交通事故は、身体的な損傷(むち打ち、打撲など)だけでなく、高次脳機能障害を引き起こすことがあります。
高次脳機能障害は、記憶、注意、計画、問題解決などの認知機能に影響を与え、日常生活に大きな支障をきたします。
交通事故では頭部外傷がなくとも、脳震盪(気を失わなくとも脳震盪はみられます)であるケースもあり、気づかない間に脳震盪後遺症で高次脳機能障害のような症状がみられる可能性もあります。
高次脳機能障害でみられる症状を改善させるためには、脳科学に基づいたリハビリが必要になります。
交通事故後から認知機能の低下(集中できない、記憶力が低下、計画的に作業が進まないなど)がみられる方は、ぜひ続きをお読みください。
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高次脳機能障害とは
高次機能障害は、脳の損傷によって引き起こされる認知機能の障害です。
交通事故による頭部外傷は、高次脳機能障害の主な原因の一つです。
また、ここでは詳しく解説しませんが、交通事故で強く首を振られることで脳震盪が引き起こされている可能性もあり、脳震盪後遺症でも高次脳機能障害とよく似た症状がみられることもあります。
脳震盪の後遺症について詳しくはこちら
症状
具体的に高次脳機能障害は、以下の症状がみられます。
- 記憶障害(何度も同じことを質問する、人の名前や顔、道を覚えらなくなる、昨日のことでも思い出せないなど)
- 注意障害(集中できない、マルチタスクが困難、注意力が散漫など)
- 遂行機能障害(作業の計画を立てることが困難となり非効率な作業となる、人の指示とおりに作業ができないなど)
- 社会的行動障害(怒りやすくなる、憂うつな気分で無気力など)
これらの症状以外にも重症度によっては失語障害(文章が理解できない、聞いたことが理解できないなど)失認障害(目で見た物が理解できない)などがみられることもあります。
高次脳機能障害は外見上に問題がみられないため、「見えない障害」と呼ばれることもあります。
そして、周囲に気づいてもらえないこともあり、誤解を受けやすく対人トラブルもみられることが多いです。
このように高次脳機能障害は、仕事や家庭など日常生活においても重大な影響を及ぼします。
高次脳機能障害かな?と思ったら病院へ
交通事故後に高次脳機能障害の症状がみられるのであれば、医療機関で診断を受けることが大切です。
診断の流れとしては、画像診断(MRI、CTなど)による器質的病変(頭部打撲だけではなく血管障害、感染、炎症、変性疾患などで脳の細胞、組織が損傷を受けた病変)の確認および症状の有無によって判断されます。
器質的な病変がみられることが診断基準となるため、自己判断ではなく病院の診断が必須です。
交通事故前後の日常生活での変化がみられ、高次脳機能障害と診断されることで後遺障害等級認定(一般的には事故後から6ヶ月以降に申請)されます。
後遺症障害等級認定については、保険会社、弁護士、医師などにご相談ください。
治療
一般的に確立された治療方法はなく、一人ひとりに合わせ社会復帰を目的としたリハビリが中心となります。
早期のリハビリは症状の改善が著しく、厚生労働省の調査では1年以内に97%程度の改善が報告されています。
ただ、1年以上を経過すると改善スピードは鈍り、発症後2年たつと症状が固定されやすいと言われています。
高次脳機能障害の主なリハビリ
リハビリするプログラムは、症状によって異なります。
例えば、記憶障害であればどのような記憶が困難であるかを評価し、言葉やイラストなどを用いて思い出すリハビリが行われます。
注意障害であれば、パズルやゲームなどを用いたりし、後期にはその人の日常生活に合わせたリハビリプログラム(デスクワーカーであればパソコン作業)が行われます。
もちろん、ここで紹介したのは一部分であり、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など様々な専門家がさまざまなリハビリを実施します。
他にも日常生活の支障を減らせるよう環境調整をしたり、生活や職業に合わせた訓練プログラムなどを実施したりします。
脳機能は複雑
高次脳機能障害は、前頭葉や側頭葉などの特定の部位の損傷によって引き起こされますが、脳は良くも悪くも代替え的に体を機能させることができます。
そのため、損傷部位の回復は難しいですが、その周辺の脳や他の神経ネットワークを再構築することで高次脳機能障害の症状も改善されていきます。
そして、リハビリは可塑性とよばれる機能的および構造的変化する脳の性質を利用してます。
可塑性について詳しくはこちら
ただ、機能的な問題は個人差も大きく、同じような訓練をしても効果が異なったり、まったく変化がみられないこともあります。
また、リハビリ期間中は改善がみられても、使われない神経ネットワークは衰退してしまうため、元に戻ったように感じるケースも多いようです。
さらにはマンネリ化したリハビリ内容になると、脳の可塑性も鈍化します。
このようなことから「リハビリに効果を感じない」「もう少し日常生活の質を向上させたい」などのケースでも手法や質を変えることで、脳の可塑性を促進できる可能性があります。
機能神経学
カイロプラクティック心は、10年以上前から現在に至るまで脳機能の評価および脳機能向上を目的としたアプローチ方法を学ぶ機能神経学を取り入れています。
また、BBIT認定療法士、TNCトレーナーなど脳機能に注目した評価、アプローチ行うディプロマも保有しております。
そのため、脳の可塑性を促進するための方法を取り入れて高次脳機能障害のサポートもいたします。
カイロプラクティック心での具体的なアプローチは、運動療法(認知トレーニングも含む)が中心です。
これらは、闇雲に行っているのではなく、研究論文でも有効性が示唆された内容を臨床に応用しています。
「高次脳機能障害を少しでも良くしたい」「リハビリ期間が終わってから能力の低下を感じる」など高次脳機能障害の現在の症状を少しでも良くしたい方は、一度ご相談ください。
カイロプラクティック心のニューロアプローチ
カイロプラクテイック心は、診断内容およびリハビリ内容などのカウンセリング、質問票で脳機能の状態把握、身体評価などを評価を重視して、適切な脳機能へのアプローチを行います。
身体評価について詳しくはこちらもご参考ください。
脳機能的にも関節可動域や筋機能は重要であり、その点ではカイロプラクティックの施術は有効です。
また、頭部を安定させることで視覚や前庭系など中枢神経系(脳)の機能を向上させるために重要な感覚器も活性化させやすくなります。
カイロプラクティック
関節や筋肉には、関節の位置や筋肉の長さなどを脳に伝える固有受容器があり、とくに頸部に多く分布していると言われています。
そのため、体を動かすだけでも脳を活性化でき、運動が健康に良い一因でもあります。
しかし、事故によってこれらの機能が正常に働いていない(関節可動域制限、筋力の低下など)ことも多く、高次脳機能障害へのアプローチする準備として、これらの問題を解決していくほうが良いと考えています。
また、頭部打撲では、頭蓋仙骨療法も有効です。(急性期は行えません)
頭蓋仙骨療法について詳しくはこちら
機能神経学的アプローチ
脳機能には局在性があり、記憶は側頭葉、注意能力は前頭葉が中心となり活動しており、基本的にはその脳領域を活性化させる必要があります。
しかし、その脳領域が働くだけではなく、他の脳領域(小脳、脳幹、他の大脳皮質領域など)と相互作用する神経ネットワークを構築しており、単純に記憶や注意力のトレーニングを積み重ねても効果がみられないこともあります。
そのため、記憶や注意力の低下の要素は、側頭葉や前頭葉の要素だけではありません。
そのようなことから、記憶力や注意力を含めた認知機能の研究は、多様な手法が取り入れられています。
原始反射
原始反射と認知機能との関りを研究した論文もあり、原始反射の統合も高次脳機能障害には有効な可能性があります。
また、高齢者の研究ではありますが、原始反射の統合によって認知機能が向上することが示唆されています。(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39284460/)
このようなことから、原始反射の残存が確認できれば、原始反射統合を行っていくことも重要と考えています。
原始反射統合について詳しくはこちら
感覚機能の向上
脳機能の神経ネットワークを階層的に説明すると感覚器(視覚、聴覚、前庭系、体性感覚など)の情報を脳で処理し、適切なアウトプットを行います。
例えば、注意力1つとっても視覚が適切に働くことで注目すべき物体を確認でき、さらには注目すべき物体から目が離れないように眼球をコントロールするために他の脳領域を活動させる必要があります。
また、動く物体であれば適切に眼球を動かし、必要に応じて頸部や胴体部を動かすように脳が処理し、アウトプットすることでそれらを動かす筋肉や関節が働きます。
ここでは視覚で簡単に説明しました他の感覚(聴覚、前庭系、体性感覚など)も大切になります。
感覚機能の低下がみられれば、これらの感覚器の向上を目的とした刺激も重要であり、結果として側頭葉や前頭葉への刺激の1つにもなります。
カイロプラクティック心の感覚エクササイズ
高次脳機能障害の課題
高次脳機能障害は、脳の損傷がみられる障害です。
そのため、損傷の程度によっては以前の状態に戻ることは困難もしくは数年単位の長期的なアプローチとなります。
このようなことから、環境を調整や周辺の理解などが重要となります。
国立障害者リハビリテーションセンターでは、支援者を含めた手引き資料を公開しているため、ご参考ください。
高次脳機能障害と診断されなかった場合は?
なかには高次脳機能障害の診断基準の1つとなるMRIやCT診断での異常がみられないにも関わらず、交通事故後に認知機能の違和感を覚える人もいます。
そのようなケースは、交通事故で脳震盪による後遺症(脳震盪症候群)である可能性も考えられます。
また、認知機能は加齢や運動不足などでも引き起こされやすいです。
器質的な問題が確認できなこそ、ここで紹介したような脳神経学的なアプローチは有効となるため、少しでも認知機能を向上させたい方はカイロプラクティック心にご相談ください。
脳震盪後遺症について詳しくはこちら
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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