神経可塑性

脳機能

脳の神経可塑性

脳の神経系は、可塑性と呼ばれる変化がみられることが科学的に証明されています。

引用元:TIMELAPSE VISION INC.

映像のように隣接する神経細胞同士が繋がり、神経ネットワークを形成していきます。

そして、神経伝達が繰り返されることで、神経が構造的および機能的変化する性質を神経の可塑性といいます。

脳の神経可塑性は、脳卒中や脳震盪などのリハビリにも臨床応用されています。

カイロプラクティック心の神経系のアプローチは、この神経可塑性を臨床的に応用したものです。

ここでは、脳の神経可塑性について詳しく解説していきます。

神経ネットワークの伝達

脳は、約1000億個の神経細胞(ニューロン)によって、ネットワークが構築されています。

神経同士をつなぐ接合部であるシナプスは、神経細胞(脳)の1,000~10,000倍あると言われています。

この脳の神経ネットワークは、あらゆる機能(運動、学習、記憶、感情、呼吸など)の中枢として、生きていくうえで必要不可欠です。

ニューロン

シナプス

ニューロンは、細胞体、樹状突起、軸索で構成されています。

あらゆる情報を伝えるため、ニューロン同士が接触してシグナルを送る領域であるシナプスを作ります。

シグナルを伝える側をシナプス前細胞、シグナルを受け取る側をシナプス後細胞と呼びます。

シグナル伝達

神経細胞でつくられるシグナルは、細胞膜の電気的な性質によって決定します。

細胞膜の内と外の電位差は、静止状態では一定を電位を維持する静止膜電位と呼ばれます。

典型的なニューロンの静止膜電位は‐65~80mV(細胞内の電位は少しマイナス、細胞外の電位は少しプラス)

この静止膜電位が基準となり、高い電位および低い電位に変化すると神経細胞の終末までシグナルとして伝わります。

Na⁺‐K⁺(ナトリウムカリウム)ポンプ

Na⁺(ナトリウム)K⁺(カリウム)の正をもつ電荷と細胞膜の透過性(細胞内外を通り抜ける性質)によって、静止膜電位を維持すると共に、膜電位の変化を生じさせることができます。

静止時(静止膜電位)は細胞内のNa⁺濃度を低く、K⁺濃度を高く維持していますが、Na⁺K⁺ポンプの働きによって細胞内外にNaとKが移動すると細胞膜の電位が変化します。

このときに急激に電位が上昇(活動電位)し、シグナルとして神経系の伝達が行われます。

Na⁺K⁺ポンプは、ATP(体を動かすためのエネルギー)を分解したときのエネルギーを利用して行わるため、ATPの産生に関わる機能も重要です。

ATP

ATP(アデノシン三リン酸)は、体のエネルギー(体を動かす、頭を使う、生命維持など)に利用される重要なエネルギー源です。

ATPを作り出すシステムの詳しい解説は割愛しますが、細胞内にあるミトコンドリアが酸素を利用して糖を解糖しすることによって、ATPが作られます。(ミトコンドリア以外でもATPは作られます)

静止膜電位を維持するためにATPは必要であり、産生するために必要な酸素と糖(糖代謝)は細胞を健全に保つために大事です。

活動電位

細胞に電気的な刺激が加わると静止膜電位(‐65mV )が上昇し、プラスの方向に動く脱分極が起こります。

脱分極が一定の閾値を超えたときにナトリウムチャンネルが開き、Na⁺が細胞内に流入し急激に電位が上昇し活動電位が生成されます。

静止膜電位が正常に維持できずに、閾値が低くなっていると活動電位がおきやすくなり、結果として過敏な状態や少しの刺激で痛みやしびれを引き起こします。

シナプス

神経細胞同士は結合しないため、接合部であるシナプスは20nm(ナノメートル)の間隙があります。

活動電位が神経細胞の終末に到達すると、シナプス小胞と呼ばれる部位から神経伝達物質を放出し、シナプス後細胞にシグナルが伝達されていきます。

主な神経伝達物質は以下の通りです。

  • グルタミン
  • GABA
  • ドーパミン
  • ノルアドレナリン
  • アドレナリン
  • セロトニン
  • ヒスタミン

神経伝達物質は、それぞれ作用が異なります。

神経伝達は、興奮性とそれを調整する抑制性の2つ分けられ、興奮性は主にグルタミン、抑制性は主にGABAが担っています。

ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンは、情動・注意・動機付けなど精神的な領域に作用します。

シナプスでの情報伝達

図の引用元:脳科学辞典

神経細胞の終末に活動電位が到達すると、Na⁺K⁺ポンプの影響によって細胞内にNa⁺が流入し細胞膜の電位に変化が生じます(脱分極)

そして、閉じていたCa²⁺(カルシウムイオン)チャンネルが開口し、細胞内にCa²⁺が流入し、それをキッカケにシナプス小胞内にある神経伝達物質が放出されます。

シナプス後細胞は、神経伝達物質を受取る受容体があり、そこに放出された神経伝達物質が結合します。

セカンドメッセンジャー

シナプス後細胞の受容体に神経伝達物質が結合すると、セカンドメッセンジャーと呼ばれる新たな情報伝達物質が生成され、受け取った情報を迅速かつ効果的に広めます。

受容体を大きく分けるとイオンチャンネル型受容体、代謝調整型受容体があります。

イオンチャンネル型受容体は、迅速なシナプス作用によって大部分の感覚処理や運動作用を仲介します。

代謝調整型受容体の作用は遅い反面、長時間持続する特徴があり、行動を修飾(記憶と学習、情動、気分など)します。

※代謝は主にタンパク質の合成を行います。

そのため、パーキンソン病、うつ、気分障害などは、この受容体のシナプス伝達の変化が関与していると考えられています。

シナプス後細胞のこのような過程は、神経統合としてまとめられます。

セカンドメッセンジャーで覚えておいてほしいのは、タンパク質、脂質などを含めた栄養素の代謝が正常に行われることでシグナルが効果的に伝達されるということです。

神経の伝達は一瞬ですが、様々な要素が上手く組み合わさることで、正常な神経ネットワークを構築できます。

神経可塑性

神経可塑性は、始めの動画でみてもらったように見た目の変化(構造変化)だけではなく、伝達効率の変化もみられます。

ただ、いくつかの条件が揃わなければ神経の可塑性はみられません。

また、神経可塑性はメリットだけではなく、ネガティブ事柄でも可塑性(慢性的な痛み、感覚過敏など)はみられるため、可塑性が進まないようすることも必要なケースがあります。

ヘッブの法則

ヘッブの法則は、心理学者のドナルド・ヘッブによって提唱されました。

ニューロン間の接合部であるシナプスにおいて、シナプス前ニューロンの繰り返し発火によってシナプス後ニューロンに発火が起こると、そのシナプスの伝達効率が増強される

始めは誰もが自転車には乗れません。

しかし、反復練習することで自転車に乗るために必要な神経回路の神経可塑性が促され、シナプス伝達効率が増強された結果、自転車に乗れるようになります。

さらには、使えば使うほど神経回路は強化されます。

これによって学習が可能となり、ピアノやスポーツなど反復練習することで、個人差はありますが以前はできなかったことができるようになります。

 

長期増強(Long-term potentiation: LTP)

シナプス前細胞の発火により、シナプス後細胞の活動電位(EPSP)が増大することを増強と呼び、持続される発火によって持続するEPSPの増大を反復刺激後増強と呼びます。

このとき、シナプスではCa²⁺が大量に放出されますが、Ca²⁺依存性酵素経路を活性化させてCa²⁺の濃度を保ち、シナプス伝達を持続させることができます。

また、神経伝達物質のの枯渇を防ぐためにリン酸化、タンパク質の合成、遺伝子発現などが関与します。

これらの影響によってEPSPが数時間から数日に渡って可塑性が持続することを長期増強と呼ばれます。

シナプスを発火させる入力方法には、時間的荷重と空間的荷重があります。

時間的荷重

時間的荷重は、一定の時間間隔で反復刺激を与えていくと、EPSPが加算されて大きくなる現象です。

静止膜電位に変化を与える刺激(電位)によって、シナプス後細胞にシグナルが伝わるため、弱い刺激では情報伝達が行われません。

しかし、弱い刺激でも反復することにより、神経伝達が行われます。

脳にある姿勢をコントロールする姿勢制御システムは、様々な情報(固有受容器、視覚、前庭核など)を入力して、そのときに適切な姿勢(出力)を保ちます。

この姿勢制御で時間的荷重を説明すると、固有受容器のみ入力を繰り返すことで姿勢に変化がみられます。

空間的荷重

空間的荷重

空間的荷重は、1つのニューロン後細胞には複数のニューロン前細胞がシナプスを作るため、それぞれの刺激がEPSPが加算されて大きくなる現象です。

時間的荷重と同じように弱い刺激でも、複数の刺激を同時に入れることで神経伝達が行われます。

空間的荷重の姿勢制御で説明すると、固有受容器、前庭核、視覚など複数の入力することで姿勢が変化します。

神経可塑性のデメリット

神経可塑性は、残念ながらデメリットの側面もあります。

継続的に痛みを感じている慢性症状では、「○○すれば痛い」と感じる神経回路が強化されてしまい、組織損傷が改善されていたとしても、痛みとして認識してしまいます。

また、依存症や強迫性障害なども依存性や強迫性の神経回路が強化されてしまった状態ともいわれています。

このように人によっては、マイナスの要素となる神経回路も神経可塑性がみられるため、この可塑性を抑制しなければいけないケースがあります。

長期抑圧

長期抑圧は、シナプス間に弱い刺激、もしくはほとんど刺激がない状態が長期間続くと伝達効率が弱まる現象です。

昔は出来ていたことも数十年ぶりに行うとできないのは、長期抑圧の影響が考えられます。

神経可塑性の例【自転車】

動画では、右にハンドルを向ければタイヤが左を向き、左にハンドルを向ければタイヤが右を向くという自転車で脳の可塑性が説明されています。

色々な人がこの自転車に乗ろうとしますが、数メートルも乗れません。

脳の神経回路からみれば、この自転車を乗るための神経経路はなく、よく似た乗り物もないため、乗ることができないのです。

しかし、神経可塑性の性質のある脳は学習することができ、男性は約8か月かけて乗ることができました。(この現象が長期増強)

ただ、通常の自転車が乗れなくなりました。(この現象が長期抑圧)

このように普段利用されない神経回路は、強化されることはなく弱い記憶として取り残されます。

そのため、通常の自転車を乗り出したら2週間程度で、乗れるようになったようです。

ちなみにこの男性のお子さんは、2週間くらいでハンドルとタイヤが逆を向く自転車に乗れたそうです。

神経細胞を健全に保つ条件

神経細胞が健全でなければ、神経可塑性も上手く機能しません。

そのため、神経可塑性を利用したリハビリを効果的にするには以下の条件が必要です。

  • 酸素
  • 栄養
  • 刺激(一定の活動電位)
酸素

神経伝達は、Na⁺K⁺ポンプによって細胞の電位変化を繰り返し、細胞の終末にシグナルを送ります。

このとき、酸素を利用して産生されるATPが必要です。

そのため、貧血や何らかの原因による血行不良によって、酸素を神経細胞に供給できないとシグナルの伝達が正常に機能しないと考えられます。

栄養

酸素と同様に、糖がATPを産生するために必要です。

そのため、糖代謝が上手く機能しないと、神経機能も低下します。

また、ATPを産生するミトコンドリアの機能を維持するためには、核酸(葉酸が材料となる)、タンパク質、脂質などが必要となります。

ほかにも神経伝達物質は、ビタミンB群が材料となり、貧血による血流不良を起こさないためにも鉄も大事です。

酸化ストレスは神経細胞へのダメージともなるため、酸化を防ぐビタミンA、C、E、亜鉛もバランスよく摂取するほうが良いです。

刺激

刺激とは、活動電位のことであり、動く、考えるなど日常生活での活動そのものです。

中枢神経系は、多様な入力を1つの調和した活動に統合します(神経統合)

そのため、運動ニューロン(運動に関与する神経細胞)に活動電位を引き起こすには50~100の興奮性ニューロンが同時に活動電位を発生させる必要あるそうです。

言い換えれば、体を動かすということは様々な刺激が必要であり、脳を活性化させることができます。

寝たきりや座りっぱなしが体に悪影響を及ぼすのも神経細胞を健全に保つ視点から考えると理解できるのではないでしょうか。

睡眠と運動が大事

脳の神経学者は、TED(動画)で神経可塑性には睡眠と運動が重要と解説しています。

有酸素および無酸素運動は、様々な脳領域に好影響を与えることが多くの研究で示唆されています。

また、カイロプラクテイック心でも運動を中心に神経可塑性を促すプログラムを作っています。

睡眠中に学習した内容を反復するような神経ネットワークの活動がみられたと科学者は語っており、睡眠は脳の可塑性を効率よく促すために重要です。

神経可塑性の特徴

神経可塑性にはいくつかの特徴があります。

神経可塑性は継続される

以前はゴールデンエイジと称して、ある年齢から脳の変化がみられないと考えられていました。

しかし、最近の研究では学習に応じて脳は変化し続けることが示唆されています(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32510759/

研究では、60~90歳の高齢者84名に対して6週間(週4回1時間のセッション)のトレーニングによって、脳の変化が観察されています。

年齢によって異なる変化がみられる

神経可塑性は継続的ではありますが、青年期にピークを迎えて老化に伴い低下することが示されています。

19歳から 81歳までの成人 36人の健康なボランティアを対象とした横断的研究では、皮質脊髄興奮性変調の持続時間と大きさが、年齢と有意に逆相関していることを発見しました。

現在の研究では25歳くらいまで脳は発達し続けると考えられています。

そのため、10代はとくにさまざまな刺激によって脳が変化し続ける重要な時期と言えます。

神経可塑性にも限界はある

脳卒中にような脳の一部分が損傷しても、他の領域が神経可塑性によってカバーすることで、身体機能の回復がみられます。

しかし、完全に機能を回復することが難しいことも多く、神経可塑性にも限界があると言えます。

臨床的な神経可塑性の考察

適切な酸素と栄養の供給、刺激を神経細胞が受け取っていないと神経の変性(TND)がみられます。

まず、TNDの初期は静止膜電位が維持できず、閾値が下がります。

そうなると、活動電位が発生しやすい状況があり、触られるとくすぐったい、もしくは少し押しただけでも痛い状態です。

もう少し詳しく説明すると活動電位が発生しやすいということは、通常なら痛みと感じない刺激も痛みとして認識してしまいます。

痛み以外では、光がまぶしく感じる、音がうるさく感じる、くすぐったいなど感覚過敏と呼ばれる状態です。

TNDが進行すると、静止膜電位の閾値が下がり、体の反応が鈍い状態です。

マッサージの強揉みでしか満足できない人は、痛みとして感じる閾値でも痛みとして認識していない可能性があり、神経的に考えると良い状態とは言えません。

また、体が反応しないからこそまぶしく感じる(瞳孔が正常に収縮しないため)というケースがあります。

このような神経の変性は、自律神経失調症でみられるような不定愁訴、腰痛や頭痛などの慢性症状で多くみられます。

神経の可塑性を利用するケース

どのような症状でも神経可塑性を利用することは、何らかの好影響があると考えられます。

筋骨格系の痛み(とくに慢性痛)であっても、病院で異常が見当たないケースは、脳機能の低下がみられることも多いです。

また、血液検査や画像診断などで異常が見当たらず、精神科や心療内科を紹介される症状でも脳機能から原因を紐解くと改善への道筋がみえることもあります。

カイロプラクティック心では、以下のような症状に神経可塑性を利用したアプローチを行うことが多いです。

  • 交通事故後の後遺症(頭痛、首や肩の症状など)
  • 慢性的な頭痛
  • めまい
  • 発達障害
  • パニック障害(不安障害)
  • 自律神経失調症
  • 脳震盪の後遺症
  • スポーツパフォーマンスの低下

こちらの記事もご参考ください

発達障害の栄養療法で効果がみられない理由

発達障害は、脳の機能異常が1つの原因と考えられ、治療方法が確立していません。

そのため、医療以外でも栄養療法、ボディーワーク(ブレインジム、リズミックムーブメントなど)応用行動分析(ABA)など色々なアプローチ方法があります。

栄養療法によって、発達障害でみられる困りごとが改善されるお子さんもいます。

しかし、なかには栄養療法を試しても、ほとんど効果がみられないと感じている親御さんも少なくありません。

栄養療法の効果がみられない理由の1つは、神経可塑性から考えれば刺激や酸素が十分ではないケースがあります。

もちろん、反対に体を動かすボディーワークだけでは改善されないケースもあり、その場合は栄養供給が十分ではないことも考えられます。

脳と腸の関りも科学的に解ってきているため、こちらの記事もご参考ください

神経の評価

神経の可塑性を利用したリハビリを行にしても、神経がどのような状態であり、どの神経回路が不活性していることで現在の症状が現れているかを考察する必要があります。

神経機能の評価はレントゲンやMRIではわかりません。

様々な神経機能の検査を統合して、神経機能の問題を探る必要があります。

神経機能の検査はこちらをご参考ください。

神経細胞の許容範囲を考える

先に解説した通り、神経変性がみられるケースもあります。

そのため、不活性な神経回路をみつけたとしても、適切と思われるような刺激でもその人にとっては過剰な刺激となり、体調を崩すもしくは症状を悪化させることがあります。

例えば、乗り物酔いする人が、ジェットジェットコースターに乗れば気分が悪くなるのと同じように過剰な神経系のリハビリは人によっては毒にもなります。

テストの反復(ニューロンの疲労状況)

神経機能のテストを1度行っても、異常が見られないケースもあります。

しかし、反復して何度か行うことで検査所見に異常がみられることがあり、このようなケースにおいては、リハビリの回数や時間を考慮する必要があります。

反対に異常な所見が見られても反復することで正常に戻るケースもあり、他の原因を追究しなければいけません。

※正常に戻るのは脳は学習能力があり反復することで適応したと考えられます。

テストの反応時間(ニューロンの反応時間)

神経機能の反応が遅い(瞳孔の収縮、眼球の反応速度など)ケースがあります。

1つの検査だけでは判断できませんが、反応の悪い所見が複数ある場合は、刺激の少ないリハビリから開始していくことが大事です。

呼吸の正常化(酸素供給)食事の見直し(栄養状況の把握)が初期に必要であると考えられます。

神経可塑性を促す原則

神経可塑性は、ここまで解説してきたように多くの研究が行われ、臨床的な研究も進められてきました。

そのため、神経可塑性を促す原則も示唆されています。

使わなければ機能が失われる

筋肉を使わなければ、細くなっていくことは一般的にも理解されやすいと思いますが、脳機能も筋肉と同様に使わなければ機能が損なわれます。(長期抑圧)

もちろん、脳機能も使えば神経可塑性によって強化されていきます。

そのため、機能を損なわれている脳領域を評価によって特定して、その領域に関わるトレーニングを実施していくことは症状の改善及び健康の維持向上に重要です。

特異性

脳領域を刺激するトレーニングも一定ではなく、その人の症状や目的に合わせてトレーニング内容や強度などをプログラムすることで脳の可塑性は促されやすくなります。

例えば、めまいや足関節不安定症などは小脳機能の低下がみられることは多いですが、同じような小脳刺激のトレーニングを行うことは少ないです。

めまいでは視覚を利用した小脳刺激は症状の悪化も考えられ、寝た状態で行える関節受容器の刺激(低閾値のトレーニング)が初期には有効かもしれません。

足関節不安定症もその人のレベルに合わせてバランストレーニングを実施して最適な小脳への刺激を行うことが重要となります。

さらには小脳と関りのある神経ネットワークを考慮したトレーニングを構築することにより、より効果的な神経可塑性を促せる可能性があります。

新鮮さ

神経可塑性を行う上で流れ作業のようなトレーニングではなく、能動的に行えるような新鮮さが神経可塑性を促すうえで重要とされています。

また、新鮮なトレーニングであるとより注意力と集中力を要するため、神経ネットワークの再構築が促されやすいと考えられています。

以下の研究もマンネリ化しないよう工夫され、楽しんでできるようにプログラムされています。

6ヶ月以上の慢性的な脳卒中患者(約10m歩行可能、数分は立てる)に対して、1日3時間(休憩は最長30分まで)かつ連続10日間のリハビリが行われた。

リハビリの内訳は以下のとおりです。

  • 歩行トレーニング(1時間)
  • バランストレーニング(1時間)
  • 筋力、可動域、コーディネーションの各トレーニング(1時間)

リハビリ内容は個別化され、それぞれの趣味やスポーツ、興味のある事柄を踏まえて、楽しんでできるようデザインされました。

また、タスクは出来るか出来ないかのレベルで行われ、出来るようになると少しづつ難度を上げ、マンネリ化しない内容にもなっている。

研究結果として、リハビリ内容は辛く感じたがトレーニングの難度を上げることもでき、強度にも慣れてきた頃に研究が終わったため、物足りなさも感じたという報告がされている

参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23125280/

脳卒中患者は、機能的ではなく器質的な脳疾患ではありますが、神経可塑性を応用したリハビリによって好影響がみられることは多くの研究で報告されています。

集中力、新鮮なことは集中力も上がり、挑戦する機会を与えることになり、脳に良い変化がみられます。

特に幼少期や思春期に重要(学校での学習、スポーツ、社会生活など)ですが、これは成人になっても脳に良い影響を与え続けることができます。

反復と強度

海外の神経機能的なアプローチを行うクリニックは、数週間泊まり込みで毎日リハビリを行ったり、週に2~3回のリハビリを数か月行うことが多いです。

その理由としては、使えば使うほど神経可塑性によって神経機能は向上するからです。

ラットを使った研究でも3~7日のリハビリでパフォーマンスの向上はみられましたが、脳のマッピングに変化はみられませんでした。

しかし、10日以降に脳マッピングにも変化がみられたと報告されています。

また、サルを対象にした研究では、簡単な運動よりも少し複雑にした運動の方が脳の可塑性がみられたと報告されています。

このようなことから、神経可塑性を促すためには強度と反復(頻度)が重要といえます。

神経可塑性の悪影響を及ぼす要因

脳の発達に悪影響を与える要因も研究で報告されており、神経可塑性を促す手法を取り入れても効果がみられない可能性もあります。

向精神薬

アンフェタミン、コカイン、ニコチンは、前頭前野の変化が生じたことが研究で報告されています。

また、ADHDに処方されるアンフェタミン、メチルフェニデートは長期的に脳の可塑性を阻害する可能性が示唆されています(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32828971/)

なかには妊娠中、授乳中に精神薬が処方される可能性もあり、動物実験では作業記憶や前頭前野関連の精神行動に障害がみられることが報告されています。

ストレス

出生前のストレスは、ADHD、統合失調症、うつ、薬物中毒の危険因子とされています。

また、ストレスは前頭前野の機能を低下させることは研究でも報告されています。

神経可塑性のまとめ

神経可塑性は、細胞が健全である条件(酸素、栄養、刺激)が揃えば、使われた神経回路は構造的、機能的(シナプス伝達の効率化)に変化する現象です。

神経可塑性を利用したリハビリを行うことで、病院で異常が見当たらなかった不定愁訴、慢性症状や神経機能症状(脳震盪、めまい、発達障害など)の改善に役立つ可能性があります。

しかし、神経可塑性を利用することは単純ではなく、複雑かつ膨大な脳の神経ネットワークの機能回復は、トライ&エラーを繰り返し一人ひとり違った手法が求められます。

そして、その人の生活背景や主訴に応じたアプローチを取り入れていくことが重要です。

さらに神経可塑性を促すには頻度(そのときの許容範囲内)が重要となるため、毎日の積み重ねが必要となります。

また、許容範囲を上げていくために段階的にリハビリ内容の負荷を上げていくことも大切です。

神経可塑性のリハビリを受ける場合は、頻度が重要であり自宅でのプログラムも遂行していくことが重要であることを理解しておくと良いでしょう。

参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3222570/

投稿者プロフィール

カイロプラクティック心
カイロプラクティック心カイロプラクター
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。

病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。

機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。

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