線維筋痛症は、体の広範囲にわたり痛みが慢性化することを特徴として、倦怠感や睡眠障害、不安など精神症状を伴うことがあります。
また、線維筋痛症の原因は医学的に解明されていませんが、中枢性感作よって引き起こされることは知られています。
中枢性感作は中枢神経系(脳)の問題であり、線維筋痛症は脳の神経ネットワークのエラーが原因である可能性が示唆されています。
そのため、一般的な痛みのコントロールに使用される抗炎症薬は効果がみられず、線維筋痛症の痛みを緩和させる確立された治療方法はありません。
ここでは、線維筋痛症の痛みのメカニズムである中枢性感作および、多様な症状がみられる原因となる中枢神経系の異常について考えられていることを書いていきます。
原因がわかることで、薬以外の治療方法が有効になり得ることが理解しやすいため、線維筋痛症でお悩みの人はぜひお読みください。
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中枢性感作
線維筋痛症でみられる中枢性感作は、簡単にいうと痛みを伝える神経回路に異常が生じている状態です。
ケガをしたとき、その部分から脊髄後根(背骨の中をとおる脊髄)に伝わり、いくつかの場所を経由した後に脳に伝わります。
また、脳からは痛みを抑制する下行性疼痛抑制回路と呼ばれる神経回路が、脊髄後根に伝わる痛みを抑える働きをします。
このような神経回路の異常がみられると、例えば本来10の刺激で痛みを認識していた状態が3の刺激を痛みと認識したり、刺激が無くとも自発的な痛みが生じます。
脳内神経伝達物質の異常
線維筋痛症では、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰となり、抑制性神経伝達物質であるセロトニン、ノルアドレナリンが減少していることが観察されています。
グルタミン酸が過剰になっているのは、痛みの感覚および感情、認知を統合する島皮質、感情に認知に関わる帯状回、偏桃体とされ、痛みが誘発されやすい状態といえます。
そのうえ、セロトニン、ノルアドレナリンが減少していることによって下降性疼痛抑制回路による痛みの抑制が難しい状態です。
自律神経系の機能異常
線維筋痛症は、痛みの症状だけではなく、腹部症状・便通異常、動悸、めまい感など自律神経が乱れたときにみられる症状も少なくありません。
その理由の1つとして、起立時の血圧や心拍が上手くコントロールできない自律神経系の異常が線維筋痛症の人で観察されています。
中枢神経系に異常と考えられる線維筋痛症はでは、同じように中枢神経系でコントロールされる自律神経症状がみられても不思議ではありません。
また、線維筋痛症は神経内分泌系の異常も認められており、自律神経の中枢の役割を果たす視床下部も関わることからも自律神経の異常もみられやすくなると考えられます。
神経内分泌系の異常
線維筋痛症は、ストレスによる症状による悪化がみられ、「視床下部ー下垂体ー副腎系(HPA軸)」の機能異常が考えられています。
HPA軸は、ストレスを受けたときに反応し神経内分泌(ホルモン)を体に放出する役割があり、この反応は精神疾患との関連も示唆されています。
ストレスは精神的なものだけではなく、体への負担(運動、労働など)環境からくる負担(暑い、天気など)など色々ありますが、原始的に考えるとストレスを受けた場合「闘うか、逃げるか」という選択になります。
どちらにせよ体を動ける状態にする必要があり、HPA軸の反応によって血糖が上昇しエネルギーの変換効率を向上させます。
また、自律神経の1つである交感神経の活動を高め体を活動しやすい状態にします。
これらはストレスを受けたときに必要な反応ですが、この機能の異常によって常にストレスにさらされている反応が継続すれば、エネルギーは枯渇し疲れを感じやすく、血液循環系に悪影響を及ぼし、結果として発痛物質も産生されます。
免疫と炎症反応
線維筋痛症は、視床下部の限局的な炎症を伴うことが示唆されています。
視床下部にある肥満細胞から炎症誘発性の物質(ヒスタミン、IL-6など)が分泌され、痛みを感じる神経回路を活性化させ痛みを誘発させます。
臨床的にも健康な人に比べ線維筋痛症の人は、炎症誘発性物質の増加が観察されています。
また、肥満細胞から分泌される物質によって、ミクログリア(中枢神経系の免疫を担当する細胞)も活性化され、さらに炎症誘発性物質が分泌されます。
※ミクログリアは脳の影響を受ける病態に関与することが、複数の研究で報告されています。
本来、脳は血液脳関門によって栄養や酸素以外は侵入できない仕組みになっていますが、ストレスや腸内環境の悪化によって炎症を引き起こす物質が入り込み、結果として肥満細胞が反応している可能性があります。
精神的な影響とストレス
線維筋痛症は、精神疾患と併存するケースも少なくありません。
うつ病を併発している人は、線維筋痛症の重症度および持続期間が長く痛覚過敏の程度も大きいことが観察されています。
また、感情面を処理する脳領域(偏桃体、島皮質)は、痛みを引き起こしたときも活性化し痛みとの関連がみられることが示唆されています。
このようなことから、抗うつ薬が線維筋痛症の痛みの軽減に利用されることが多いようです。
その他の要因
線維筋痛症は、遺伝的な要因が外傷や病気、精神的なストレスなどの環境要因と関連して引き起こされやすいとい研究報告もあります。
睡眠障害は線維筋痛症の症状と考えられていましたが、最近では睡眠障害(睡眠不足)が線維筋痛症の原因の1つと考えられるようになりました。
線維筋痛症は脳機能へのアプローチも重要となり得る
線維筋痛症は、色々な要因によって脳機能の異常によって痛みが誘発されたり、精神症状や身体症状がみられます。
そのため、薬物療法も脳(中枢神経系)に影響する薬剤を使っています。
ただ、研究でも薬物療法だけでは不十分と結論付けられており、この理由の1つとして脳機能は色々な脳領域が相互作用することで複雑な神経ネットワークを形成しているため、単一的なアプローチでは効果が少ないと考えられます。
非薬物療法では、「栄養療法」「運動」「徒手療法」「認知行動療法」などの有効性が報告されています。
栄養療法は、腸脳相関の研究から考え、脳への好影響が考えられます。
運動は、色々な脳領域を活性化できるため、線維筋痛症だけではなく筋骨格系の疾患、精神疾患などにも有効です。
徒手療法もカイロプラクティックで説明させていただくと、関節の位置感覚や触覚などの感覚変化によって脳に入力される刺激に変化がみられ、結果として痛みの変化や脳の活性化につながります。
適切なアプローチが重要
当然ですが、その人に合った方法を選択する必要があります。
例えば、消化器症状もほとんどなく、栄養療法を取り入れても変化がみられなければ、その人にはあっていない可能性も高く違う方法を選択したほうが良いでしょう。
また、ケースによっては運動は線維筋痛症の悪化要因でもあり、運動の量や質も考慮しつつ運動プログラムを組み立てる必要もあります。
カイロプラクテイック心は、脳機能を評価し脳の可塑性を利用したアプローチを行っています。
そのため、線維筋痛症の症状緩和にお役立てできることもありますので、一度ご相談ください。
投稿者プロフィール

- カイロプラクター
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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