言葉を話す時期は個人差もあり、心配のいらないケースも多いですが、1歳6ヶ月検診、3歳検診などのスクリーニングで、発語の遅れを指摘されて心配される親御さんも少なくありません。
言葉を話すメカニズムは複雑であり、言葉の遅れの原因や危険因子は多岐にわたります。
ここでは発語の遅れについての原因やこどもの発達障害に有効なBBIT認定療法士が行うアプローチ方法について解説していきます。
この記事はBBIT認定療法士のカイロプラクティック心が書いています。
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発語の目安
発達においては個人差もあり、周りのこどもが話し始めていると焦る方もいますが、早生まれや成長の速度の違いだけのケースもあります。
ただ、発語の目安(以下を参考)から数ヶ月から年単位で遅れている場合は、検診で指摘されるとは思いますが専門医に相談したほうが良いでしょう。
- 生後2~3ヶ月頃から「あ~」「う~」といった母音の発声(クーイング)に始まる
- 生後12ヶ月くらいまでに「パパ」や「ママ」を区別
- 生後18ヶ月までにいくつかの単語を使う
- 2歳までに2~3つの単語で文を作れるようになる
- 平均的な3歳の小児は会話ができる
- 4歳の小児は簡単な話を伝えることができ、成人や他の小児と会話できる
- 5歳の小児が数千語のボキャブラリーを有することもあり、アルファベットを暗唱できる
※生後18ヶ月前でも話を聞き取り、理解ができる
引用元:SMDマニュアル小児発達
どれくらいが言葉の遅れと判断される?
1歳6ヶ月検診では、ほとんどの子どもが2語しゃべれているため、この段階で2語しゃべれない場合は言葉の遅れを指摘されるとされています。
また、3歳検診では2語文(「花 きれい」「ママ いく」など)を作れることが指標となります。
※引用元:言語発達遅延の診断と早期介入
言葉が遅れる原因は多岐に渡るため、言葉の遅れ以外にも生活面や運動発達などの評価も重要となります。
言葉の遅れがみられる原因
言葉の遅れがみられる原因として、主に以下のことが考えられています。
- 聴覚障害 ( 聴覚障害につながる周産期の危険因子も含む)
- 中枢神経系の処理障害(全般的な発達遅延、知的障害、自閉症スペクトラム障害)
- 発達性言語障害
- 発話障害:(構音障害、言語失行症)
- 解剖学的異常の存在(例:口唇裂、口蓋裂)
- 環境の欠乏
難聴においては片側だけでも言葉の発達に重大な影響を与えるとされているため、生後6ヶ月までにスクリーニングで検出された場合は適切な介入が推奨されています。
また、スクリーニングで検出されなかったとしても病気(持続性滲出性中耳炎、細菌性髄膜炎など)によって後天的に難聴となる可能性もあり、日常から観察し検診でもスクリーニングされます。
中枢神経系の処理障害は、一般的に発達障害(発達遅延症)に関連しています。
発達障害の早期スクリーニングは難しいケースもあり、2歳で読み書きができていたとしてもコミュニケーションが難しかったり、読んだ内容を理解できなかったりするため、言葉の遅れ以外の日常の振る舞いも重要な診断要素となります。
発話障害は他の原因と重複する点もありますが、脳の損傷(言語野領域)や発声するための運動器(口、喉など)の機能異常がみられることがあります。
環境の問題として多言語で育てられたり、虐待や両親の低学歴などが疑われるケースがあるそうです。
発語が遅れるサイン
日常生活において以下のような徴候がみられる場合は、発語発達に遅れが生じやすいと考えられています。
- 年齢を問わず聴覚刺激に対する反応が一貫していない、または全くない
- あらゆる年齢における言語能力や社会能力の退行
- 9ヶ月までに喃語がなくなる(だだだ、ばばばなど母音と子音で構成されたハッキリとした発声)
- 12ヶ月までに指差しや身振りをしなくなる
- 16ヶ月までに理解できる単語が全くない
- 15ヶ月までに共同注意(つまり、他人の視線を追うこと)ができなくなる
- 24ヶ月までに2語の自発的なフレーズがなくなる
- 24ヶ月までに簡単な指示や命令(「座りなさい」「こっちへ来なさい」など)に反応できない
- 36ヶ月齢で会話がほとんど理解不能
- 年齢を問わず開鼻声(発音時に鼻が抜けた感じの声)
- 年齢を問わず不適切な声質、声の高さ、声の強さ
音に反応しない場合は、まず難聴を疑うサインです。
開鼻声は、口蓋裂や神経筋障害などが原因でみられ装具や手術などの治療が行われます。
他のサインは発達障害(とくにASD)でもみられます。
参考文献:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10775292/
言葉の遅れが気になったらどうする?
言葉の遅れが気になったら当然かもしれませんが、医療機関を受診することが大切です。
難聴と発達障害、開鼻声では、それぞれ治療方針も違い、診断できるのは医師だけとなります。
ネットの情報だけで自己判断せずに、かかりつけの小児科医に相談しましょう。
発語には個人差もありますが、ASD、発達性言語障害などは早期に診断できれば早期介入が望ましいとされています。
また、難聴、構音障害など原因をいくつかあり、それらを診断できるのは医療機関のみです。
スタッフや設備が整っていれば、医師だけではなく言語聴覚士、理学療法士、作業療法士などを含めたサポートを受けることができます。
家庭でできること
発達障害において確立された治療方法はありませんが、早期介入が有効とされています。
その中には、ご家庭でのお子様との関りや発達遅延に関する教育が含まれています。
アメリカの言語聴覚協会が言語発達を促す戦略として以下のことを家庭で行うことを推奨しています。
- 子供が身振り、行動(子供が音を立てたり、喃語を言ったりなど)でやりとりを始めたら、こどもがあなたに話しかけていると想定し反応してください
- お子様に会話をする機会を与えます
- 子どもが言ったことを繰り返し、さらに詳しく話します(例:、子どもが「車」と言ったら、「青い車」や「パパは車に乗っている」と言う)
- お風呂の時間に体の部位を教えたり、食事の時間に食べ物の色や量を教えたりするなど日常生活の出来事を会話に活用
- 起こった出来事(例:おむつを替えたとき、テレビを見たとき、お店に行ったときなど)や、子供が興味を持っていることについて話します
- お子様に、さまざまな文脈でさまざまな単語に触れさせてください (例: これはあなたのカップです、これはママのカップです、ママのカップは大きい、あなたのカップは小さい)
- 選択肢を与えます(例:「靴を履きますか、それともサンダルを履きますか?」
- 生まれたばかりの赤ちゃんでも一緒に本を読んだり絵について話したり、本を読みながら単語を指差したりしましょう(できれば毎日の習慣にしましょう)
- できるだけ動作を交えて歌や童謡を歌います
勘違いして欲しくないのは、話しかけることが少なかったから言葉が遅れたワケではありません。
口数の少ないご家庭でも精神病を発症したり、虐待をしたいたりする特殊な例を除けば、言語発達遅延がみられないとされています。
ただ、言葉が少なければ積極的に言葉を教える機会をご家庭がストレスを感じない程度には増やしていく必要があると考えていただければと思います。
例えば、定型発達とされる児童や少年でも「学業を向上させたい」「スポーツを上達したい」と考えれば、勉強や競技練習を増やすことと同じです。
スクリーンタイム
アメリカの小児学会では、18ヶ月未満の子供はビデオチャット以外のスクリーンメディア(YouTube、ゲーム、テレビ)の使用を避けることを推奨しています。
また、18ヶ月から2歳までの子どもの場合、メディアをみるとき親は子供が内容を理解できるように一緒に番組を見る必要があります。
2〜5歳の子供の場合、スクリーンメディアの使用は大人の監督の下で、1日1時間の高品質番組に制限する必要があります。
プライマリケアの環境では、デジタルメディアの使用に関して家族内で健康的な習慣を促進することも重要です。
最近では幼児がスマホを熱心に観ている姿を見る機会も多いですが、言葉の遅れのリスクもしくはASD発症の徴候であると研究でも報告されています。
言葉の遅れとスクリーンタイムについて詳しくはこちら
発達障害の発語遅延の特徴
ここまで解説してきたとおり、発達の問題(ASD、発達性言語障害)が発語の遅延に関連しているケースがあります。
ASDと発達遅延
ASDの中核症状の1つに社会的コミュニケーション障害があり、幼児期に言葉の遅れは診断基準の1つとなります。
ASDについて詳しくはこちらをご参考ください。
ASDの症状は多様で特徴は個人で大きく変わり、一般的に3/4は幼稚園に入るまでに言語能力に多少の困難がみられますが、その程度は軽度から重度とされています。
また、1/4は5歳までに例外的な言語能力を示すことがあります。
ASDの子どもでは、口腔運動(口や舌など発声に関与する運動)が発話および言語習得と密接に関連していると研究で示唆され、重度な口腔運動があると発話習得および全体的な学習速度がより大きな課題となる可能性があると考えられています。
他の問題として流暢に話すことが難しいと感じるASDは多く、作業記憶が関連しているとされています。
参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36268264/
発達性言語障害
発達性言語障害は、ASDと同じ発達障害に分類され、共通点としては以下のことがみられます。
- 言語の問題(非言語コミュニケーションの苦手もみられる)
- 言語の理解と表現(とくに文法や語彙力に問題が生じやすい)
反対に診断名が違うようにASDにはみられない発達性言語障害の特徴は以下のとおりです。
- 主に言語の困難を特徴とする
- 広範囲な社会的コミュニケーション障害はみられない
- 特定の興味や反復される行動パターンがみられない
参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39131763/
発達性言語障害の言語の問題がみられる要因の1つとして、脳機能の左右差が挙げられています。
参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38002565/
発達障害にみられる脳機能の問題
脳科学の進歩により、発達障害の脳機能の問題を報告する研究が多くみられます。
ASDの乳児に対して脳機能研究をまとめたレビューでは、早期発見の指標となり得るいくつかの問題が示唆されました。
研究では「脳の左右差」「神経ネットワークの接続異常」「言語および非言語に対する感受性の多様性」の問題が報告されています。
具体的には大脳皮質と小脳との神経ネットワーク異常、大脳皮質(側頭葉、前頭前野など)の異常がみられています。
参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37662636/
発達性言語障害に関してもASDと同様に脳の左右差および神経ネットワークの接続異常がみられ、とくに言語処理に関する領域の異常が観察されています。
参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38002565/
脳の左右差とは、脳の領域で役割は異なり、左右に脳を大別しても違いがみられます。
このように多くの脳領域がそれぞれの役割を果たすことで言葉を話しながらでも動いたり、他の作業を行ったりすることができます。
このようなことから、後述しますが脳の左右差がみられることで複雑な言語コミュニケーションが困難になっていると考えられてます。
また、それぞれの脳領域が役割を果たすだけではなく、それぞれが相互作用するこが重要であり、とくに大脳皮質と小脳の間で上手くやり取りできていないことが観察されています。
そして、言語に関しては左半球が優位に働くとされていますが、ASDおよび発達性言語障害では左半球だけが機能低下しているのではなく、右半球の機能低下が観察されるパターンもみられたそうです。
この理由として、言語を含めたコミュニケーションは右半球の働きも重要であることが考えられます。
言語に関する脳機能の働き
言語を理解したり話したりする能力は、主に左半球にあるブローカ野(前頭葉)とウエルニッケ野(側頭葉)が大きな役割を果たしています。
もう少し具体的に解説するとブローカ野で言葉を選んだり、正しい話の順序を組み立てたりします。
そして、口や舌の筋肉などにも指令を出すことで正確に発音ができます。
ウェルニッケ野は言葉の意味を理解(他人の発現、文章の内容など)ために重要な役割を果たします。
このようにブローカ野とウェルニッケ野を中心とした神経ネットワークが形成されて言語を理解し、話すことが可能となります。
言語を用いてコミュニケーションをとる人は、一般的に左半球が優位に働くとされています。
もちろん、ブローカ野およびウェルニッケ野以外の脳領域との神経ネットワークも重要であり、右半球も発語を含めたコミュニケーションに重要な役割があります。
左半球の機能低下でみられる言語の問題
左半球が機能低下すると以下のような言語の問題がみられます。
- 言語中枢(ブローカ野やウェルニッケ野)が影響を受けるため言葉の理解や解釈が難しくなる
- 発話の困難(言葉を生成する能力が低下し、適切な単語を選んで話すことが難しくなる)
- 言葉を思い出すのに時間がかかる、または間違った単語を使用する
- 文法的に正しい文章を構築するのが難しくなる
- 音の識別や処理が難しくなり、発音の誤りや音韻意識の低下が見られる
音韻処理(音の識別、単語の区切りなどを識別する能力)は4~6歳ころから発達すると考えられており、文字への興味や意識が高まります。
このようなことから、音韻処理が難しい幼児では親の言っていることは聞き取れていますが、正しく発音できないことも多いです(例:さかな⇒たかな、スパゲッティ⇒スパゲテー)
右半球のコミュニケーションの重要性
右半球は非言語的コミュニケーション(言葉に込められた感情、ニュアンス、文脈の理解など)に重要な役割を果たします。
とくに言葉の話せない乳児は、右脳から優位に発達すると考えられています。
ASDの傾向がみられるケースでは、とくに右半球の低下がみられることも少なくありません。
発語において左半球は重要ですが、幼児期においてはときに言葉を話すための土台となる右半球の発達はとても重要と言えるのではないでしょうか。
右半球の機能低下でみられる言語の問題
右半球の機能低下は、以下のようなコミュニケーションの問題が生じます。
- 物事の因果関係を理解する能力の低下(例え話、抽象的な話を理解することが苦手など)
- 注意複および集中力の低下(複数の情報を同時に処理することが難しくなる)
- 視覚情報を正しく認識する能力が低下(会話の理解や記憶が難しい)
- 他者の意図や感情を理解する能力が低下
- 感情を適切に表現したり、他者の感情を理解する能力が低下
右半球は、感情をのせた言葉の理解に重要です。
例えば「大丈夫」という言葉1つでも使うシーンや声のトーンなどによっては本当に心配しているケースもあれば、人の失敗を皮肉として発現しているケースがわかります。
また、目で見た物を含め頭の中でイメージすることも苦手となるため、会話を頭でイメージすることが出来ず、会話の理解が乏しく結果として短期的な記憶も困難となります。
そうなると、言葉を教えようとしても記憶されにくいため、発語が遅れてしまう可能性も考えられます。
発語の遅れが病院で解決されなかったら
発達障害については専門機関が少なく、確立された治療方法がありません。
そのため、発語が進まずに親御さんが悩まれることも多いです。
悩まれて何とかしてあげたい親御さんは、脳機能の評価、アプローチを行うBBIT認定療法士であるカイロプラクティック心にご相談ください。
BBITは、アメリカで発達障害の臨床にあったっていた吉澤D.Cが設立した脳バランスに注目したアプローチ方法です。
一人ひとりに合わせて段階的かつ脳機能のバランスを改善させる運動プログラム、食事の見直し、カイロプラクティックを合わせていきます。
脳機能が改善していくことで初めは小さい変化かもしれませんが、徐々に親御さんもお子さんの変化を実感されることが多いです。
言葉の遅れの要因(発達面から)
病院での発語の遅れに対するアプローチ方法は、言語療法を中心として行われます。
しかし、ASDが起因しているケースにおいては、それだけでは不十分であることも多いです(理由は先にも解説したように言語以外にも対応する必要があるからです)
また、言語療法だけで反応しない場合は、とくに発語の土台となる運動や情緒などの問題も捉えていく必要があります。
その問題を捉えていくヒントとして、発達の遅れを脳機能の側面から原因を解説してきましたが、それらを踏まえて発達の面からも考える必要性があります。
言葉を話すためには以下の発達も必要不可欠と考えられています。
- 認知(考えたり、判断したり、他者の意図を理解する)
- 運動(発声だけではなく手や粗大運動の発達も重要)
- 自己像との関係性(他者に言葉で伝える)
- 情緒(情緒が安定することで適切な言葉が選べる)
これを見ると、話す練習するだけでは発語の遅れの問題は解決しないことが理解しやすいかと思います。
また、認知と運動面からみると「目」「耳」からの情報を適切処理することが言葉を覚える第一段階となります。
臨床的には注視が困難(物をジッとみつめることができない)左右の音を聞き取りづらい(耳は聞こえているが骨伝導、空気振動が上手く処理できていない)ケースは多くみられます。
そのため、言葉を覚える初期の段階でつまづきがみられることで言葉の遅れが現れると考えられます。
これらの情報処理能力が育ってくると、人の真似(親の声を真似たり、しぐさを真似たりする)をしたり、それらの真似をすることを面白がり、人と合わせる楽しさを感じとれるようになり相手に物を伝える前段階となります。
これらの真似をするためには体幹部や手足の運動発達は当然ですが、相手の動きをイメージして自分の体で表現する能力が必要であり、こどもが大人の真似をすることは発達過程では欠かせないプロセスと言えます。
これらの発達プロセスが欠けてくれば、先に解説した脳機能は活性化しづらく研究で述べられている問題が生じやすいです。
本来は、生まれてきて原始反射によって基礎的な発達プロセスを学びつつ、寝返り、ハイハイ、両親とのふれあいなどによって運動面、情緒、自己像などが育っていきます。
このようなことから、発語とは関係ないようにみられる原始反射に問題が生じていれば、それらにアプローチが必要であり、さらにはそれらに関連する問題を対処していくことが大事になります。
BBITでは、原始反射統合をはじめ関連する問題に対してアプローチしていきます。
カイロプラクティック心の発語の遅れへのアプローチ
発語の遅れは、脳機能の左右差および神経ネットワーク異常などが原因と考えられていますが、BBITは脳の左右差を評価し、脳バランスの改善および神経ネットワークの再構築を促すアプローチを提供しています。
そのため、診断名に対して○○というようなアプローチ法ではなく、マニュアル的な手法もありません。
発達障害にように医学的に確立された治療方法が存在しないケースは、過去の症例や研究論文の臨床応用が重要となり、同じ発語の遅れでも細部のアプローチについては十人十色です。
ここでは発語の遅れに関する問題点に対して、アプローチの一例を解説します。
口腔運動の問題
とくにASDでは口腔の問題が発語の遅れに関連していることが研究で示唆されています。
ASDの原因、評価、アプローチはこちらもご参考ください。
口腔の運動は脳幹部にある脳神経に分類される顔面神経、舌咽神経、迷走神経などが関与しており、乳児期では原始反射と呼ばれる脳幹部の反射によって口腔運動が行われています。
とくに発達障害では原始反射(本来は出生後1~3年で統合される)が残っていることが多く、結果として舌や口の動かし方が未熟な状態がみられます。
このようなことから、脳幹部を活性化させ、必要に応じて口腔運動を再学習させることが重要です。
原始反射統合および脳幹へのアプローチ
原始反射の1つに吸啜反射があり、口腔運動の発達に重要と考えられます。
ただ、口の動きも体幹の働きが重要であるため、他の反射(ガラント反射、前庭迷路反射など)を統合させることは大切です。
また、神経ネットワークの成長を促すためにも初期にみられる原始反射の統合が重要と考えられるため、幼児期ほど原始反射の統合を中心に初期は行っていきます。
脳には1つの刺激により、その周辺の神経ネットワークも活性化する働きがあると考えられています。
そのため、原始反射をコントロールしている脳幹部にある脳神経(聴覚、前庭、視覚、嗅覚など)への刺激(匂い、光、音など)が脳幹の活性化につながります。
このようなことから、ケースによっては匂いや光などの刺激を用いることもあります。
口腔運動へのアプローチ
年齢によっては、口腔運動(舌を動かす、口を動かすなど)を行います。
しゃべれていたとしてもコミュニケーションが苦手である場合、口腔運動によって脳を活性化させることも大切になります。
また、顎関節、舌骨筋群などへのカイロプラクティックアプローチによって口腔運動を行いやすくすることもあります。
脳の左右差
脳機能の評価によって、左右差がみられます。
こどもは、とくに左右差の改善によって成長が促されるケースも少なくありません。
BBITでは脳機能の左右差を評価して、機能低下がみられる側を中心に活性化させる運動プログラムおよび施術を行います。
幼児期では身体評価に限りがあるため、親御さんに質問票を回答いただき、脳の左右バランスを決定していきます。
右機能の低下
言語は、左の機能低下と考えられます。
しかし、非言語的コミュニケーションに対して優位性がみられる右半球の機能低下は多くみられます。
非言語コミュニケーションは、自身の想いを表現する言語の土台となるため、右半球の機能低下がみられることで言葉の遅れにも繋がると考えられます。
また、個人的な考えでもありますが、自分の想いを伝える必要性がなければ言葉をしゃべる必要性はなく、発語の遅れにつながると言えるのではないでしょうか。
もちろん、右半球の機能低下がみられるこどもでも大人びた喋り方をすることもありますが、一方通行の会話であったり、共感することが少なかったりするなどコミュニケーションの問題がみられます。
質問票や脳機能評価にもとづいて機能低下側が活性化するような運動プログラム、カイロプラクティック施術を行っていきます。
神経ネットワーク異常
原始反射のところでも解説しましたが、1つの刺激で、その周辺の神経ネットワークも活性化するため、低年齢ほど左右の脳バランスが改善することで著しい成長をみせることがあります。
ただ、言葉の遅れの困りごとは十人十色(しゃべれるようになっても学校では無口、トラブルになりやすい、言いたいことが言えないなど)です。
そのため、振る舞いや脳機能評価の結果と照らし合わせ、神経ネットワーク異常による仮説が立てられれば、より細部の神経ネットワークに注目したアプローチを行っていきます。
困りごとによりますが、具体的には研究論文で示唆されている前頭前野、側頭葉、小脳などに焦点を当てたプログラムを構築します。
前頭前野は認知トレーニング(脳トレアプリ、ことば遊びなど)も重要ですが、有酸素運動(少し長めの運動)手を使った運動なども有効です。
とくに言葉が遅れているケースでは認知トレーニングが難しいこともあり、運動によって活性化させることも大切となります。
側頭葉や小脳も同様にバランストレーニング、運動調整(ケンケン、ボール遊びなど)など、こどものレベルに合わせた運動によって活性化させていきます。
日常の遊びも大事
歩行やランニングなどは小脳の働きが大きく、遊びでは鬼ごっき、かけっこ、散歩など時間をかければ前頭前野の発育にも良いです。
公園では前庭系を刺激する遊具(滑り台、ブランコ、鉄棒など)が沢山あり、側頭葉に活性化につながります。
幼児で遊具を使うことが難しい場合は、親御さんと一緒に行うと良いです。
ケンケンパ、平均台などバランス感覚や運動調整を行う小脳のトレーニングに最適となります。
言葉を扱うための土台作り
言葉が遅れているからと言って、言葉を覚えるトレーニングやしゃべるトレーニングだけを行っても効果がみられないケースがあります。
なぜなら、言葉を扱ったり、コミュニケーションをとったりするために土台が築けていないからです。
例えば、家を建てるときに土台がなければ、家が崩れるだけではなく建てることも困難です。
人が言葉を扱うための土台として、乳児期に寝返りやハイハイ、クーイング、泣き叫ぶ、おっぱいを飲むなどで発声するための体幹や口腔機能の働きを向上させます。
カイロプラクティック心では、脳機能の面から土台作りをサポートいたします。
よくある質問
言葉の遅れに関してよくある質問をまとめました。
発達障害を診断してもらえますか?
A.診断はできません
ほとんどの方に「ASDですか?」「学習障害ですか?」など聞かれますが、診断は医師しかできません。
まずは医療機関を受診してください。
カイロプラクティック心は診断名は参考にいたしますが、脳機能を評価し、脳科学の論文を臨床応用してお子様の困りごとが少しでも良くなるようサポートしておりますが、診断を下す権限はありません。
療育を受けていますが効果がみられませんが良くなりますか?
A.良くなる可能性はあります
どのような療育を受けているかはわかりませんが、BBITで行う評価、アプローチを行っている療育施設はないため、新しいアプローチ方法という意味でも良くなる可能性はあります。
療育によっては個別ではなく、集団でまとまった療育を多く行っていることもあり、一人ひとりの困りごとに対してサポートしきれないこともあります。
カイロプラクティック心は、一人ひとりの困りごとに対して仮説を立てながらアドバイス、アプローチを行うため、他の療法で効果がなかったケースでも効果がみられることがあります。
病院の治療や定期健診は止めても良いですか?
A.止めないことをお勧めします
カイロプラクティック心のサポートは、病院の治療を切り離すものではありません。
また、病院の治療を止めさせる権限もないため、病院の治療に限らず療育なども止めることはないです。
言語聴覚士や臨床心理士などのサポートを受けて効果がないと感じているケースでも、脳機能の土台が育つことで相乗効果により発達が促されやすくなります。
とくにカイロプラクティックでは言葉の練習を中心に行うことはないため、言語聴覚士のサポートはしっかり受けておくことをお勧めします。
ASD、発達障害全般についてはこちらもご参考ください
参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31333549/
投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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