発達障害やHSP(Highly Sensitive Person)の特性があると、原始反射の1つであるモロー反射が残存していることも少なくありません。
さらにはストレスに弱い、不安感が強い、感覚過敏(光、音、匂いの苦手)などの特性がみられることで、社会生活に支障をきたしてしまいます。
しかし、原始反射の研究はされているものの病院で対応してくれるところはほとんどなく、相談する施設が限定的であることが現状です。
カイロプラクティック心は発達障害に有効なBBIT認定療法士であり、現在進行形で原始反射の最新情報を学んでいます。
ここでは、モロー反射の影響や改善方法について詳しく解説していきます。
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モロー反射とは
モロー反射は新生児期にみられる原始反射の一つで、驚いたときに(音、光、頭部の位置が変わるなど)手足を広げる動作が特徴です。
また、通常は生後6〜12ヶ月で統合されますが、幼児期以降も統合されず大人になっても残存している場合もあります。
原始反射について詳しくはこちらをご参考ください。
発達障害とHSPとモロー反射の関連
HSP(Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)は、心理学者エレイン・アロンが提唱した理論であり、感情に対する感受性が高く、感覚にも過敏(痛み、空腹、光、騒音)であるため、生きずらさを感じています。
そのため、最近の研究ではうつ病や不安症などの気分障害との相関関係が示唆されています(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38164317/)
感覚過敏がみられることから、モロー反射との関連性を考えるケースもあるようですが、研究ではモロー反射との関連性は示されていません。
ただ、モロー反射がみられる場合においては、モロー反射を統合することで感覚過敏の軽減、それらに伴う自律神経症状(頭痛、めまい感、疲労感など)の軽減など心身に好影響がみられる可能性はあります。
発達障害では、原始反射の残存が関連しているとされており、とくにADHDでみられる多動でモロー反射の残存がみられます。
ただ、多様な症状を示す発達障害では、ASD、グレーゾーンであってもモロー反射がみられることは少なくありません。
発達障害もHSPと同様にモロー反射を統合することは、心身に好影響を与える可能性があります。
モロー反射が大人でも残存する原因
乳児期は原始反射を十分に発現させることで、段階的に統合されていきます。
しかし、乳児期のケガ、病気、育児環境などによって動きが制限されると原始反射を十分に発現することができずに、結果として原始反射が残存しやすくなります。
また、環境因子(食生活、動画視聴が多い、両親の喫煙など)によっても脳発達が阻害され、原始反射が残存すると言われています。
後天的な要因として頭部外傷、過度のストレス、出産などによって脳のアンバランスによって統合されていた原始反射が再びみられるようになることがあります。
原始反射の残存は脳のアンバランスのサイン
頭部外傷や過度のストレス、出産などを期に発現するケースもあり、「発達障害=原始反射の残存」ではありません。
原始反射が統合されている状態は、大脳皮質(主に前頭葉)によってコントロールされています。
しかし、過度のストレスは前頭葉の機能低下の原因になることは研究で示唆されており、頭部外傷においても後遺症(感覚過敏、倦怠感、頭痛など)がみられるケースも多く、前頭葉を含めた脳のアンバランスはあらゆる症状がみられ、原始反射の残存も確認されやすいです。
このようなことから、原始反射だけが注目されがちですが、脳のアンバランスを改善させるために機能低下しているの領域を活性化させることが重要であり、その手法の1つに原始反射統合があります。
大人におけるモロー反射の影響
大人におけるモロー反射の影響は以下のことがみられます。
- 朝起きるのが辛い
- 疲れが取れない
- 塩辛い食べ物が無性にほしくなる
- 倦怠感(エネルギー不足)
- 易疲労
- ストレスに対処できない
- 回復力の低下
- 軽度の鬱
他にも起立性調整障害(大人では起立性頻脈症候群)不安障害、交感神経の過活動により副腎疲労がみられることがあります。
モロー反射は出生後の初期にみられることもあり、モロー反射が残存している場合は、他の原始反射もいくつか残っていることが多くみられます。
そのため、原始反射統合エクササイズを行う場合は、他の原始反射も統合する必要性があると考えられます。
モロー反射は出生後の反射ですが、胎児のときにみられる恐怖麻痺反射の残存によって、より多くの症状がみられるケースもあります。
恐怖麻痺反射について詳しくはこちら
感覚過敏やストレス反応に過剰
人は光、匂い、音などの感覚を常に脳へインプットし、適切に処理された情報によって行動に移しています。
例えば、光が強い外では自動的に瞳孔が収縮し光量を調節したり、にぎやかな場所でも声を聞き取りたい相手に注意を向けたりすることができます。
このように人の行動は感覚を取り入れることから始まり、それを適切に脳で処理し、行動を決めています。
しかし、原始反射が残存する状態では感覚を処理する能力に問題が生じていることがあり、感覚過敏の症状が顕著にみられることがあります。
例えば、明るい場所で瞳孔調節ができずに眩しく感じたり、大きい音のも処理が追いつかずに偏桃体が過活動して恐怖を感じたりします。
そして感覚への刺激は日常的にストレス過多なるため、前頭葉が機能低下しやすく、結果として原始反射をコントロールできず、社会生活を普通に送っているだけでも悪循環に陥ります。
そのため、ストレスから遠ざかる対処(暗めの部屋、静かな場所など)で前頭葉を回復させる必要はありますが、その代償として社会から隔離されることにもなり、仕事や人間関係が上手くいかず、ストレスの原因が増えてしまいます。
集中力の低下や不安の増加
原始反射が残存しているケースでは、集中力の維持に重要な前頭葉が機能低下していることが考えられます。
また、視機能(固視、輻輳など)にも問題がみられることも多く、集中して物をみることも苦手であったり、自覚がないケースでも作業中に違うものに見入ったり、スマホを逐一チェックしたりすることも少なくありません。
そしてモロー反射は頭を後方に急激に動かしたときの反射であり、前庭系(頭の位置や重力を脳に伝え自分の状態を把握する役割)に関与するため、残存している状態は前庭系に関与する神経ネットワーク異常とも言えます。
前庭系の問題は不安障害に関与することが研究でも示唆されており、モロー反射が残存している人が不安を感じやすい理由の1つとです。
日常生活への影響
大人は子供と違い脳が成熟しているため、ストレスが少ないときや落ち着いているときは脳全体も働きやすく原始反射を抑えられているときもあると考えられます。
そのため、普段は原始反射が残存していない人と変わらないため、「感覚過敏」「ストレスへの弱さ」「不安を感じやすい」など周りの理解を得られにくいことがあります。
なかには、「さぼっている」「気合が足りない」など精神論で片付けようとする人もおり、結果としてストレス過多の状態で悪循環に陥ります。
このような周りの理解不足はストレスの要因となり、迷惑をかけないように頑張っても自分自身が先に参ってしまい、より症状を強めてしまうことがあります。
原始反射統合(モロー反射の統合)の重要性
身体的な問題として少しの刺激(頭が動く、音や光など)で交感神経が過活動しやすくなるため、疲れやすくエネルギー不足にも陥り、結果として脳も疲れてしまい集中力の低下にまでつながります。
このように反射的に交感神経が過活動になる状態を抑えるだけでも、身体的な症状(疲労感、慢性的な痛み、倦怠感など)は軽減します。
また、モロー反射の発現のキッカケとなる感覚(音、光)への調整力を向上させることで、日常のストレスが軽減しやすいです。
さらに前庭系のエクササイズも並行して行っていくことで、不安感への対処にもなり得ます。
しかし、大人でも原始反射を統合することができるのでしょうか?
結論から言えば、大人でも原始反射は統合可能です。
脳は神経可塑性と呼ばれる構造的、機能的に変化する性質があります。
そして脳の可塑性は、世界各地で行われている脳の機能障害(発達障害、脳震盪後遺症、パーキンソン病など)のリハビリに取り入れられています。
脳の神経可塑性について詳しくはこちら
脳の可塑性には酸素、栄養、運動(神経系への刺激)が大切
脳の可塑性を促す方法は、主に運動です。
そのため、原始反射統合も運動が取り入れられています。
しかし、脳の神経可塑性を促すためには酸素(呼吸)と栄養(食事)も十分に脳へ供給されていなければ、運動の効果もみられなくなります。
とくに大人では呼吸が浅くなっていることも多く、呼吸機能の回復も初期段階で行うことが大切です。
また、偏食、不規則な生活、消化不良など食生活の見直しが必要なケースも少なくありません。
個別にカスタマイズされたエクササイズが重要
私も臨床で経験してきましたが、同じモロー反射の残存があったとしても同じエクササイズでは効果に違いが生まれます。
とくに大人では今まで生きてきた背景、現在おかれている状況、現環境で必要な能力など一人ひとり状況が違います。
さらには個別にみていくとバランス感覚、視機能、ストレスの受けやすさ、食生活など同じ人は誰一人いません。
このような個人差がある以上、同じエクササイズだけで別々の社会に生きている原始反射の残存によって困っている人を救うことは難しいでしょう。
初期段階に行うモロー反射のエクササイズは同じかもしれませんが、反復回数、入れるべき感覚、初期のころの環境(部屋の明るさ、騒音など)などから個々にあわせる必要があると考えています。
専門家のサポートの重要性
最近では、YouTube動画に原始反射統合エクササイズがアップされており、「数回すれば・・・」「わずかな時間で・・・」など言われることもあるようですが、神経可塑性のメカニズムを考えるとそのようなことはありません。
もちろん、数回やるだけでも一時的にモロー反射がみられなくなることはあります。
しかし、それはその人にとって効果があることを証明はしていますが、それだけで全てが解決することを意味していません。
このように情報を得られやすい反面、正しい情報を探すことが難しい状況でもあります。
そのため、自己流でモロー反射の統合を行うことはお勧めしません。
モロー反射がみられる場合、他の原始反射もいくつかみられることがあり、さらには恐怖麻痺反射などの関連もみられたるするため、原始反射を理解している専門家(可能であれば脳機能のメカニズムも理解している専門家)に相談することが大切です。
カイロプラクティック心のモロー反射統合
カイロプラクティック心は、発達障害に有効なBBIT認定療法士です。
また、原始反射を含めた脳機能の研究は進歩しており、私が脳機能を勉強し始めた10年前とは大きく違い、2025年に勉強した内容でも数年前と変わってきています。
このようにカイロプラクティック心は、最新の内容を提供することを心がけています。
モロー反射統合の一例
モロー反射の残存が強く、交感神経が過活動しやすい(日常的に疲れやすい、ストレスに弱い、身体評価で心拍が上がりやすいなど)ケースでは、単純にモロー反射の統合エクササイズで行われるスターフィッシュだけ行っても統合が難しいケースがあります。
そのため、その人にとって落ち着く空間(光過敏であれば暗めの部屋、音の過敏であれば静かな部屋など)で初期は行います。
そのときに心拍の変化だけでもみられば、その人にとっては有効と考えられます。
また、バランス感覚が悪く、不安を感じやすい人は頭部を動かすときにヘッドライトを着用して、頭の動きに伴って動く光をみながら行うことで前庭系の活動を抑えながら初期段階では行います。
このよう同じスターフィッシュでも、人によって手法を変えることが大切と考えています。
また、同じエクササイズを続けるのではなく、段階的に変えていく必要があります。
とくに現環境でモロー反射が現れないようにする必要があり、明るいオフィスで仕事をしている人では最終的に明るい部屋でスターフィッシュを行いながら、認知タスク(耳で足し算を聞きながら、画面の足し算を実施するなど)を行います。
栄養サポート
脳の可塑性には栄養が必要不可欠です。
とくに栄養サポートが必要と考えられる人は以下のとおりです。
- 下痢や便秘が日常的
- 消化不良(胃が痛くなりやすい
- 起床時に頭痛や肩こりを感じやすい
- 食後に眠気を感じやすい
- 低血圧
- 貧血症状がある
腸内環境の悪化は、脳に悪影響を与えることは研究論文でも示唆されています。
また、起床時の症状や食後の眠気は低血糖症状である可能性があり、脳へのエネルギー供給が非効率となっていることが考えられます。
低血圧や貧血は酸素を運ぶ血液に問題がみられるため、脳の酸欠につながります。
これらの症状を解決することもモロー反射を統合させるためには重要です。
オンラインセッション
カイロプラクティック心では、ZOOMを利用したオンラインでも原始反射統合エクササイズを提供いたします。
オンラインでモロー反射の統合エクササイズを行う前にカウンセリングシート、質問票の記入をお願いしております。
また、初回はカウンセリング、身体評価を行って、一人ひとりに合わせた原始反射統合エクササイズを実施します。
ZOOM相談
オンライン(zoom)、ご来店で原始反射統合エクササイズについて相談されたい方は、事前のご予約をお取りください。
相談料として1,000円いただきますが、実際にご予約された場合は、相談料1,000円分を値引いたします。
原始反射統合エクササイズ料金【大人のみ】
ベーシックコースと同じ料金です。
また、ベーシックコースはWEB予約割引(初回のみ)を適用していますが、原始反射統合は割引はございません。
発達障害、グレーゾーンでみられる振る舞いは、原始反射を統合するだけで解決することはありませんが、原始反射統合エクササイズの要望も多いため、原始反射統合を目的としたコースを作りました。
スポーツ障害(肩、肘、膝などの痛み)腰痛や肩こりなどの症状に関わっていることもあり、身体症状の緩和、スポーツのパフォーマンスアップに繋がることもあります。
こどもの場合は、こちらをご検討ください。
原始反射統合においては、カイロプラクティック施術も有効であるため、施術とエクササイズを組み合わせていきます。
※施術が不要な方は予めお伝えください。
モロー反射の統合は脳を健康にする第一歩
モロー反射を含めた原始反射の統合は、脳発達の初期に達成されます。
そして、徐々にレベルを上げていくゲームのように脳も段階的に発達していきます。
しかし、原始反射統合の段階でつまづきがみられることで、その後の脳発達にも影響を及ぼし、そのまま大人になってしまうと脳は成熟しても不安定な状態であると考えられます。
そのため、体調やメンタル面に好不調の波も大きく日常生活に差し支える日々も多くなってきます。
脳は生理的にも加齢とともに機能が低下するため、心身ともに健康な人であっても脳の健康を保つために規則正しい生活(十分な睡眠、栄養バランスのとれた食事、適度な運動)が必要です。
このようなことから、モロー反射の統合だけでは全ての困りごとが解決することはありませんが、5年先10年先の心身の健康状態には大きな差が生まれる可能性があります。
「モロー反射が残存しているのでは?」と疑問に思っているのであれば、専門家の相談して対処していくことをお勧めします。
カイロプラクティック心でも、しっかりと対応いたしますので、お悩みの方はご相談ください。
投稿者プロフィール

- カイロプラクター
-
伊勢市小俣町でカイロプラクターをしています。
病院では異常が見当たらず、どこに行っても良くならなかった方が体調を回復できるようサポートします。
機能神経学をベースに中枢神経の可塑性を利用したアプローチで発達障害、自律神経症状、不定愁訴にも対応しています。
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