吐き気を伴う頭痛は、片頭痛の症状でもみられますが、なかにはレッドフラグであるケースもあります。
医療現場でのレッドフラグは、「見逃してはいけない疾患(重篤な疾患)」を指します。
そのため、レッドフラグの徴候がみられる場合は、専門医の診断および治療が1分1秒でも早く必要です。
もちろん、レッドフラグの疾患は、カイロプラクティックや整体などでは対応できません。
カイロプラクティック心では、万が一に備えてレッドフラグを判別するために禁忌症対策講座を定期的に受講しています。
ここでは、レッドフラグの頭痛について詳しく解説していきます。
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脳腫瘍
脳腫瘍は、脳組織の中に異常細胞が増殖する病気であり、転移性と原発性に大きく分けられます。
主な脳腫瘍ができる部位は以下のとおりです。
- 神経膠腫(原発性の3割、大脳のできる腫瘍の大半を占める)
- 神経鞘腫(良性がほとんど)
- 下垂体腺腫(良性がほとんど)
- 聴神経腫瘍(良性がほとんど)
- 髄芽腫(悪性度が高く小児に多い)
- 髄膜腫(良性で大脳を圧迫)
原発性に多くみられる神経膠腫にもいくつか種類があり、増殖スピードが速く、症状が現れてから数ヶ月で危険な状態に陥るケースがあります。
症状
〇慢性的な頭痛
初期では20%程度、進行すると70%程度の人に頭痛がみられ、起床時に最も強く感じ、時間が経つにつれて改善する傾向があります。
〇吐き気や嘔吐
原因のわからない頭痛と共に吐き気が続いたり、嘔吐する場合があります。
〇うっ血乳頭
眼底にある視神経乳頭が浮腫み、充血した状態を言います。
症状としては無症状のこともあり、進行すると視野障害や視力の低下がみられます。
〇その他
腫瘍が発生した場所によって「しびれ」「麻痺」「めまい」「聴力障害」「視力障害」「言葉がうまくでない」などがみられます。
脳腫瘍は頭蓋骨の内側にできるため、ある程度の大きさになると頭蓋内の圧力が増加させます。
そのため、腫瘍の種類に関係なく「頭痛」「嘔吐」「目がかすむ(視力障害)」の頭蓋内圧亢進症状が現れることが多いです。
とくに起床時の強い頭痛(早朝頭痛)、悪心を伴わない嘔吐は頭蓋内圧亢進が疑われます。
また、ここまで書いていない症状ですが、大人になってからのけいれん発作(腫瘍が神経細胞を刺激することで発生)も脳腫瘍を疑う必要があります。
起床時の頭痛メカニズム
頭痛と言っても脳には痛みを感じる神経がないため、脳が圧迫されたとしても痛みを感じることはありません。
頭蓋骨内で痛みを感じる部分は、骨膜(頭蓋骨)、頭蓋骨底部の硬膜、太い動脈と静脈、橋静脈、神経(頸椎2、3番と脳神経の5,9、10番)とされています。
このように頭蓋内の解剖生理から起床時の頭痛を説明すると、腫瘍によって脳が圧迫されることで橋静脈が引っ張られることで頭痛を感じます。
さらに就寝時に脳脊髄液が頭部に上昇することで頭蓋内圧が高まり、静脈が引っ張られその痛み(頭痛)で目覚めます。
そして起き上がることで、脳脊髄液も足方へ下がるため頭痛が和らぎます。
脳血管障害(脳の出血性疾患)
脳の血管障害の主な病名は、以下のとおりです。
- 脳梗塞(脳血栓症・脳塞症)
- 一過性虚血発作
- 頭蓋内出血(くも膜下出血、脳出血)
- 脳動脈硬化症
※脳卒中は、脳の血管障害によって手足の麻痺や意識障害など色々な症状がある状態を意味しているため、病名には記載していません。
血管障害部位によって色々な症状(視床痛、片麻痺、意識障害、頭痛、嘔吐など)が現れ、何らかの後遺症を示す患者も多くみられます。
脳出血
脳出血は、脳内の血管が何らかの原因で破れ出血した状態です。
主な原因は高血圧(全体の70%)であり、他の要因として脳の外傷、血管壊死、血液疾患などによって引き起こされることがあります。
症状は出血部位で異なりますが、一般的には頭痛、嘔吐、意識障害、片麻痺がみられます。
出血部位はCTで確定診断は可能であり、脳梗塞と鑑別するためにもCT診断が必要です。
くも膜下出血
くも膜の内側血管に動脈瘤ができており、力仕事や排便などの力みで動脈瘤が破裂して出血します。
遺伝性が強く親類でクモ膜下出血を発症している場合は、注意が必要です。
症状は頭全体、ときには前頭部および後頭部に頭痛は発生し、同時に吐き気、嘔吐、項部硬直(髄膜刺激症状)もみられます。
また、頭痛の発生の仕方は、突然に今まで経験したことのない強い頭痛が持続することが特徴的です。
くも膜下出血の前兆
①血圧の乱れ
数日前から血圧の乱高下を繰り返したあと、くも膜下出血を起こす例がみられるため、血圧が乱れたときは早めに専門医を受診しましょう。
②急激な頭痛
動脈瘤からの少量の出血、および神経圧迫によって軽度の症状がみられることがあり、その場合でも急激な頭痛(1秒前にはなかったのに急にガツンとくる頭痛)がみられることが多いです。
③目の異常
目の痛み、二重に見える、まぶたが下がるなどの目の異常にくわえ、吐き気、めまいを感じることがあります。
このような前兆は、しばらくすると治ってしまい、数日後に大きな発作をおこす例が少なくありません。
そのため、血圧の乱高下、突然の頭痛、目の異常がみられる場合は、必ず専門医を受診してください。
〇備考
くも膜下出血の確定診断にはCTが有効です。
しかし、条件を満たさないと発見される確率が低下するため、以下のことを注意する必要があります。
- 発症後24時間以内に検査
- スライスを通常の10㎜ではなく3㎜にする
- 硬口蓋に平行にスキャンする
- 貧血がないこと
病院に行ったにも関わらず異常なしと診断され治療せずに帰ったものの症状が再発するため、再度別の病院を受診したことで出血が確認された症例もあります。
大きな病院でも見逃されているため、異常なしと言われても症状が再発する場合は、1分1秒でも早く再受診することをおすすめします。
頭部外傷
頭部の外傷(殴打、転倒、交通事故、打撲など)がほとんどの原因とされる硬膜下血腫(頭蓋骨と硬膜の間に血が溜まる状態)は、急性と慢性に分けられます。
急性では急激に脳の機能不全に陥るため、社会復帰できる症例が少ないです。
慢性の場合は、徐々に進行するため、頭痛や吐き気の症状が現れます。
慢性硬膜下血腫
軽微な頭部打撲がきっかけとなり、脳の表面に微量の出血あるいは脳脊髄液が溜まることによって血腫が徐々に大きくなっていくと考えられています。
頭部外傷の自覚がはっきりしないことも稀ではなく、無症状もしくは軽度の頭痛であることが多いため病院を受診しないことがほとんどです。
症状
3週間~数ヶ月かけて血腫がつくられ頭蓋骨内の圧が高まるとこによって、頭痛、吐き気、嘔吐の症状が現れます。
他の症状として軽度の意識障害(元気がない、認知症の症状がみられるなど)、言語障害がみられることもあります。
血腫が増大すれば、最終的には死に至るため、頭部打撲の自覚があり、頭痛や吐き気を感じる場合は、一度専門医を受診しておいたほうがよいでしょう。
レッドフラグではない吐き気を伴う頭痛
レッドフラグではない吐き気を伴う頭痛もあります。
片頭痛
何らかの原因で血管が拡張することによって、片頭痛が発症すると言われています。
痛みの特徴としては、頭の位置を変えると痛みが増幅し、吐き気、嘔吐、下痢などの随伴症状が伴うことがあります。
また、光、音、におい、気圧や温度の変化に対し敏感になる人もいます。
レッドフラグは今まで経験したことのない頭痛であることが多く、片頭痛は今まで感じてきた頭痛と変わりません。
片頭痛を経験している人でも今まで感じたことのない強い痛みは、レッドフラグの可能性があります。
緑内障
緑内障は、視神経が障害され視野(見える範囲)が狭くなる病気です。
原因は眼圧の上昇とされ、無症状でゆっくりと進行していくことが多いです。
しかし、急性の緑内障は急激に眼圧が上昇するため、頭痛や吐き気の症状を引き起こします。
頭痛と吐き気を感じる場合は専門医へ
重篤な疾患が隠されている頭痛は、吐き気以外にも嘔吐、麻痺、意識障害なども併発することがほとんどです。
ただ、重篤な疾患ほど初期段階で治療に入ることが大切であり、今まで感じたことのない頭痛や吐き気を伴う場合は、まず専門医を受診しましょう。
昔から通っている整骨院、整体、カイロプラクティックがある場合は相談をしてもよいですが、残念ながらこのようなレッドフラグの知識がない先生も多いため、注意してください。
とくに頸部の施術は、重篤な疾患ではなかったとしても吐き気や頭痛を悪化させる要因にもなります。
今まで何度も感じている頭痛であれば、重篤なケースではないと考えてもよいでしょう。
カイロプラクティック心では、以前から通っていただいている人であっても、しっかりとカウンセリングを行いレッドフラグの徴候がみられないかを確認します。
また、カイロプラクティック適応外と考えられるケースは専門医への受診を提案させていただきます。
専門医、カイロプラクティックを上手く利用して、気になる頭痛を解消していきましょう。
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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