々につながると考えています。
引用元:S&Cコーチつれづれ
ほとんどのケースで、安静にしているときに腰痛を発症することはありません。
このことから腰椎をガッチリ固めるのではなく、外力(物をもつ、不意の動作など)が加わっても腰椎をコントロールする能力を向上させることが腰痛予防にもなります。
そのため、河森氏のいう体幹トレーニングの目的と腰痛予防は一致する部分があります。
筋萎縮から考える腰痛改善トレーニング
筋肉は使われなければ萎縮(細くなるイメージ)してしまいます。
そのため、最近では手術後でもいかに早くリハビリが開始できるかが重要視されています。
慢性腰痛患者の大殿筋(お尻の筋肉)は、健康な人に比べ優位に萎縮がみられたという研究報告があります。
慢性腰痛のある女性患者36名(平均51.6歳)と腰痛のない女性32名(平均51.3歳)を対象に、大殿筋の筋断面積をCTスキャンによって計測。その結果、腰痛のある患者は腰痛のない患者に比べて有意に左右、両側ともに大殿筋の筋萎縮が示されました。
慢性腰痛患者のライフスタイルは、長時間動かない、もしくは座りっぱなしであることが多いです。
大殿筋は、重い物を持つとき、歩くなど動作で重要な役割を果たしていますが、座っていることが多いと常に伸張され筋肉を収縮させる機能(伸張反射)も弱くなる可能性があります。
また、スゥェーバック姿勢(骨盤部を前に突き出した姿勢)では大殿筋よりも大腿四頭筋が活動するため、大殿筋の萎縮につながる可能性があります。
現代はデスクワーカーが多く、姿勢もスゥェーバックで立つ人が経験的に多く感じます。このことからも、大殿筋の萎縮による慢性的な腰痛は大いに考えられます。
大殿筋トレーニング
ジムワークが可能であれば、スクワット、デッドリフト、ヒップスラストを指導してもらうと良いでしょう。
それぞれ、フォームの違いにより大殿筋よりも大腿四頭筋、ハムストリングのトレーニングになってしまうため、なるべく専門知識のあるトレーナーに指導してもらうほうが良いです。
自宅で行う場合は、以下の写真のように股関節の伸展(どちらの写真も左足が大殿筋をトレーニング)をさせることで、大殿筋を刺激できます。
注意点としては、腰を反らし過ぎないことです。(反らし過ぎは腰を痛める原因となります)
初めはお尻に手を当ててお尻が固くなっているかを確認しながら行いましょう。
筋トレは専門家に相談しよう
筋トレは、フォームや目的が大切です。
フォームが崩れても筋肉はつきますが、ケガにつながったり、意図していないところを活動させてしまいます。
スクワット1つとっても何処の筋肉に刺激をいれたいのかでフォームが変り、腰痛予防なのか腰痛改善なのかでも行うべき筋トレの種目が異なります。
このようなことから、自己流では効率よく筋トレができない人が多いです。
筋トレにお金をかけたくない人もいるかと思いますが、悪化させたり、効果を感じないことを継続しても結果として時間とお金(治療費)の無駄遣いとなります。
ここでスタビリティトレーニングだけでもご紹介しても良いですが、フォームが崩れると腰痛を悪化させる可能性があります。
実際、直に指導しても徐々に自分のやりやすいフォームに変ることも多いです。
このような観点から、記事を読むだけでは安全性が確保できません。
筋トレは専門家の指導を一度は受けることをお勧めします。
自己流で筋トレをしたい人へ
「自分でなんとかしたい」という人もおり、そのような積極的な姿勢は悪くはありません。
自己流で進めていく上でおすすめの書籍、動画などをご紹介させていただきます。これをしっかりと理解したうえで行ってください。
インナーマッスルで紹介した多裂筋は中枢神経系の影響を大きく受けます。
また、横隔膜、腹横筋、骨盤底筋などは呼吸によって活性化する部分でもあるため、呼吸を上手くできるようになることが大切です。
呼吸は中枢神経系を活性化させるにも重要です。
インナーマッスルは個別にトレーニングすることは難しいです。
個人的には下手なインナーマッスルトレーニングよりも、この書籍をしっかりと熟読して実践したほうが安全で効果的と考えています。
プリズナートレーニングは、器具を使わないトレーニングがステップアップ式で紹介されています。
どんなトレーニングをして良いかわからない人にはおすすめです。
カイロプラクティック心では、身体評価を行い必要なエクササイズをご指導いたします。
施術をせずエクササイズだけ教えてほしい方でもご予約を承ります。
投稿者プロフィール

- カイロプラクター
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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