腰痛と言っても人によって「前に曲げると痛い」「腰を反らせると痛い」「起床時がとくに痛い」など、痛みの現われ方は違います。
そのため、腰痛の原因は痛みのある動作や痛みが誘発されやすい姿勢によって原因が異なります。
整形外科や整骨院などで行う電気治療や湿布、服薬といった同じ手法を行う場合、原因の違う腰痛が改善しないことがあっても不思議ではありません。
このようなことから、腰痛の原因を追究することは重要であり、原因を解決できる対処法を選択することが腰痛改善の近道と言えます。
ここでは、腰痛にタイプ別に原因を解説していきます。
腰を曲げると痛い
腰を曲げて痛みが強まる場合は、仙腸関節(骨盤帯)の関節運動異常が原因の1つになることが多いです。
仙腸関節は、腰を動かしたときに僅かではありますが、仙骨(真ん中の骨)寛骨(仙骨を挟む骨)が動きます。(下図)
- 仙腸関節のうなずき運動
- 仙腸関節の起き上がり運動
仙腸関節は靱帯によって強固に保護されていますが、体重負荷によって靱帯がわずかに伸長され、さらには伸張された靱帯によって関節の位置変化が脳に伝わります。
そして、脳の働きにより動きに合わせて筋肉の緊張度が適切にコントロールされます。
このようなメカニズムにより、適切な関節運動(靱帯の伸長)が行われないことで適切な筋緊張がコントロールされず、筋肉が固くなりすぎたり適切な筋活動を阻害されたりすることで痛みが誘発されます。
※仙腸関節の詳細な問題はさらに細分化されますが、ここでは割愛させていただきます。
臨床的に仙腸関節へのカイロプラクティックアジャストメント、関節運動学テクニックにより関節の異常運動が正常に戻って、腰を曲げることによる痛みが軽減することが多いです。
ただ、痛みが長期化していると、かばうような腰の曲げ方をしたり、偏った筋肉の使い方をしたりすることにで、二次的な問題(運動制御、恐怖回避行動など)もみられるため、それらのアプローチも重要となります。
腰を反らせる、捻じると痛い
腰を反らせると痛い場合は、腰椎の椎間関節の問題が原因の1つになることが多いです。
腰椎の椎間関節は、腰を反らせるときに圧迫されやすく、さらには神経の通り道となる椎間孔が狭くなるます。
それが結果として、腰を反ったとき、捻じったとき(腰を捻じるときは腰を反る動作の動きが片側にみられます)に腰痛が悪化しやすくなります。
腰椎の椎間関節の問題も細かくみていくと筋肉(大腰筋、大腿四頭筋など)関節の異常運動、日常の姿勢制御などがあり、その人の問題にあったアプローチが必要となります。
臨床的には大腰筋の過緊張の緩和アプローチ、腰椎の関節運動学アプローチおよびカイロプラクティックアジャストメントなどによって症状が軽減することが多いです。
ただ、このタイプの腰痛には姿勢コントロールの破綻、体の使い方の問題によって常に腰部の筋肉を過緊張させて活動させていることも多く、ケースによってはこれらの問題に取組む必要があります。
また、これらの問題がある場合、同じ姿勢(座る、立つ)が続くことでも痛みが強まることがあります。
同じ姿勢で腰痛が悪化する
同じ姿勢で痛みが悪化する場合は、痛みが現れる部位を過剰に活動させていることによって、筋筋膜性の痛みであることが多いです。
また、ランニング、ウォーキングなど同じ動きの反復動作でも痛みが現れることがあります。
筋筋膜性の痛みは、筋緊張を緩和させることで痛みは軽減します。
しかし、過剰に活動させている原因を取り除かなければ、再発リスクは高いままです。
そのため、「施術を定期的に受けつつセルフケアを継続していく」もしくは「姿勢コントロールおよび体の使い方を再学習」を行うことが再発リスクを抑えます。
カイロプラクティック心は、どちらも対応いたします。
左右のどちらかの腰が痛くなりやすい
利き手、利き足があり、さらに体は非対称です。
また、ボールを蹴るときのように体を支持する側(関節が固定される側)、ボールを蹴る側(関節が機能的に動く側)では左右で役割が異なります。
日常ではこの左右のアンバランスを絶妙に使い分けながら生活していますが、過度の反復、運動不足、疲労やストレスなどによる左右のアンバランスがさらに崩れると左右のどちらかに痛みが生じやすくなります。
ここまで解説してきた仙腸関節や椎間関節に左右差がみられれば、それらのアプローチによって症状が改善されます。
なかには過去のケガ(捻挫、骨折、事故など)によって、左右のアンバランスが生じていることもあり、足関節のアプローチ(捻挫)胸郭の回旋運動の左右差、手の使い方などを解消することも重要です。
起床時の腰痛
起床時に腰痛が強く、活動していると日中のあいだに痛みが緩和されていく方は多いです。
その原因を大別すると以下のとおりです。
- 筋筋膜性腰痛
- 寝具の問題
- 栄養の問題
筋筋膜性腰痛は、先に解説したとおり日常の過活動により痛みが生じやすく、特徴的には仰向けで寝たときに腰部が反っている方が多いです。
ただ、寝具によっては寝返りがしやすく適度にマットレスに体が沈み込むことで、起床時の腰痛が改善されることもあります。
なかには数十年のあいだ同じ寝具を利用されているケースもあり、筋筋膜性腰痛ではなくとも起床時に腰痛を発症することがあります。
使い古された寝具を使っている場合は、寝具を替えてみるのもお勧めです。
起床時に腰や肩が張っている、食後の眠気が強い、夕方疲労感があるなどの症状がみられる場合は、低血糖症状の1つである可能性もあるため、食事の見直しが必須となります。
痛みの質による腰痛の原因
ズキズキするような鋭い痛み、どこが痛いかわからない鈍い痛みなど腰の痛みの感じは、人それぞれです。
このような痛みの質に違いがあるのは、痛みを伝える神経線維にAδ線維とC繊維の2種類があるからです。
ズキズキするような鋭い痛みは、ぎっくり腰でみられる炎症性の痛みをはじめ、関節や筋肉の損傷などが起因しています。
そのため、動作痛やぎっくり腰のような急性期は、このようなズキズキする鋭い痛みが現れやすいです。
反対に鈍い痛みは自律神経系のC繊維が伝える痛みの伝導路であり、慢性化するほど情動的な痛み(不安やストレスなど)として表現されます。
とくに腰部を広く覆う胸腰筋膜は自律神経線維が多く含まれ、動作に関係なく鈍い痛みが広がったり、日によって痛む場所が異なったりします。
鈍い痛みの対応
鈍い痛みであっても、ここまで解説してきた構造的な問題が含まれていることも多く、それらの問題を取り除くための施術は必要です。
しかし、交感神経が活性化されやす状態であるため、自律神経のバランスにも注目したアプローチも重要となる可能性があります。
※人によっては構造的な問題がストレスとなっていることもあり、それらが解決することで症状が寛解していくことがあります。
ここではカイロプラクティック心の対応策を割愛しますが、ご自身で考えられるストレスと向き合う、交感神経が過活動になりらない生活変容(規則正しい生活、栄養バランスのとれた食事、適度な運動など)を行うことがご自身でできるケア方法となります。
自律神経へのアプローチはこちらもご参考ください
その他の原因
腰痛の原因は多様です。
そのため、ここまで解説したタイプ別の原因が複合的にみられることも少なくありません。
また、これらに加えて食生活や体型などが起因していることがあります。
体型
肥満体型によってお腹がでていると、腰椎が過伸展(反り過ぎ)した姿勢で活動します。
それが結果として、腰痛の原因となります。
※妊婦の方も同様のメカニズムで腰を痛めることも多く、出産後に腰痛が緩和されていることがあります。
日常的なケアで症状を抑えることはできますが、根本的な解決としては肥満体型を改善することになります。
研究でも慢性腰痛と体重増加は関連していることが報告されています(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36119103/)
体の柔軟性
柔軟性が高い人は痛めにくいと思われがちですが、過度な柔軟性は関節の不安定性により体を痛めやすくなります。
柔軟性の高いスポーツ競技のアスリートは、身体の運動コントロールが優れ、さらには適切な筋出力を保つことで最小限のケガに抑えることもできます。
しかし、一般の方は運動コントロールが困難であるケースも多く、さらに加齢とともに筋力が落ちてくることでより痛みを感じやすくなります。
最悪のケースとして日常的に痛みのある動作を避けてしまい、恐怖回避モデルと呼ばれる悪循環に陥り痛みが慢性化してしまいます。
このようなタイプは、段階的にできる運動プログラムを構築して実行していくことも大事です。
食事内容
腸内環境の悪化(便秘や下痢が日常的)は、炎症を引き起こしやすく腰痛の原因となっていることがあります。
また、脂肪は炎症を引き起こしやすい組織であるため、肥満体型となる脂肪過多の状態は腰痛を引き起こしやすいです。
さらには精製された糖(お菓子、清涼飲料水など)を多く含む食品を好むと糖質の過剰摂取につながり、炎症を増長させて慢性症状の原因になることが研究で示唆されています(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36119103/)
世界保健機関 (WHO) のガイドラインでは、砂糖の摂取量を総エネルギー摂取量の10%未満に減らすことを強く推奨しています。
このようなことから、とくに慢性的な腰痛では食生活が原因となっているケースも少なくありません。
砂糖の過剰摂取に関しては、痩せている人でも腰痛の原因となる可能性があります。
また、無理なダイエット、チートデーを含むダイエット、日常的な栄養不足は不調の原因となるため、痩せていても食事内容を見直す必要があるケースもみられます。
生活習慣、過去のケガ
睡眠は体を修復する大切な時間であり、睡眠不足が結果として腰痛の引き金となっていることがあります。
また、立ち仕事、デスクワーク、手を多く使う仕事、動作のクセなど日常生活の違いによって負担をかける部分が異なるため、ここまで解説していない手足の問題を解決する必要もあります。
例えば、立ち仕事の人で偏平足、回内足などが強くみられるケースでは、体の土台となる足部の不安定性が腰への負担となるため、足関節のアプローチ、インソールの装着、自分に合った靴の選択が症状の改善につながります。
また、手は下肢の動きをコントロール(減速、加速など)する役割もあるため、手作業の多さからクセづいた動きにより下肢をコントロールできなくなると運動時の腰を痛めるリスクとなります。
生活習慣だけではなく、過去の骨折や手術歴(帝王切開も含む)へのアプローチによって腰痛が改善されるケースも少なくありません。
臨床的に手術痕や外傷部位を施術していくことで腰痛が改善されることがあります。
腰痛の原因まとめ
腰痛の原因は痛みが悪化する動作、痛みの質、痛みを感じる場所などによって異なります。
そのため、レントゲンだけでは腰痛の原因を判断することは難しいです。
ここまで解説してきたように原因は多岐に渡り、さらには複数の原因が絡んでいることがほとんどです。
また、生活習慣や食生活、体の使い方などには個人差もあり、腰痛改善に至るまでの原因を解決していく手順や手法は十人十色となります。
そのため、ご自身で腰痛改善のために色々と試す行動力は素晴らしいですが、原因を判別するには専門家の力を借りる方が効率的です。
腰痛でお悩みの方は、カイロプラクティック心にご相談ください。