恐怖麻痺反射は、神経発達症の療法(RMTi、Move2Connectなど)などで説明されている原始反射の1つです。
また、モロ反射や前庭迷路反射などの他の原始反射とは違い、研究がされておらず未知の部分が多い反射でもあります。
そのため、根拠が乏しいことが現状です。
ただ、この考えによって救われているこどもがいることも事実であり、最近では多くの研究論文のあるポリヴェーガル理論と合わせて説明されることもあります。
カイロプラクティック心でも恐怖麻痺反射の概念も取り入れて、神経発達症のアプローチを行うこともあります。
ここでは恐怖麻痺反射について解説していますので、神経発達症でお悩みの方、生きにくさを感じている方などはお読みください。
パッと読みたい人は見出しをクリック
恐怖麻痺反射(FPR:Fear paralysis reflex)とは?
恐怖麻痺反射は、胎児期(受胎後2ヶ月)に現れる早期の引き込み反射とされ、口周辺の触覚刺激に反応して急速な引き込み運動が特徴とされています。
そして、受胎後12週間でモロー反射に統合されることが通常と考えられています。
引き込み反射は、屈曲反射ともいわれ、刺激によって手を引っ込めたり、体を丸めたりします。
例えば、熱い物を触ったときに反射的に手を引いたりするのは引き込み反射の一つです。
ただ、胎児であるため。手足を引っ込めるような目に見えてわかる動きではなく、反射のパターンとして完全に固まって動けなくなると説明されることが多いです。
恐怖麻痺反射の残存による症状
本来統合されるはずの恐怖麻痺反射が統合されないと、以下のような症状がみられると考えられています。
- 人や仲間に対する過剰な愛着/愛着不足
- 浅く、困難な呼吸
- 社会環境に対する恐怖
- やりとりが困難
- 感情の不規則性
- 落ち着くのが難しい
- ルーチンに対する過剰な必要性
- ルーチンの変更を嫌う
- 何か新しいことに挑戦することへの恐怖
- 強迫的な特性
- 非合理的な恐怖
- 不安
- 睡眠が妨げられる
- 摂食障害
- 行き詰まり感
- ストレス耐性が低い
- 自尊心の低さ
- うつ病/孤立/引きこもり
etc
恐怖麻痺反射が残存する原因
妊娠と出産(およびおそらく遺伝)に起因といわれており、ストレスの多い妊娠はストレスホルモン(コルチゾール)が子宮内での胎児の動きに影響を及ぼす可能性があります。
また、妊娠中のアルコールや薬物の乱用は胎児を中毒にし、子宮内での胎児の動きを制限すると考えられます
他にも出産後の乳児へのストレス(精神および身体的)もトラウマとして恐怖麻痺反射を再発させるとされています。
神経発達症の発症のリスクとして妊娠中のストレス、アルコールやタバコは挙げられており、出生後の虐待や精神的ストレスも研究論文で示唆されています。
恐怖麻痺反射についての引用元
- RMTi
- Move2Connect
- サリー州の児童作業療法
恐怖麻痺反射の問題点
最近では原始反射に関連する論文も多くありますが、恐怖麻痺反射においては論文がありません(検索が上手くできていないかもしれませんが、、、)
この理由として、個人的な見解でもありますが、胎児の反射でもあるため、研究が困難であることが考えられます。
実際に恐怖麻痺反射がどのようなものかは確認できず、恐怖麻痺反射の情報を発信している発達療法の団体も根拠は不明瞭です。
恐怖麻痺反射の有効性を考察
引き込み反射の研究として、未熟児(妊娠22~26週で出産)は正期産生児と比較して引き込み反射を誘発する刺激の閾値が低いことが報告されています。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5488190/)
引き込み反射を抑制するメカニズムは、抑制性のニューロンを刺激する脳幹によってバランスがとられます。
そのため、引き込み反射の閾値低下は脳幹の発育の遅れとも考えられます。
あえて原始反射と恐怖麻痺反射の共通点をあげるとすれば、どちらも脳幹の影響を受けているということです。
このようなことから、他の原始反射統合で変化がみられないケースにおいて、恐怖麻痺反射という視点からアプローチしていくことで変化がみられた可能性があります。
また、最近では恐怖麻痺反射にポリヴェーガル理論を組み合わせて説明されることも多いです。
その理由として、個人的な見解ではありますが、ポリヴェーガル理論では「固まるといった症状がみられる」「トラウマ治療に応用されている」ことが述べられており、さらには多くの研究論文があり、根拠の乏しい恐怖麻痺反射のメカニズムを補完できていると考えられます。
ポリヴェーガル理論とは?
ポリヴェーガル理論は、1994年にスティーブン・ポージェス博士によって提唱された理論で、迷走神経の役割を中心に自律神経系の働きや人間の行動、感情の調整について説明しています。
一般的に自律神経系は「交感神経」「副交感神経」の2つに分類されていますが、ポリヴェーガル理論ではさらに副交感神経を2つに分類しています。
自律神経系の3つの状態
ポリヴェーガル理論で提唱されている自律神経系は以下の3つに分類されています。
- 交感神経系:戦うか逃げるかの反応を引き起こします
- 腹側迷走神経系(副交感神経):社会的な関与やリラックスをサポートします
- 背側迷走神経系(副交感神経):防御的な不動化やシャットダウンを引き起こします
交感神経は危険なことに反応し、アドレナリンを放出して戦うもしくは逃げる準備として活性化され、心拍や血流量の上昇などを自動的に行います。
副交感神経に一般的な考えでは、落ち着いているとき(食事、睡眠など)リラックスをサポートしている神経とされています。
しかし、ポリヴェーガル理論では、副交感神経のもう一つの反応として背側迷走神経系が極端な危険に反応し、動物にみられる擬死行動(いわゆる死んだふり)と同様に人も固まったような行動(しゃべらない、動かないなど)をとることを提言しています。
進化的な視点
ポリヴェーガル理論は、進化の過程で自律神経系がどのように発展してきたかを説明しています。
背側迷走神経は、古代の脊椎動物の祖先から存在する最も古い神経経路とし、その後に交感神経でみられる可動パターンに発達したと考えられています。
さらに進化した哺乳類にみられる特有の社会交流パターンは、腹側迷走神経が発達したとしたことが関与しているとしています。
トラウマ、ストレス管理に応用
ポリヴェーガル理論は、神経発達症のみに応用されているだけではなく、幅広く応用されています。
例えば、ワークシートを利用しながらのカウンセリング、呼吸法やリラクゼーション技法などを用いながら自律神経系のバランスを取り戻し、心身の健康を促進することが行われています。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)のような過去の経験によってトラウマが呼び起されたとき交感神経が過剰となり身体の不調が現れやすかったり、背側迷走神経が過剰となり感情の表現が乏しさや体に力が入りにくかったりするケースもあります。
また、過度なストレスを受けたときも同様です。
ポリヴェーガル理論を応用し、その人がどのような自律神経系の表現が日常化しているかを紐解いていくことで心身の健康を取り戻すキッカケとなり得ます。
ポリヴェーガル理論の問題点
ポリヴェーガル理論も比較的あたらしい理論です。
そのため、多くの研究は重ねられていますが、神経経路のメカニズム、生理学的観点、感情の関する理論などの批判も存在しています。
また、ポリヴェーガル理論だけで全てを解決することは不可能と考えられます。
しかし、世の中には完璧な理論は少なく、現在も様々な研究が行われており、批判を踏まえつつもポリヴェーガル理論は社会的行動や感情調整の理解に役立つ枠組みとして評価されています。
カイロプラクティック心の恐怖麻痺反射への対応(統合)
恐怖麻痺反射の残存がみられるケースにおいては、以下のことがみられると考えられます。
- 多くの原始反射が残存している
- トラウマ
- 場面緘黙
- 極端なパーソナルスペース(過剰に広い、過剰に狭い)
- モロー反射、前庭迷路反射の統合に時間を要する
他の評価方法としては恐怖麻痺反射の残存ではないと考えられるケースでもHRV(心拍変動チェック)において、副交感神経の活動低下がみられる場合は、恐怖麻痺反射でも行う副交感神経へのアプローチは行います。
先に挙げた恐怖麻痺反射でみられる症状がある場合は経験的ではありますが、恐怖麻痺反射のみが残存していることはありません。
そのため、恐怖麻痺反射以外の原始反射の有無は重要な評価基準となり、大人であればHRVの評価は大切になります。
こどもでも可能であればHRVはチェックしますが、恐怖麻痺反射が疑われるケースにおいて人に近づくことが過剰なストレスであったり、初めての場所で落ち着くことが困難であったりするため、初期段階では難しいことも多いです。
恐怖麻痺反射の統合
恐怖麻痺反射の統合は副交感神経の活性化を目的とした迷走神経へのカイロプラクティックアプローチ、エクササイズを中心に行います。
カイロプラクティックアプローチ
迷走神経は、内臓(心臓を含む)まで伸び、構造的に長い神経が特徴的です。
そのため、お腹の不調、心拍が安定しない(ドキドキする、息苦しいなど)などでも行う内臓マニュピレーション、心膜へのマニュピレーションが有効です。
また、頸部も通るため、必要に応じて頸椎へのカイロプラクティックアプローチも効果的です。
ただ、幼児や低学年では触られることも苦手であるケースも多いため、問題部位を簡単な検査で評価し短時間(1~2分)で迷走神経アプローチする手法をとることもあります。
迷走神経へのアプローチによってみられる変化として、睡眠がとれるようになったり、便秘や下痢の症状がみられなくなったりします。
他には迷走神経は蝶形骨と後頭骨で形成される関節の間を通り抜けるため、蝶形骨ー後頭骨への頭蓋療法も行います。
どのようなアプローチを行うかは、その人の症状や身体評価内容によって異なり、一人ひとりに合わせたオーダーメイドプログラムです。
スイッチング
カイロプラクティックの1つであるAKで提唱されている評価およびアプローチ方法にスイッチングがあります。
原始反射の残存を確認する評価ではありませんが、神経系の不統合を評価しアプローチする方法です。
スイッチングがみられる原因も多くあり、スイッチングを一時的に修正しながら根本的な原因を探り、アプローチをしていきます。
大人であれば、スイッチングを改善させるために有効な呼吸方法もあり、それらを取り入れていくこともあります。
副交感神経活性化エクササイズ
ポリヴェーガル理論でも呼吸法が行われており、呼吸法は副交感神経を活性化させるために有効です。
- 片鼻呼吸
- 呼吸エクササイズ
年齢や呼吸評価に基づいて一人ひとりに合わせたトレーニングを行っていきます。
例えば、幼児で指示が通りにくい場合は、匂いを片側で嗅いだり、どのような匂いかを当てるなどゲーム性を取り入れたりします。
大人であれば、基本的な呼吸法の指導からエクササイズを組み合わせてゆっくりとした深い呼吸ができるよう指導していきます。
他にも副交感神経を活性化させる方法として以下のことがあります
- 冷水を浴びる
- お腹を温める
- 耳を刺激(電動歯ブラシ、軽く触るなど)
- ハミング
恐怖麻痺反射は脳機能のアンバランスのサイン
恐怖麻痺反射=発達障害ではありません。
他の原始反射も同様であり、これらの反射の残存は脳機能のアンバランスのサインです。
そのため、恐怖麻痺反射を統合させていくことも大切ですが、原始反射を含めた統合は脳機能を向上させるための1つのアプローチに過ぎません。
カイロプラクティック心は、その人の悩みに合わせて恐怖麻痺反射も含めて評価し、悩みが解決できるよう一人ひとりに合わせたアプローチ方法を提供しています。
恐怖麻痺反射、原始反射などの統合、発達障害(こども、成人)などでお悩みの方は、ご相談ください。
ZOOM相談
オンライン(zoom)、ご来店で原始反射統合エクササイズ、恐怖麻痺反射などについて相談されたい方は、事前のご予約をお取りください。
相談料として1,000円いただきますが、実際にご予約された場合は、相談料1,000円分を値引いたします。
原始反射統合【恐怖麻痺反射も含む】エクササイズ料金【大人のみ】
ベーシックコースと同じ料金です。
また、ベーシックコースはWEB予約割引(初回のみ)を適用していますが、原始反射統合は割引はございません。
発達障害、グレーゾーンでみられる振る舞いは、原始反射を統合するだけで解決することはありませんが、原始反射統合エクササイズの要望も多いため、原始反射統合を目的としたコースを作りました。
スポーツ障害(肩、肘、膝などの痛み)腰痛や肩こりなどの症状に関わっていることもあり、身体症状の緩和、スポーツのパフォーマンスアップに繋がることもあります。
こどもの場合は、こちらをご検討ください。
原始反射統合においては、カイロプラクティック施術も有効であるため、施術とエクササイズを組み合わせていきます。
※施術が不要な方は予めお伝えください。
こどもの原始反射統合【恐怖麻痺反射を含む】エクササイズ【料金】
幼児では指示も伝わりづらく、エクササイズが困難なことがあります。
しかし、発達障害の特性がみられる場合はとくに早期介入していくことが、発達に良いことは研究で示唆されています。
そのため、ご家族がサポートして行う原始反射統合エクササイズも指導しています。
全ての統合エクササイズを行っても5~10分で行えるため、ご家庭でも導入しやすいです。
1ヶ月かけてしっかりと原始反射統合のエクササイズをサポートいたします。
ZOOMでも可能なため、遠方の方でもご利用いただけます。
原始反射が統合され始めれば、エクササイズの難易度や方法を変更していくことも有効なため、1ヶ月間は進捗状況を確認しながらフォローいたします。
他の原始反射統合についてはこちらをご参考ください。
投稿者プロフィール
-
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
最新の投稿
- 栄養2024年12月3日過敏性腸症候群
- 発達障害2024年11月1日発達障害の個性を活かすための早期介入の重要性
- 発達障害2024年10月2日ADHDの苦手を解決する運動効果
- 栄養2024年9月23日糖尿病に対する食事と運動の重要性
この記事へのコメントはありません。