発達障害早期介入の有効性

発達障害

発達障害の個性を活かすための早期介入の重要性

「発達障害は一つの個性なので、配慮しないままでもそのうち何とかなる」という誤解があるようです。

しかし、ADHD、ASDなどの症状が継続した成人は、2次障害の発症リスクも高いことが研究でも報告され、配慮なく困難な環境で育ってきたことを綴った本も出版されています。

このようなことから「そのうち何とかなる」は、他人が言うには無責任な発言です。

ただ、理想的には配慮だけではなく、症状を改善させるために介入を積極的に行っていくことも大切と考えられています。

なぜなら、小児期からの早期介入の有効性が研究でも報告されているからです。

「発達障害と診断されたこどもに何かしてあげたいけど何が良いかわからない」「このまま成長してくれるか不安」などお子様の発達に不安がある方は、ぜひお読みください。

※この記事は発達障害に有効なBBIT認定療法士が書いています。

発達障害のあるこどもへの配慮とは?

配慮においては発達障害と診断されたご家庭であれば、保育施設や学校とも連帯しながら行われているかと思いますので、ここでは簡単に解説します。

ASD、ADHD、LD、DCDなどは特性によって、日常生活にでも様々な困難を抱えることになります。

例えば、苦手な音、匂い、眩しすぎる光などが過剰なストレスとなり、パニックになることもあります。

このような問題に対してイヤーマフ(耳栓)の装着、部屋の光量の調整などの配慮をすることが大切です。

また、学校に入学すると学習に困難を抱えたり、教室の雰囲気に馴染めなかったりするため、そのこどもに合わせた配慮(ケースにおいては支援クラスで勉強)が行われます。

配慮にマニュアルはなく一人ひとりに合わせる必要もありますが、小さい子どもほど自分の困難を上手く伝えることができません。

そのため、日々の行動や態度を観察して困難となる要因をしっかりと考えることが適切な配慮につながります。

配慮の問題点

配慮は、一人ひとりに合わせることが理想です。

しかし、兄妹がいたり、学校では他の生徒いたりするため、家庭や学校でも人手が足りずに行き届いた配慮ができないこともあります。

また、災害や進学などで今までの環境が維持できなくなり、適切な配慮を受けられない可能性も考えておく必要もあるのではないでしょうか?

こどもの困難に気づいたときは配慮がとても重要ですが、成長と共に困難を克服できるように支援する視点も重要と考えられます。

そのため、過ごしやすい環境を用意するだけではなく、こどもの成長を促す環境や介入(運動、接し方など)も積極的に行っていくことも大切です。

発達障害の介入の有効性

一般的に発達障害は治らず、病気ではなく特性や個性と表現されることがあります。

しかし、介入によって診断基準が喪失する研究が複数報告されています。

2008年に報告されたレビュー(複数の研究をまとめた報告)では、自閉症スペクトラム障害の3~25%は、ASDにみられる診断基準を喪失し、認知、適応、社会的スキルが正常範囲内に入ったと報告されています(引用文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19009353/

てんかん発作、遺伝子異常、知的障害がみられるケースは難しいとされています。

回復できたケースとして以下の要因が示唆されています。

  • 行動療法や環境整備によって外の世界と関わる
  • 苦手を克服するトレーニング
  • ストレスをさける
  • 栄養、睡眠の質をあげる

発達障害は先天的な問題と説明されることがあり、回復しないと考える親御さんも多いですが、自閉症スペクトラム障害の原因や程度によっては回復するケースがあると研究報告されています。

また、成長するにつれて改善していくことが多く、周囲の環境や対人関係などによって課題の改善が期待できるとも考えられています。

ADHDでは認知トレーニングプログラム、環境、身体活動などによって中核症状を軽減する研究報告は複数あり、これらのプログラムは脳機能を強化し、ADHDに永続的な良い効果をもたらす可能性があると思われます。(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22692794/

個人的にはASDとADHDを併発することもあり、研究で有効性がみられた手法はASD、ADHDに関わらず、何らかの効果がみられると考えられます。

もし配慮や介入がされずに発達障害の症状が持続したら

発達障害の問題として、特性が原因の1つとなり2次障害を併発することがあります。

ASDの成人後の併発疾患を調査した研究では、「うつ」「不安障害」の2次障害が多く、他にも双極性障害、統合失調症などの精神疾患が多いと報告されています。

また、胃腸 [GI] 障害、肥満、高脂血症、高血圧、てんかん、脳血管障害なども発症率が高いとされています。

ASDは心理社会的影響と経験はストレスが多く、不完全雇用、偏見、理解不足はすべて不安やうつ病の発症の潜在的な要因となります。

さらに向精神薬を服用することにより肥満となりやすく、結果として血管障害や高血圧などを引き起こすと考えられます。

また、運動の苦手やコミュニケーションの困難により身体活動が不足がちになることも肥満の要因とされています。

参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27462160/ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36189783/

ADHDは、ASDと同様に精神疾患を併発しやすいです。

また、ADHDの特徴としては衝動性や不注意などによって怒られて育つことも多く、結果として反挑戦性障害、行為障害など反社会的な行動がみられやすいとされています。

反挑戦性障害、行為障害は小学生低学年からみられることもあり、心理士の対応が必須となります。

発達障害は個性だけでは済まされない

発達障害の抱える困難は、想像を超える生きにくさを感じている可能性があり、結果として成人になってからも併存疾患に悩まされる要因となります。

なかには「ギフテッド」と呼ばれる才能に恵まれることもありますが、その個性が生きづらさを帳消しにはしてくれません。

もちろん、将来的に職業として才能を活かして自立できる可能性はありますが、コミュニケーションの困難さや実行機能の低下などがみられれば周りの環境や優秀な人材に恵まれなければせっかくの個性も活かされないのではないでしょうか?

以前に比べれば発達障害も理解されていますが、成人となってから社会で生きにくさを感じる配慮を受けるには時間がかかるように思います。

実際、社会に適応できず生活保護を受けている、仕事が続かないなどの話も聞くことがあります。

このような将来的なリスクを知りながら、「自然に良くなりますよ」とは言えません。

自然に良くならない環境の問題

脳の発達には、環境も重要とされています。

例えば、色々な遊具や遊び場、豊かな自然など様々な環境が重要と考えられています。

これらの環境があることで幼児期は楽しく体を動かすことことができ、さらには自然の匂いや音、動いている動物を見るなどすることで視覚、聴覚、嗅覚も十分に使い、脳が刺激されて発達します。

しかし、最近では発達障害にかかわらず、こどもの運動不足がニュースになるほど身体活動が昔より激減しています。

また、地域によって自動車やバスなどでの学校への送り迎え(有酸素運動の減少)整備された通学路(寄り道ができない、虫や鳥などを目で追いかけない、道に落ちてている〇ンを踏まないように歩くなど)など脳機能を使う機会も減っているように思います。

さらにはスマホやゲームが普及したことにより、偏った視機能を使う時間が増えています。

発達障害では「視覚優位」「聴覚優位」と表現されることがあり、視覚優位であっても視機能には問題があります。

このように昔と比べ、身体活動や五感を使う環境は減っているため、現代はとくに「発達障害は自然と良くなる」とは言いづらい現状です。

発達障害は早期介入が有効

ASD、ADHDともに早期介入が中核症状の軽減にも有効とされています。

その理由の1つとして、脳は5歳までに急速な発達がみられるため、脳の可塑性が促されやすいことが挙げられています。

脳は可塑性と呼ばれる構造的および機能的に変化する性質があり、極端に言えば使えば使うほど脳の神経ネットワークは強化され、反対に使われない機能は神経ネットワークも衰退します。

脳の可塑性について詳しくはこちらもご参考ください。

ただ、この早期介入で勘違いして欲しくないのは幼児期しか脳の可塑性が促されないワケではありません。

脳は20歳前後まで発達するとされ、可塑性においては高齢者でもみられるため、脳疾患や脳震盪ななど中枢神経系の問題に対して可塑性を利用したアプローチは年齢に関係なく行われています。

論文中では「ADHDなどの症状の発症を予防したり回復を促進したりするために脳の成長を促進することは、頭部外傷や脳損傷からの回復と同じではない可能性がある」と論じられています。

早期介入のメリット

脳の発達は、経験によっても促されます。

経験は運動や社会活動(こどもでは保育園や幼稚園、自治体など家族以外との関り)家族とのかかわりなどを指します。

例えば、褒められるような成功体験はさらに難しいことにチャレンジする意欲となり、さらに複雑な神経ネットワークを使うことに挑戦して脳が発達していきます。

また、成功ではなく失敗したことや多様な個性をもつ集団で過ごす(学校、保育施設、習い事など)ことで社会性を身につけるネットワークが強化されます。

これらの経験によって、運動能力の向上(自転車に乗れる、ボールを投げるなど)コミュニケーション、相手との共感性などを学びながら脳が発達していきます。

しかし、幼児期に発達障害の徴候がみられる場合(抱っこを嫌がる、言葉の遅れ、人との関りが少ないなど)これらの経験不足により、さらに脳の発達が遅れる1つの要因となります。

個人的に介入せずに10年かけて人間関係での立ち振る舞いを学んだとしても早期介入によって5年に短縮できれば、残りの5年でさらに多くのことを学ぶことができ、自立するためにも重要な青年期が充実しやすいと考えています。

併存疾患、症状の軽減の可能性

ASD、ADHDなどが発症リスクを高めていることが考えられており、早期介入によってリスクの低減および発症予防の可能性も考えられます。

また、ADHDでは学業不振、社会的関係の悪さ、自尊心の低さ、親や家族の否定的な態度などに伴う合併症を回避できる可能性があるとも示唆されています。

早期介入の難しさ

研究では12ヶ月を過ぎた頃からの研究も多くありますが、実際に診断されるのは3歳を過ぎていることも少なくない現状です。

臨床的にも親御さんも何となく気づきながら、中学や高校でご相談を受けることも少なくありません。

このように発達障害の診断は客観性がないこともあり、早期診断が難しいこともあって早期介入に至りません。

論文でも診断を確定できない難しさが記されています。

そのため、発達障害に関わらず、こどもが楽しめるような遊びや接し方などを家庭で実施していくことも重要と考えられています。

早期介入方法

ここまで解説してきたように、介入していくことは重要であり、とくに低年齢ほど有効と示唆されています。

ただ、確立された方法はないということはご理解ください。

研究では大きく分けて親への教育、専門家による介入の効果が示唆されています。

親の役割

親が子どもとどのように関わるかが非常に重要となり、親が子どもに対して反応的な関わり方を学ぶことで、子どもの発達を促進することができます。

このようなことから親子の関わり方を指導される手法が取り入れられ、親が子どもに対してどのように反応するかを学ぶプログラムがあります。

例えば、子どもが何かを示したときにすぐに反応することや、子どもの興味に基づいて遊びを展開することが含まれます。

また、それぞれの特性を親が学び理解し、適切な対応方法をトライ&エラーを繰り返しながら学んでいくことも重要です。

専門家の介入

専門家でも臨床心理士、言語聴覚士など役割は違いますが、行動療法(親子で行う方法も含む)感覚統合などが行われます。

身体活動

運動は、脳の可塑性を促すために重要です。

専門的には感覚統合と呼ばれる脳の可塑性を利用して、感覚機能(視覚、聴覚、触覚など)を脳で処理し、それを適切に表現できるような運動プログラムを実施していきます。

環境調整

家庭や学校、保育施設などと連帯して、環境を調整していくことは大事です。

配慮との違いは、こどもの発達が促されるような遊びや接し方などを専門機関と連帯しながら、取り入れていきます。

カイロプラクティック心のアプローチ

早期介入は有効ですが、診断できる専門機関も少なく適切な早期介入が難しいことが現状です。

カイロプラクティック心は、発達障害に有効なBBIT認定療法士です。

BBITでは脳機能を評価して、脳の可塑性を促す運動プログラムおよび栄養サポート、生活習慣の改善などを行います。

詳しくはこちらもご参考ください。

臨床的にも低年齢ほど、症状の改善には効果があると感じています。

低年齢であるほど指示は通りませんが、カイロプラクティック施術が効果的であったり、親御さんが運動サポートを行ったりすることで十分に効果がみられます。

ここまで何度か書いてきましたが、残念ながら自然と成長する環境が整っていないことが現状です。

「必ず当院に来て」とまでは言いませんが、運動やこどもとの接し方(遊び方やコミュニケーション取り方など)はご自身でも勉強して、ご家庭でも取り入れていただくことを切に願います。

発達障害のアプローチはこちらもご参考ください。

以下の記事もご参考にご家庭でも取り組んでいただければ幸いです。

参考文献

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29537331/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22692794/

投稿者プロフィール

カイロプラクティック心
カイロプラクティック心カイロプラクター
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。

病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。

機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。

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