「うちの子だけ、忘れ物が多い気がする。」
そう感じたことはありませんか。
大人の方なら、「やる気があるときと、ないときの差が激しい」「予定を立てても続かない」と悩んでいるかもしれません。
実は、こうした特徴の背景には、脳の「前頭葉(額のあたりにある、計画や自制をつかさどる部分)」の働きが関係していることが、研究で示唆されています。
ただ、誤解しないでいただきたいのは、「前頭葉が弱い=一生変わらない」ということではありません。
脳には「神経可塑性(脳が経験によって変化していく性質)」という力があり、適切なトレーニングによって前頭葉の働きが改善していく可能性があるのです。
この記事では、ADHDと前頭葉の関係、そして「前頭葉を鍛える」具体的な方法を、子ども・大人それぞれの視点からご紹介します。
この記事は、発達障害に有効なBBIT認定療法士が書いています。
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ADHDの前頭葉トレーニングとは何ですか?
まず前頭葉のトレーニングの結論から書くと、脳の神経可塑性(脳が経験によって変化する性質)を活用し、運動や認知課題によって前頭葉の働きを活性化させるアプローチです。
子どもの場合は原始反射統合(生まれつき備わった自動的な身体反応を整えること)から始めることが多く、大人の場合は神経経路を見極めながら個別にプログラム(原始反射統合を含む)を組みます。
ADHDと前頭葉の関係
脳科学の進歩により、脳の状態を客観的に分析する技術が発達し、ADHDの脳の機能異常が示唆される研究報告が複数あります。
※脳の機能は複雑であり、前頭葉の問題がみられたらADHDというワケではありません。
定型発達の子供140人と小学生の年齢のADHDの子供67人を調査した研究では、ADHDの子供は、すべての年齢層にわたって右および中央の前頭前皮質の活性化が低下していることが示されました。
ADHD患者は腹外側前頭前野/島線条体領域が小さく機能不全を示した
ASDでは前頭側頭 GMV が拡大し、ADHDでは眼窩前頭が減少します。そして、ほとんどが明確な機能異常であり、ASDではより顕著でした
ここでは前頭葉に関わる領域の研究を紹介しましたが、他の脳領域でも機能不全は報告されています。
ただ、前頭葉の何らかの機能障害がADHDの特徴に紐づけられていることが研究では示唆されています。
前頭葉の働き

前頭葉は、図のように大脳半球(前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉)の前側にあり、大脳皮質の1/3を占めます。
前頭葉の発達は人間特有のものであり、主な働きとして対側の随意運動(左側前頭葉は右半身の運動)、運動の計画及び実行、行動などです。
前頭葉は以下の領域に分類することもでき、他の領域と相互作用しながらそれぞれの役割を果たしています。
- 前運動野/補足運動野
- 一次運動皮質
- 前頭前野
- 前頭眼野
- 眼窩前頭前野
- 言語野
前頭前野
前頭前野は背外側前頭前野、内側前頭前野、眼窩前頭前野などに分けられます。
この領域は感覚(聴覚、視覚、体性感覚など)、他の大脳皮質、視床と視床下部を介してつながり、人において特に高度な発達がみられます。
脳に関与する疾患においてこの領域の機能は影響を受けやすく、早期の変化として記憶障害(短期記憶、想起など)がみられます。
また、長年慣れた行動は難しくありませんが、新しい行動や問題にに対処することが困難です。
そのため、問題解決に要する時間が長くなり、すぐ疲れやすくなります。
背外側前頭前野
背外側前頭前野の役割は主に以下のとおりです。
- 自分で決めた課題、目的の整理および計画をたてる
- ワーキングメモリーの促進、補助
- 執行機能(自分の行動を制御および自己調節する)
- 経験をもとに行動(過去と未来の情報処理)
- 思考の柔軟性
- 問題解決
- 判断力、決断力
- 時間感覚にも関与
- 痛みの感覚に関与
背外側前頭前野は多様な機能が備わっており、機能低下がみられると以下の特徴がみられることがあります。
- 計画性の欠如
- やる気がない
- 注意散漫
- 周りに興味がない、注意力や配慮の低下
- 自発性が無い
- 日常生活がルーティン化し時間的な統一性がみられる(柔軟性の欠如)
- 将来の計画を立てる能力の低下
- 最近の出来事の記憶に間違いがある
- 考えを整理できない
ASD(自閉症スペクトラム障害)では、執行機能の低下みられることが多く、とくに認知の柔軟性と抑制コントロールは複数の研究で問題として報告されています。
ASDはとくに同じ服を毎日着たり、同じ道順でしか帰れないなど強いだわりがみられる(認知の柔軟性の低下)ことが多いです。
また、ADHDでもみられますが、自分を抑えるコントロールができないため衝動的な行動が目立ちます。
※ASDでは興味が集中し過ぎて他のことを忘れて没頭する特徴もみられます。
内側前頭前野\前帯状前野
内側前頭前野は歩行や排泄抑制、スピーチに関与し、前帯状前野はモチベーションに関わり、目標達成のための行動に重要です。
この領域の機能低下は、スピーチや行動開始の動作が困難、歩行障害、無関心、失禁などがみられます。
目標にも短期的、長期的と分けることができ、ADHD、ASDは長期的な目標設定をたてる困難さに直面することが多いようです。
ただ、最近ではゲームの普及により短期的な報酬(ゲームクリア)を繰り返したり、YouTubeで長い動画がみれなかったりする人も増え、長期的な目標設定を立てることが苦手な人も多くなっているようです。
眼窩前頭前野
眼窩前頭前野は、感情のコントロールに関与する偏桃体を含む辺縁系と繋がりがある領域です。
また、社会的行動、不適切な社会的行動の抑制、判断および決断などの機能に関わっています。
この領域の機能低下は、以下のような問題がみられる可能性があります。
- 自発的な行動を抑制できない
- 感情の起伏が激しい
- 反抗的な態度や言動
- 攻撃的な言動
- 摂食行動が過剰
- モラルを判断できない
- 法律、社会のルールを守れない
- 判断や決断が乏しい
- イライラしやすい
ADHDの研究では、この領域の問題が示唆され衝動的な行動を引き起こす一因と考えられています。
運動領域
前頭葉には1次運動野、運動前野、補足運動野があり、これらの運動領域は運動の計画と実行(随意運動:自分の意志で行う運動)に関与します。
また、眼の動きだけでもあらゆる脳領域と結合しており、前頭葉にも眼球運動に関わる前頭眼野があります。
一次運動野
一次運動野では、体の各部位がマッピングされています。(例えば、手の領域に電気刺激を行うと手の筋収縮が引き起こされます)

一次運動野から送られる信号は、脳幹、脊髄を通って対側の筋肉に送られ動きを実行に移します。
そのため、脳梗塞、腫瘍などで障害されると、筋肉の緊張度が亢進したり、麻痺を引き起こします。
機能的な低下がみられると歩行や感覚情報をもとにした動作に問題が生じる可能性があります。
例えば、歩行では片側の腕の振りが減少している、運動の疲労が早いなどがみられます。
運動前野
運動前野は、運動の計画、感覚情報(体性感覚、視覚、前庭系)にもとずく運動、他者の行動の理解、運動の準備などの役割を果たします。
運動前野が障害されても手足が麻痺することはありませんが、習熟した動作が困難となります。
そのため、機能低下がみられると運動の遅延、運動コントロールの困難(慣れた動作も難しく感じる)他者の行動を理解できないことによる共感能力の低下などに関与する可能性があります。
補足運動野
補足運動野は、前補足運動野も同じ領域と考えられていましたが、現在は区別されています。
前補足運動野に比べ、大脳基底核および小脳からのインプットは受けますが、補足運動野は一次運動野と同じ経路に信号を送ります。
また、体幹部および近位関節(肩、股関節)に影響し、姿勢の安定に関与します。
補足運動野の損傷は、軽微な手足の麻痺はみられますが、自発的な発語および運動の開始が著しく困難となります。
ただ、自発的な運動がみられませんが、他者からの指示があれば運動の実行は可能です。
また、自分の意思とは異なった動き(自分が片付けた物でも障害された側:右側であれば左手で物を出してします)を行うことも特徴的です。
これらの問題以外にも順序通りの行動ができない、両手を使った協調運動が行いにくいなどがみられます。
眼球運動/前頭眼野
前頭眼野は、眼球運動(サッケード、パスート、輻輳、固視、注視など)に関与します。
「眼は脳をみる窓口」と呼ばれるほど、眼の動きによってどの脳領域に問題が生じているか予測できることから、眼球運動に関わる前頭眼野は多くの大脳皮質領域および脳幹、視床などとも結びつきが強いです。
サッケードの研究では、ADHDのこどもの精度(とくにアンチサッケード)は低いことが報告されています(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36280758/)
動く物体や奥行きのある対象物に眼を合わせるためには、眼球運動は必要です。
そのためには正確に眼球を止めたり、動く物体に眼を合わしたりする制度の高い眼球運動が要求されますが、発達障害がみられるこどもはとくに眼球運動の能力が低いケースが多く見られます。
ADHDでは眼球運動を抑制できないことから、注意散漫、読解力の低下、運動の苦手に繋がると考えられています。
発達障害においては視覚優位と呼ばれることもありますが、必ずしも視覚の機能が高いワケではありません。
どちらかといえば、あらゆる能力を発揮できない状態であるため、能力の高い視覚に頼らざる負えない状況であることが多いです。
そのため、眼球運動を含めた視覚のトレーニングはADHDの苦手を克服する1つの手段になり得ます。
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前頭葉の機能不全はADHD特有??
ここまで書いてきたように前頭葉の機能低下は、ADHDでみられる注意散漫、衝動性などの特徴がみられるようになります。
しかし、前頭葉の機能低下がみられるのはADHDだけではなく、外傷、うつ、強迫性障害、ASDなどもあります。
また、機能低下ではなく器質的な疾患(脳卒中、脳腫瘍など)でも前頭葉は障害され、何らかの問題が生じるケースも少なくありません。
前頭葉に問題が生じているケースADHDに限ったことではなく、広義の用語で前頭葉症候群と呼ばれるものもあり、日本でも12,000人いることが判明しており、稀ではないことが示唆されています。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK532981/)
このようなことから前頭葉の機能不全は、ADHD特有のものとは言えなのではないでしょうか。
【ここで一度、当院(カイロプラクティック心)にご相談いただいた経験についてお話しします。】
院長の岡は、これまでに多くのお子さんの感覚機能・運動機能を評価してきました。
その中で、「じっとしていられない」と相談に来られたお子さんが、実は眼球運動(目の動き)や姿勢を保つ感覚に課題を抱えていたケースを何度も経験しています。
前頭葉だけに注目するのではなく、脳全体のネットワークとして捉えることが、改善への第一歩になります。
大人でも原始反射の残存がみられるケースも少なくありません。
そのため、前頭葉をトレーニングするだけではなく、他の要素も踏まえ、さらには生活の背景(デスクワーク、アイデアが必要、指示の遂行能力が大切など)に沿ってその人に必要なトレーニングをプログラムすることが重要となります。
前頭葉の機能不全は回復する
前頭葉症候群の西洋医学的な治療方法は確立されておらず、広義な用語でもあることから腫瘍や血管障害など原因によって治療方針や対処療法も変わります。
ただ、脳は構造的および機能的に変化する性質(神経可塑性)をもっていることから、前頭葉の機能不全は回復する可能性があります。
神経可塑性について詳しくはこちら
前頭葉を鍛える方法【大人・子ども共通】
研究で効果が報告されている主なトレーニングは、以下の通りです。
- 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング)
- 筋力トレーニング(無酸素運動)
- 二重課題・マルチタスク(同時に複数のことを行う課題)
- ビジョントレーニング(眼球運動の練習)
- マインドフルネス(瞑想)
ある研究では、20〜60分程度の運動を週2〜3回、8〜12週間続けることで、作業記憶(一時的に情報を保持する力)や思考の柔軟性が改善したと報告されています。
たとえるなら、前頭葉は「使うほど発達する筋肉」のようなものです。
ただし、いきなり前頭葉のトレーニングを始めても、効果が出にくい場合があります。
なぜ「前頭葉だけ」を鍛えても変わらない人がいるのか
ここが、当院が大切にしているポイントです。
前頭葉のトレーニングを始める前に、「原始反射(生まれつき備わった自動的な身体反応)」が残っていないかを確認する必要があります。
原始反射は、本来であれば成長の過程で統合(吸収されて目立たなくなること)されるものです。
しかし、何らかの理由で統合されずに残っていると、姿勢や眼球運動、協調運動に影響が出ます。
その結果、前頭葉のトレーニングを行っても、土台が整っていないために効果が出にくいことがあるのです。 イ
メージとしては、「土台が傾いた家に、いくら新しい家具を入れても安定しない」のと似ています。
このため、当院では以下の流れでアプローチしています。
- 原始反射統合エクササイズ(子どもの場合は優先的に)
- 感覚統合エクササイズ(視覚・体性感覚・前庭系)
- 前頭葉を含む認知トレーニング
大人でも前頭葉は鍛えられますか?
可能です。
ただし、子どもと違い、大人は脳が成熟しているため、アバウトな刺激では反応しにくい傾向があります
。神経経路を見極めながら、個別に合ったプログラムを組むことが重要です。
生活習慣(睡眠・運動・栄養)の見直しと並行して行うことで、より効果が期待できます。
大人の前頭葉トレーニングで気をつけたいこと
大人の場合、子どもと比べて以下の点に注意が必要です。
生活環境の影響が大きい
長時間のスマートフォン使用は、前頭葉に関連する認知機能の低下と関連することが報告されています。
栄養面のサポート
も重要 腸と脳は相互に影響し合っていることが知られています。
糖質や加工食品の摂りすぎは、神経伝達物質のバランスに影響を与える可能性があります。
【LINE相談へのご案内】
「自分の場合、何から始めればいいかわからない」という方は、まず一度お話を聞かせてください。
オンライン相談(約30分)も承っておりますので、気軽にご相談いただけます。
前頭葉トレーニングは続けることが大切
神経可塑性は、毎日の積み重ねによって育まれていきます。
一度トレーニングをしただけで大きく変化することは、あまり期待できません。
逆に言えば、小さな積み重ねが、数ヶ月後の変化につながっていくということです。
カイロプラクティック心でのサポート内容
当院では、以下のステップでサポートしています。
- 質問票・カウンセリング(脳機能・感覚機能のチェック)
- 身体評価(原始反射、姿勢、眼球運動など)
- 今後の方針のご相談(運動プログラム、栄養面など)
- プログラムの実施(週1〜2回程度)
なお、診断名(ADHD等)については、医師の診断を受けた上でのご相談をお願いしております。
「神経発達のサポートを通じて、症状が軽減するケースがあります」という前提のもと、お子さんの場合は発達段階に合わせて、大人の方の場合は生活環境に合わせて、オーダーメイドでプログラムをご提案します。
伊勢市で前頭葉トレーニング・ADHDサポートをお考えの方へ
前頭葉の働きは、ADHDの特徴と関連することが研究で示唆されていますが、「鍛える」ことで変化が期待できる部分でもあります。
伊勢市でカイロプラクティック心では、原始反射統合・脳機能トレーニング・栄養面のアプローチを組み合わせ、子どもから大人まで一人ひとりに合わせたプログラムをご提供しています。
「うちの子だけ?」「自分だけ?」と感じている方は、まず話を聞くだけでもお気軽にご相談ください。
オンライン相談
前頭葉のトレーニングを行ってみたい、発達のお悩みについてZOOMでもご相談を受付けています。
※約30分程度です。
必要に応じて遠方の方でも原始反射統合、前頭葉トレーニングなどオンラインで対応させていただきます。
投稿者プロフィール

- 施術歴18年 第一種認定カイロプラクター BBIT認定療法士 栄養コンシェルジュ®2つ星の資格
-
伊勢市小俣町にあるカイロプラクティック心の代表です。
施術歴15年以上、1万人以上の施術経験と第一種認定カイロプラクターの資格を保持し、日本カイロプラクティック師協会の副会長を務めています。
慢性的な痛みやしびれ(腰、手足、頸部など)の症状改善の専門家
ほかにも栄養コンシェルジュ®2ツ星、BBIT認定療法士(脳機能ベースに神経可塑性を利用したアプローチを行う)に資格も保有して、筋骨格系、栄養、中枢神経系を介した独自のアプローチを行っています。
自律神経失調症、めまい、頭痛など栄養や中枢神経系が関与する原因に対しても、根本的な改善を行います。
BBIT療法は原始反射統合、感覚統合、脳の側性化、多感覚アプローチなどを用いて発達障害に有効であり、日本に数十人しかいないBBIT認定療法士の一人です。




























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