学習障害

学習障害について

学習障害は、発達障害に1つであり、知的な遅れがないにもかかわらず、何らかの機能低下によって学習が困難な状態を示す総称です。

日本国内の調査では、文部科学省が通常学級に在籍する児童・生徒53,882人を対象として4.5%の学習障害が確認されたと報告されています。また、読み書きにおいてはアルファベット圏と漢字圏では文字を認識できない原因となっている脳の障害部位が異なるという報告があります。

学習障害の目立った症状は、就学後にみられることが多く、周囲に理解されないと学習障害のこどもは自分だけでは対処できずに困ってしまいます。

ここでは学習障害について理解が深まるよう詳しく解説していきます。「ひょっとしたら学習障害?」と気づいてあげられる人が増えていただければ幸いです。

学習障害の基礎知識

学習障害は、知的発達に遅れがないものの「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のいずれかもしくは複数の習得、使用が困難を示す発達障害です。

ただ、学習障害が困難な状態を広く扱っているため、発達障害を基盤としたものだけではなく弱視、難聴など機能障害も学習障害とされます。

学習障害の定義

学習障害は実務上、「医学的的立場」「神経心理的立場」「教育的立場」で定義に違いがみられます。

医学的立場

医学的にはDSM-5(アメリカ精神医学会:精神障害の分類と診断の手引)ICD11(世界保健機関:国際疾病分類の第11回改訂版)を診断基準にするため、「読字・書字・算数」が発達に伴って障害されている状況と規定されています。

このようなことから、学習障害は発達障害の1つとも言われます。

精神心理的立場

精神心理的には、知的水準が正常範囲内であり、その検査における個人内差が大きい状況を学習障害と定義しています。

検査はWISC-Ⅲ 、WISC-IV(WISC-Ⅲの改訂版)が主に用いられ、知的水準が正常範囲内で言語IQと動作IQに有意な差が認められれば、学習障害と判定されます。

教育的立場

文部科学省は以下のように学習障害を定義しています。

学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、 読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。 学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や環境的な要因が直接の原因となるものではない。

引用:文部科学省(学習障害児に対する指導)

学習障害は、医学、精神心理、教育学の分野で研究されているため、学習困難な状態を広く扱った状態になっていると考えられます。

学習障害の分類

学習障害は、主に「読む」「書く」「算数・推論」の3つが困難なタイプに分類されます。

※2013年に出版されたアメリカ精神医学会のDSM-5(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、この分類も「限局性学習症・限局性学習障害」にまとめられました。

読字障害(読みの困難):ディスレクシア

文字を音韻化(文字をみて認識して口に出して表現こと)するまでの過程の障害があります。また、文字の見え方にも「字がぼやける」「字が黒い塊りにみえる」「鏡文字にみえる」など特徴があります。

読むことだけではなく書くことも困難となることがあり、発達性読み書き障害とも呼ばれることがあります。

英語圏では筆記体の字が黒い塊りにみえるため、読字障害が発見されやすく、日本では漢字の画数が多くなった段階で黒い塊りにみえるため発見が遅れてしまうそうです。

症状は以下のようなことがみられます。

  • 1文字づつ拾って読む逐次読み(例:「おはよう」であれば「お」「は」「よ」「う」と読む)
  • 単語や語句を途中で区切ってしまう(例:「ごはんを食べたい」であれば「ごは」「ん」「を食べ」「たい」と読む)
  • 読んでいるところを確認するように指で押さえて読む
  • 文字間や行間が狭いとさらに読みにくさを感じる
  • 読むこと自体が疲れる
書字表出障害(書き出すことが困難)ディスグラフィア

読むことが出来ても書くことが苦手であり、正確に書いているつもりでも鏡文字、バランスが悪い文字になってしまいます。

症状は以下のことがみられます。

  • 字がなかなか覚えられない。もしくは、覚えてもすぐに忘れる(カタカナが習得できない、ひらがなも書けない文字がある)
  • 促音(「ばった」「がっこう」など小さい「っ」で表記される音)が書けない
  • 撥音(「かんばん」「とんでもない」など「ん」で表記される音)が書けない
  • 「わ」「は」や「お」「を」のように聞いた音が同じであると誤字が多い
  • 鏡文字(漢字の偏や旁が逆になる、ひらがなでも鏡に写したような字になる)を書くようになる
算数障害(算数・推論の困難)ディスカリキュリア

数字に関する能力のみ苦手という人が多いですが、「言語的な障害との関連」「数そのものの概念がわからない」「図形や立体がわからない」など算数に関する困難が多岐にわたります。

また、視覚の機能も弱く数字をそろえて書いたり、バランスを整えて書いたりすることが困難であるため、ひっ算の桁をずらして書いてしまうことがあります。

症状は以下のことがみられます。

  • 数を数えることが苦手
  • 簡単な数字や記号でも理解がなかなかできない
  • 算数の繰り上がり、繰り下がりができない
  • 図形の模写ができない
  • 数字の大きい、小さいがわからない

学習障害の診断方法

2013年に出版されたアメリカ精神医学会のDSM-5(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)の診断基準およびICD(WHO:国際疾病分類)により、診断されることが多いです。

DSM-5の診断基準は以下のとおりです。

A.学習や学業的技能の使用に困難があり、その困難を対象とした介入が提供されているにもかかわらず、以下の症状の少なくとも1つが存在し、少なくとも6ヶ月間持続していることで明らかになる:

(1)不的確または速度が遅く、努力を要する読字(例:単語を間違ってまたゆっくりとためらいがちに音読する、しばしば言葉を当てずっぽうに言う、言葉を発音することの困難さをもつ)
(2)読んでいるものの意味を理解することの困難さ(例:文章を正確に読む場合があるが、読んでいるもののつながり、関係、意味するもの、またはより深い意味を理解していないかもしれない)
(3)綴字の困難さ(例:母音や子因を付け加えたり、入れ忘れたり、置き換えたりするかもしれない)
(4)書字表出の困難さ(例:文章の中で複数の文法または句読点の間違いをする、段落のまとめ方が下手、思考の書字表出に明確さがない)
(5)数字の概念、数値、または計算を習得することの困難さ(例:数字、その大小、および関係の理解に乏しい、1桁の足し算を行うのに同級生がやるように数字的事実を思い浮かべるのではなく指を折って数える、算術計算の途中で迷ってしまい方法を変更するかもしれない)
(6) 数学的推論の困難さ(例:定量的問題を解くために、数学的概念、数学的事実、または数学的方法を適用することが非常に困難である)

B.欠陥のある学業的技能は、その人の暦年齢に期待されるよりも、著明にかつ定量的に低く、学業または職業遂行能力、または日常生活活動に意味のある障害を引き起こしており、個別施行の標準化された到達尺度および総合的な臨床消化で確認されている。17歳以上の人においては、確認された学習困難の経歴は標準化された評価の代わりにしてよいかもしれない。

C.学習困難は学齢期に始まるが、欠陥のある学業的技能に対する要求が、その人の限られた能力を超えるまでは完全には明らかにはならないかもしれない(例:時間制限のある試験、厳しい締め切り期間内に長く複雑な報告書を読んだり書いたりすること、過度に思い学業的負荷)。

D.学習困難は知的能力障害群、非矯正視力または聴力、他の精神または精神疾患、心理社会的逆境、学業的指導に用いる言語の習熟度不足、または不適切な教育的指導によってはうまく説明されない。

この診断基準にくわえて、知能検査WISC-Ⅳ(5~16歳)WPPSI(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合)WAIS(16歳以上)、認知検査KABC-Ⅱなどもふまえて総合的に診断されます。

脳の器質的問題が疑われる場合はCT、MRIなど脳に異常がないかも検査されます。小児の場合はCTやMRIによる被爆の問題もあるため、この検査を行うかは慎重に判断する必要があります。

学習障害は判断が難しい

学習障害は、本格的に学習が始まる就学期に入るまで判断が難しいです。

知的な遅れがなく、友達とも上手にコミュニケーションがとれているにもかかわらず、「読む」「書く」「算数」のみに苦手が現れるため、周りに理解され難いです。

また、学習障害にも症状の程度に個人差があるため、小学生はなんとか乗り越えられたとしても中高生になってから英文が読めない、数学の文章問題が解けないなどが現れてしまうこともあります。

ADHD・ASDとの合併症状

ADHD、ASDなどと合併して学習障害がみられることも多いです。(とくにADHD)

このような合併症状でも学習障害は、就学期に入るまで判断が難しいです。また、ASDにみられる知的の遅れなのか、ASDの特性もみられる学習障害なのかを判断することは、今後のサポート方針にも関わるため大切です。

ADHDと学習障害の併存率に関する研究では、45%と併存するという報告もあります。併存する場合は、症状が重度になるとも言われており、ADHDの振る舞いがみられる場合は、学習障害の有無も確認することが重要となります。

学習障害の病院での治療方法

学習障害の原因も解明できておらず、医学的な治療方法は確立されていません。そのため、学習障害であっても学びやすい環境整備、学習方法の工夫などが主な治療となります。

国立成育医療研究センターでは、ディスレクシアの治療を以下のように行っています。

平仮名文字の音読が自動化する指導(解読指導)を行い、音読のつらさを軽減します。ご家庭での指導を援助するICTを使った音読指導プログラムも提供しています。また、文章の音読速度を改善するための指導(語彙指導)も行っていきます。

引用元:国立成育医療研究センター

環境面では特別支援学校での教育を受ける方法もありますが、学ぶ方法を工夫することで普通学級に進学しているケースもあります。

◇読字障害の学ぶ工夫

  • 字が詰まっているような漢字を避けた文章を作成する
  • 行間及び字の間隔を広くする
  • タブレットやパソコンの音読機能を活用する

◇書字障害の学ぶ工夫

  • パソコンでの代替え入力
  • 音声入力
  • 反復して書くことで間違えを減らしていく

◇算数障害の学ぶ工夫

学習障害のなかでも数学障害は原因が多岐にわたるため、何が原因で算数障害が現れているかを探る必要があります。その原因がわかれば、知的な遅れがないことから上手くカバーできることがあります。

  • 聴覚機能が弱いことで数字が数えられない場合は視覚機能を活用(カタカナやひらがなを使って数字を表記)
  • 空間認知が弱いくひっ算の数式がずれる場合は、マス目を利用する
  • 情動と数字を結び付ける(好きなお菓子をお手伝いするたびに2個づつもらえる:掛け算の習得)

※これらはあくまで例のため、お子さんに合わせて学びやすい方法を一緒にみつけていくことが大切です。

サインを見逃さないで

学習障害は、症状の程度によっては「本人もなぜできないのか」が理解できていないことも少なくありません。

ADHD、ASDと併発しているケースも多いですが、学習障害だけの症状は「読む」「書く」「算数」といった特定の能力の困難であるため、周りからは単なる苦手と思われ、学習障害と判断されずらいです。

学習面で特定の苦手「ひらがなが書けない」「難しい漢字だけ読めない」「時計が読めない」「簡単な計算ができない」など他の学習面に比べ、極端に苦手がみられる場合は学習障害のサインかもしれません。

「学習障害かな?」と疑った場合は、診断できる医療機関は少なく診断を受けるまで時間がかかるため、まずは公共機関(お住いの役所に相談すると適切な相談窓口を紹介してもらえます)に相談しましょう。

ただ、学習障害に対して確立された病院での治療法はありません。そのため、先に解説した環境や学習の仕方の工夫が必要となります。

カイロプラクティック心では、機能神経学をベースに「どこの神経が機能していないのか?」を評価してアプローチしていきます。学習面の苦手が少しでも克服したい人はぜひご相談ください。

参考文献

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6345134/

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