発達障害は先天的な脳機能異常であって「親のしつけ」「親の育て方」は関係ないと言われています。
しかし、発達障害の診断がなくなるケースもあり、後天的である研究報告もあります。
2008年に報告されたレビューでは、自閉症スペクトラム障害の3~25%は、ASDにみられる診断基準を喪失(引用文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19009353/
2000組以上の双子を対象にした調査では、合計166人が成人期ADHDと診断されたが、その内の68%は「小児期にはどの検査でもADHDの基準を満たしていなかった」ことが分かった。
ブラジルの研究チームが1993年に開始した5,000人以上を対象とする追跡調査では、子どもの時にADHDと診断された成人の患者の割合は12%で、また成人しても引き続き障害が見られた子どものADHD患者は17%と、ともに非常に少数であることが分かった。(出典:AFP 2016年5月19日版「注意欠陥多動性障害、成人期に発症も 研究」)
誤解を恐れずに書くならば、親の育て方によって発達障害と呼ばれる振る舞いや症状がみられることはあります。
カイロプラクティック心は、こどもの発達障害のご相談をうけていますが、発達障害によるこどもの生活の困難が減っていくのはご家族が一丸となって取り組む姿勢のあるご家庭が多いです。
このような現象からも、親の接し方も重要と考えられます。
ここでは具体的に、こどもの発達障害と育て方の関係性について詳しく解説していきます。
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小児の逆境体験による脳の変化
こどもの頃の逆境体験は、認知発達、喘息、感染、体性不満、および睡眠障害の遅延に関連するとされています(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5824569/)
逆境体験とは、以下のような心的外傷を引き起こす可能性のある出来事を指します。
- 虐待(身体的・精神的・性的)
- ネグレクト(身体的・精神的)
- 母親への虐待
- 家族の薬物依存
- 家族の精神疾患
- 親の離婚
「虐待なんてしてない」と言われる方がほとんどだと思いますが、こどもがどう感じているかも大事です。
しつけのために叩いた、不必要に怒鳴り散らす、こどもの遊びに興味を示さない、こどもの前で夫・妻を殴る、夫婦の不仲でも十分にこどもへの悪影響があります。
脳の変化
0から11歳の間で中程度の逆境体験のある場合は、青年期の脳に影響を及ぼすという研究報告があります。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4107373/#bb0105)
逆境体験の内訳として身体的虐待、精神的虐待、中程度の親子間の不仲が平均5~56ヶ月続いたとしています。
発達障害にかかわらず、このような心理社会的リスク要因が(低社会経済的地位(SES)、より貧しい親の教育、子どもの虐待、親の精神障害、およびストレスの多いライフスタイル)精神病のリスクを増加させることは複数の研究で明らかになっています。
小脳虫部の縮小
ネグレクト、虐待によって小脳虫部の縮小が観察される報告は複数あります。
発達障害ではADHDに小脳虫部の縮小が観察されたという報告があり(参考文献:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006322308015333)
他にも自閉症、統合失調症、双極性障害などに小脳虫部の縮小が観察されました。
小脳虫部は前庭小脳としての役割があり、眼球運動やバランス機能をコントロールしています。
また、小脳は認知や情動にも関与すると言われるようになっています。
転倒を防ぐための役割が強く、この部分が機能低下することで安定した姿勢を保てないため、動かざるおえなくなり落ち着きがないADHDと診断されることが考えられます。
また、眼球運動がコントロールできないと人と目を合わすことが難しくなるため、コミュニケーションが困難となりやすいです。
内側側頭葉
研究報告では、右側の海馬と関わる内側側頭葉の減少がみられました。
右側の内側側頭葉は、感情の記憶に関わり、さらには無意識化の記憶、住所や場所、携帯や鍵を置いた場所などを記憶する役割があります。
ADHDみられる忘れ物が多い、自閉症スペクトラム障害にみられる違う順序で帰宅が困難などが内側側頭葉の影響です。
偏桃体
研究では、偏桃体が心理社会的逆境の長期的な相互作用に敏感であることを示唆されました。
扁桃体は情動に関与する領域で、恐怖や不安を感じることで活動が強まります。
偏桃体の過活動により恐怖感覚も増大し前頭前野を抑制します。そうなると交感神経等が慢性的に亢進してストレス刺激に対して過敏に反応するようになります。
前頭前野は、他の領域も抑制的に制御することで適切な行動や発言に寄与します。
そのため、前頭前野の活動が抑制状態であると発達障害でみられるような振る舞い(常に同じ行動、衝動が抑えられないなど)もみられるようになります。
これらのことが絡み合い、注意したり怒ったりすることでよりストレス過多となり、より不適切な振る舞いしかできなくなります。
脳が成長段階のこどもにとって接し方はとても重要であり、育て方によって脳が上手く発達しないことは理解してください
愛着スタイル(attachment)
愛着スタイルは、イギリスの児童精神科医であり、精神分析学を学んだジョン・ボウルビィ(John Bowlby)が示した概念であり、共同研究者であったエインスワースに引き継がれ発達心理学で研究されている理論です。
愛着とは
愛着は、子どもが母親(あるいは母親に代わる人物:ケアギバー)との間に結ぶ絆と考えられ、乳幼児期に最初の愛着対象である母親に対して愛着を形成し愛着行動(こどもと母親の関係を維持する行動)を現します。
そして、そこで形成された基盤をもとにこどもは、色々な対象者と出会い、ふさわしい社交性を形成していくとされます。
幼児期の愛着は、以下の4つに分類されています。
- 安全⇒ケアギバーに安定した愛着を示す
- 不安‐回避⇒ケアギバーに愛着を示さない
- 不安‐両面感情⇒ケアギバーに全ての注意と関心が奪われるため、ほかの行動が乏しく一時的に離れ再会した後も気持ちが落ち着かない
- 無秩序‐無方向⇒恐怖を示す、見かけとの解離など(先に解説した逆境体験のこども)
愛着行動と発達障害
愛着を示さないということは、コミュニケーションがとれていない状態であり自閉症スペクトラム障害にみられる特徴と言えます。
ケアギバーに注意と関心が強すぎると、注目されたい行動がエスカレートし衝動性(話し続ける、注目を浴びようと動き回るなど)がみられるADHD特性が現れやすいです。
こどもの愛着行動を決定する要因は、親の愛着スタイルが重要視されています
愛着スタイル
愛着スタイルとは、人間が対人関係を形成する場面でみられる心理的な傾向です。
幼児期で形成された愛着行動は、完全に確立されておらず、「こどもへの接し方を変える」「親もしくはこどもにとって重要な人物(祖母、祖父、友人など)との愛着行動の積み重ね」によって愛着行動は変化します。
そのため、愛着スタイルは、 成長過程で愛着パターンが積み重ねられていくうちに、愛着パターンが次第に明確になり確立されていくものです。
一般的には両親と安定した愛着関係を持つことで、安定した愛着スタイルが育ちやすくなります。
愛着スタイルは4分類され以下のような内訳です。
- 安全 (50-75%)
- 不安-回避 (15-30%)
- 不安-両面感情 (4-15%)
- 無秩序-無方向(15-25%)
3割程度は不安定な愛着スタイルで子育てをしていることが示唆されており、親の愛着スタイルをこどもが引き継いでいると考えられています。
4分類のこどもとの接し方は、以下のとおりです。
安全
自分自身や愛着心について肯定的である傾向です。
また、 率直であり前向きでもあります。
こどもに対しても必要な感情を読み取り、適切なコミュニケーションをとれます。
不安‐回避
感情を抑えて隠し拒絶された場合でもコミュニケーションを取らずに拒絶の原因(愛着や関係など)から遠ざかることで対処する傾向があります。
そのため、距離を置いた対人関係を好み、依存するのも依存されるのも嫌がり自立した状態が最良と考えています。
こどもに対して回避行動(こどもと再会しても他のことが気になる:こどもへの関心が薄い)がみられます。
また、こどもへの愛情がこもっていないようにも見え、必要な感情を読み取ることができないため、不安定なコミュニケーションです。
不安ー両面感情
自分自身に対する肯定的な見方が少ない傾向です。
また、「愛されたい」「受け入れられたい」「認めてもらいたい」という気持ちが強く、感情的調節不全、心配、衝動性を示すことがあります。
精神的に安定していないため、こどもに対しても一定の愛着スタイルを形作ることができていないです。
親が相手をしていないと、こどもが更に注意をひくための明らかな行動を取るようになります。 (具体的には怒られることでしか注目されないため、わざと怒られるようなことをします)
無秩序ー無方向
虐待を受けて育った、トラウマ(恐怖体験)があるなど、こどもの頃に逆境体験していることが多く、感情的な親密さに不快感を抱く傾向があります。
また、精神疾患に羅漢するリスクも高いです。
こどもに対しても虐待、妻や夫にDVなどを行ってしまう傾向があります。
それぞれの愛着行動と愛着スタイルは、乳児期の母親への行動の傾向と成人期の対人関係の傾向がよく似ていることから、親の愛着スタイルがこどもの愛着行動を決めると言っても過言ではないのではないでしょうか。
親の接し方がこどもの社交性に影響する根拠
ある研究では、こどもの頃に受けた愛着スタイルが75%の割合で成人期の愛着スタイル(社交性)に移行すると報告されています。
岩手大学の研究でもそれぞれのタイプの両親の愛着スタイルが、こどもに影響していることが報告されています。
子どもが安定型愛着を持つためには、親が子に対して、愛情を持って接することで、子が、親から好かれている、愛されているという実感を持てるようにする必要があることである。また親が、子の反応に対して、決して拒絶することなく、その反応を受けとめた上で、子の反応の裏にある気持ちに共感してあげること、子の気持ちを十分に理解してあげることも重要である。
泣いているときに慰めてくれたり、嬉しいことがあると、一緒に喜んでくれたりするなど、親の応答性や感受性の敏感さが、子どもの被受容感や親との情緒的接近に影響を与え ている。また、抱っこやおんぶなどの身体接触や親がいつでも相談に乗ってくれる、話を聞いてくれるという安心感が、安定型愛着を強めるのである。
女性において、両親間の考えや思いの食い違いが、愛着スタイルに与える影響は大きいということである。両親が互いを尊重し 合い、子の養育に対して同じような考え方を持って子に接することで、子どもは安定した愛着を持つことができる。また反対に、両親の仲がうまくいっていないと、子どもの不安型愛着スタイルに影響する。
男性において、親からの達成要求が、子の不安型愛着に大きな影響を与えることである。親の子に対するプレッシャーが強いと、子は対人関係において、「自分は周りから受け 入れられていないのではないか」と不安に感じたり、他人に嫌われないようにしようとしたり するような傾向を示すことが明らかになった。
親との関わりが持てないことで、愛着の絆を結ぶことができず、愛着関係や対人関係を軽視するという回避型愛着の傾向を持 つことになると考えられる。また、親子関係の側 面と言えるかどうかは定かではないが、何らかの事情により養育者が次々と交替することも、回避型愛着に負の影響をもたらすことが分かった。
岩手大学の研究は、発達障害と診断されていないケースでも感情のコントロールができないこどもが増えていることを問題として、愛着スタイルから調査しています。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核症状は社交性の障害です。
また、ADHDにおいて社交性はあると言われていますが、人の会話を割って自分の話ばかりする、不適切な行動(動き回って注目をあびる、衝動的な行動)など社交で問題が生じることも少なくありません。
親の接し方によっては、発達障害でみられるような症状がみられても不思議ではないです。
ASDにおいては、ASDを発症していない乳児に比べ、愛着スタイルが安全と異なっていることが示唆されています(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4486071/)
両親に自覚がないケース
カイロプラクティック心は、発達障害の診断名にとらわれず、脳のアンバランスを評価して対応しています。
そして、親御さんにも質問票(100問)で脳の左右バランスを評価させていただくと、どちらかが偏りがみられたり、両親ともに同じような偏りがみられることもあります。
カイロプラクティック心の発達障害アプローチのコンセプトはこちら
単純に左脳が過剰な優位性(基本的に言語を話し右利きの多い人類は左脳が優位脳といわれています)が両親にみられれば、愛情をもって育てても左脳が優位になりやすいことが考えられます。
これが、結果として自覚なく脳のアンバランスを生じさせることにもなります。
シリコンバレーに自閉症が多い(シリコンバレーは世界中の大企業が集まる優秀な人が集まる地域です)とされるのも、個人的にはこのような影響かと思います。
生活環境の影響
発達障害においては、さまざまな環境因子があるとされています。
- 小児のスマホ・テレビの見過ぎ
- 母親の喫煙
- 両親の高齢(女性35歳以上 男性40歳以上)
- 妊娠中のストレス
- 家族の食事(栄養の偏り、栄養不足、肥満)
環境の危険因子の参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21779823
両親とこどもの接し方だけではなく、生活習慣が発達障害のリスクでもあります。
理解してほしいのは親の責任を追及しているわけではなく、色々な要因が絡んで発達障害と診断されている可能性があるということです。
育て方が良いから発達障害にならないとは限らない
誰よりも愛情を子供に注ぎ、育てても発達障害と診断されたご家族もいます。
そのような方はとくに「育て方が悪い」「しつけがなっていない」などは心外です。
また、このようなご両親ほど心無い言葉によってどこかで育て方を間違ってしまったのではないかと深く絶望してしまう方も多いようです。
発達障害に関わる親御さん、周囲の方々に一番理解してほしいのは、育て方の問題があろうがなかろうが発達障害と診断されることはあります。
発達障害は科学的に未解明であり、色々な原因が単独もしくは複数が絡み合っているからです。
育て方に問題がない場合でも以下のような原因で発達障害がみられることあります。
- 遺伝子異常
- 自己免疫疾患(PANS、PANDASなど)
- 原始反射の残存(帝王切開、アパートなど床で育てられない環境など)
- 環境汚染(近所の農薬散布)
- 運動不足
- 幼児期の骨折などによる長期固定
この他にも原因が解らない発達の遅延などもあります。
こどもに愛情を注ぐ重要性
カイロプラクティック心のBBIT(ブレインベイスドインテグレーションセラピー)で効果がみられるこどもと効果がみられない子供の差は、家庭環境の違いが大きいです。
効果がみられる場合は
- 両親および同居家族(祖母、祖父など)が協力的
- 素直に指示通りの運動療法、栄養療法を試してもらえる
- 良くも悪くもフィードバックしてもらえる
- こどものために生活習慣、食生活を変えられる
こどもを優先的に家族一丸となって育児を行っている家庭環境のご家庭は、効果も現れやすく結果も目に見えたものになります。
言い換えれば「育て方が悪くない」と自信をもっていえるご家庭は、BBITをぜひ試していただきたいです。
ただ、遺伝子異常、自己免疫疾患が起因している場合は、残念ながらお力になれません。
反対に効果がみられない場合は、家庭環境が良いとは言えないケースです。
- アドバイスした内容も「時間が無い」「こどもがしない」などの言い訳しかせず実行しない
- 家族が協力的でない(母親だけが頑張っている)
- 自分の生活スタイルは変えられない
このような臨床的現象もあり、発達障害には育て方も大事であると考えられます。
脳は色々な影響を受ける
発達障害の脳をスキャンする技術が進歩し、脳の異常(血流の減少、萎縮など)が複数の研究で報告されています。
そのため、何らかの原因で発達障害は脳に機能異常みられることが解ってきました。
その原因の1つが、乳幼児期の育て方と考えられます。
それをポジティブにとらえれば、早期にこどもとの接し方を変えることができれば、脳に良い影響も与えられるということです。
カイロプラクティック心のアプローチ法は、育て方に問題がなく「うちのこどもがなぜ発達障害になってしまったの?」とお悩みの親御さんに役立てることが多いです。
カイロプラクティック心の発達障害アプローチのコンセプトはこちら
アプローチの仕方は上手く機能していない脳領域が活性するようにカイロプラクティック施術だけではなく、運動、匂い、光、音などの刺激を利用します。
運動⇒小脳、大脳、脳幹などエクササイズの方法を変えるだけで色々な部位に刺激が入ります。
匂い⇒情動と関わる脳領域に刺激がいきます。
光⇒自律神経に重要な視床下部に刺激がいきます
音⇒側頭葉、頭頂葉など感覚を統合する領域に刺激がいきます。
成長中のこどもの脳は、適切な刺激によって活性化しやすいため、とても効果があらわれやすいです。ただ、適切な刺激を頻回に入れるほうが効果的であり、ご家庭での協力が必要不可欠です。
そのため、こどもにしっかりと愛情を注げるご家庭向きのアプローチ方法となります。
あなたのお子様が良くなるかご不安かと思いますので、LINE、メールでご不明な点、ご質問など無料でお答えさせていただきます。
投稿者プロフィール
-
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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