頭蓋骨は医学的には動かないとされています。
しかし、カイロプラクティック・オステオパシーなどの臨床では頭蓋骨に対してアプローチ、症状改善がみられる事実があります。
なかには、頭蓋骨アプローチを中心とした療法で宣伝もせずに結果をだしている徒手療法家もいらっしゃいます。
このように科学では解明されてないことでも、頭蓋骨へのアプローチによって臨床現場では症状が改善される現象がおきています。
また、一時的な改善だけであれば、治療院が乱立する現代で宣伝なしでは生き残れないのではないでしょうか。
ここでは、科学的な検証と臨床をふまえて、頭蓋骨アプローチについて解説していきます。
頭蓋骨療法の臨床と科学的根拠
頭蓋骨は23個の骨で形成されていますが、それぞれが強固に固定され動かない不動関節と言われています。
これが、頭蓋骨が動かないといわれる根拠です。
しかし、カイロプラクティック・オステオパシーでは僅かな動きによって、脳脊髄液を循環させ、それらの循環不全が健康に悪影響を及ぼすという理論があります。
脳脊髄液の循環不全に関する文献は以下のように報告されています。
脳脊髄液(CSF)の停滞は、病理学または症候学がない場合に一般的に起こり、全身の健康への悪影響をもたらす可能性があることを示唆する証拠があります。CSFうっ滞は、有害な機械的索張力、椎骨亜脱臼症候群、頭蓋リズミカルなインパルスの減少、および呼吸機能の制限に関連している可能性があります。さまざまな構造的療法およびエネルギー療法は、CSFの流れを高める効果がある可能性がありますが、この点での作用および有効性のメカニズムについてはほとんど知られていません。
現状でわかっていることは、脳脊髄液の循環不全は健康に悪影響を及ぼすことが示唆され、それぞれの頭蓋骨へのアプローチは循環不全を改善させる可能性はあります。
そのメカニズムについては今後も検証が必要であるということです。
脳脊髄液とは
引用元:プロメテウス解剖学
脳脊髄液は、頭蓋内では脳室内及び、くも膜下腔、脊柱管内では脊髄くも膜下腔にある液体です。
脳と脊髄を包むくも膜下腔が脳脊髄液によって満たされるため、脳及び脊髄(中枢神経)は、脳脊髄液に浮かんでいる状態です。
脳脊髄液の産生
脳脊髄液は、1日に500ml産生されます。
主に脳室(側脳室・第三脳室・第四脳室)の脈絡叢で産生された脳脊髄液は、Magendie 孔や Lushcka孔からくも膜下腔に流れていきます。
そして、脳底部脳槽からしだいに上行し最終的には、クモ膜顆粒から吸収されるくも膜絨毛から静脈系へ移行し再吸収されます。
脳脊髄液の役割は、脳の保護、栄養を与える、老廃物の除去作用などがあります。
1次呼吸メカニズム
脳脊髄液の循環については議論されており、明確な答えはみつかっていません。
頭蓋骨療法では、脳脊髄液の循環を一呼吸メカニズムで説明し、1つのモデルとしてアプレジャー・モデルがあります。
脈絡叢で生産される脳脊髄液は排出される量が多く水圧が上昇⇒それに応じて頭蓋骨が伸張されるように広がる⇒頭蓋骨内の受容器が活性化⇒脳脊髄液の生産に抑制信号を送る⇒脳性髄液の生産が抑制⇒水圧の減少により頭蓋骨が収縮⇒頭蓋骨内の受容器が不活性⇒脳脊髄液産生開始
頭蓋骨だけではなく仙骨も連動して動く頭蓋仙骨リズムは、第一次呼吸メカニズムの現れでもあります。
頭蓋仙骨リズム
脳脊髄液で満たされるくも膜下腔(硬膜)は、脳と脊髄を包み頭蓋骨内面、大孔、背骨の一部、仙骨、尾骨に付着しています(コアリンク)
このような解剖学的な視点から頭蓋骨の伸張および収縮は、仙骨に反映されると考えられています。
頭蓋骨と仙骨が連動していないと脳脊髄液の循環が上手くいかず、健康状態に悪影響を及ぼすという最初に解説した理論につながります。
頭蓋骨の動きを計器を利用した研究
頭蓋骨が動くという明確な答えは出ていませんが、医療機器の発達により頭蓋骨の動きを観察する研究報告もみられるようになりました。
頭蓋骨オステオパシーを客観的に研究するための取り組みでは、トラウベヘリング(TH)振動とも呼ばれる血流速度など、人間の生理機能における他の既知の低周波振動のコンテキストでCRIを検討しました。触診されたCRIとレーザードップラー流量計によって測定された0.10から0.15 HzのTraubeHering(TH)振動の間の統計的に有意な相関を示した
この研究からわかることは、頭蓋骨にはある程度の振動が計測されていることと、それに対して熟練したオステパシーが触診で感じた頭蓋仙骨リズムと一致がみられたことです。
頭蓋骨は僅かですが、動いている可能性が示唆されます。
しかし、熟練したオステパシーであることから、この感じ方は個人差が大きいと考えられ、誰もが一致するとは言えません。
頭蓋骨は動く可能性は示されましたが、その僅かな動きを誰もが感じられるとは言えないため、治療効果に差は現れやすいです。
頭蓋仙骨療法の臨床研究
頭蓋仙骨療法も議論中ではありますが、以下のようなレビュー(いくつかの研究をまとめた報告)があります。
首と背中の痛み、片頭痛、頭痛、線維筋痛症、外側上顆炎、および骨盤付近の痛みを伴う681人の患者を分析した結果、疼痛および機能に対する頭蓋仙骨療法は有意かつ強力な効果が最大6か月続くことが示唆されます。
この研究だけみると頭蓋仙骨療法はとても有効です。
しかし、徒手療法の研究では「誰が行ったか」で効果も違うということがあります。
そして、痛みや障害の改善程度は客観性の指標が難しいです。
このような背景からこの研究でもバイアス(研究者の思い込み)リスクを低くして、さらなる研究が必要とも報告しています。
頭蓋骨調整の臨床的仮説
ここまでは頭蓋骨調整の有効性については、脳脊髄液、硬膜のつながり(頭蓋骨、仙骨)を解説してきました。
他の頭蓋骨が臨床的に変化の起こせる要因としては、血管、膜の影響もあると考えられます。
引用元:ネッター解剖学
頭蓋骨の中には、図の様な大脳鎌と呼ばれる膜(白っぽい)があり、左右の脳を隔てるように頭蓋骨へ付着しています。また、その膜に沿って静脈が流れています。
頭蓋骨に僅かでも変化がみられれば、この膜にかかるテンションにも変化がおこり静脈にも何らかの影響があると考えられます。
- 頭蓋骨を通る静脈
- 頭蓋骨内の血管
- 硬膜に付着する血管
引用元:ネッター解剖学
当然ですが、図のように頭蓋骨内には血管がとおり、なかには頭蓋骨内を貫通するような血管もあります。
脳には痛みを感じる受容器はなく、血管に痛みを感じる受容器があり、頭痛はこれらの血管が硬膜や大脳鎌に牽引されることで発生しているケースもあると考えられます。
頭蓋骨調整により、血管や膜の緊張が緩和することで症状の改善がみられる可能性があります。
頭蓋骨が歪む原因は
では、ほとんど動かない頭蓋骨がなぜストレスがかかり、調整が必要になるのでしょうか。
硬膜
硬膜は、脳、脊髄を包み、一部の背骨に付着するため、姿勢や背骨の捻じれによって硬膜にストレスがかかることは想像がつきます。
そのため、頭蓋骨だけではなく仙骨も調整が必要とされる理由です。
長い時間、姿勢や背骨からの負担(デスクワークで同じ姿勢を続ける、背骨の打撲など)によって、頭蓋骨へ微力ながら牽引がかかり続けることで、頭蓋骨に影響がでます。
結合組織
皮膚と内臓を分ける間の組織は、結合組織と呼ばれます。
そのため、組織は全身繋がっており、下肢のケガ(捻挫、靭帯断裂など)も影響する可能性があります。
また、頭蓋骨自体にも顎、首、舌などを動かす筋肉も付着しており、噛み癖、舌を動かせないなどの影響によって頭蓋骨へのストレスが増加します。
外傷
頭部への直接的な外傷は、頭蓋骨への影響が大きいです。
また、幼少期であっても同様です。
幼少期を含め、外傷(頭部をぶつける)が影響することもあります。
これらのストレスにより、頭蓋骨内の膜にストレスを与えてしまい脳内の血管、脳内圧に変化が生じ、痛みとして現れてしまうと考えられます。
頭蓋骨調整の方法の種類
頭蓋骨調整は、バイオメカニカルとバイオダイナミックの2種類に大きく分けることができます。
流派などの違いによって、いくつかの調整方法はありますが、ここではバイオメカニカルとバイオダイナミックを解説します。
バイオメカニカル
頭蓋骨が以下のように動く理論により、頭蓋骨の可動を改善させます。
強く押すようなことはせずにソフトな圧(5g)をかけたり、少し牽引(引っ張る)をかける調整になります。
硬膜の緊張の緩和、それに伴う筋緊張の緩和などにより、自己治癒能力が発揮されやすい状態にします。
また、頭蓋骨内の膜の緊張が脳の機能に影響を与えるため、自律神経や中枢神経などの神経系の問題も臨床的に頭蓋骨調整は取り入れられています。
バイオダイナミクス
エネルギ―ワークの要素で頭蓋骨を調整します。
ヒーリング、レイキなどのエネルギー的な療法を効果的と感じる方は、バイオダイナミックの頭蓋骨療法も効果を感じやすいです。
バイオダイナミックは術者の色々な考えがあると思いますが、私の教えてもらった理論で説明させていただきます。
ここで言うエネルギーは、人間が誰でも持つ微弱な生体電気(磁気)です。
磁気を発生させて大脳に刺激を与える磁気刺激治療を行う装置があり、病院治療に取り入れられていることから脳への治療として有効性はあると言えます。
治療のできるヒーリング術者の手は微弱な生体電流によって7~8ヘルツの磁波ができ、「装置と同様に磁気刺激ができるのではないか」というのが仮説です。
頭蓋骨の動きにアプローチするバイオメカニカルに対してバイオダイナミクスは、各脳領域に磁気を当てるイメージでアプローチします。
頭蓋骨調整が有効な症状
- 頭痛
- 顔面痛、顔面神経痛
- 耳鳴り
- 中耳炎
- 顎関節症
- 斜頸
- 視力障害(斜視、緑内障など)
- めまい
- 自律神経症状(不眠、だるさ、倦怠感など)
- 発達障害
- パニック障害
病院の治療が優先的に行ったほうが良い病理的な原因もあるため、まずは病院でしっかりと診断してもらう必要はあります。
そして、病院治療でも改善されないケースにおいて、このような頭蓋骨を含めた身体の機能異常が起因している場合は、臨床的に改善されるケースも少なくありません。
カイロプラクティック心の頭蓋骨アプローチ
ここまで解説してきた理論に基づいて、カイロプラクティック心では頭蓋骨のテクニックを取り入れています。

頭蓋骨の調整
健全な神経機能が営まれていないと、神経の過敏及び興奮性が高まります。
そうなると通常では痛みとして感じない刺激であっても痛みやしびれなどの異常感覚として身体が認識します。
このような状態では強い刺激は身体への負担となるため、腰痛、肩こりなど筋骨格系の問題と思われるような症状でも頭蓋骨の調整を中心に行うことが多いです。
このような方に対応
- 痛みに過敏
- 頭痛
- 日々のストレスが強い
- 乳児
- 発達障害
このような方は頭蓋骨調整が効果的であることが多いです。
もちろん、頭蓋骨調整だけで改善させることはできませんが、回復過程のなかで優先的に行うことが多いです。
色々な治療を受けたけど症状が改善されない、神経系の症状があるひとは、カイロプラクティック心にご相談ください。