新型コロナウイルスは後遺症がみられる報告があり、それらはpost-acute COVID-19または LONG-COVIDと呼ばれています。
後遺症については、まだまだ未解明な部分は多いですが、体位性頻脈症候群(POTS)と LONG-COVIDのレビュー(複数の研究をまとめたもの)を紹介します。
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概要
新型コロナウイルス感染後は、POSTとよく似た症状が多く報告されています。
そこで「体位性頻脈症候群」、「POTS」、「自律神経失調症」、「自律神経機能障害」、「新型コロナウイルス」、「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2」、「SARS-CoV-2」、「コロナウイルス」のキーワードを利用して研究論文を検索し、9件の研究論文が見つかりました。
それらの研究論文をまとめたレビューです。
COVID-19後の体位性頻脈症候群(POTS)
POTSを引き起こす原因の一つは、ウイルス感染(28~41%)と報告されています。
POTSは一般的な自律神経障害の 1 つであり、立ちくらみ、動悸、かすみ目、頭痛、呼吸困難、運動不耐症、疲労、胃腸症状、痛み、失神寸前など幅広い臨床症状を特徴とします。
研究論文で報告された患者は26名(年齢は 22 歳から 59 歳)で、症例の大部分は女性 (69%)でした。
顕著な症状は急性感染の数週間後に現れ、数か月以上続き、最も一般的な症状には、疲労、動悸、胸痛、起立性不耐性、運動不耐性、認知障害 (ブレインフォグ) などがあります。
POSTの治療方法
POSTは、確立された治療方法がありません。
LONG-COVIDでは、非薬理学的アプローチ(運動、水分と塩分の摂取、弾性ストッキング、起立性トリガーの回避など)薬理学的治療(イバブラジン、フルドロコルチゾン、ミドドリン、および抗ヒスタミン薬など)が行われました。
体調を管理する指導者のもと定期的かつ漸進的な運動は、POTS関連の症状を改善するための効果的な非薬理学的治療法として説明されています。
COVID-19後の体位性頻脈症候群(POTS)を検討
LONG-COVIDの病因は不明のままです。
しかし、免疫応答や自己抗体の生成、損傷の程度の変化、各器官系の回復に必要な時間の変化など、いくつかの要因が症状の持続に寄与していると疑われています。
体調不良や心理的な問題も、潜在的な症状を引き起こす可能性があります。
自律神経機能障害は急性期後の神経学的合併症の可能性が示唆されており、LONG-COVIDで観察された持続的な症状のいくつかを説明しています。
このレビューでは、COVID-19後の患者で報告されている最も頻度の高い自律神経障害としてPOTS に焦点を当てています。
文献を精査した結果は、COVID-19 後の POTS の年齢は 22 歳から 59 歳の範囲であり、女性患者の数が男性患者の数を上回っていることがわかりました。
以前の研究では、POTS の発症は通常 12 歳から 50 歳の女性に 4:1 から 5:1 の範囲の比率で起こることが指摘されています。
また、小児集団では、より低い比率が報告されました 。
POTSの症状は多様であるため、診断が難しく、起立性低血圧、甲状腺機能亢進症、不安神経症など、同様の症状を示す他の障害と鑑別することも必要です。
POTSは、薬学治療よりも非薬学治療が推奨されており、薬物療法は非薬学治療を上回る効果は証明されていません。
結論
このレビューでは、COVIDの症状が長く続く症例を特定し、POTS と診断され、臨床的特徴、診断法、関連する治療法を報告しています。
LONG-COVIDが疑われる症状がみられる場合は、POSTの治療方法が使用できる可能性があります。
考察(カイロプラクテイック心の見解)
レビューでPOSTと報告された人数も少なく、これからの研究も必要と考えられます。
また、よく似た症状が現れる疾患はPOSTだけではなく、研究論文にも書かれているように他の疾患との鑑別も大切です。
このようなことから、LONG-COVIDと考えられる症状であっても、自己流で判断せず病院で鑑別診断を受けることは重要です。
もちろん、この論文を読んで独断でPOSTの治療が必要と考えるのも止めましょう。
個人的には何も検査せずにLONG-COVIDと判断してしまう病院であれば、違う病院を再受診した方が良いと考えています。
この研究論文で言えることは、LONG-COVIDのケースにおいて、POSTの診断評価は1つの回復手段になり得るということです。
POSTを詳しく知りたい方はこちらもご参考ください。
個人的には、軽症であっても隔離される期間が長く、かつストレスの大きい(不安、行動が制限される、自分の好きなことができないなど)ことが、結果として脳機能のバランスを崩してしまうことも自律神経障害を誘発しやすいと考えています。
自律神経についてはこちらもご参考ください
まとめ
後遺症は、LONG-COVIDだけではなく脳卒中、脳震盪、事故といった色々な要因で起こり得ます。
色々な研究によって後遺症にならないための管理方法や治療方法などは進歩していますが、後遺症の治療は個人差も大きく体の機能面の問題となるため、確立した治療方法がないことが現状です。
今回の研究論文のようにケースをいくつか集めて、後遺症をもつ患者さんに適応させながら回復を目指すことが一般的ではないでしょうか。
POSTに限って言えば、いかに段階的に運動をプログラムしてくかが大事になります。
例えば、立つことで症状が悪化するため、寝ながらできる運動(ヨガ、ストレッチなど)から始まり、徐々に頭を上げつつ運動できるようなプログラムを経過をみながら行います。
当然、人によって症状も違えば、運動経験や症状に対する価値観なども違うため、マニュアル的なプログラムではなく個々に合わせる必要があります。
参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3633967
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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