自律神経失調症は、自律神経が乱れることで様々な症状が現れます。
では、なぜ自律神経が乱れてしまうのでしょうか。
一般的には「ストレス」「生活習慣の乱れ」「内分泌系(ホルモン)の問題」とされています。
また、神経学的な視点で考えると原始反射の残存、脳機能のアンバランスなどもあげられます。
ただ、ストレスはライフスタイルの影響が起因していることも多く、ライフスタイルを見直すことができれば自力で自律神経失調症から回復することも可能です。
ここでは、ライフスタイルから考える自律神経失調症の原因について解説していきます。
ストレスが自律神経失調症の原因となる理由
そもそも、ストレスとは一体何でしょうか。
ストレスは、外部から色々な刺激(ストレッサー)によって自分の身体や心に負荷をかけているものを指します。
ストレスと言うと精神的なものを浮かべる人は多いですが、「異常に暑く感じる」「棘が刺さって痛い」「冬の水が冷たい」など物理的な刺激もストレスになります。
ストレスは人にとって必要不可欠
負のイメージが強いストレスですが、「目標に向かって自分にプレッシャーをかける」「身体に負荷をかけてスポーツのパフォーマンスを上げる」「良い人間関係を築くために努力する」など、あえて自分にストレスをかけることで、より良い自分に成長できます。
大昔には囚人を極力ストレッサーのない空間で生活をさせて観察する研究が行われ、最終的に自殺してしまったそうです。
このようにストレスが全くない世界も苦痛であることが想像できます。
ここで理解してほしいのは、ストレスは完全に排除することは不可能であり、ストレスは人にとってある程度は必要ということです。
ストレスは交感神経が優位
急性ストレス反応と言われる「闘争・逃走反応」が動物には備わっており、戦うにせよ逃げるにせよ筋肉を活動させる必要があります。
そのため、ストレスを受けると自律神経である交感神経が優位となり、心拍を高め、血圧を上昇させることで筋肉に血液を多く送り込みます。
また、肝臓ではエネルギー源となるブドウ糖を血液と筋肉に送ります。
筋肉を働かせている間は内臓の消化活動も抑えられ、それが結果として便意や尿意を抑え闘争・逃走に集中できます。
筋肉だけではなく脳も覚醒した状態が維持されます。
休息は副交感神経が優位
睡眠・食事は自律神経の1つである副交感神経が優位となります。
そうなると筋肉が不必要に働く必要がなくなるため、心拍および血圧が抑えられ、反対に消化器官が活発化し脳が休める状況となります。
ストレス=交感神経優位
ストレスを受け続けると交感神経が優位であり続け、さらには交感神経に切り替わるスイッチが入りやすい状況と言えます。
交感神経の働きと自律神経失調症の症状を重ねると以下のようになります。
- 心拍が上がる⇒動悸、頻脈
- 消化機能が低下⇒便秘・下痢、胃痛などの胃腸障害、唾液が分泌されないことによる口や喉の不快感
- 血圧が上がる⇒頭痛、めまい
- ブドウ糖の生産⇒枯渇しやすくなり、だるさや疲れやすさとなって現れる
ストレスの多い生活は、交感神経が優位な状態が続くため、自律神経失調症の原因になります。
自律神経失調症の原因となるストレス
急性ストレス反応は、不安や恐怖を感じたときに急激に交感神経を高める作用です。
スポーツでも交感神経を高めますが、ウォーミングアップ、人によってはルーティン作業などを行いながら徐々に交感神経を高めていきます。
しかし、不安や恐怖などはすぐに交感神経にスイッチが入らなければ、野生動物であれば逃げ遅れ、戦いであれば後手に回り不利になります。
そのため、本能的に不安や恐怖は交感神経への切り替わりが即座に行われると考えられます。
不安や恐怖を感じるストレスは、自律神経失調症の原因になりやすいと考えられます。
不安がまったく無ければよいというワケでもありません。
400万年前は、2足歩行を獲得した人が肉食動物と共存してサバンナで生き、繁栄できた要因として人類学者のDonna Hartは「不安」という感情があったからと説いています。
不安があるからこそ、ここで解説した「闘争・逃走反応」が有効に働き、生存できたと考えられます。
自律神経失調症のような自律神経の乱れは、過度の不安であると言えます。
仕事
仕事でもやりたくないと感じることは、不安や恐怖のストレスになると言えます。
また、最近ではパワハラなどが話題にあがることも多いですが、これこそ「闘争・逃走反応」と言えます。
嫌なことを言われ「その場から逃げたい」なかには「殴りたい衝動」を抑えている人もいるかもしれません。
望んだ仕事であったとしても、仕事量が多くなったり、高い質を求めらたりすると不安に感じる人も多く、結果として自律神経失調症の症状を引き起こしてしまうことがあります。
夫原病
夫原病は、夫にの言動、態度そして夫の存在自体が強いストレスと感じる妻が自律神経失調症のような症状を引き起こします。
自律神経失調症と同様に夫原病も医学的な病名ではありませんが、石蔵文信・大阪樟蔭女子大学教授が、中高年の夫婦の患者さんを診察する中で気付き命名されたそうです。
夫の言動や態度によって症状が強まり、夫が不在のときに症状が治まるもしくは軽減する場合は、夫がストレスである可能性が高いです。
もちろん、妻が原因となる妻原病というのもあります。
スマホの見過ぎが自律神経失調症の原因
現代では、こどもでもスマホを持っている時代です。
スマホはとても便利ですが、長時間のスマホの見過ぎは自律神経失調症に原因になります。
近くを見続ける問題
スマホは持ち歩けるため、移動時間や休息の時間まで見続けている人も多いです。
目の遠近の調整は自律神経が関わっており、遠くを見るのは副交感神経、近くを見るのは交感神経が優位に働きます。
休息時間で副交感神経を優位に働かせる時間でさえ、スマホを見ることで交感神経が優位になりやすい状態です。
それが積み重なることで自律神経失調症の症状が現れることがあります。
睡眠の質、量の低下
スマホを夜中まで見続けると、睡眠時間を減らしてしまうことがあります。
また、入眠前のスマホの光は眩しすぎるため、睡眠の質が低下すると言われています。
睡眠は脳を休ませる時間であり、副交感神経が優位となります。
睡眠は体内時計を正常に保つ意味でも重要であり、それが乱れると時差ぼけのような症状(不眠、疲労感など)がみられるようになります。
このようなことから、睡眠に影響を及ぼすスマホは、自律神経失調症の症状が現れる可能性があります。
脳機能の低下
スマホの見過ぎは前頭前野の血流量が低下することが研究で報告されています。
前頭前野は大脳の一部であり、自律神経をコントロールしている視床下部とも相互関係があります。
そのため、前頭前野の血流量が低下することにより前頭前野の機能まで低下すると視床下部とのバランスが崩れ、結果として自律神経の乱れにつながります。
運動不足
運動は不安を解消できると言う研究は複数あります。
複数の研究をまとめて分析したレビューでは、有酸素運動が不安症状を改善させる効果があると示されました(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28088704)
有酸素運動だけではなく筋トレも複数の研究をまとめて分析したレビューで不安を改善させる効果があると報告されています(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28819746)
不安は人が持つ正常な感情です。
それをコントロールできなくなると、自律神経の乱れにつながることがあります。
言い換えると不安が強い人は、運動不足であるとその感情をコントロールできずに自律神経が乱れる可能性があります。
ライフスタイルから考える自律神経失調症の改善・予防
ストレスは人にとって必要不可欠であり、不安でさえ誰もがもつべき感情です。
このことから、ストレスを無くすのではなく、どのように付き合いストレスをコントロールしていくかが大切です。
それをコントロールする方法の1つに運動があります。
「ウォーキング」「ランニング」「興味のある球技:サッカー、テニスなど」など運動であれば何でも良いです。
とくに不安という感情が大きいと感じる人は、少しの時間でもよいので身体を動かしていきましょう。
スマホは極力見る時間を減らし、その時間を睡眠、運動など自分の身体を労わるために使ってください。
電車やバスの移動時間は読書がおすすめです。
他にはリズム運動、瞑想、朝日を浴びるなどを習慣化すると体内時計のリセットおよびセロトニンの分泌を促す作用により、自律神経の改善、予防につながります。
生活習慣についてはこちらもご参考ください。
栄養、原始反射の残存、脳機能低下の影響がある場合は、カイロプラクティック施術が有効です。
自律神経症状の不快感を解消して、快適な生活を取り戻しましょう!