睡眠は、健康を維持するためにも大事です。
しかし、スポーツ強豪校になると朝練、そして夜遅くまで練習というケースもあり、さらに遠くからそのチームに通うことで睡眠時間がかなり削られます。
また、なかにはスマホやテレビに夢中となり、睡眠をとらないことも少なくありません。
睡眠不足は、健康維持だけではなくパフォーマンスの阻害要因にもなります。また、成長期のこどもにとっては健全なる発育を促すために睡眠は必要不可欠です。
そのため、スポーツ競技で勝ちたければ、睡眠も練習の一環として考える必要があります。
ここでは、スポーツにおいて睡眠の重要性を解説してきます。
パッと読みたい人は見出しをクリック
スポーツ障害と睡眠に関する科学的根拠
慢性的な睡眠不足は、スポーツ障害の増加と関連しているという研究報告があります。
1997年1月1日から2017年2月21日間に19歳未満の睡眠とスポーツ障害の関連をまとめたところ、睡眠不足はスポーツの筋骨格系の障害のリスクを大きくすることが示唆されました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6446394/
睡眠時間をアンケート調査した結果では、6時間未満の選手は、8時間睡眠の選手を比較すると、ケガが約2倍多いと報告されています。また、8時間睡眠の選手は、9時間睡眠の選手と比べるとケガが約2倍増ています。
このことから、睡眠時間が6時間未満であるとケガのリスクがとても大きいことがわかります。
スポーツのパフォーマンスアップと睡眠に関する科学的根拠
テニス選手12人を対象に睡眠時間とサーブの正確性を検証した研究では、約7時間睡眠に比べ約9時間睡眠(昼寝も含む)においてサーブの精度が大幅に改善されたと報告されています。
参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26325012
6~9時間睡眠(平均8時間)のバスケットボール選手を対象に10時間睡眠を目標設定しました。そして、睡眠時間の増加に成功した期間に以下の各運動能力のテストを行ったところ、運動能力の向上がみられました。
- 282フィート(約90m)スプリント:約16.2秒⇒15.5秒
- フリースローの成功率:10ショット中平均7.9⇒10ショット中8.8
- 3ポイントシュート成功率:15ショット中平均10.2⇒15ショット中11.6
この運動能力以外にも日中の眠気、気分の改善も報告されています。
参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3119836/
テニスやバスケットボール以外にもサッカー、水泳なども睡眠とパフォーマンスについて研究されており、睡眠の重要性が指摘されています。
ケガ予防、パフォーマンスを向上させるには十分な睡眠が必要という根拠が示されています。
睡眠は身体を修復させる大事な時間
睡眠中は、成長ホルモンが活発に分泌されます。成長ホルモンは、成長期に骨の細胞の分裂および増殖を促し、骨を成長させます。また、栄養の代謝を促進させ、筋肉の成長(肥大)および傷ついた部分の修復を行います。
このように睡眠は、ダメージを受けた身体を回復させることができます。また、成長期には骨の増殖にも関わるため、身体の成長にも欠かせません。
また、筋骨格系だけではなく睡眠によって脳内にも良い影響を与えます。
脳の活動に伴うエネルギー消費は全身の20~25%あり、その過程で有害なタンパク質老廃物などのゴミが大量に生じます。その老廃物を除去するグリンパティック系システムが近年発見されました。
このシステムは睡眠中に最も活発に働くため、睡眠不足は脳に悪影響を及ぼすことが想像できます。
また、睡眠中に記憶が整理されることが推察される研究報告もあります。(参考記事⇒「生物が眠る理由」 睡眠で脳回路はクールダウンされる 東京大学
脳とスポーツは関係ないと考える人もいるかもしれませんが、脳を含めた中枢神経系により、運動はコントロールされています。そのため、脳の機能低下は身体機能の低下につながります。
また、記憶が整理できなければ、技術の習得の遅れおよび戦術理解が乏しいなどの問題がみられます。
身体のメカニズムをみると十分な睡眠によるケガ予防、パフォーマンスアップが可能ということが理解できます
一流アスリートも睡眠時間は長い
テニス選手のロジャー・フェデラー、バスケットボール選手のレブロン・ジェームス、陸上選手のウサイン・ボルトの睡眠時間は、約12時間と長めだそうです。
カリフォルニア大学がアスリートと睡眠時間の関係を調査した研究では、睡眠時間が長ければ長いほど選手としてのキャリアが長いという結果がでています。(引用元:疲れない身体)
このように睡眠の重要性は、一流アスリートによっても証明されています。
指導者、選手は睡眠時間を確保しよう
指導者の中には強くなるために、練習時間を長くする傾向がみられます。しかし、睡眠時間が短くなってしまう練習(早朝練習、夜遅くまでの練習)は、強くなるどころが、ケガが多くなるパフォーマンスの低下になります。
指導者と同様に熱心な親御さんは、チーム練習後も選手に付きうケースもあります。その情熱はとても素晴らしいですが、睡眠時間を削ると選手のダメージはとても大きくなります。
指導者、親御さんは睡眠時間を確保したうえで、練習計画を立てることをおすすめします。
選手も睡眠の重要性をしっかりと考えましょう。
テレビやスマホなどでの息抜きしたい気持ちも解りますが、睡眠時間を削ってまで行う必要性はありません。スポーツ選手として結果を残したいのであれば、自己管理する能力を身につけることも大切です。
しっかりと寝る時間も確保したうえで自分の時間を上手く使ってください。
十分な睡眠をとりましょう
睡眠の国際学会では年齢別で以下の睡眠時間が推奨されています。
- 新生児(0〜3か月):睡眠範囲は毎日14〜17時間に狭まりました(以前は12〜18でした)
- 幼児(4〜11か月):睡眠範囲が2時間から12〜15時間に拡大(以前は14〜15)
- 幼児(1〜2年):睡眠範囲が1時間から11〜14時間に拡大(以前は12〜14)
- 未就学児(3〜5人):睡眠範囲が1時間から10〜13時間に拡大(以前は11〜13)
- 学齢期の子供(6〜13歳):睡眠範囲が1時間から9〜11時間に拡大(以前は10〜11)
- ティーンエイジャー(14-17):睡眠範囲が1時間から8-10時間に拡大(以前は8.5-9.5)
- 若年層(18〜25歳):睡眠範囲は7〜9時間です(新しい年齢区分)
- 成人(26〜64):睡眠範囲は変化せず、7〜9時間のまま
- 高齢者(65歳以上):睡眠範囲は7〜8時間です(新しい年齢カテゴリ)
十分な睡眠時間は8時間、理想は9時間を目指すと良いでしょう(小学生は10時間)
ただ、睡眠時間は個人差もあるため、7時間でも十分であるケースもあります。
そのため、まずは理想の9時間睡眠を試し身体の状態を観察(日中の眠気、疲労感、パフォーマンスなど)してください。そして、日中に眠気や疲労感がある場合は、睡眠時間を増やしたほうが良い可能性があります。
ただ、減らしたほうが調子が上がることもあるため、9時間をベースに睡眠時間を調整すると良いでしょう。
自分のベストな睡眠時間をみつけて、ケガ予防、パフォーマンスアップを目指しましょう。
睡眠の質も大切になるため、こちらもご参考ください。
投稿者プロフィール
-
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
最新の投稿
- 栄養2024年12月3日過敏性腸症候群
- 発達障害2024年11月1日発達障害の個性を活かすための早期介入の重要性
- 発達障害2024年10月2日ADHDの苦手を解決する運動効果
- 栄養2024年9月23日糖尿病に対する食事と運動の重要性
この記事へのコメントはありません。