線維筋痛症の原因は未だに不明な点が多く、確立した治療法がありません。
しかし、線維筋痛症の人にみられる痛みや症状は中枢神経系の異常であることはわかってきており、その要因として腸内環境の悪化、神経伝達物質の異常、身体にみられる炎症反応が示唆されています。
このようなことから、線維筋痛症の人に対しての食事療法の有効性が研究で報告されるようになりました。
ここでは線維筋痛症の食事について解説していきます。
食事以外の対処法はこちらもご参考ください。
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グルタミン酸(食品添加物)の除去食
線維筋痛症は、興奮性のグルタミン酸が過剰に分泌されていることが観察されています。
グルタミン酸は神経伝達物質の1つであり、過剰に分泌されると偏桃体や島皮質など痛みを誘発する脳領域が興奮しやすい状態といえ、結果として痛みが誘発されやすくなると考えられています。
このようなことから、線維筋痛症の人がグルタミン酸を4週間除去した食事を行った結果、症状が緩和したという報告があります。
過敏性腸症候群(IBS)も患っている57人のFM患者は、MSGやアスパルテームなどの食餌添加興奮毒性物質を除外した4週間の食事療法を受けました。37人がダイエットを完了し、そのうち84%が、症状の30%以上が解消したと報告しました。
アスパルテームは、人工甘味料の1つであり色々なお菓子や飲料に利用されています。
グルタミン酸は食品にも含まれますが、ここでは食品添加物で表示されている「調味料(アミノ酸)」の排除です。
グルタミン酸について
グルタミン酸はアミノ酸の1種であり、体に不要なものではなく神経伝達物質として必要です。
ただ、体内でグルタミン酸は生成することができるため、食事で摂取しなければいけない必須アミノ酸ではありません。
また、本来は摂取したグルタミン酸(外因性グルタミン酸)は、腸関門も血液脳関門も通過しないため、脳に蓄積されることはないです。
参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8347293/
血液脳関門の透過性の増加
食事で摂取したグルタミン酸は、体が正常であれば脳へ蓄積されることはありません。
では、なぜ線維筋痛症の人がグルタミン酸除去食によって症状の改善がみられたのでしょうか。
その理由の一つとして血液脳関門の透過性の増加が考えられています。
透過性を簡単にいえば、本来通るはずのない物質が通りやすくなっている状態であり、それが結果としてグルタミン酸も脳へ運ばれてしまっているのではないかと言われています。
血液脳関門の透過性の増加および障害の要因としては以下のことが考えられています。
- 外傷
- 炎症反応(肥満、腸内環境の悪化:腸脳相関)
- 疾患(髄膜炎、脳症、感染症など)
- 酸化ストレス
- 遺伝
- 環境毒素
参考文献:https://jneuroinflammation.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12974-019-1403-x
グルタミン酸を含む食品添加物の注意点
食品添加物は、基本的に安全性が確認されているため、食品に取り入れられています。
そのため、全ての人が食品添加物が体に悪いということではありません。
線維筋痛症を含め何らかの機能異常がみられると、食品添加物が身体に悪影響を及ぼす可能性が研究で示されているだけです。
もちろん、自然のものを摂取していくほうが体に良く、食品添加物が多く含まれるものを食べ過ぎることはよくないため、食品選びもしっかりしましょう。
腸内環境と食事介入
最近では、線維筋痛症に限らず色々な疾患が、腸内細菌叢との関連が示唆される研究報告が多くあります。
その理由として腸脳相関と呼ばれる腸と中枢神経系の相互作用が考えられています。
腸脳相関について詳しくはこちらの記事をご参考ください。
線維筋痛症の腸内細菌叢を調査した研究では線維筋痛症ではない人と比較して有意差が示されました。
線維筋痛症(FM)の女性77人と線維筋痛症以外の参加者79人の腸内細菌叢を、16SrRNA遺伝子増幅と全ゲノムシーケンスを使用して比較しました。示差存在量分析を使用してFM患者をFM患者以外と比較すると、いくつかの細菌分類群で有意差が明らかになりました。
また、腸内細菌叢の変化にも関連し、血漿炎症性サイトカインの増加(特にインターロイキン(IL)-6およびIL-8 )を介して、腸の炎症の存在が示唆されています。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7944600/)
このようなことから、線維筋痛症では腸内環境を改善および炎症を抑える食事療法も研究されています。
低FODMAP食
FODMAP(フォドマップ)は、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖質の総称です。
以下の頭文字をとって名付けられています。
- F fermentable:発酵性の糖質
- O oligosaccharides:オリゴ糖(フルクタン、ガラクトオリゴ糖)
- D disaccharides:二糖類(ラクトース)
- M monosaccharides:単糖類(フルクトース)
- And
- P polyols:ポリオール(糖アルコール:ソルビトール、マンニトール、イソマルト、キシリトール、グリセロール)
これらは主に炭水化物および食物繊維であり、体に必要不可欠な栄養素ですが、消化器系の症状(便秘、下痢、膨満感など)がみられるケースにおいては、高FODMAP食を摂取している可能性があるとされています。
そこで低FODMAP食を摂取することで、腸内細菌叢の変化や腸管粘膜の微小炎症が改善したという研究が複数報告され、線維筋痛症でも痛みの軽減と消化器系症状の改善がみられました。
低FODMAP食は多くありますが、研究ではすべての乳製品の除外によって特徴づけられ、米を除くすべての穀物、 バナナ、柑橘類、パイナップル、赤いベリー、イチゴ、キウイ以外のすべての果物を摂取したそうです。
そして、カボチャ、キャベツ、レタス、トマト、ニンジン、キュウリ以外のすべての野菜を4週間摂取しています。
低カロリー食
低カロリー食は、野菜、果物、全粒穀物、軽乳の形で、20%のタンパク質、50%の炭水化物、30%の脂肪として分配された1200 kcal/dの摂取によって特徴づけられました。
線維筋痛影響質問票は、低カロリー食を6ヶ月か続けた線維筋痛症の人が優位に低下したと報告されています。
この質問票のスコアー低下がみられる人は、生活の質の改善(うつ病、睡眠の質など)および圧痛点数の減少がみられてました。
肥満がみられる線維筋痛症の人は、体重減少が症状を緩和させる1つの手法になることが考えられます。
参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22948223/ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16253617/
野菜中心の食事介入
ビーガン食と呼ばれる野菜中心(肉、魚、鶏肉などは食べない)の食事介入の研究も複数行われ系統的レビュー(複数の研究をまとめた研究)では、線維筋痛症の症状を軽減したと報告されています。
菜食主義者やビーガン食などの主に植物ベースの食事は、FM症状を軽減し、これらの患者の生活の質を改善するようです。これらの食事パターンに従って、体組成、睡眠の質、うつ病、および体の炎症が改善されました。
野菜中心の食事は、食物繊維、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質などを豊富に摂取することが、炎症反応と関連する線維筋痛症の症状を緩和すると考えられます。
食事介入の注意点
食事の改善は、線維筋痛症に限らず人によってはとても効果があります。
こちらの記事もご参考ください。
線維筋痛症は、機能性身体症候群の1つであり、体の機能的な問題であるといえます。
体の機能は個人差が大きく、そのことが食事療法が決定的な治療方法にならない理由と考えられます。
例えば、同じような肥満体型でも健康診断結果に異常がみられない人、多くの数値に異常がみられる人がいるように肥満となる食事を同じように摂取しても健康に影響がみられない人もいます。
このようなことから線維筋痛症が複数人いても同じ食事内容でも症状が緩和する人、緩和しない人がみられます。
緩和しないケースは、食事の改善方法が違う、もしくは食事の改善方法がその人に合っていない可能性があります。
また、線維筋痛症の食事改善は、今まで食べていた食材を排除することになるため、栄養不足による体調不良になることも考えられます。
そのため、効果が現れない人は専門家に聞くか、違う方法を試す必要があります。
よくある質問
線維筋痛症の食事についてよくある質問をまとめました。
食品添加物を避けたほうが良いですか?
A.理想は極力避けたほうが良いと考えられます
完全に断つことが難しくとも、なるべくご自身で食材を調理していくことで食品添加物の摂取量を減らしていく食生活をお勧めしています。
研究では1週間くらいで成果を感じる方が多く、一度は試してみる価値はあると考えています。
ただ、改善はみられてもしばらくは継続する必要があります。
オンラインでも食事のサポートはできますか?
A.可能です
ZOOMを利用して、オンラインの食事サポートも可能です。
一生、研究で示されている食事をしたほうがよいですか?
A.体調が安定すれば、許容範囲は広がると考えています。
低カロリー食を継続することは、健康を維持するうえで現実的ではありません。
症状の改善度によって、カロリーを増やし適切な食事量を摂取していくことが健康維持、向上には重要です。
健康的な食習慣が身に付くと、以前はジャンクフードを好んで食べていた人でも、たまに食べたい程度になるケース多くなります。
ある程度の健康的な食生活は身につけていただく必要はありますが、研究で効果の示された食事を一生続ける必要はないと考えています。
食生活の見直しは大切
線維筋痛症に限らず、体調を回復させるには食生活の見直しが大切になる人は少なくありません。
なかにはFODMAPのように、健康に良いと思って食べていた食材も人によっては体調を崩す可能性があります。
研究とおりの食生活は、ハードルが高いと感じる人も多いかと思います。
まずは朝昼晩の3食から始め、栄養のバランスを考え腹8分の感覚から始めてはいかがでしょうか。
この記事が食生活を見直すキッカケになれば幸いです。
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参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7888848/
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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