「妊娠中に増加した体重、変わった体型を早く戻したい!」そう考える女性は多いです。
このようなニーズから、嘘かホントか分からないような産後ダイエットを宣伝するところもあります。カイロプラクティック・整体・整骨院の業界では「産後の骨盤矯正にダイエット効果がある」と宣伝するところも少なくありません。
本当に産後の骨盤矯正にダイエット効果はあるのでしょうか?
カイロプラクティック心でも世間的に言われている骨盤矯正(仙腸関節のアジャスト)は行い、「サイズダウンした」「痩せやすくなった」というお声もいただきますが骨盤矯正は、医学用語でもなくダイエット効果の根拠は一切ありません。
そのため、このように「ダイエットできたよ」とお声をいただいても、「他の要因があるかもしれませんね」とお返事に留めています。
骨盤矯正については、こちらをご参考ください
産前産後の身体の状態を知り、なかなか痩せにくい原因を考え、それらに対処し安全かつ健康的に行うこことが、産後ダイエットの王道です。
ここでは、産後の身体の状態、産後に痩せにくい原因、産後のダイエット方法などについて解説しています。
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産後すぐに体重が戻らないのは?
出産後、妊娠中の身体の変化によって、すぐに元の体型には戻りません。
産後は、「産褥期(さんじょくき)」と呼ばれる期間(6~8週)があり、妊娠したことで変化した身体がこの期間で元の状態に戻ります。
出産前後の変化
妊娠していないときの体重増加は、脂肪や筋肉量の増加です。
しかし、妊娠中は胎児はもちろんですが、他の組織も出産に向けて変化しており、以下がその体重増加の内訳となります。
- 胎児 25~30%
- 体脂肪 25~40%
- 母体の血液量 12~15%
- 血管外の水分量 9~12%
- 子宮 7~8%
- 羊水 6~7%
- 胎盤 5%
- 乳房 3~4%
参考文献:産科婦人科学
妊娠中の許容の体重増加は、妊娠前の体格によって変わりますが、7~12kgとされています。
そこから出産によって体外にだされる羊水・胎盤・胎児を合わせた重さ(約4kg程度)を引いた体重(3~8kg)が自然です。
そして、産褥期(子宮は6週間かけて元に戻るそうです)の間に血液や体内の水分などが元に戻り、2~4ヶ月程度で4~5kg減ります。
「あと2~3kg落ちないんですよね」とよく聞きますが、一般的にそのあたりで体重の減り方が落ち着きます。そこから、育児、家事をこなしていくことで、元の体重に戻る人も多いです。
長い目でみれば、産後のダイエット自体は不要な人も少なくありません
産後ダイエットはいつ開始する?
妊娠中に変化した身体は、産褥期の6~8週かけて元の戻ろうとします。
この間に自然に体重が落ちていくため、ダイエットを考えている人でも出産から8週後から開始することが望ましいです。
出産後は、一般の人が思っている以上の身体のダメージは大きく、とくに間違ったダイエット法(食事を抜く、過剰な運動など)をおこなってしまうと、子育てどころではなくなる可能性もあります。
そもそも、母乳育児であれば痩せやすくなるため、無理にダイエットを開始する必要はありません。
ただ、「安静にしているだけ」というのも健康にはよくないため、産褥体操をできる範囲で行いましょう。
産褥体操を知りたい方はこちら⇒産褥体操
母乳育児は痩せる
世界保健機関(WHO)は、生後6か月間は乳児のみを母乳で育てることを推奨し、米国小児科学会では、少なくとも12か月間母乳育児を推奨しています。
恐らく、母乳が出る人は母乳育児をされる方がほとんどかと思います。
母乳育児によって、母親のカロリー消費は増加します。また、妊娠中は内臓脂肪、脂質、中性脂肪のレベルが増加しますが、母乳育児によって、より早く元の状態に戻るとされています。
出産後3〜6ヶ月頃を観察した研究では、母乳で育てる母親は母乳で育てない母親よりも体重を減らすことが複数報告されています。
参考文献
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19031350
母乳育児は、本来とても痩せやすいです。
そのため、カイロプラクティック心のクライアントのなかにも「なぜ太るのかわからない」と発言される人もいらっしゃいます。
しかし、現実としてなかなか痩せない人もいるのはなぜでしょうか。
一つの理由としては、妊娠中に推奨範囲以上に体重が増加した人は痩せにくいと言われています。
そのため、そのような人は産後のダイエットを行い、良い健康状態を取り戻す必要があるかもしれません。
産後に痩せない理由
妊娠中も推奨範囲内の体重増加に抑え、母乳育児をしてもなかなか痩せない人もいます。
その理由をここで解説していきます。
睡眠不足
夜中の授乳、夜泣きなどによって、生活環境が変わり寝不足になる人も少なくありません。
食欲をコントロールするホルモンにはレプチン(食欲抑制ホルモン)とグレリン(食欲増進ホルモン)というものがあり、睡眠時間によって変化することが研究報告されています。
10時間睡眠に比べ4時間睡眠は、レプチンが18%低下すると共にグレリンは28%増加しました。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15583226)
さらにグレリンには脂肪を減らしにくく、筋肉を減らしやすくする作用があります。
寝不足により、食欲が増進してしまう結果、食べ過ぎによって一日の摂取カロリーが消費カロリーを上回ると体重は減りません。また、筋肉が減ってしまうと代謝も下がってしまうため、痩せにくくなります。
栄養バランスが悪い
育児に手間をかけても、自分の食事がおろそかになってしまうことがあります。
なかには「食べている量は多くないのになぜ太るの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
この1つの答えとして、簡単に食べれるジャンクフードやパン、インスタント食品など栄養の偏り(炭水化物が多い)がみられることが多いです。
例えは悪いですが、貧困層になると安くて簡単に摂取できる炭水化物の多い食事となり、貧困層ほど糖尿病リスクが高いと言われています。
時間がないからといって、簡単に食べられる栄養の偏った食事は肥満の原因となります。
注意)単純に炭水化物を抜く、糖質制限をするダイエットを推奨しているのではなく、栄養の偏った食事が問題です。
運動不足
産後6ヶ月の女性902人対象にした研究では、平均1.7時間(1.3時間)のテレビ視聴、0.7時間(0.7時間)の歩行かつ1日あたりのトランス脂肪を多く摂取すると産後12ヶ月で5kg太るという報告があります。
栄養の偏りに加え、運動不足が加わるとさらに痩せることが難しいです。
産後の骨盤矯正にダイエット効果はありません
ダイエットの王道は、摂取カロリーよりも消費カロリーを増やすことです。
しかし、地道なダイエットよりも即効性があるような宣伝をするダイエット法にどうしても目がいってしまいますが、そのような方法はありません。
もちろん、骨盤矯正にダイエット効果があるという根拠は一切ありません。
また、多くの整骨院でトムソンベッド(ベッドが落下するタイプ)を利用した骨盤矯正、電気を流すEMS(楽トレ)をセットに行うことが多いですが、この手法にはやせる根拠がないとされ再発防止策を講じるなどの措置命令を出された整骨院グループもあります。
骨盤矯正に通うお金と時間があれば、栄養のバランスを考えた食材を購入し、食事をつくったほうがダイエット効果はあるでしょう。
骨盤矯正について詳しくはこちらもご参考ください。
産後ダイエットのおすすめ方法
ジャンクフードの減少と身体活動の増加が体重減少には有効という研究報告があります。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3525888/)
これをもとにダイエット方法を解説していきます。
バランスのとれた食事
料理が好きな人でも育児中は、料理を作る時間がないと悩みます。そのなかで、栄養のバランスを考えた食事を作るのは大変ですが、ダイエットに最も効果があるのは食事です。
私も共働きであり、娘の食事、奥さんの食事を作るため、大変さは重々承知しています。
そこで、簡単に料理を作れるサイトをご紹介
炊飯器で作る料理は、手間が省けて時間がかかりません。また、作り置き料理を作っておくと便利です。これらを上手く利用すると野菜(ビタミン・ミネラル)鶏肉(タンパク質)などの栄養も摂取しやすくなります。
個人的意見として炊飯器を使うと鶏肉がとても柔らかくなり、とても美味しいです。
カイロプラクティック心では、栄養状況を客観的に評価して食生活改善のアドバイスもいたします。
糖質制限、グルテンフリーは必要?
基本的に世にでているダイエット方法は、極端であり病的(糖尿病、胃腸障害、アレルギーなど)な人にとっては必要ではありますが、健康な人にとっては不要な食事方法です。
大雑把でいいので栄養のバランスを考えれば極端なダイエット方法は必要ありません。
栄養のバランスを考えるといっても、どのような食材を使えば良いか解らない人は、魚、野菜、果物、オリーブオイル、ナッツ類、玄米や蕎麦などの茶色い炭水化物を基本に食事の献立を考えると良いです(参考:世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事)
牛肉、豚肉などの肉類、白いご飯、パンなど使うことも問題はなく、ここで上げた食品を多めに摂取することを考えてもらえれば良いです。
糖質制限には注意
糖質制限は健康を害するケースも多くみられます。
糖質は体内でブドウ糖に分解され、エネルギー源として血液り全身へ運ばれます。
そして、余ったブドウ糖は肝臓や筋肉などにグリコーゲンという形で貯蔵されます。
そして、血中のブドウ糖が少なくなるとグリコーゲンを少しずつブドウ糖に変換して血糖値を保ちます。
このような糖質の分解、エネルギーへの変換などを糖代謝と呼び、健康を維持するうえで重要です。(糖代謝異常が糖尿病)
健康な人が糖質を極端に制限する糖代謝が十分に機能しなくなるため、細胞レベルでエネルギーを供給できなくなり結果として疲れやすくなったり、倦怠感が強くなったりします。
また、細胞を新鮮な状態を保てなくなるため、組織自体も変化(組織の伸張性がなくなる、組織間の滑りが悪くなるなど)し、それが腰痛や頸部痛など体の痛み症状につながります。
糖質は制限するのではなく、適度に摂取して運動して消費することが健康の維持向上に重要です。
運動
ウォーキングで十分です。
ベビーカーを押しながら歩くだけで、こどもと一緒の時間を共有しながら運動が可能です。
以前だと20分続けないと脂肪が燃焼しないと考えられていましたが、現在は数分で脂肪が燃焼し始めることが解っています。
そのため、夏なら涼しい朝と晩、冬なら昼前後など時間を工夫しながらウォーキングであればトータル1~2時間を目標にするとよいでしょう(500~800カロリー消費)
ただ、無理なく続けることが一番大切なため、いきなり1~2時間歩くのではなく、続けられそうな運動時間から始めてください。
産婦人科の教室を利用
最近では、産後のサービスとして産婦人科でこどもを預かり、その間に院内でエアロビクスやヨガを提供するところが増えてきました。
産婦人科だけではなく、自治体が産後の女性向けにこども連れOKでヨガやこどもと一緒に行う簡単な運動を定期的に開催していることもあります。
産婦人科や自治体の教室を上手く利用すると運動不足も解消されやすいです。
こどもと一緒にエクササイズ
こどもを抱っこしながら、スクワット、ランジなどのエクササイズを行うと筋力アップだけではなく、こどもも楽しんでくれることがあります。
YouTubeで探すと色々あるため、自分の身体に無理のないエクササイズがあればやってみましょう。
ちなみにうちの娘は、スクワット、ランジは喜びました。
家族に協力してもらう
ストレスを溜めないことも重要であり、疲れたときは少しでも昼寝ができるだけで身体が楽になります。
これらは、家族の協力が必要不可欠です。
家族に子守りをお願いできる状況であれば、1時間でも自分の好きなこと(買い物、自分の趣味など)をやりましょう。疲れているのであれば、昼寝で身体を労わりましょう。
どうしても骨盤矯正を受けたい人は受けに行っても良いです。
ダイエットできる根拠はありませんが、出かけていつもと違う日常に身を置くことも心身のリフレッシュになります。また、現代の日本では、まだまだ産後の骨盤矯正は大義名分として使える女性の特権でもあるため、出かけやすい理由にもなるのではないでしょうか。
ただ、余計に腰が痛くなった、あまり変わらなかったなどの不満は自己責任でお願いします。
カイロプラクティック心ができること
カイロプラクティック心は、ダイエット目的の施術は行いません。
そのため、痩せにくいから骨盤矯正をお願いしますと言われてもお断りさせていただきますが、スポーツケアをした経験と育児経験を踏まえて、自宅で出来る簡単な運動方法、身体のケア方法を指導することは可能なため、自己流の運動方法で不安と言う方はご相談ください。
カイロプラクテイック心はダイエットを食事面からサポートさせていただいております。
また、身体が重い、腰や膝が痛い、肩がこるなど身体に不快感がある状態だと、なかなか「運動をしよう」「料理を作ろう」という意欲も湧きにくいです。そのような方のために産後ケアはさせていただきます。
産後ケアはこちらをご参考ください