坐骨神経痛は症状であり、病名(原因)ではありません。
そのため、坐骨神経痛の症状が現れる病名はいくつかあり、病院で診断のつかないケースも含めると原因は多岐に渡ります。
このようなことから坐骨神経痛の原因は人それぞれであり、Aさんが▽▽薬を飲んで治っていたからといって、▽▽薬を飲んで楽になるとは限りません。
坐骨神経痛は、症状を引き起こしている原因を突き止めることが大事です。
ここでは、坐骨神経痛が現れる病名、原因について書いていきます。
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坐骨神経痛症状がみられる病気(病院での診断名)
先に説明したとおり、坐骨神経痛は症状であり病名(診断名)ではありません。
症状は頭が痛いから頭痛、お腹が痛いから腹痛というように身体に現れている状態を指し、坐骨神経が通過する部分が痛むため坐骨神経痛と言います。
そのため、色々な病気で坐骨神経痛が生じます。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎(背骨)の間にある椎間板から髄核が突出(突出することをヘルニアといいます)することで、神経が障害され坐骨神経痛が生じると言われています。
しかし、最近の研究では腰椎椎間板ヘルニアが下肢の痛みの原因にはならないと言われるようになっています。
そのため、重度の腰椎椎間板ヘルニア(排尿障害/排便障害を伴う)ではない限り、他の原因であることが多いです。
腰椎椎間板ヘルニアについて詳しくはこちらをご参考ください。
腰部脊柱管狭窄症
背骨の中(脊柱管)を脊髄が通りますが、何らかの原因で脊柱管が狭くなり脊髄を圧迫して坐骨神経痛が生じ、間欠性跛行(歩くと脚に痛みやしびれが発生し休むと楽なる)を特徴的とする病気です。
腰部脊柱管狭窄症の原因となる病気も、以下のとおりいくつかあります。
- すべり症
- 後縦靭帯骨化症
- 黄色靭帯骨化症
腰部脊柱管狭窄症も腰椎椎間板ヘルニアと同様に画像で脊柱管の狭窄がみられても、下肢痛の原因にならないことも多いです。
腰部脊柱管狭窄症について詳しくはこちらもご参考ください。
すべり症
脊柱管狭窄症の原因となる病気でもあり、腰椎が前方に移動(滑った状態)することで脊髄を圧迫して坐骨神経痛が生じると言われていますが、画像だけの所見では下肢痛の原因にならないことも多いです。
すべり症についてくわしくはこちら
梨状筋症候群
梨状筋は、臀部にある筋肉であり、その下を通る坐骨神経(人によっては梨状筋の中をとおる場合もあります)を圧迫して坐骨神経痛を引き起こす原因となります。
画像では診断がつかない病気のため、あまり病院で告げられることが少ないです。
男性よりも骨盤の幅が広い女性に多く、改善方法は梨状筋に対するアプローチが主になります。
閉塞性動脈硬化症
脚の血管の動脈硬化によって、血管が狭くなったり、詰まったりすることで血液の流れが悪くなることで坐骨神経痛の症状が現れます。
脊柱管狭窄症と同じ間欠性跛行がみられ、鑑別する必要があります。
閉塞性動脈硬化症の治療は、内科もしくは血管の専門医が行います。
腫瘍(脊髄腫瘍、骨盤内腫など)
腫瘍によって脊髄や神経を圧迫することで、坐骨神経痛の症状が現れます。
腫瘍による痛みの特徴として、夜間痛、痛みの現れる特定の動作がないなどがあります。
痛み以外の特徴としては、体重の急激な減少、遺伝性などがみられます。
坐骨神経痛の中にも色々な病気が原因となるため、初めは病院を受診することをお勧めします。しかし、病院で判別のつきにくい原因によって坐骨神経痛症状が現れることもあります。
病院では判別のつきにくい坐骨神経痛の原因
病院は画像診断が主となるため、画像に写らない原因(筋肉、関節の運動障害など)は見逃されることがあります。また、画像での問題(椎間板ヘルニア、変形、狭窄症)は無症状の人にもみられます。
以下は健常者と腰痛患者のレントゲン画像を比較して差がなかったという研究報告です。
腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した結果、脊椎辷り症、腰仙移行椎、潜在性二分脊椎、椎間狭小、変形性脊椎症、脊柱側彎症、前彎過剰、前彎減少、骨粗鬆症、シュモール結節、圧迫骨折、骨盤傾斜の検出率に差はない
このようなことから、画像だけで坐骨神経痛の原因を断定してしまうと、その治療を行っても改善がみられないケースがあります。
また、画像で判別できる腰痛の原因は15%程度で、他の原因に目を向けることも重要です。
筋筋膜性の原因
筋肉の問題により、腰痛や関連痛として下肢に痛みやしびれを誘発します。
問題のある筋肉には、硬結(硬いしこりのようなもの)がみられ、その部分を押すと坐骨神経痛症状が誘発されます。
病院でも筋筋膜性の問題に注目して治療を行っているところもあります。
詳しくはこちら⇒筋膜性疼痛症候群(MPS)研究会
筋筋膜性についてはこちらのブログもご参考ください。
関節障害(仙腸関節障害)
仙腸関節障害は、以下の図のように下肢症状(脚の痛みやしびれ)を訴える人もいます。
出典:診断のつかない腰痛仙腸関節の痛み 村上栄一 2012
仙腸関節障害は、画像の所見では異常がみつけられませんが、慢性腰痛患者の約30%に仙腸関節障害がみられたという研究報告があります。
仙腸関節障害についてはこちらもご参考ください。
椎間孔の狭窄
仙腸関節だけではなく、神経が背骨の間を通過する部分(椎間孔)が狭窄されることで、血液の循環不良が生じ神経を障害することがあります。
これは何らかの影響により、背骨の関節の運動障害が起因しています。
首もしくは胸部
解剖学の研究が進み、脊髄には外側ホフマン靭帯、外側根靭帯、髄膜椎体靭帯があり、脊髄と背骨の骨を繋いでいます。
脊柱の構造の問題により、首もしくは胸部に問題が生じこれらの靭帯にテンションがかかることで下肢にいく神経まで牽引されるため、首や胸部の問題を解消することで坐骨神経痛が軽減されていくことがあります。
内臓起因性(便秘、下痢など内臓の不調)
内臓体性反射という内臓の状態が身体に現れる反応があります。
一般的に知られているのは「胃⇒背中の痛み」「心臓⇒左肩の痛み」との関わりです。
もちろん、それ以外の反応もあり肝臓や腎臓の影響で坐骨神経痛症状が現れることがあります。
また、腸内環境の悪さから様々な症状を引き起こすことが解ってきました。
そのため、慢性的に便秘や下痢の症状があると人によっては坐骨神経痛のような神経症状が現れることもあります。
背中(腰部)の緊張が内臓と関連している場合でも、先に説明した筋筋膜性の問題や仙腸関節の問題にまで影響を及ぼせば、坐骨神経痛症状が現れると考えられます。
この場合、筋筋膜や仙腸関節だけではなく内臓に対してのアプローチ(内臓マニュピレーション、食生活の見直し)が大切になります。
外傷性
過去の捻挫、骨折、打撲(幼少期も含む)など、身体の使い方に影響するため、筋肉の過緊張や関節障害などの原因となることが多いです。
とくにスポーツをしていると捻挫が軽くみられがちですが、本来ならリハビリまでしっかりしてから競技復帰する必要があります。
しかし、捻挫は痛みがとれただけで競技に復帰(なかにはテーピングでごまかしながら競技を続けますが)することが多く、将来的に違う部分に問題が生じることも多いです。
メンタルの影響
慢性痛(3ヶ月以上続く症状)は、仕事や生活のストレスが関与していることが解ってきました。
これは、侵害可塑性(身体の組織にダメージがなくても脳の痛みを感じるシステムのエラーによって痛みとして認識してしまいます)の影響でもあります。
脳の影響が痛みに関わっていることがわかってきた最近では、認知行動療法という心理療法が取り入れられるようになっています。
脳が関わる痛みについては、わかりやすい動画があるため、以下をご覧ください。
生活習慣から考える坐骨神経痛の原因
自然と筋肉や関節、椎間板などが急激にダメージを受けることは少なく、ほとんどの場合が日常生活で繰り返し身体に負担をかけた結果が身体への大きなダメージとなり痛みとして現れます。
そのため、治療だけでも坐骨神経痛は改善されますが、日常生活も改めていいくことで早期の改善、再発予防まで期待できます。
姿勢
普段から緊張状態の強い姿勢が続くと筋肉も緊張してしまい、痛みやしびれの原因になります。
とくに日本人は「胸を張る=良い姿勢」のイメージが強く、その姿勢では胸部の可動制限につながり、結果として腰部が過剰に動きすぎて腰を痛めたり、坐骨神経痛を引き起こす一因になります。
そのため、姿勢に対する認識を変えていく必要があります。
姿勢について詳しくはこちらをご参考ください。
また、同じ姿勢を続ける(デスクワーク、寝ながらテレビを見続けるなど)ことも身体へのダメージが大きいです。
そのため、30分に1度は姿勢を変えていくことが大切になります。
身体の使い方
仕事環境、スポーツなどで偏った身体の使い方によって、過剰に使っている部分と全く使われていない部分(関節および筋肉)に分かれてしまいます。
それが、過剰な反復運動となり筋筋膜性の問題として現れやすいです。
また、仕事やスポーツ以外でも日常生活でみられるクセや間違った運動方法でもみられます。
運動不足
運動は循環を良くしたり、身体の細胞の入れ替えに重要な役割があります。
激しい運動をする必要はありませんが、歩いたり、家事で体を動かしたりするなど日常生活に運動を取り入れていくことが大切です。
ストレス
ストレスは人それぞれで解決するには難しい問題もありますが、生活リズムの崩れにより心の余裕がなくなっている人も多いです。
「起きる時間を一定にする」「睡眠時間を確保する」「暴飲暴食をしない」など生活のリズムを整えることから始めることも大切です。
食生活
身体は各栄養素によって創られています。
ダイエットや健康番組の影響による栄養の偏った食事や食べすぎは、身体へのダメージが大きいです。
例えば、タンパク質が不足すれば、どれだけ良い運動をしても筋へのダメージを回復させることが難しいです。(タンパク質以外も大事ですが)
脂質も身体には重要な栄養素であり、Ω3脂肪酸は炎症を抑える効果もあります。
坐骨神経痛の原因は解決して快適な生活を
坐骨神経痛の原因は、ここまで書いてきたように色々とあります。
そのため、痛み止め薬を服用したりブロック注射したり、痛みを取り除く治療をしたとしても、その場しのぎにしかならないこともあります。
また、坐骨神経痛には○○整体や坐骨神経痛の原因は骨盤とするカイロプラクティックなど、原因を考えずに坐骨神経痛を改善させる方法に固執(坐骨神経痛に効くストレッチや体操などもです)すると原因が解らず、なかなか改善されません。
しっかりと坐骨神経痛の原因を考え、それに対して適切な処置を行っていけば、必ず坐骨神経痛は良くなる症状です。
自分自身の生活習慣も見直しながら、はやく坐骨神経痛の原因を解決して快適な生活を送りましょう。
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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