発達障害のこどもは偏食になる傾向がみられ、親御さんも悩まれる方が多いです。
ただ、偏食はこどものわがままではなく、発達障害特有の問題によって生じているため、無理やり食べさせようとしてもかえって偏食が長引く可能性があります。
まずは偏食となる理由を理解することが改善の第一歩であり、理由がわかることで対処法もみつかりやすいです。
ここでは、神経機能および骨格構造から偏食となってしまう理由と改善方法について解説していきます。
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偏食と「好き嫌い」の違いを考える
とくに幼児期は、発達障害ではなくとも食べ物の好き嫌いが多い時期ではないでしょうか。
私も嫌いな食材は多いですが、全く食べられないことはありません。
私の4歳の娘も「嫌いだから○○入れないで」、「お菓子好き」みたいな感じですが、、、好きな味付けにすれば食べ、保育園の給食は残さず食べてくるようです。
このように調理の工夫や環境によって食べれるのは、「好き嫌い」のレベルと考えられます。
発達障害のお子さんの偏食は、調理の工夫、環境の変化など色々と手段を変えても全く食べられないことが多く、食べられる食材が限定的です。
発達障害のこどもが偏食となる理由
発達障害は、中枢神経系の神経ネットワークの機能低下がみられることが研究でも報告されています。
とくにこどもは発達段階であるため、顕著に特徴が現れ、その結果が偏食として表現されていると考えられます。
また、ミネラル不足や発育の遅れによる問題が、さらに偏食を強めている可能性もあります。
感覚過敏
感覚過敏は、発達障害のこどもにも多く見られます。
詳しくはこちら
人は視覚や平衡感覚、聴覚など様々な感覚を脳で統合し行動に移しますが、これらの感覚を正常に受け取れない、処理できないことにより、感覚過敏が現れます。
その感覚過敏の症状の1つとして、偏食がみられます。
匂いや口の中の感触は、食べられるもの、食べられないものを判断することができ、仮に腐ったものや異物が混入しても、それを判断し吐き出すことができます。
極端かもしれませんが、感覚過敏が影響する偏食は、本来食べられるものであっても不快という感覚が食事を拒否する回避行動として現れると考えられます。
触覚過敏による偏食
こどもによっては、手足を含めた肌が過敏であるため、靴下や服を着ることを嫌がります。
そのような触られた不快感が口の中にみられるこどもは、偏食という形で表現されます。
そのようなこどもは、味が嫌いという以前に舌ざわりや噛んだ感触が不快です。
嗅覚過敏による偏食
食材の匂いが気になることによる偏食は、発達障害のこどもに多いです。
嗅覚は直接的に情動(感情をコントロールする領域)に働きかける偏桃体に情報が伝わるため、より回避行動に繋がりやすいです。
例えば、腐った食物は匂いでも判別し回避するように、こどもは快、不快で判別し食べれるものであっても不快と感じれば回避行動として食べなくなります。
こだわりによる偏食
発達障害の特徴として、強いこだわりがあり毎日同じ服、同じ道順といった同じ行動を好む傾向があります。
それが、同じものしか食べないという偏食に繋がっていることがあります。
本来好きな食材であっても、見た目が変わっていたり、器が違っていたりするなど、少しの違いによってこだわりが強く働いてしまいます。
口腔機能の未発達による偏食
噛む力、飲み込む力など食べるために必要な機能が上手く働かないことによって、食べることが困難となり結果として食べやすいものしか食べないといった偏食になることがあります。
例えば、しっかりと噛まないと飲み込めない肉類やすする必要のある麺類などが苦手になることがあります。
本来は、母乳を吸うことで舌の使い方や飲み込み方などが発達します。
また、お座りやハイハイ、つかまり立ちなどの発育過程により、安定した姿勢を獲得し、それが顎関節(噛む力)の機能向上につながります。
何らかの原因によって、これらの基礎発達が上手く習得できていないと食べるための能力も育たず、結果として偏食がみられるようになります。
ミネラルの栄養不足
ミネラル成分の「鉄」「亜鉛」は、不足することにより偏食を招く恐れがあります。
鉄欠乏性貧血は、嚥下障害(飲み込みにくい)舌の先が痛くなる症状が現れ、それが結果として偏食に繋がります。
亜鉛不足は、味覚障害となり、そもそもの味がしないため、食事が美味しくありません。
栄養不足は偏食であるがゆえに不足したとも考えられますし、「母乳を上手く飲めなかった」「母乳でもお母さん自身が鉄、亜鉛が不足気味であった」というケースも考えられます。
こどもの偏食を改善するために心がけ
偏食はただのわがままではなく、それなりの理由があります。
それを無理やり食べさしたり、怒ったりしても食事の時間が怖くなり、最悪のケースとしてトラウマとしてこどもの心に残り、改善が難しくなります。
また、発達障害のこどもは消化器系の問題も抱えていることも多く、何でもかんでも食べれる体ではないケースも少なくありません。
偏食はダメではない
なぜ、偏食はダメなのでしょうか?
当然、栄養のバランスを考えれば、色々な食材を摂ることが望ましいです。
しかし、世界を見渡せばベジタリアンもいれば、一日1食でも元気に過ごしている人も多いです。
偏食が絶対ダメとは考えずに、柔軟な対応も必要になります。
本当にその食材がこどもに必要か?
発達障害のこどもは、先に書いたように消化器系にも問題を抱えていることが多いです。
その原因の1つとして、食材に対して過敏性があります。
過敏性は、アレルギーのように体に何らかの異常(湿疹、喘息など)がすぐに現れるのではなく、数日後に様々な不調として現れます。
発達障害では、グルテン(小麦)ガゼイン(牛乳)などが研究で報告されています。
なかには、こどもの好物であっても過敏症とみられる食材があるため、注意が必要です。
腸と脳の関係性もご参考ください。
過敏症は専門機関で検査することをお勧めしますが、最近では自宅でも検査キットがAmazonで販売されているため、まず試してみたい人は自分で行うと良いでしょう。
ただ、注意したいのは検査内容を鵜吞みにせず、実際に観察したほうが良いです。
検査で引っかかっても、実際食べてたところで何ら変化がないケースも報告されています。
実際に好物として食べていても、数日中の行動が落ち着きがない、イライラしている、お腹を痛がることが多いなどの症状がみられる場合は、その食材は排除していきましょう。
栄養状態を知る
専門機関へ行けば、栄養状況を知ることができます。
栄養状況を知ることで、「食べられるものだけでも栄養のバランスを摂れるのか?」「サプリメントを利用してでも摂るべき栄養素もあるのか?」などの栄養バランスの観点から計画を立てやすくなるのではないでしょうか。
偏食改善アプローチ
「なぜ偏食になってしまったのか?」を考えることが、偏食改善のポイントです。
感覚過敏のケースは偏食以外にも過敏な症状がみられることも多く、それらを改善していくことが優先になります。
また、こだわりについては自閉症スペクトラム障害の特徴でもあるため、それらを踏まえた対策も必要になるかもしれません。
感覚過敏については、こちらの内容をご参考ください。
こだわりについては、自閉症スペクトラム障害のページをご参考ください。
栄養療法
偏食がゆえに栄養が偏ることによって、さらに偏食を強めてしまっている可能性もあります。
また、食べるための土台となる口腔の機能を高めて上げることも大事です。
口腔の機能という面では、先に解説した鉄と亜鉛が重要になります。
また、甘いお菓子やジャンクフードが中心となっている場合、糖質過多、タンパク質不足によって活動量も減り、結果として空腹になりにくくなります。
とくに疲れやすい、こどものロコモティブシンドロームの徴候(片足立ち5秒できない、しゃがめないなど)は、糖質制限(おやつを控える、飲料はジュースNG、決まった時間以外食べない)とタンパク質摂取(サプリメント可)を行ったほうが良いかもしれません。
鉄分不足
簡単には、アッカンベーするように下のまぶたを下げて、見える部分が白っぽいと鉄不足と考えられます。
他には「爪に横筋が入る」「スプーン指」などがみられます。
サプリメントでも対応できますが、心配な方は病院で検査、治療を受けられることをお勧めします。
亜鉛不足
偏食の問題として、そもそもに味覚が育っていない可能性もあります。
舌には味覚を感じる味蕾という組織があり、その代謝に関与する亜鉛が不足すると味覚を正しく感じ取れません。
亜鉛は魚介類に多く含まれ、手軽には煮干しのだしで補給することが可能です。
こどもの亜鉛不足は、味覚障害以外に身長の伸びが悪い、皮膚炎がおこりやすい、傷の治りが悪いなどの症状がみられます。
口腔機能を向上
噛めない、飲み込めない、舌の動きが未熟といった口腔機能が上手く働いていない場合は、これらのトレーニングが必要です。
咀嚼(噛む)嚥下機能(飲み込む)の機能回復として、パタカラ体操があります。
引用元:菊池歯科医院
舌のトレーニングにはあいうべ体操をご紹介します。
引用元:石岡矯正歯科
これらのトレーニングは、発達障害でみられやすい原始反射(吸啜反射、探索反射)の改善にも有効です。
姿勢反射の改善
顎の動きは、姿勢にも影響されます。
ただ、姿勢と言っても「胸を張れ」ということではありません。
発達障害のこどもでは、姿勢反射が上手く機能していないことがほとんどです。
さらには栄養不足により、運動ができないとさらに姿勢反射の機能は低下していきます。
ケースによっては先に挙げたタンパク質、鉄分などの栄養療法を優先的に行ったほうが改善していくこともあります。
姿勢反射は、運動が重要となり、とくに前庭系のトレーニングが有効です。
例えば、縄跳び、トランポリン、でんぐり返り、ブランコなど頭部の位置が色々と動く運動が前庭系トレーニングになります。
食事の工夫
当然ですが、ここまで書いてきたことは食べる前段階である基礎発達を作り上げるものであり、食べるためにトレーニングをせずに何でも食べることはありません。
まずは、食べれるという達成感を得るために1口だけでも食べたときは褒めてあげたほうが良いです。
そのあと、全く食べなかったとしても怒ることは止めましょう。
あとは単純ですが、空腹時に食べることです。
空腹時のほうが誰もが感じることだと思いますが、ご飯は美味しく感じます。
もちろん、基礎的な発達を促すことができたら、今まで行ってきた食事の工夫によって食べる可能性もあります。
カイロプラクティック心の偏食アプローチ
発達障害のお子さんの相談において、偏食だけということはありませんが、ご参考までにカイロプラクティック心のアプローチ方法もご紹介します。
カイロプラクテイック心は、関節や筋肉だけではなく神経機能(中枢神経も含む)の評価・アプローチを行います。
口腔機能へのアプローチ
顎関節、頸椎、舌骨筋群(舌を動かす筋肉)へのカイロプラクティック的なアプローチを行います。
「バキバキ」するイメージも強いかもしれませんが、幼児ほど何をしているか分からない程度のソフトな刺激で効果的にアプローチできます。
発達障害のお子さんは、触られること自体が苦手、じっとできないことも多いため、短くソフトな刺激が大事となります。
機能神経アプローチ
偏食に限ったことではありませんが、神経機能のアンバランスによって発達障害特有の症状が現れていることがあります。
全てではありませんが、偏食傾向は右脳の働きが低下している傾向があり、右脳に刺激が行くようなカイロプラクティックアプローチ、運動療法を行います。
栄養療法
栄養自体が不足している、食物への過敏性があることが結果として偏食となっていることもあります。
先に解説したように亜鉛、鉄など臨床所見から考えられる栄養不足に対してアドバイスさせていただきます。
また、しっかり検査したいという人は、専門機関へのご紹介いたします。
偏食改善は焦らずじっくり行うことが大事
愛情がゆえに、お子さんを怒ってしまうこともあるかと思います。
しかし、食事は楽しくないという感情が根付いてしまうと、さらに偏食を改善させることが難しくなります。
また、過度なストレスは、脳のバランスを改善させるうえでも避けたいところです。
発達障害のこどもは、成長がゆっくりであることが起因して偏食として表現されてしまったと考えられます。
そのため、偏食を改善させるために食事を工夫するだけでは限界がみられます。
運動面や精神面も成長させていくことが偏食改善にもつながるため、焦らずじっくりと取り組むことが大事です。
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投稿者プロフィール
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伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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